
『ヴィクトリア』演出とテーマとの“親和性”を語りまくってやる(映画ネタバレなしラジオトーク)
今日の映画感想は『ヴィクトリア』です。
個人的お気に入り度:9/10
一言感想:人生が変わる一夜だった
あらすじ
ヴィクトリア(ライア・コスタ)は3ヵ月前に母国スペインのマドリードを後にして、単身ベルリンでの生活を始めていた。
夜明け前、踊り疲れて帰路につこうとしたヴィクトリアは、路上で地元の若者4人組に声をかけられる。
ヴィクトリアはドイツ語をしゃべれなかったが、ぎこちない英語で会話を交わした彼らは意気投合していく……
※自分は大絶賛していますが、世間的にはそれなりに賛否両論の映画です。
(終盤のあるバカげた行動をみて、感情移入できないという声が多い)
気に入らなかった方は、ぜひコメント欄にいただいた否定的な意見もお読みください(ネタバレあり)。
観ろ。
もうね、5月の気になる映画一覧でもうすでに本作の特徴を説明しているのに恐縮ですが、劇場情報だけを知って観て欲しいんですよ。
【映画『ヴィクトリア』を観る前に知って欲しいこと】
・ぶっちぎりにすごい映画だ!
・序盤がちょっと退屈?いやいやこれは必要不可欠なんだよ!
・<劇場情報>←クリックして確認しろ!
以上となります。
本作はあまりにも「SUGEEEEEEEEEEEE!」という気持ちが大きかったので、ラジオとして収録をいたしました。
ぜひ以下の再生ボタンをクリックしてお聞きください。ネタバレはありませんよ!
※人間映画Wikipediaの成宮秋祥とバトルをしております。
なぜ本作を予備知識なく観て欲しいのか?ということは、ラジオでの後半部分でも解説しております。
もちろん特徴を知っていても最高の映画ですが、何も知らない友だちを劇場に連れてきて、驚かせてもいいかもしれませんね。
↓以下はラジオの補足情報。ネタバレはありませんが、映画の特徴は書いています。ラジオを聴きながらAmazon.comリンクの作品情報やレビューを読むと楽しいかもしれません。
『ヴィクトリア』の補足情報&似ている映画
さてさて、本作は2時間20分全編をワンカット(つなぎ目なし!)で撮られた映画となっております。
これがどのような効果を生んでいるかはラジオを聞いてみてね!
成宮さん曰く『ヴィクトリア』と似ている(?)映画の補足情報
『ブルー・ベルベット』
売り上げランキング: 10,203
のどかな町に起きた、殺人事件をめぐる物語。R15+指定の変態的な内容なので子どもは観ちゃダメ!
デヴィッド・リンチ監督はわけわからん観念的な映画をよく手がけるお方です(雑な紹介)が、これはわかりやすいほう。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
こちらは完全に「巻きこまれ型」の主人公でしたね。
<レビューはこちら>
『にっぽん昆虫記』
売り上げランキング: 32,690
女工からコールガールの元締めとなった女の半生を描く作品。
「誠実さや倫理観なんかクソくらえ!どうにかして生きてやるんだ!」な映画だそうです。
『プレイタイム』
売り上げランキング: 45,766
械機文明が高度に発達したパリが舞台。
興行的には失敗したけど、監督が「私の遺作」と語ったほど、全力が捧げられた超大作なのだそうです。
『6才のボクが、大人になるまで』
売り上げランキング: 34,537
この映画の特徴は、12年という時間をかけて、複数の同じ役者を追いかけることで作られた、ということ。
つまり、映画が進むごとに作中ではどんどん時間が進み、6才だった少年が、本当に成長していく様子が描かれているのです。
これは編集などのテクニックでは製作不可能な作品ですね。
<レビューはこちら>
『真昼の決闘』
売り上げランキング: 17,370
西部劇黄金時代の名作。DVDはワンコインで買えるんですね。
人物をとらえつつゆっくりと移動していく……すさまじい長回しのカメラワークが楽しめます
ヒナタカが『ヴィクトリア』との比較で語った映画
『サウルの息子』
アウシュビッツ強制収容所をまるごと体験できる凄まじい映画。
<レビューはこちら>
『トム・ヤン・クン』
売り上げランキング: 21,422
ワイヤーなし、スタントなし、CGなし、とにかくすげえぞ!観ろ!
『バードマン』
売り上げランキング: 13,211
擬似ワンカットの編集と撮影が素晴らしい。作品性とワンカット演出の親和性も高かったですね。
<レビューはこちら>
『ロープ』
売り上げランキング: 6,359
元祖・全編擬似ワンカット映画といえば1948年(ラジオで間違っていてごめん)製作のこちら。『サイコ』のアルフレッド・ヒッチコック監督作品です。
当時の撮影用フィルムの長さは10分から15分が限界なので、実際にはカットするときに箱の影や人物の背中などを大写しにして、全体がつながるように編集をされています。
↓POV(Point Of View、主観視点)の映画にはこういうのがあります。
【随時更新】POV方式で撮影された映画まとめ【58本】 – NAVER まとめ
↓語っていた映画祭はこちら。昨年初めて参加しましたが、ちょー素晴らしかったぞ!
夜空と交差する森の映画祭2016 / FOREST MOVIE FESTIVAL
「夜空と交差する森の映画祭 2015」最高のイベントだった。 #森の映画祭 pic.twitter.com/1kT0C3Gu2x
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2015年10月4日
「夜空と交差する森の映画祭 2015」メインステージの入り口がすでに『ビッグ・フィッシュ』で感動した。 #森の映画祭 pic.twitter.com/1BZ7P6rI7S
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2015年10月4日
以下はラジオの最後に紹介した、ヒナタカ、成宮それぞれの好きな「長回し」が使われた映画です。なるべくラジオを聞いてからご覧ください↓
成宮おすすめ長回し映画
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ヒナタカおすすめ長回し映画
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最後に、もう少しだけラジオのトーク内容に補足をさせてください
「声が聞こえなくなる」演出の意図は?
『ヴィクトリア』の序盤にしめやかな音楽が流れ、その間は登場人物の声が聞こえなくなる、というシーンがあるのですが、いま考えるとこれは「主人公がたどたどしい英語でしかコミュニケーションできなかった」ということと密接に絡んでいるのではないでしょうか。
このときの彼女らは本当に楽しそう。
すなわち、声が聞こえなくなるということは、言葉の壁をはるかに超えた、かけがえない関係性が彼女らに生まれた、という演出なのでしょう。
ヴィクトリアがあまりに思慮のなさすぎる行動をすることについて
中盤のヴィクトリアの告白から察するに、彼女は親友を探していただけでなく、自分の人生が「どうでもよく」なっていたのではないでしょうか。
親友がいままでできなかった彼女だったからこそ、見ず知らずの彼らをなんとしてでも助けたかった、あの行動にも加担した、そのためなら自分は堕ちてもかまわないと思っていたと、自分は納得できました。
彼女は、告白したあの場所での社会しか知らない「世間知らず」でしょうしね。
また、本作は. 絶対に映画館のスクリーンで観るべき映画でもあります。
『レヴェナント:蘇えりし者』についてアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は「この映画をスマホやタブレットで観るだなんて犯罪行為!」と言っていたけど、自分は本作でもめっちゃそう思うから!いいから観に行け!
ほら、映画館の情報をもう1回載せておくから!
<上映劇場一覧>
おすすめ。後半部分が若干ネタバレしているので注意!↓
ヴィクトリア:監督セバスチャン・シッパー・インタビュー:2時間20分ワンカットによる男女と銃弾の物語|NEWS -MOVIE-|honeyee.com Web Magazine

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初めてコメントをさせていただきます。
いつもカゲヒナタさんのブログ楽しんで読ませてもらってます。
今回ツイッターなどで面白いというコメントを見まして、ヴィクトリアを梅田で観てきました。
カゲヒナタさんはヴィクトリア、大絶賛されてますが、私はどーしても好きになれませんでした。
観ていて監督の撮りたいこと、みせたいものは分かるのですが、キャラクター、ストーリーがどうしても気に入りません。序盤のピアノを弾くシーンや、強盗での車のトラブルなど好きなシーンもあるのですが、そのすぐあとのパーティーの展開は主人公達があまりにも何も考えてなさすぎじゃね?と思ってしまい、そこからどうも感情移入できなくなってしまいました。裸で暴れてるので金盗られるんじゃねえかと、無意味にドキドキしたり、ゾンネの部屋に押し入ってからの発言、行動もお前強盗犯のくせに何言ってるんだと思ったりとイライラしてしまいました。
カゲヒナタさんの十点など他の人の好評価な意見を見て、うおーっ!と期待して観てしまったのでどうしても一言言ってみたかったです、すみません。
あと、話は変わりますが赤ちゃんを連れて階段を降りるシーンが『トゥモローワールド』に似ているなぁと思いました。監督が影響をうけてるんでしょうか。
> 初めてコメントをさせていただきます。
> いつもカゲヒナタさんのブログ楽しんで読ませてもらってます。
> カゲヒナタさんの十点など他の人の好評価な意見を見て、うおーっ!と期待して観てしまったのでどうしても一言言ってみたかったです、すみません。
どうもありがとうございます。
気に入られなかったのですね・・・いただいたご意見に納得しました。
ネットの評判を見てもけっこう賛否両論だったりしますし、人の意見はそれぞれ。
自分の感想も、話半分くらいにみていただきましたら幸いです。
> あと、話は変わりますが赤ちゃんを連れて階段を降りるシーンが『トゥモローワールド』に似ているなぁと思いました。監督が影響をうけてるんでしょうか。
同じく長回しの作品なので、影響を受けているかもしれませんね。
26歳の映画ファンです。
私もピヨピヨさんと同じく梅田にて鑑賞してきました。
2時間20分ノーカットには敬意を表したいです。が、私的にいまいちでした…。パンフレットも薄いし。
・不満点
主人公のヴィクトリアの行動に全く感情移入できませんでした。
怪しい男4人組にノコノコついていき、酒を盗むヴィクトリア。その男達にいきなり「車を運転してくれ」と言われて、運転するヴィクトリア。向かった先には怖い人達がいて、明らかに目の前で銀行強盗の練習を見せられ、コカインも吸っちゃうヴィクトリア。銀行強盗を手伝うヴィクトリア。赤ちゃんを盗むヴィクトリア。盗んだ金を持って歩き出すヴィクトリア。
生粋の犯罪者みたいな立ち振る舞いですね(笑)。特に拒む様子もなく平気で最後まで犯罪に加担していることに首を傾げました。ここまで彼女を突き動かすものは何なのでしょうか。等身大の主人公を期待していたんですが…。
あと話の内容は犯罪に加担していくと言う既視感のあるありふれた内容でしたので、新鮮さや驚きはなかったです。
・良かった点
2時間20分ノーカット長回しの為、リアルタイムで進行していきます。観客も2時間20分リアルタイムを付き合うわけなので、ヒナタカさんの仰る「体験映画」という表現は大変納得しました。「撮影が失敗するのではないのか」という緊張感も伝わってきますし、失敗なのか演出なのかわからない所もありましたね。
また前半は確かにダラダラした印象ですが、後半の展開とのギャップを持たせる為には必要なパートですね。(同じ構成だと、前半で平和な日常生活、後半で戦争の悲惨さを描いた名作『ディア・ハンター』があります)
ロロ・トマシさん、コメントありがとうございます。
やっぱりネットの評判を見ると本作は賛否両論、ヴィクトリアが好きになれないという意見が多いですね・・・(そしてそれもよくわかる・・・)
ヴィクトリアの性格を完璧にはっきりさせない、ピアノのシーンの後の語りだけにとどめておくのは好きなのですが。
ヴィクトリアにはいままで友達と呼べる者がいなかった。
だから、たった1時間程度のふれあいだった行きずりの男たちの犯罪行為にも、どんどん躊躇なく加担していった・・・。
そう思ったので、自分は泣けてしかたがなかったのです。
こちらのブログでこの映画を知って観に行ってきました
たいへん面白かったです。
ワンカットの手法も主人公の動機も
面白そうだからとりあえずやってみた
てのが1番じゃないでしょうか?
荒いのも含めて
パンフのペラさにはショックでしたけど
いつも楽しくブログを拝見させていただいています。
僕は、映画館で映画をまともに観るのは年間に2,3本くらいの人間ですが、こちらのブログで拝見してとても気になったので本日鑑賞してまいりました。
最初のクラブでのお酒の注文のシーンから、その後のヴィクトリアの行動原理が垣間見えますよね。
中盤の「私も一緒に行きたい」と自ら加担することを選ぶシーンなんかグッときました。
もうひとりには戻りたくない、という切実な心情が究極の選択のような形で如実に出たシーンだったのではないでしょうか。
そういう意味で、ラストでヴィクトリアが選んだ道は納得いかなかった部分がありました。
とはいえ、緊張感の絶えることのない140分のラストをあの画、あのタイミングに合わせてくる爽快感、まるで自分もスタッフの一員になったかのような達成感と解放感(?)を感じられるラストシーンだったと思います(笑)。
「それでもボクは悪人じゃない」とでもいうべき主題は誰しもに当てはまるもので重たい気持ちも残りましたが、思い切って観に行ってよかったです。
これからも楽しく拝見させていただきますー♪
> いつも楽しくブログを拝見させていただいています。
> 僕は、映画館で映画をまともに観るのは年間に2,3本くらいの人間ですが、こちらのブログで拝見してとても気になったので本日鑑賞してまいりました。
ありがとうございます!
> 最初のクラブでのお酒の注文のシーンから、その後のヴィクトリアの行動原理が垣間見えますよね。
> 中盤の「私も一緒に行きたい」と自ら加担することを選ぶシーンなんかグッときました。
> もうひとりには戻りたくない、という切実な心情が究極の選択のような形で如実に出たシーンだったのではないでしょうか。
ヴィクトリアは言葉が通じる相手を探していましたね。
> そういう意味で、ラストでヴィクトリアが選んだ道は納得いかなかった部分がありました。
いっしょに捕まるのかと、自分も思っていました。
> とはいえ、緊張感の絶えることのない140分のラストをあの画、あのタイミングに合わせてくる爽快感、まるで自分もスタッフの一員になったかのような達成感と解放感(?)を感じられるラストシーンだったと思います(笑)。
スタッフの一員!確かにそうですね。
> 「それでもボクは悪人じゃない」とでもいうべき主題は誰しもに当てはまるもので重たい気持ちも残りましたが、思い切って観に行ってよかったです。
> これからも楽しく拝見させていただきますー♪
いやー紹介してよかったです。
これからもお願いいたします。
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