『ザ・ギフト』最悪の贈りものとは?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『ザ・ギフト』最悪の贈りものとは?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はザ・ギフトです。

個人的お気に入り度:8/10

一言感想:イヤな気分にさせてくれてありがとう!

あらすじ

転居先で新たな生活を送る夫婦・サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホールロビン)の前に、夫の同級生と名乗る男・ゴード(ジョエル・エドガートン)が現れた。
ゴードから1本のワインが贈られるが、徐々にゴードからのギフトはエスカレートしていき……

実力派俳優、ジョエル・エドガートンの監督デビュー作です。
本作の魅力については、以下にも書きました。
『ザ・ギフト』は超イヤな気分になれる秀作スリラー!その5つの魅力とは? | シネマズ by 松竹

うーんどうしよう、ネタバレなしでほかに書けることがない!
いや本当、以下を把握して観ればそれでいいのです。

  1. いい意味で超イヤな気分になれる
  2. でもおもしろくてしかたがない
  3. セリフを注意深く聞いているとさらに怖い

なお、血が出たり、目を覆いたくなるような凄惨なシーンはいっさいなく、G(全年齢)指定だったりします。
直接的なエグい描写が苦手という方にもおすすめと言えます(まあ、間接的には相当にエグいことが描かれてはいるのですけども)。この作風も賞賛するべきでしょう。

ともかく、全米でのスマッシュヒット&高評価がうなずける秀作です。
しかも、描かれている問題は日本人にも共感しやすいものでもありました。
上映時期は場所によってバラバラですが、万人向けのスリラーとして幅広い方におすすめします。
<上映劇場情報>

以下、結末も含めてネタバレです 観ていない人は読まないで!↓

監督・脚本・出演をこなしたジョエル・エドガートンは、本作のコンセプトおよびテーマについて、以下のように語っています。

  1. 学生時代にひどいことをした相手に再会したら?(サイモンのこと)
  2. その逆に、自分をいじめた相手に再会したら?(ゴードのこと)
  3. 身近な人をどこまで知っているか、その過去を詮索する権利はあるか(ロビンのこと)

これらについて、映画の中で表れたことを以下に書いてみます。

学生時代にひどいことをした相手に再会したら?(サイモンのこと)

本作で描かれているのは、過去にあったいじめの問題でした。
高校時代のサイモンが、ゴードが性的虐待をされているという事実無根の噂を広めために、ゴードの人生は一変。ゴードの父親が、ゴードを殺しかけて投獄されてしまうまでの事態になったのです。

そうであるのに、25年ぶりにゴードを見かけたサイモンは、ロビンには「最初誰かわからなくてあせったよ、いいやつなんだ」と告げ、その後も自分からはいじめのことを言いませんでした。

ロビンにいじめの事実を知られた後、サイモンは「俺もオヤジからヒドい仕打ちをうけた!でも俺はそんな過去には囚われない。人生は勝つか負けるかだ。負け組はその場所にずっといるだけだ!」と言っていました。

そんなサイモンはその前に、会社の年下の社長が、10代のころから億万長者になっていることを、自嘲気味に語っていました(成功者である年下の社長へ嫉妬している)。
あまつさえ情報をリークしてライバルであった男のポジションを奪います(そのために家に石を投げてきた男を、サイモンはまたも誰かわからなかった)。

これらから、サイモンの興味は“いまの自分”しかない上に、他人を蹴落としてでも成功を収めたいという願望を持っていることがわかります。

で、そんなサイモンはゴードに謝りに行く前に「俺はどう言えばいい?」とロビンに聞いたり、いざゴードに会うと殴りながら「俺の謝罪を受け入れろ!」とかほざきました。受け入れるわけねえだろ!

サイモンは、ゴードを自分の日常をおびやかすようなノイズのような存在としか認識しておらず、“過去のことで謝る”ということにいっさいの意義を見いだせなかったんだろうな……。
サイモンが再会したばかりのゴードに「いいやつなんだ」と言ったのは、本当は「あんなことをしたのに、俺の人生を邪魔しなかったから、いいやつだ」ということを示しているのかも……

なお、ジョエル監督は本作の製作に取り掛かるにあたって、いじめの被害者にも加害者にもなった体験から、他人への思いやりを学んだと語っています。
サイモンが学ぶべきことも、そのようなことだったはずなのに……。

その逆に、自分をいじめた相手に再会したら?(ゴードのこと)

おそらくなのですが、ゴードがサイモンに会ったのは、本当に偶然であったのでしょう。

再会したばかりのサイモンは、いじめのことをまったく言いませんでした。
だから、ゴードはたびたび贈りもの(ギフト)をあげたり、家にまで来たりすることで、「サイモンがいじめのことを覚えていて、自分に謝ってくれるか」を“テスト”しようとしていたのではないでしょうか。
(しかし、ゴードが何回もギフトを贈ろうとも、サイモンはまったく謝ることはありませんでした)

ゴードが金持ちの家に侵入して、嘘をついてまで自分が“成功者である”ことを見せようとした、しかもあっさり嘘だとバラしてしまうのは、サイモンの成功への“当てつけ”でもあるように思えます。
(ゴードには、わざと自分が席を外すことで、盗聴していたサイモンの気持ちを聞くという目的もあったのでしょう)

ゴードは、謝りに来たサイモンに「彼女(ロビン)に言われたから来たんだ」「手遅れだよ」と言っていましたが……裏を返せば、本心から謝っていればサイモンは許されていたのかもしれないんですよね。

ゴードが一連の行動をした、だけど謝ってもらうという形で報われることがなかったのは、いじめの相手のサイモンに出会って“しまった”せいです。
この映画に限らず、大人になってからいじめた相手と再会しても……いいことなんてないのかもしれません。
(これは、『映画 聲の形』で描かれたことと反対とも言えるかも)

身近な人をどこまで知っているか、その過去を詮索する権利はあるか(ロビンのこと)

ロビンはゴードに対して親切な女性であり、まともに思えましたが……彼女は彼女で、他人の言葉に“考えなしに乗っかってしまう”クセもあったように思えます。

ロビンは、少し紹介されただけのゴードを家にまであげてしまいます。
豪邸でサイモンが下品にゴードのことをはやし立てると、ロビンは笑ってから「気持ち悪いからよ!」と言ってしまいます。
サイモンにも、彼女は「君は誰にでもやさしいんだろう?」と嫌味を言われていました。
そうした“主体性のなさ”が、彼女にはあるのです。

そんなロビンは、サイモンが過去に他人を破滅させてしまうほどのいじめをしていたことを知ります。
“主体性のない”ロビンはいままで、夫のはずのサイモンのそのようなの姿を知らなかった、いや、知ろうともしなかったのです。

「身近な過去を詮索する権利はあるか」と問われれば、あると断定したいのですが……知らないほうが、その後の人生をよりよく過ごせることもあるかもしれません。


※このすぐに消えてしまうような“ガラスに書いたハート”も、ロビンがサイモンの心のうちを知らなかったことを示しているのかも。

産まれた子ども=最悪のギフト?

最後にロビンが産んだ子どもは、“ゴードが寝ているロビンをレイプしてできた子どもかもしれない”と、サイモンへのビデオメッセージで“それが本当かどうかはわからない”ように示されていました。

結論から言えば、ゴードはロビンをレイプしてなどおらず、産まれたのはサイモンの子どもなのでしょう。
なぜなら、サイモンが過去にやったのは“事実無根のことを、本当だと言い放った”ことなのですから。
ゴードがこれに対して復讐するというのであれば、やはり同じく“事実無根のことを、本当だと言い放った”ことであるべきでしょう。

しかも、ゴードがビデオメッセージを送ったことで、苦しむのはサイモンただ1人になっているということも重要です。
サイモンが過去に広めた噂は町中に広がり、ゴードの父親までも破滅に追い込みましたが……ゴードは周りを巻き込まず、ただ1人に復讐できています。
ゴードは犬やサルにも危害を加えなかったですしね(ただ、鯉は殺されてしまったけど……)。

お見舞いに来たゴードが、子どもを産んだばかりのロビンに「いい人には、いいことがないと」と言ったのも、自分に親切にしてくれたロビンへの心からの感謝と、彼女は自分の復讐には巻き込みたくないという心の表れなのでしょう。

また、序盤にゴードは「いいことの多くは悪いことから生まれる」「悪いことも自分へのギフトになるかも」と、話していました。

この子どもはサイモンにとって、最悪のギフトでしょう。
だけど、サイモンが本当にいじめのことを反省すれば、そのギフトが“いいこと”に転じる可能性もあるかもしれません。

しかし……個人的には、サイモンが(自分がそうだったように)父親として子どもを愛せなくなるという、最悪な未来しか見えないんですけどね。

(C) 2015 STX Productions, LLC and Blumhouse Productions, LLC. All Rights Reserved.

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  1. メキタ より:

    ゴードがビデオメッセージを送ったことで、苦しむのはゴードただ1人になっている
    ここ苦しむのはサイモンですかね

    傷つくのはクズ野郎一人ってあたりが最高な作品だと想いました。
    魚は可愛そうですが、かわいそうな同僚も服飾の可能性はありそうだし。

    中盤以降には、ゴードのことがかっこいいと思ってしまったので、ゲスなことはしないだろうなと思っています。
    なので後半の解釈は完全に同意です。

    • hinataka hinataka より:

      >ゴードがビデオメッセージを送ったことで、苦しむのはゴードただ1人になっている
      >ここ苦しむのはサイモンですかね

      間違えました!修正します。
      コイについてもご意見感謝です!

      >傷つくのはクズ野郎一人ってあたりが最高な作品だと想いました。
      本当!世の中のいじめられっ子の溜飲が下がったよ!

  2. ピヨピヨ より:

    ヒナタカさんのツイッターで好評価だったのでインフェルノは後日にして、今日見に行きましたよー。
    いやー、ロビンのパートでガリガリ精神がすり減りました。家に侵入されるっていう恐怖は身近なことなんで自分目線でみてしまいましたし、犬のオチは予測できていたけど心臓バクバクしてました。

    ゴードンは最初の服屋でボケて画面の端をチラチラする時点でホラー感溢れてるやつだなぁと思ってましたし、ロビンも目が大きくて、肌が白かったので『シャイニング』の奥さんに似てるなぁなんて思いながら見てたんで、最初からホラー映画として見てました。なんで1、2、3の小包を開けるシーンなんてすごい良かったですよ。
    ただ、大音量の『地獄の黙示録』で興奮がピークに達してたのに猿のお面がブルーノマーズのPV思い出してしまって、全然怖くねえなと素に戻ってしまったのが残念でした。

    サイモンは自業自得だなぁというのが全体の感想です。

  3. 蝮のゼンゾウ より:

    これは良作でしたね!胸糞映画かと思いきや、こんなにスカッとさせられる映画とは思いませんでしたw

    >受け入れるわけねえだろ!
    確かにw謝罪を受け入れられずに大暴れって無茶苦茶で爆笑してしまいましたw
    ジェイソン・ベイトマンの化けの皮がどんどん剝がれていくのが最高でしたね。

    ジョエル・エドガートンは大変な才人ですよね。
    ガラス張りの新居の無防備な感じとか、襲う側の視点に立った観客を共犯者にさせるカメラワークとか、ゴードのぎこちない距離の詰め方とか、
    外側からも物語の内側からも映画を支配していて、初監督とは思えない手腕でした。
    今後俳優出身の映画監督のデヴィッド・フィンチャー的な立ち位置を確立していきそうで注目です。

  4. ラリーB より:

    昨日見てきました。いや何ですかこの映画、無茶苦茶痛快じゃないですか!
    完全に後味悪いスリラーだと思ってたんで、良い意味で予告に騙されました。

    まず主人公のサイモンですが、1ヲクトも共感できない最低最悪のド畜生でマジで見ていて腹が立ちましたw
    超然的な悪党ではなく何処にでもいる一番虫酸が走るタイプの小悪党(僕も現実で何人か思い当たります…w)で
    前半はコイツの人間的に腐りきった部分を余すとこなく見せ付けられました。
    本当に本当に…こんな輩が現実では上で一番のさばるタイプなので、ぶっちゃけ心底コイツに対して憎悪を抱きました。
    だからこそ終盤の奴が吐きまくった嘘そのものによって破滅していく無様な姿を見て
    見終わった後の何とも言えないカタルシスが半端なかったです!

    ジョエル・エドガートン氏演じるゴードも、一見あからさまな狂気的演技を見せておいて
    実は劇中誰よりも人間らしかったのも好感持てました。
    彼を見るとどうしても「オールドボーイ」のイ・ウジンを思い出してしまいますが
    彼のように悲劇的な最期を迎えるのではなく、復讐を遂げた後も静かに人生を生きていくあの姿も何とも言えない感じがありました。
    勿論中盤のビックリ箱演出には2回ほどビビりましたし、あの復讐方法も「ねちっこいなぁ~w」とも思ったんですけどね。
    でも僕の中であの復讐が不思議と痛快極まりなかったのは、あらゆる人間を騙しのうのうと生きてきたク○野郎に
    一生残るような心の傷を「やったかもしれないしやってないかもしれない」くらいの想像の余地が残る感じにしたのがまた上手いなあと思いましたし
    妻のロビンがあの後どう決断を下すのかも、色々妄想できて楽しい映画だなあ…と感じました。

    という訳で今年有数にメチャメチャスカッとする映画でした。最初は予告見て「見ようかどうしよう」と迷ってたんですが、見て大正解でした!

  5. たいち より:

    2回観て、気づきました。

    1回観た段階では気付かず、ゴードが彼女を襲う行為までは及ばなかったのだろうと考えた。

    しかし、もう一度観て、気づいてしまった。
    子供が、どちらの子かは不明だとしても、ゴードは行為に及んでいる。

    それがわかるのは、このシーン。

  6. たいち より:

    物語の中盤、「過去のことは水に流す」と書かれた手紙に対して、夫婦の話がされる場面から観ると分かる。サイモンが「時の流れが解決してくれる」とロビンに言い聞かせた直後、映像と男性の語りのみで時間の経過を表す場面が続くが、そのサイモンに思える語りは実は、、、ゴードのものであると。

    語りの中にある「奴は必要ない」という言葉、それこそがゴードの語りであるという証拠。

    ゴードはもともと必要とされていないのだから、わざわざ「必要ない」と語る必要がない。つまり、これは、「サイモンは必要ない」という意味なのだ。
    「二人の生活」「新しい生活」という言葉
    そして、、、「子供を作ろう」に行き着く。

    ここで興味深いのは、いじめっ子への仕返しばかりでなく、弱いロビンの人間的成長を見届けたいとゴードが考えていることだ。

    昔起きた不幸な出来事は、いじめっ子だけの問題ではなく、弱虫だった自分自身にも、反省があったことを表している。

    単なる仕返し物語ではないところが、この作品の奥深さだろう。

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著者

ヒナタカ

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