『ザ・サークル』激おこした理由を論理的にまとめます(酷評ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『ザ・サークル』激おこした理由を論理的にまとめます(酷評ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はザ・サークルです。

個人的お気に入り度:3/10

一言感想:主人公は何がしたいんだ……

あらすじ

念願の会社に就職したら、世界中から24時間観られることになりました。

※以下、メタメタに酷評しているので、この映画が好きな方にはごめんなさい。

SNSの危険性を描いた、同名ベストセラー小説の映画化作品です。

近年、SNSを題材とした映画は増えていますね。
フェイスブックの創始者であるマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』は言わずもがな、今年公開された『NERVE ナーヴ』も良作でしたし、日本でも『白ゆき姫殺人事件』もありました。

本作『ザ・サークル』で描かれているのは、簡単に言えば、個人の生活のことをなんでもかんでもオープンにしすぎて、「いや、それ、プライバシーなさすぎじゃね?」という状況になってしまったことへの批判です。

この設定で思い出したのが、行き過ぎた管理社会を描いた『ハーモニー』ですね。

『ザ・サークル』の年代設定は現代とほぼ変わらず、『ハーモニー』のようなディストピア世界の一歩手前に踏みとどまっているというのもポイントです。
いわば、これは「過度な管理世界の始まり」の物語、そこを重点的に描けばなかなか風刺の効いた面白い映画になりそうですよね。なると思っていたんだよ。

結論から申し上げれば、本作はどうあっても出来が悪く、オススメはできないです。
IMDbで5.3点で、Rotten Tomatoesで16%という酷評ぶりも大納得。ここでは具体的にどこがダメなのかを書いていきましょう。

主人公に感情移入できない!

えーと、本作の主人公は念願かなって世界で一番有名なSNSの企業に就職するんですね。
そして、いつしか24時間世界中に見られてしまうというサービスの「第1号」になり、スター的な存在になるんです。
問題は、何で主人公がそれを良しとするのかわからないんですよ。
この人、初めから行き過ぎたSNSでの管理を求める会社に「え、あの、それはちょっと〜」みたいな態度でいたのに……。

いやね、作中で1つ、とある大きな出来事が起こるので、それで考え方が変わった、というようにも見えなくもないんですよ。(この出来事自体も珍奇でどうかと思うんだけど)

でもね、彼女はそもそも特に野心家であるとか、出世を望んでいるとか、そういうタイプにも見えません。
主人公の父親がMS(多発性硬化症)を発症しているという設定がありますが、別にお金に困っているような描写もありませんし……(せいぜい「両親が良い会社に入ってよかったね」と言うくらい)。

その主人公の心変わりを100歩譲って許したとしても、その後の行動は正直激おこレベルで腹が立ちました
「主人公にまったく感情移入できない」「カタルシスがない」理由を論理的にダメ出しできる時点で、どうしようもありません。

批判にもなっていないよ!

前述した通り、本作で批判されているのは「オープンにしすぎてプライバシーがなくなったSNSの危険性」なのですが、その結論と問題解決があまりにも的外れで、こちらにも激おこでした。
詳しく書くとネタバレになるので↓に書きますが、こんな脚本でOKを出すのはとても信じられないよ……(原作者が脚本に参加しているのに)

インターネットやSNSの問題は多岐に渡っており、一元化して語ることや、批判そのものが難しいのはわかるのですが、これでは結末をぶん投げて適当に処理したようにしか思えません。
……あれ?そういえば日本でも君何とかさんが監督したグッド何とかという映画がそんなんだった気が……。

また、そもそも劇中の会社のSNSが、(発表されているものの時点で)誰の目にも明らかなレベルで問題があるのに、それに対する反論や指摘がほぼない、というのもキツいですね。(主人公が微妙な表情をしたり、社員の1人が秘密裏に会社の問題を指摘しているけど)
「どう考えても社会的にアウトじゃ?」という発表でさえも、社員たちが「ヒュー!」「パチパチ」「ワハハハハ!」と全肯定しまくるので、ヤバい宗教の集会に入りこんだような居心地の悪さを感じました(どちらかと言うと悪い意味で)。

SNSおよびコミュニケーションに追い詰められていく様、そこからの解決方法の描き方は『リップヴァンウィンクルの花嫁』のほうが500倍誠実だと思いますよ。

良かったところをまとめよう

いろいろ文句を言いましたが、ティム・バートン作品の常連であるダニー・エルフマンの音楽がオシャレで、画や編集も観やすく仕上がっているので、映画全体のルックは悪くない、いやむしろかなり良いものになっています。

特にエンドロールの演出は良かったですね(結末がアレすぎて演出を楽しむどころじゃなかったけど)。

中盤までの良い意味での「主人公が洗脳されそうな気持ち悪さ」は上手く描けていました。

役者では、主人公の親友を演じたカレン・ギランの存在感が格別でした。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』2作のネビュラ役でおなじみの彼女が、その「疲弊しきった表情」1つでガッツリと心を掴ませてくれます。

その他、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガも重要な役を演じています。
ベテラン俳優のビル・パクストンとグレン・ヘドリーの遺作でもあるので、その最後の姿を観たい、という方にもおすすめできるのかもしれません。

主演のエマ・ワトソンの上手さは言わずもがな。若くしてキャリアを積み上げたからこその存在感はもちろん、劇中で「スター」となる役に、彼女はぴったりでした。
トム・ハンクスも極端な役ではないですが(だからでこそ)、妙齢のCEOの男性にハマっています。

……うーん、そういう感じに役者を褒めないと、なかなか良いところを見つけられないなあ……。

個人的には、『ザ・サークル』のおかげで、はっきりと「嫌いな考え方」「嫌いな話運び」がわかったので、ある意味では観て良かったです(たぶん)。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

選挙のためにSNSの加入を義務付ける!とほざく主人公

えーと、主人公の趣味は1人でボートに乗って海に佇むことなのですが、同僚からは「おいおい?どうしてそれをSNSでシェアしないんだい?」と言われます。ウザいことこのうえないですね。

それはいいんだけど……この後に主人公は海で大型船にぶつかって転覆、サークル社がこっそり置いていた(※無許可)のカメラで海を監視していたおかげで、彼女は救出されます。
そして彼女は「24時間監視されてもいいわ!」と宣言、会社の「顔」として、生活の全てを一般人にさらけ出すのです。

……まあいいよ、命を救われたんだから、会社に恩返しをしたいから、新しいサービスの被験者になってもいいというのはわかるよ。
でもな、その後に主人公が会議に出席して、「選挙の投票のためにサークル(SNS)の加入を義務付けるべきだわ!世界中で敢行すべきよ!」と言うのは1ミリも納得できないよ。
彼女は(両親も含めて)恥ずかしい姿を見られまくっているのに、なぜそう思えるんだ……。

誰も悪くないわけないだろ!

終盤、主人公はサークル社の監視システムを使って、公の発表の場で犯罪者を探し出し、リアルタイムで一般人に捕まえさせようとします
いやいや、(下手したら反撃されて殺されるかもしれない)危険な犯罪者を、一般人を使って逮捕しようとするなよ!と思いますが、まあそれは10000歩譲って許しましょう。

で……その後に主人公は、元友人であり会社を辞めたマーサーもSNSから見つけ出すのですが、ドローンやバイクで追いかけ回したせいで、マーサーは事故で死んでしまうんですね。

なるほど、これはダイアナ妃の死亡事故を思い起こさせますね。
きっと、サークル社が責任を問われ、遺族から訴訟を起こされ倒産、もしくは株価が大暴落だな、と思っていたら、そんなことはなく、あまつさえネットには「誰のせいでもない、哀しい事故だ」などと書かれました

随分とネットの方々はお優しいですね!

おいおい、現実でこんなことがあったら会社が大炎上間違い無しだろ!
人死にが出ているのに、なんで責任の所在を求めねえんだよ!ものすごい人命軽視じゃねえか!

で、主人公はショックで1週間寝込んでいたのですが、仕事に誘ってくれた親友が原っぱでデトックスされたことに触発され、会社に戻ろうとします。その時に放った言葉が「サークル(SNS)に罪はない、システムやツールが悪いのよ」

どう考えても会社とお前が悪いよ!

1億歩譲って、主人公はマーサーをSNSで探すことに一時は反対していたし、事故直前に必死で「止まって!」と訴えていたからと許そうとしても……会社のCEOが彼女に「君のポジションはなんでもいいよ、なんなら陶芸をしていても良いよ」と言うのには心底腹が立ちました。

何も解決していねえ!

映画のラストは、主人公が公然の場で、会社が集めた個人データを秘密裏に取引をしていたことを暴露、SNSでCEOのプライバシーを無くさせます。
主人公は会場の扉をバンっと開けて、外の光に向かって「未来は待ってくれないわ!」とほざいて会社を去りました。

それだけでもムカつくのですが、最後に主人公は(マーサーの命を奪ったはずの)ドローンに向かって「ハロー」と言い、画面を世界中のライブ映像が埋め尽くしました

結局プライバシーのない管理社会になるのかよ!
サークル社は潰れたの?主人公は何かの刑事責任を負ったの?
それを描かないのは1兆歩譲って許すとしても、結局批判したはずの世界に逆戻りって、この映画は何がしたいんだよ!

使い方しだい

何かの犯罪が起こった時、マンガやアニメやSNSなどが槍玉に上がることはよくあります。
少し前ですが、『ポケモンGO』を運転中に遊んでいたために、事故が起きるという痛ましい出来事もありました。
これは、そのツールがどうこうではなく、「使う者」の問題であると思います。
正しく使えば、それは楽しい娯楽にすぎないのですから。

で……本作『ザ・サークル』で起こった事故は、面白半分で人を追いかけ回す発表を公で行って、死亡事故を起こしてしまったという点で、明らかにツールではなく会社に責任があることなんですよ。
それをウヤムヤにして、「やっぱり過度の管理社会はよくないよね」くらいで終わっている本作は何の問題提起にもなっていないではないですか!

えーと……本作で得た教訓?
うん、まあ、SNSで過度にプライバシーをさらすことはやめておきます(投げやり)

※原作小説との違いなどがまとめられたおすすめの記事↓
【ネタバレ有】映画「ザ・サークル」 感想・レビューと10の疑問点を徹底解説!/今ここで進行中のディストピア的社会を描いた風刺映画! – あいむあらいぶ

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  1. くめめん より:

    ヒナタカさん、こんにちは。
    私はそもそもこの映画は予告の雰囲気が好きだなーくらいの興味で見ていたのと初めて行く映画館だったからか興奮しそこまで怒りがわきませんでした。
    が、やっぱり上手くないなぁというのはあって。
    SNSの問題点の話なのにほぼ会社のみの舞台でスケールがどうも小さく見えてしまったり。
    主人公をサークル社に誘う友人が議員について上の人に聞いたら仕事が増えた的なセリフを言っていたけれどその友人がどこまで突っ込んだのかわからない。
    そして何より、マーサーの作品が挙げられた時は鹿を殺してるだなんだ文句言っていたのに、
    マーサーの死については何一つ文句を言わないこと。もういっそ、サークル社についての文句はつぶやけません的なルールがある方がこの会社やばいわってなるし良かったかも。
    まーさーのお
    ネット使う人は騒ぎに便乗して倫理感をなくすよねーって感じの映画で誰も守ってくれないと似た的外れな社会批判を感じました。

    • くめめん より:

      すみません、
      途中で送ってしまいました。
      マーサーの親とか何も言わないんかい、ヒロインに罵声でも浴びせてやれって思いました

  2. 蝮のゼンゾウ より:

    ヒナタカさん、こんにちわ。
    自分もルックが良い感じだったのとエマ・ワトソンが好きなので観ましたが、そもそも作り手の方々がネットに対してどのような問題意識を持っているのか曖昧というか不明確なので、結局何が言いたい作品なのかよくわからない作品になってましたよね。

    テーマの下地がゆるゆるなので登場人物の掘り下げ方も不十分なところが多く、無駄が多い作品だなぁと思いました。

    >役者では、主人公の親友を演じたカレン・ギランの存在感が格別でした。
    彼女の演技は良かったですよね。ただ主人公が増長していくに従ってアニーが嫉妬心のようなものを膨らませていくのかと思いきや、単なる過労による体調不良だったという展開は「なんじゃそりゃ」と思いましたw
    SNS社会における人気者に対する嫉妬みたいなものを描くためのキャラクターじゃないのなら、彼女は何のためにいるのかとw

    >その他、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガも重要な役を演じています。
    ジョン・ボイエガは流石の存在感でしたね。
    ただこのキャラも冷静に考えれば何もしてないですよねw 何かレジスタンス的な雰囲気はありましたけど終盤までは腕組んで傍観してるだけで、持て余してる感が否めなかったです。

    その他のキャラの描き方もすごい中途半端というか不十分だと思いました。

    トム・ハンクス演じるイーモンはユーザーのプライバシーを金に変える悪役のような描かれ方をしており確かにそうなんだろうけど、主人公の両親を保険に入れてあげたりと必ずしも悪と断じることも出来ず、結果彼に引導を渡すラストはカタルシスが少ないと思いました。

    パットン・オズワルド演じるトムの存在も謎だし無駄だと思います。この内容で悪役をわざわざ二人に分ける必要は感じませんでしたし、一人にしたほうが対立構造が明確になったはずです。せっかく好きな役者さんなのに無駄遣いしてるなと思いました。

    >マーサーは事故で死んでしまうんですね。
    マーサー死亡の件に関してはヒナタカさんのご意見に賛成です。ネットの声というものがどういうものか充分に考証できていない一元的な描かれ方でしたね。

    そもそも「監視社会の行きすぎで自分の大切な人に被害が及び反省し始める」という展開をやるなら、死ぬのはマーサーでは役不足だと思います。
    主人公にとってマーサーはどういう人物だったのか、彼氏なのか元カレなのか親友なのか、もっと主人公にとって大切な人物であるということを描いている前提描写が少ないので、「取返しのつかないことになった」感が出ず、盛り上がりに欠けるんですよね。
    これが死んでしまうのはマーサーではなく主人公の両親だったら、もっと感情的追い込みが激しくなって盛り上がったのかなとも思いました。

    >中盤までの良い意味での「主人公が洗脳されそうな気持ち悪さ」は上手く描けていました。
    色々と問題が多いというか下手なところが多い今作ですが、自分は中盤までの「『任意』というプラカードを掲げながら半ばコミュニティへの参加を強制してくる人々の善意の気持ち悪さ」の演出は悪くないと思っていて、ヒナタカさんほど激怒していないのも事実です。
    特に先輩社員が笑顔で「おいおい?どうしてそれをSNSでシェアしないんだい?」とほざくシーンは、自分も同じような経験をしたことがあって、あの不気味さと嫌悪感はリアリティがありました。

    テーマが「監視社会のヤバさ」みたいな漠然としたところにあり人間の描き方が定まっていない今作ですが、SNSの使用が半ば強制される雰囲気が蔓延している現代特有の不気味さみたいなところにテーマを絞って描いてくれればもっと面白くなるポテンシャルを秘めていた作品なのかな、とも思いました。

  3. hinataka hinataka より:

    くめめんさん、蝮のゼンゾウさん、コメントありがとうございます。
    お二人は激怒するほどでもないということなので、自分は心が狭いなあ……と思いました汗

    >誰も守ってくれないと似た的外れな社会批判
    もう本当に…‥君塚良一先生がハリウッドに進出したのかと……。

    >トム・ハンクス演じるイーモンはユーザーのプライバシーを金に変える悪役のような描かれ方をしており確かにそうなんだろうけど、主人公の両親を保険に入れてあげたりと必ずしも悪と断じることも出来ず、結果彼に引導を渡すラストはカタルシスが少ないと思いました。
    これ!本当にそう。そんなに悪い人に見えないんですよね。

    >そもそも「監視社会の行きすぎで自分の大切な人に被害が及び反省し始める」という展開をやるなら、死ぬのはマーサーでは役不足だと思います。主人公にとってマーサーはどういう人物だったのか、彼氏なのか元カレなのか親友なのか、もっと主人公にとって大切な人物であるということを描いている前提描写が少ないので、「取返しのつかないことになった」感が出ず、盛り上がりに欠けるんですよね。
    これも!もう!本当にそう!彼に関しては描写不足なんてもんじゃないですね。

    >特に先輩社員が笑顔で「おいおい?どうしてそれをSNSでシェアしないんだい?」とほざくシーンは、自分も同じような経験をしたことがあって、あの不気味さと嫌悪感はリアリティがありました。
    ひえええ……リアルに怖いですね……。このあたりの演出は自分も好きなので、やっぱりもったいないなーと。

  4. hinataka hinataka より:

    「激怒」じゃなくて、タイトルと本文をしれっと「激おこ」に変えておこう……(日和った)

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ヒナタカ

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