
映画『ガール・オン・ザ・トレイン』強固な意思を持って(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ガール・オン・ザ・トレイン』です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:女性を苦しめるけど、女性にやさしい映画だった
あらすじ
夫のトム(ジャスティン・セロー)と離婚し、傷心の日々を送るレイチェル(エミリー・ブラント)の唯一の慰めは、通勤電車の窓から見える家の人々について想像することだった。
一方、トムの今の妻となっているアナ(レベッカ・ファーガソン)は、ベビーシッターであるメガン(ヘイリー・ベネット)と仲良く過ごしていたが……。
『ウィンターズ・ボーン』『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』のテイト・テイラー監督の最新作にして、同名のベストセラーを原作とした映画です。
日本版の公式サイトでは、不倫現場を目撃してしまう主人公の1人称で物語が進むような紹介がされていますが、実際はちょっとその印象とは違います。
本編は3者の視点が入れ替わる(主人公が3人いる)構成になっていると思ってさしつかえありません。
しかも、劇中ではしょっちゅう時間軸が前後します(ただし、「◯か月前」などというテロップは入る)
物語自体はそこまで難解ではありませが、構成はややトリッキー。登場人物関係を把握していないと、ついていきにくい内容と言っていいでしょう。
何気ないセリフが重要になってくるところもあるので、体調の良いときに、脳をしっかり働かせながら観てみることをおすすめします。
主要登場人物の紹介
簡単に主要な登場人物を紹介していみます。
【登場人物:女性】
- レイチェル……夫のトムと別れ、傷心のままでいる女性。列車に乗ってる時「理想の妻」の浮気現場を目撃してしまう。
- アナ……今のトムの妻。たびたび家に来ているレイチェルに恐怖心を持っている。
- メガン……アナのベビーシッター。レイチェルが「理想の妻」と思っていた人物。見た目がアナに似ている。
アナとメガンは容姿がよく似ていますが、髪型に違いがあるので、それで区別してみれば混乱することはないでしょう。
※以下が「アナ」
※以下が「メガン」
【登場人物:男性】
- トム……アナの今の夫。アナと同じく、元妻のレイチェルを遠ざけようとしている。
- スコット……メガンの夫。レイチェルは彼にアナの浮気を知らせようとする。
- カマル・アブディク……精神科医。メガンの担当をしていた。
- マックス……メガンが17歳だったときの兄の友人。ほぼ名前しか登場しない。
これだけ把握していたら問題ないでしょう。
それ以外では、ほぼ予備知識は要りません。
「何が起こるのか」「誰が事件を起こしたのか」をじっくりと考えてみることをおすすめします。
不倫をめぐる物語
本作の物語の根底にあるのは「不倫」という許されざる行為です。
主人公は夫に不倫をされたうえに捨てられたしまった、同情するべき女性です。
その彼女が、列車に乗った時に、自身が思う「理想の夫婦」の不倫を目撃してしまうことから、物語が始まります。
彼女は自分の意見を明確に述べようとしますが、アルコール中毒者でもあるため、なかなか信用を得られません。
あとはもう、ネタバレなしではプロットは紹介できません。
誰が嘘をついているのか、どの意見が正しいのか、たっぷりと「推理」してみると、よりおもしろく観られるでしょう。
フェミニズムに溢れている!
同監督の『ウィンターズ・ボーン』と『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』は、閉鎖的な場所での悪しき慣習や偏見が描かれた作品でした。
本作『ガール・オン・ザ・トレイン』でも同じように、(原作者が異なるにもかかわらず)苦しむ女性へのあたたかな姿勢が見えます。
女性への酷い仕打ちを描きつつも、その苦しみがあってこその「救い」を描くのは、テイラー監督の作家性なのでしょうね。
エミリー・ブラントの体当たり演技に注目!
本作で何よりも賞賛すべきは、主演のエミリー・ブラントの熱演っぷりですね。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では男勝りな女戦士を演じていましたが、今回は30代前半とは思えないほどに老け込み、憔悴しきった役柄になっています。
この主人公が信用たる存在か、はたまたとんでもない女なのか、と疑心暗鬼になることがこの物語のキモ。
このエミリーの演技もあいまって、いい意味で観客の心を翻弄してくれるでしょう。
カップルにはおすすめしません!
難点は、前後する時系列の描き方のいくつかはわかりにくさを増大させているだけ、と感じてしまったことでしょうか。
ミステリーとしては、あまりスマートではないというのが正直なところです。
また、全体のトーンがどんよりと重っ苦しく、なおかつ「不倫」を描いた物語なので、デートには激しくおすすめしません。本音を言えばぜひ恋人同士で観てイヤな気分になってほしいけどな。
性的な話題がとても多く、PG12指定は妥当。子どもも観ないほうがいいでしょう。
これはどちらかと言えば、オトナが1人で観て、これからのパートナーとの関係や人生のあり方を見つめ直すというタイプの映画です。
「どんでんがえしの衝撃!」といったことではなく、人としての生き方を描いたドラマを期待して観るのがよいでしょう。
劇場は全国で15館とわずかですが、イヤ~な気分になれるミステリー「イヤミス」が好きな方も、ぜひ。
<劇場情報>
以下はネタバレです。鑑賞後にご覧ください。今回はいきなりオチに触れています!↓
(C)Universal Pictures

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初めまして。
本日本作を観てきてレビューを検索してこちらのブログを拝読致しました。
細かいことで恐縮ですが、アナの娘の名前はイーヴィ(Evie)でメガンの娘はエリザベスで呼び名がリビー(Libby)なので違う名前です。ここで同じ名前だとさすがにメガンはアナの元で働けなかったのではないでしょうか。
ありがとうございます!こちら修正させていただきます。