『ターミネーター ニュー・フェイト』の“百合映画”という呼称について思うこと[ネタバレなし解説+ネタバレ感想]

『ターミネーター ニュー・フェイト』の“百合映画”という呼称について思うこと[ネタバレなし解説+ネタバレ感想]

今日の映画感想はターミネーター:ニュー・フェイトです。

個人的評価:7/10

一言感想:ロマンシス要素も素晴らしい映画です!

あらすじ

超強い女性たちとシュワちゃんが1人の女性を守ります。

本作の大きなネタバレなしの論点は、6500文字以上かけて以下にまとめました。ぜひお読みください↓
【解説】映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』賛否両論の理由を徹底考察 | CHINTAI情報局

いやね、今回の『ニュー・フェイト』における女性たちの関係性は本当に素晴らしいと思うんですよ。
名作『ターミネーター2』を地上波で再見して改めて思ったのですが、やはりこのシリーズは「追われる者たちの共同戦線と関係性」の面白さがキモ。
『2』はもう少年とカッコいいお母さんとクールで強いアンドロイドというのが最高だったわけですが、今回のニュー・フェイトも決して負けてないと思うんですよね。

さてさて、そんなわけで個人的には本作を“百合映画”として語っても良いとは思うのですが、その呼称に難色を示す方がいるというのも事実。
ネタバレでその尊さを記す前に、ちょっとそのことについて語っておきましょう。

なぜ“百合映画”という呼称に難色を示す方がいるのか?

なぜ”百合映画”という呼称に難色を示す方がいるのか?と言えば、その理由の筆頭は百合が同性愛的なニュアンスを多分に含んでいるからでしょう。
これは言葉の定義が広いので一概に言えることではないのですが…「恋愛や性愛に発展していないのに何でもかんでも百合って言うなや!」「親友程度の関係なのに大げさすぎる!」という意見ももっともです。

また、百合映画と呼ぶことで、かなり“そのジャンル”としてのレッテルを貼られてしまう、複雑な価値観や要素を含んでいる映画に対して“それだけ”の印象が強くなってしまうというのも、理解できます。
これは短い文言で表現するTwitterなどでは致し方がないとも思うのですが……

でも個人的には、女性同士の尊い関係性が大好きなので、作品内で何かの百合センサーが動けば「百合映画だー!」とめっちゃ言いたいんですよ。
いや、それこそが「そういうのをやめーや!」と言われる原因なんですけど……。

声優・悠木碧さんも葛藤していた

このジレンマについて、興味深いことがあります。
それは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』という京都アニメーションによる素晴らしいアニメ映画での舞台挨拶でのこと、大人気声優の悠木碧さんが「賛否両論、議論を呼ぶかも知れないが、言わずにいられない。百合ではない上質な何か、ブロマンスの女版がある。何か言葉を作って欲しい。尊い。」と語っているのです。


うん、悠木碧さんの「言ったら怒られるかもしれないけどそれでも言いたいんだよ!」と言う魂の叫びが内在されているように思えますね。

そう、ブロマンスはボーイズラブとは異なり、「男性同士の極めて近しい関係を指すが、性的な関わりのない親密さ」を指しています。
例えば、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの関係性が尊いことになっていた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を“ブロマンス”と語ることには概ねで抵抗がないでしょう。

しかしながら、そのブロマンスの女性版の言葉は定着していないのです。
おかげで、定義が広めかつ多分に同性愛のニュアンスを含む“百合”という言葉が積極的に用いられてしまっているため、難色を示してしまう人が多いというのは…致し方がないでしょう。

“ロマンシス”という呼称が定着してほしい

この問題を解決するには、悠木碧さんが言うようにブロマンスの女性版を早急に定着させるべきです。

その第一候補と言えるのが、まだまだごく一部でしか使われていない“ロマンシス”でしょう。
ブロマンスがbrother+romanceで、ロマンシスがromance+sisterと良い対比になっていますし、語呂もいい。

百合という呼称がしっくり来ないのであれば、ロマンシスで呼べばいい。
“○○映画”というレッテル貼りがNGということであれば、「この要素“も”好き」と言えばいい。

つまり『ターミネーター ニュー・フェイト』はロマンシス要素“も”素晴らしい映画ですよ!

『映画すみっコぐらし』でも同様の問題が…

余談ですが、以上の“大げさ”“誇張”で作品を表現することの是非は、『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』でも思っていたことです。
こちらは「アンパンマンを観に行ったら攻殻機動隊だったくらいの衝撃」や「実質Fate/EXTRA」や「パステルカラーのジョーカー」など、意外な有名作品に例える意見が続出し、それらはSNSで大いにバズって注目されました。

個人的にはそれ自体は別に悪いことではない、作品にとって一番よくないのは“知られないこと”であり、“注目される”のであれば、観るきっかけになればそれでいいじゃないか……ともすごく思うのですが……実際にその評判を聞いて観たからからは「そういうんじゃなかったし…」という意見も寄せられているんですよね。
しかし、やはり誇張した言動や意外性こそが話題を呼ぶというのも事実。ここにもジレンマがあります。

それはそれとして、『映画 すみっコぐらし』は本当に丁寧に作られた、素晴らしい作品でした。以下にもネタバレなしで熱弁しましたのでぜひどうぞ↓
「映画 すみっコぐらし」をただただ見てほしい その気持ちをここにしたためよう – ねとらぼ

『ニュー・フェイト』は吹き替え版もオススメ!なんだけど……

さてさて、『ニュー・フェイト』の2回目は吹替版で観てきました。
長身美女のグレース役に坂本真綾さん、守られる存在のダニー役に高垣彩陽さんと豪華配役で、その掛け合いはとても推せることになっているので、吹替で観ることももちろんオススメ……なんですが、若干気になることも…

それは、サラ・コナー役の戸田恵子さんの声がちょっと若過ぎなこと。他の女性ふたりと似た声質で少し聞き分けづらいですし、できればもっと年老いたカッコいい兵士感が欲しかったんですよ!
ベテランでもこういうことがあるんだな…と、正直キャスティングミス感が否めませんでした。もちろん演技は激ウマですし、すぐに慣れるんですけどね。

ここからは、2回目を観てさらに推すことができたロマンシス要素を少しだけ書き記しておきましょう。
ネタバレ全開ですので、本編を観てからお読みください↓



教育方針について言い合うママふたりと、そのふたりを大切に想っている娘

こちらの記事でも書きましたが、この物語は“擬似親子もの”、“娘の教育方針について言い合うママふたり”の話だとも思えるんですよね。

サラが冗談めかして「パパとママはお話があるの」とダニーに言っていたのは、明らかにそのくすぐりでしょう。
ダニーが銃の練習をしていて、グレースが姿勢などを懇切丁寧に教えるよりも、サラからの「今家族を殺された?どうする?」というスパルタ教育のほうが効果的だったというのも、象徴的ですね。

それでいて、ダニーがそのグレースとサラのふたりともを大切に想っているのが素晴らしいんだ。
序盤で弱っているグレースのためだったら薬局で銃を取り“犯罪者の仲間”になってしまうことも厭わず、中盤でヘリに向かってくるサラのためにグレースの言葉を翻して応戦するんですから。

サラが作戦として「ダニーをおとりにさせる」と言い、グレースが「そんなことさせない!」と反発するのもニヤニヤしてしまいました。
このふたりの教えを生かしたかのように、ラストバトルでダニーが(一瞬だけですが)敵ターミネーターに対して「こっちよ!」とおとりになっていたこと、(グレースの自己犠牲を経て)ターミネーターに自らの力で立ち向かう姿は、やはり感動があります。

グレースとダニーの関係

グレースは擬似的にダニーを娘のように見ていた……という点が推せるのはもちろんですが、未来では反対にダニーがグレースを救っていたというのもアツいですね。
彼女たちの関係は、母・娘が逆転している、どっちもどっちもがお互いを母・娘のように見ているかもしれない……こういうの好きです。

あと2回目を観ていて気づいたのですけど、ラストシーンで登場する(現在は)まだ子供であるグレースには、明らかに父と母だけでなく弟がいましたよね。
グレースも未来では弟を失っていたのでしょう……そんな彼女が、ダニーの目の前でその弟の生存を諦めさせる……というのは、どれほどの苦渋の選択だったのでしょうか。

あと好きであったのは、ダニーが父と弟の死を悼み、「お葬式もできないしお墓もたてられない」と言っていたこと。
女性たちがメインで活躍し、相対的にカール(シュワちゃん)以外の男キャラはモブキャラまたは早めに殺されてしまうことになってしまいましたが、その死をないがしろにしてないのも良かったです。

サラは自身をダニーに投影していた、そして女性が強くある物語

サラはグレースに「なぜダニーを守るの?」と聞かれ、「昔の私だからさ。最悪さ」と返していました。
そう言ったのは、『ターミネーター1』におけるサラが“後に英雄となるジョン・コーナーの母親”であり、ダニーがそれと同じ役割を担っているから……と思うところでしたが、終盤ではダニーの産む子供ではなく、ダニー自身が英雄になることが明らかになります。

サラは自虐的に“キリストを産む女性”である“聖母マリア”を引き合いに出し、ダニーにも「あいつら(マシンたち)が狙っているのはあんたの子宮さ」と言ってました。
それは女性が“子供を産む存在”として扱われてしまうことの皮肉・偏見へ向けての言葉にも思えてきます。
それに反するように、女性そのものが英雄となると示すことで、明らかに今回は“女性自身が強くある”というフェミニズム的メッセージが提示されているのです

そして、サラはダニーについて「彼女がジョンよ」と確信します。
カールは自身がジョンを殺してしまったことの贖罪のために戦い、「ジョンのために」という遺言を残す…。

ジョン・コナーは殺されたが、それを受け継ぐ存在がいることを確かめるんですよね。
それは血の繋がった存在でなくても、男性でなくてもいい。
これこそ、現代的な女性へのリスペクトそのものもメッセージ。それは大いに支持したいのです。

※本作についてはしのさんとも語り合っていました。こちらは14分ごろからネタバレ全開です。

(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film

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