『スプリット』ラストがなぜすごいのかを全力で解説する(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『スプリット』ラストがなぜすごいのかを全力で解説する(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はスプリットです。

個人的お気に入り度:7/10

一言感想:シャマラン監督のファンでよかった!

あらすじ

3人の女子高生が拉致監禁されて、23人の人格を持つヤバい男とバトります。

『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督最新作です。

本作はいろいろと語ることがあるんですが、とりあえずまだ観ていない方に、これだけは告げておきます。
ネタバレを踏む前に、さっさと観に行ったほうがいいと。

Twitterという便利ツールがある今こそ、この映画のネタバレに遭遇しやすいんですよ。
実際に「Twitterのおかげで(明確にネタバレ部分を言っていないくても)ラストがわかっちゃった」という人も多いんだよ!
しかも本作は、『パッセンジャー』並に「語るとどうしてもネタバレに触れてしまう」案件なんですよ!

「多重人格もの」である

さてさて、本作の物語に最も大きなファクターとして働いているのは「多重人格(解離性同一性障害)もの」であることです。
それを聞いて多くの方が思い出すのは、ダニエル・キイス著のノンフィクション「24人のビリー・ミリガン」でしょう。

1人の人間に女性や少年の人格が現れたりするのはファンタジーめいているようで、実際にあった症例というのですから、驚きです。
本作『スプリット』に登場する「ケヴィン」という名前は、実在するビリー・ミリガンの人格の1つだったそうですし、発想の根幹として彼の存在があったことはほぼ間違いでしょう。
(ちなみに、「24人のビリー・ミリガン」は「The Crowded Room」というタイトルでレオナルド・ディカプリオ主演の映画化が決まっています)

個人的に、この手の「多重人格もの」でおすすめしたいのは、小説の『ISOLA』ですね。

阪神大震災を入れ込んだプロット、人格それぞれの設定が上手く、最後まで一気に読ませる力がありました。
ちなみに『ISOLA』の映画版はみんなのシネマレビューのワーストランキングで現在26位という逸材なので、観なくてもいいような気がします。

その他、マンガ『幽☆遊☆白書』の仙水忍も似たような多重人格者でしたね。
こうした多重人格ものが好きな人に、本作『スプリット』は大いにおすすめできます。

マカヴォイ!マカヴォイ!マカヴォイ!

さてさて、本作で何よりも語っておかなければいけないのは、女子高生を拉致監禁するヤバい男を演じたジェームズ・マカヴォイの演技です。

彼が女性や9歳の子どもを演じているというだけでもすごいのですが、その人格が切り替わる瞬間までを表現しているのがマジパねえよ!(語彙力の低い表現)
本作は直接的な残酷描写がほぼないのでG(全年齢)指定ですが、あんまり小さい子が観ると一生もののトラウマができそうです。あの顔面だけで怖いもん……。

また、ヒロインを演じた新星アニヤ・テイラー=ジョイがこれまたいいんだ。
目の「離れ」っぷりがいい意味で現実離れしており、唯一無二な魅力がありますね。

シャマラン監督作品を予習しておくといいよ!

さてさて、本作はシャマラン監督の過去作を観てから映画館に足を運んだほうがいいかと思われます
その理由は、それぞれの映画に「作家性」がめっちゃ表れており、シャマラン監督の価値観や美学を知っておいたほうがより作品を楽しめるから。

簡単に、今までの監督作品の特徴(個人的な感想)をまとめておきましょう。

  • 翼のない天使(1998)
    個人的お気に入り度:6
    シャマラン監督のメジャーデビュー作。ひたすら子どもの視点に立った、サスペンス色のない人間ドラマだけど、監督が好きなものがとてもよくわかる良作。吹替版で主人公の少年を演じるのが高山みなみ(名探偵コナンの人)だったりするので、そちらで観るのもおすすめ
  • シックス・センス(1999)
    個人的お気に入り度:8
    ご存知、シャマラン監督の評価を一気に上げたスリラー。どんでん返し部分が売りだけど、暗めの画づくりやホラー演出も素晴らしかった。
  • アンブレイカブル(2000)
    個人的お気に入り度:7
    列車事故からただ1人だけ生還した男の謎を追う作品。良い意味でも悪い意味でも「そういう話だと思わなかった!」と思う方が多く、日本では評判はイマイチ。だけど個人的には大好きで、序盤の会話からグイグイ引き込まれた。
  • サイン(2002)
    個人的お気に入り度:8
    宇宙人の侵略を一家族の視点だけで描く”という内容。大作映画とは思えないほどの、“こじんまり”とした作風がむしろ魅力。
  • ヴィレッジ(2004)
    個人的お気に入り度:4
    閉ざされた森で暮らす盲目の少女を主人公とした作品。世間的な評価は良いけど、個人的には演出が退屈で、あまり好きにはなれず。
  • レディ・イン・ザ・ウォーター(2006)
    個人的お気に入り度:4
    アパートのみんなが「物語に沿って」美女を元いた場所に返してあげようとするファンタジーなのだけど、みんなが「無理やりに話に乗ってあげている感じ」がどうにも不自然。
  • ハプニング(2008)
    個人的お気に入り度:7
    冒頭からの連続自殺の「あっさりさ」が怖いパニックスリラー。中盤からはまさにシャマランならではの内省的な物語に。『スプリット』で重要な役を演じたベティ・バックリーはこちらにも出演している。
  • エアベンダー(2010)
    個人的お気に入り度:2
    擁護出来ないレベルでつまらなかった。「下手なアクション演出とはどういうものか」「どうやったらキャラに魅力がなくなるか」を学べる重要なサンプル。ラジー賞5部門受賞の実力は伊達じゃない。
  • アフター・アース(2013)
    個人的お気に入り度:6
    未来の地球の寒々しいビジュアルがなかなか。シャマラン監督節もしっかり健在だが、日本の宣伝では監督の名前が積極的に隠されたあげく、世間的に酷評だった。
  • ヴィジット(2015)
    個人的お気に入り度:7
    子どもたち2人によるPOV(主観視点)のホラー。シャマラン印のどんでんがえしが健在で、オチに至るまでに伏線が盛りだくさん。純粋な怖さではシャマラン監督随一かも。

この他、製作として関わっていた『デビル』もシャマラン監督らしさが出ていて面白かったですね(お気に入り度は6点くらい)。
内容はエレベーターに閉じ込められた男女が脱出を図るというシンプルなもので、『スプリット』と共通することが多かったりします。

「それなりにシャマラン監督の作品群を観ていたよ」という方も、「抜け」がある場合は、なるべく全作品を網羅しておいたほうがよいでしょう。
でも『アフター・アース』と『エアベンダー』と『レディ・イン・ザ・ウォーター』は観ていなくてもいいかな。あんまり面白くないし。

ちなみに個人的なシャマラン監督最高傑作は、世間的には(特に日本で)評判の悪い『サイン』です。

いや、だってクライマックスに爆笑しながら大感動できるんだもん。
シリアスな笑いが好きな人は絶対に観てください。後悔はさせませんよ!

※他の個人的に好きなどんでん返しの映画はこちらも参照↓
“映画でしかできないどんでん返し”は存在するのか? | シネマズ by 松竹

どんでん返しが気に入らない人も?

ちなみに、本作のどんでん返しの部分はそれなりに賛否両論ようです。
中には「どんでん返しと言えるレベルじゃなくて残念」という意見もあり……いやいや、それにはさすがに反論したい。個人的にはシャマラン監督作品の中でもっともシビれたどんでん返しでしたよ!

しかもそのラストは突飛なものではなく、存分に伏線が張られており、破綻していない、納得するしかないものなのです。
このアイデアを思いつき、実現したシャマランは掛け値なしに大天才ですよ!

思えば、シャマラン監督は『シックス・センス』のラストが大きな話題を呼び、それ以降の作品でもどんでん返しが期待されすぎて、そのどんでん返しがないと「なーんだ」と言われたり、「つまらん」と酷評されたりと、気の毒な方でもありました。

むしろシャマラン監督の作家性は「すべての事象に意味があるのかを摸索する」「B級的な素材(宇宙人やおとぎ話)と1つのテーマを組み合わせる」ことにあると思うので、どんでん返しばかりに期待するのも少々ズレがあるとも思うんですよね。いや、ファンとしてはどんでん返しにどうしても期待しちゃうけど。
※「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」を聞いてのことですが、シャマラン監督作品は「心に傷を負った者が何かの大きな問題に向き合って成長していく」というのも一貫していましたね。

で、本作は全シャマラー(※シャマラン監督のファン)が感涙できる、監督の集大成と呼べるすごいモノが待っているんですよ!
いいから、シャマラーやどんでん返し系の映画が好きな方は、さっさと観に行った!(2回目)

密室監禁ものとして物足りないかも

さてさて、これだけシャマラーとして大歓喜していますが……1つの映画として評価をすると、やや物足りなさも否めなかったりします。

その理由の1つが、「女子高生3人がどうやって多重人格者から逃げ出すか?」というメインのサスペンス部分が少々アイデア不足に感じること。
最近では『10クローバーフィールド・レーン』や『ドント・ブリーズ』などの、ドキドキハラハラが止まらない攻守が逆転するスリラーがあったので、それらに比べると少し退屈に感じてしまいました。

また、話運びそのものも、ヒロインの回想や、ヤバい男のカウンセリングの描写も並行して描かれるため、緊張感が途切れてしまうところもあります。
これは作品の性質上しかたがないものなので批判するのもナンセンスなのですが、やはり個人的には「その場所」だけを描くスリラーのほうが好みですね。

まあそんな不満は、シャマラン監督のこだわりのある美しい画作り、衝撃のラストですべてチャラにできるってもんです。
まあいいから、シャマラーやどんでん返し系の映画が好きな方は、さっさと観に行った!(3回目)

そうそう、本作はエンドロール後までしっかり観ることをおすすめします!

※本作は以下のキャッチコピーがふさわしいかと思われます。

以下は結末を含めてネタバレです。絶対に観る前は読まないで!鑑賞後にご覧ください↓

町山智浩はネタバレをしてしまったのか?

本作では、映画評論家の町山智浩さんがTwitterでネタバレをしてしまったということで、大いに批判を浴びていました。

これは「最大限に楽しむためにはシャマランの過去作を観ておいて!」という完全なる善意による提言であり、それほど激烈なネタバレというほどのものでもありません。
でも、これに対して「ネタバレだろ!」という論争が起こることがネタバレになってしまっているんですよね。
町山さんも、これに対して反論する方々も、悪意はまったくないと思うのですが……。

でも、「彼のある過去作品を観ていないとまったく意味がわからない」や、「その作品を特定するとネタバレになる」と言うこと自体、やはりこのラストを気づかせるもの、ネタバレになると言えるので、やはり配慮が必要だったと思います。これに「言わないでよ」と反論する方がいるのも無理はありません。
「『スプリット』の予習には『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』のうちどれかを観ていればいいよ」というだけでよかったのに……。

また、この作品を観た人すべてが「『スプリット』を観る前に『アンブレイカブル』を観ておいて!」と言いたいのに、言うとネタバレになってしまうというジレンマを抱えているんですよね。
これこそが、本作がネタバレをしやすい理由でもあるという……

個人的に本作のどんでん返しは、シャマラン監督作品を追い続けたファンだけが得られる「特権」だと思います。
その特権を台無しにしてしまうような行為は、ファンであればこそ、謹むべきでしょう。
(もちろん「新規のお客さんは切り捨てるのかよ!」という意見もありそうですが、遡って『アンブレイカブル』を観るのも、それはそれで面白そうですし)

……ていうか、シャマラン監督自身が思いっきりTwitterでつぶやいていて、そのほうが激烈なネタバレなんですよね。


「新しい映画は『アンブレイカブル』と『スプリット』の続編。3作目で2つの映画が激突するのは僕の夢だったんだ」
「ユニバーサル・ピクチャーズから『GLASS』が2019年1月18日に公開される。こんなの秘密にできないよ!」
うーん、本国の公開から時間が経ったからつぶやいたのはわかるけど、遅れて公開される日本のファンにも配慮をしておくれよ監督!

自分は、試写会で観た方の「シャマラン監督の過去作を全部観ておいたほうがいいよ」という提言、久保田和馬さんの記事で「『エアベンダー』と『アフターアース』を除いたシャマラン作品で、見逃しているものがあったら観ておいたほうが良い」の文言(この記事体はややネタバレ)を読んでいたのですが、配慮があった(それ以上のことを書いていなかった)のでこのラストをまったく予想することができませんでした。

ありがとう…本当にありがとう…。
皆さんも、『スプリット』をまだ観ていない誰かにおすすめするときは、ぜひご配慮のほどをお願いします。

さてさて、
以下からは『アンブレイカブル』の核心的なネタバレも含みます。アンブレイカブルを観ていない方は、先にそちらを観ることをおすすめします。

4年前に書いたブログでのレビュー↓
善と悪の存在意義を模索する映画「アンブレイカブル」ネタバレなし感想+作中の理論

野暮な不満点

初めに野暮とは思いつつも、不満点を挙げておきます。

ラストシーン、テレビで監禁事件を知ったおばちゃんが「15年前の事件と似ているわね」と話しているのですが、似ているか?
方や世界中で事故に見せかけた大量殺人を起こしていた男、方や女子高生を拉致監禁のうえ殺害した男で、規模も犯行内容もまったく違います。

『アンブレイカブル』において犯人と深く接していたダン(ブルース・ウィリス)が何かしらの関係を察するのであればともかく、普通のおばちゃんが「似ている」と気づくほどの関連性がないと思うのです。
このセリフに違和感がバリバリだったのが残念でした。
※以下のご意見をいただきました。
マスコミが派手な事件の犯人にニックネームを付けて呼んでいるところ(ガラス、群れ)に共通点があると僕は思いました。

また、殺されてしまった女子高生2人に対するフォローがほとんどなかったのが、悪い意味で後味が悪かったです。
この子たちは周囲に排他的だったケイシーにも積極的にかまってあげようとしていて、決して悪い子たちではなかったので……。
※以下の意見をいただきました。
殺された二人の女学生ですが、ケヴィンのカウンセリングの中に出てきた、胸を触らせた二人の女学生と言うのが彼女たちなのではないですかね。
そうなるとケヴィンにとっては無罪とは言えなくなると思います。

クロスオーバー

結論から申し上げましょう。本作『スプリット』のどんでん返しとは、以下2点に集約されます。

  1. 『スプリット』は『アンブレイカブル』と世界がリンクしていた!
  2. 『スプリット』はスーパー・ヴィラン(悪役)の誕生物語だった!

『スプリット』のラストに登場したダン(ブルース・ウィリス)は、言うまでもなく『アンブレイカブル』の主人公です。

そして、『スプリット』と『アンブレイカブル』は、シャマラン監督によるスーパーヒーローのクロスオーバー作品でもあるのです。

『アベンジャーズ』『ドクター・ストレンジ』などのマーベル・シネマティック・ユニバース、『バットマンvsスーパーマン』『ワンダーウーマン』などのDCエクステンデッド・ユニバース、と同等なものと言ったほうがわかりやすいですね。

そんな『スプリット』を、マーベル・シネマティック・ユニバースの1つである『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』と日本で同時公開させたのは、意図的なものでだと疑いたくなります。

ちなみに、公式サイトで結末部分を予想するイラスト投稿キャンペーンが行われていたのですが、ma2さんが7割型正解で驚きました。あんたすげえよ!↓
ma2が「スプリット」を大予想! – ETOPICA(エトピカ)

ポスターからあった『スプリット』と『アンブレイカブル』の関連

『スプリット』と『アンブレイカブル』がクロスオーバーするという伏線は、実はポスターの「ひび割れ」から仕込まれていたりします。

さすがに、このポスターだけで2つの世界がリンクするという事実に気づいた方はいないでしょうね。

カニエ・ウエストですら伏線

ケヴィンの中にいる9歳の人格・ヘドヴィグはカニエ・ウェストが好きであると言っていました。

実は、カニエ・ウエストの「Through the Wire」という曲にはこういう歌詞があります。
Unbreakable, what you thought, they’d call me Mr. Glass?
「アンブレイカブル(壊れない)、あんたがそう思っても、彼らは俺をミスター・グラスと呼ぶか?」

まさか、このカニエ・ウェストという名前が出ただけで、『アンブレイカブル』とのリンクを思いついた方はいないですよね(たぶん)。

音楽といえばもう1つ、『アンブレイカブル』のメインテーマ「Visions」がラストシーン(の直前)でかかっていたりもします。

この曲でアガッたシャマラーも多そうですね。

『アンブレイカブル』はスーパーヒーローのオリジンを描いた作品だった

本作『スプリット』がスーパーヒーローのクロスオーバー作品であると断言できる理由の1つは、世界がリンクしていることが判明した『アンブレイカブル』がそもそもスーパーヒーローものであることです。

『アンブレイカブル』において、列車事故でも死ななかった男・ダンは「不死身の肉体」「相手の意識を読み取る」という能力を持つ、人間の範疇を超えた存在であることが明らかになり、彼は人種差別主義者や強姦魔をこらしめる自警団として活躍するようになっていました。

彼がアメリカン・コミックのヒーローのような存在であることは、コミックの画商であった男・ミスター・グラス(サミュエル・L・ジャクソン)からも、たびたび語られていました。
『アンブレイカブル』はサスペンス・スリラーの体(てい)を取っていますが、実はダンというヒーロー誕生の「エピソード1」を描いた作品とも言えるのです。

余談ですが、『アンブレイカブル』のダンはディズニー社が版権を持っていたキャラだったため、その権利を買い取ってまでラストにブルース・ウィリスを出演させなければいけなかったそうです。幾らかかったんだろう。

『スプリット』はスーパー・ヴィランのオリジンを描いた作品だった

『スプリット』の主人公である多重人格者のケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)は、『アンブレイカブル』のダン(ヒーロー)に対抗する、スーパー・ヴィランに変貌したと言い切って良いでしょう。

なぜなら、ケヴィンの24人目の人格である「ビースト」が、ヒビの入った壁をよじ登り、ショットガンで撃たれても死なないという人間離れした力と肉体を手に入れたのですから。

リアリスティックなスリラーであれば「さすがにそれはやりすぎだろ!」とツッコミたくなるところですが、「超人」が出て来るスーパーヒーローものであれば納得せざるを得ないのです。
この「スリラーからスーパーヒーローものへと、映画のジャンルすら変わってしまう」ということが、ある意味で一番のどんでんがえしと言えるのではないでしょうか。

しかも、ジェームズ・マカヴォイは新しいのほうの『X-MEN』シリーズで、「プロフェッサーX」という善玉のほうのリーダーを演じていたりするんですよね。

※画像は『X-MEN アポカリプス』のポスターより。
ついでに、ケヴィンとプロフェッサーXはスキンヘッドであることが共通!まさか髪型までもが伏線だとは思わなかったよ!

さらに、ビーストという名前のミュータントがX-MENシリーズにいるんですよね(しかもめちゃくちゃ有名)。
これもまた『X-MEN』シリーズへの「くすぐり」になっているのです。いいのかこんなことして?

性的虐待

ヒロインのケイシーは、叔父に幼少期から性的虐待を受けていたことが明らかになります。
ケヴィンも、母親から恒常的に虐待を受け続けていたようでした。

解離性同一性障害が苦痛から逃れるための「手段」であることを知っていたり、この手のどんでん返し系のスリラーを観てきた映画ファンは、おそらくこう思ったことでしょう。
「ケイシーも多重人格者」ということがオチなんだろうと。

しかし、これも『アンブレイカブル』とのリンクを予想させないためのミスリーディングの1つだったのです。
しかも、単なるミスリーディングというだけでなく、ケイシーの「その後」を暗示させるものにもなっています(後述します)。

また、自分は「ほかの監禁された2人の女子高生もケイシーの人格なのでは?」と疑っていましたが、そういえば序盤のニュースからちゃんと「3人の女子高生が行方不明になった」と報道されていましたね。

また、ケイシーが他の2人に比べて「捕まって終わりよ」と脱走に消極的だったのは、自身がずっと性的虐待を受けてきて「男の力からは逃れられない」ことを知っていたからなんだろうな……。

デニスの目的

なぜケヴィンを含めた人格たちは、なぜ女子高生3人を拉致監禁し、その上「食べた」のでしょうか。
それは、「ビースト」というバケモノを誕生させるための、「儀式」だったのでしょう。

その「(純粋でない)女の子を食らったらビーストが誕生する」というのは、明確な理由がない、「思い込み」レベルのものです。
しかし、フレッチャー医師(ベティ・バックリー)は「人格により肉体にも差が出る」という発言をしており、その思い込みでバケモノが生まれるというのも恐ろしいものがあります。

潔癖症の人格・デニスが、彼らのリーダー格のバリーの「フリ」をしてフレッチャー医師のカウンセリングに応じていたのも、彼を覚醒させないままビーストを誕生させるためだったのでしょう。
バリーは、ビーストの誕生に否定的であり、ケイシーに殺してくれと頼んでいた、良識的な男だったのですから。
※ごめんなさい、以下のご指摘を受けました。こちらが正しいと思われます。
自分の記憶が正しければケイシーに殺してくれと頼んでいたのは元の人格のケヴィンだったような気がします。
その後慌ててジェイド、オーウェル、バリーが登場して、ケイシーに「俺が対処するから殺すな」的な事を言っていたので、照明を管理して世間に溶け込もうとしていた人格だったのではないでしょうか。
危険な思想を持っていたデニス、パトリシアに照明を与えていなかったため彼らと軋轢を生み、照明を奪えるヘドウィグを仲間に取り込まれたため力を失ってしまったと勝手に解釈しています。
オリジナルであるケヴィンも自殺願望があったため、3年近く照明を与えられていなかったのではないでしょうか。

ちなみに、デニスが最後にフレッチャー医師に会うとき、デニスはドアを開けながら、黄色いハンカチをポケットに隠していたそうです。
「潔癖症ではない」と偽って、騙そうとしていたたことにぞっとします。

決定的な伏線

明確な『アンブレイカブル』とのリンクと言えるのは、ケヴィンが地下鉄の駅に行って、線路のすぐそばに花を手向けることです。
ここで「これって『アンブレイカブル』じゃね?」と気づいたシャマラーは偉い!

言うまでもなく、『アンブレイカブル』の冒頭では凄惨な列車事故が起きており、ダンを除いた乗客全員が死亡してしまっています。
作中では明確に言及されていなかったと思うのですが、この列車事故でケヴィンの父が亡くなってしまったという設定もあるのだとか。
ケヴィンは、父にために花を手向けたのですね。

そして、ビーストはまさに地下鉄の中で誕生します。
『アンブレイカブル』のダンが、地下鉄事故に巻き込まれ、ヒーローに生まれ変わったように……。

心に傷を抱えたものは……

フレッチャー医師はこう発言していました。
「心に傷を負った者が、私たちより優れていたとしたら?」

これはフレッチャー医師が、ケヴィンのことを省みたセリフなのですが、『アンブレイカブル』のミスター・グラスがやったことへの「くすぐり」のように思えます。
ミスター・グラスは幼い頃から骨折を繰り返していた「心に傷を負った者」なのですが……「自分に相対する強靭な肉体を持つヒーロー」を探すため、大量殺人を犯してしまっていました。

心に傷を持った者は、その弱さを攻撃に変えてしまうこともあるのです。

ケイシーはどうなるか?

後味が悪いのは、ケイシーがまた「保護者」である叔父の元に戻らねばならなくなる、ということを示唆するラストです。
叔父はケイシーに性的虐待をしていた張本人。そこから「逃げられそうもない」のですから。

この結末から連想するのは、以下のどちらかの未来です。

  1. ケイシーは叔父の元から逃げ出して、スーパー・ヒーローのヒロインとして生きる
  2. ケイシーは叔父を殺してしまい、スーパー・ヴィランとなる

ケヴィンは、ケイシーのお腹の傷を見て、「君は純粋だ」と、まるで「仲間」のような物言いをしていました。
それから連想するのは、やはり2.の未来な気がします。

また、ケイシーが警察官から「保護者が来ている」と言われたシーンの後、カメラがゆっくりと上がり、「ライオンの像」が映っていました。
ケイシーが、ライオンでイメージされる「孤高」の「百獣の王」のような存在だとするならば、1.の未来も予想したくなりますが……。

また、フレッチャー医師は「私が死んだらボルチモアの同業者に引き継ぐよう頼んである」とケヴィンに言っていました。
エンドロール後に発表された次回作『GLASS(原題)』では、この同業者の医者がキーパーソンとなり、ケイシーやダンを救うのかもしれません。

『アンブレイカブル』の伏線

実は、シャマラン監督はケヴィンというキャラクターを15年前の『アンブレイカブル』の製作時にすでに考えていたのだそうです。
初めは『アンブレイカブル』の劇中にケヴィンを登場させる予定だったが、主人公のダンの物語に注力するため、一旦お蔵入りにしたのだとか。

そして、ケヴィンは実は『アンブレイカブル』に登場しています
ダンがドラッグ・ディーラー(演じているのは『スプリット』にも出てきたシャマラン監督自身)に会う前、彼は母親と手を繋いだ子どもとぶつかって「相手の意識を読み取る」能力を使っていました
その子どもが、ケヴィンなのです。

つまり、ダンはぶつかった子ども(ケヴィン)が母親から虐待を受けていることを知りながら、彼を救えなかったということになります。
この因縁が、次回作ではどのように描かれるのでしょうか……?

※この記事は映画情報サイト「IMDb」の「Trivia」を参考にしています。ここで書かれていないこともあるので、ぜひご参照を(英語)↓
Split (2016) – Trivia – IMDb

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(C)2016 MARVEL & Subs. (C)2016 Twentieth Century Fox

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  1. 蝮のゼンゾウ より:

    「スプリット」面白かったですね!
    「アンブレイカブル」との接点についての評論もとても参考になりました!

    >バリーは、ビーストの誕生に否定的であり、ケイシーに殺してくれと頼んでいた、良識的な男だったのですから。

    自分の記憶が正しければケイシーに殺してくれと頼んでいたのは元の人格のケヴィンだったような気がします。
    その後慌ててジェイド、オーウェル、バリーが登場して、ケイシーに「俺が対処するから殺すな」的な事を言っていたので、照明を管理して世間に溶け込もうとしていた人格だったのではないでしょうか。
    危険な思想を持っていたデニス、パトリシアに照明を与えていなかったため彼らと軋轢を生み、照明を奪えるヘドウィグを仲間に取り込まれたため力を失ってしまったと勝手に解釈しています。
    オリジナルであるケヴィンも自殺願望があったため、3年近く照明を与えられていなかったのではないでしょうか。

    発情期のオスとまともに戦うことが出来ず性的虐待を受けていたケイシーが、ハンターとして戦う覚悟を得る話としても面白かったです!
    映画のジャンル自体を途中で180°変えてどんでん返しに繋げるシャマラン節は今回は良かったですが、シャマランに続編モノが取れるのか次回作に一抹な不安があるのは自分だけでしょうか。あまり風呂敷を広げ過ぎて「エアベンダー」のような惨状にならないことを祈りたいですねw

    • hinataka hinataka より:

      >自分の記憶が正しければケイシーに殺してくれと頼んでいたのは元の人格のケヴィンだったような気がします。

      おおう、けっこう自信があって書いていたのですが、自分の勘違いっぽいですね。
      ご指摘感謝です。このまま追記させてください。

      >発情期のオスとまともに戦うことが出来ず性的虐待を受けていたケイシーが、ハンターとして戦う覚悟を得る話としても面白かったです!

      そうなんですよね!素晴らしいご意見感謝です!

  2. h_nak より:

    スプリット良かったです!
    気づいていなかったところもこのブログで補完させていただき更にスッキリしました。
    シャマランだけに2019のGlassで大コケしないか今から心配です(笑)

    >ラストシーン、テレビで監禁事件を知ったおばちゃんが「15年前の事件と似ているわね」と話しているのですが、似ているか?
    方や世界中で事故に見せかけた大量殺人を起こしていた男、方や女子高生を拉致監禁のうえ殺害した男で、規模も犯行内容もまったく違います。

    このシーンは、マスコミが派手な事件の犯人にニックネームを付けて呼んでいるところ(ガラス、群れ)に共通点があると僕は思いました。

    マカヴォイも良かったですが、アニヤの眼力が更に良かったです。

    • hinataka hinataka より:

      スッキリしていただいてよかった!書いてよかった!

      >このシーンは、マスコミが派手な事件の犯人にニックネームを付けて呼んでいるところ(ガラス、群れ)に共通点があると僕は思いました。
      わー!確かにそういうこと言っていた!ご指摘感謝です、ありがとうございます。

  3. パラドックス より:

    「ネタバレは絶対避けつつ、過去作の復習はしてほしい」
    という気持ちが存分に込められた前半部分の感想、
    言葉選びがとても慎重で素晴らしいです!
    そして、興奮が存分に込められた後半部分(笑)
    鑑賞前にネタバレ踏んだ自分としては、
    劇場で味わえたであろう興奮を疑似体験させてもらってます…。

    一つだけ、私が気づいた「公正な伏線」を。それは日本版ポスターです。
    「ヴィレッジ」や「レディ・イン・ザ・ウォーター」、「ヴィジット」公開時のポスターは、
    「シックス・センス」「サイン」のM・ナイト・シャマランと紹介ですが、
    「スプリット」については「シックス・センス」「アンブレイカブル」でした。
    「サインじゃなくてアンブレイカブルにしたのはそういうことかーーー!」
    と叫んだシャマラーが日本に数人はいるかもしれません。
    できればそう叫びたかった…実際は踏んだネタバレをより確実にするだけでしたが…(苦)

    今は、「GLASS」の公開時に果たして「アンブレイカブル」「スプリット」の
    M・ナイト・シャマランと紹介されるのか楽しみにしています!

    • hinataka hinataka より:

      >「ネタバレは絶対避けつつ、過去作の復習はしてほしい」
      >という気持ちが存分に込められた前半部分の感想、
      >言葉選びがとても慎重で素晴らしいです!
      >そして、興奮が存分に込められた後半部分(笑)
      あっっざああああああああっす。本当に書いてよかった!

      >鑑賞前にネタバレ踏んだ自分としては、
      >劇場で味わえたであろう興奮を疑似体験させてもらってます…。
      (´;ω;`)ブワッ.

      >日本版ポスターです。
      確かに今まではもっとも日本でヒットした2大タイトル「シックス・センス」「サイン」だったけど、今回は「シックス・センス」「アンブレイカブル」になっている!
      日本の広報さん、公式サイトでもネタバレをうまーく隠しているし……ありがとう、本当にありがとう…。

  4. とり より:

    はじめまして。

    「スプリット」よかったです。

    軽く気が付いたことですが、殺された二人の女学生ですが、ケヴィンのカウンセリングの中に出てきた、胸を触らせた二人の女学生と言うのが彼女たちなのではないですかね。
    そうなるとケヴィンにとっては無罪とは言えなくなると思います。

    p.s僕はシャマランベストが「ヴィレッジ」なんですよね。後「サイン」「アンブレイカブル」「レディ・イン・ザ・ウォーター」と続きます。評価が低くて残念です。シャマラーと言っても色々ですね~(笑)

    • hinataka hinataka より:

      >軽く気が付いたことですが、殺された二人の女学生ですが、ケヴィンのカウンセリングの中に出てきた、胸を触らせた二人の女学生と言うのが彼女たちなのではないですかね。
      >そうなるとケヴィンにとっては無罪とは言えなくなると思います。

      おお!ありがとうございます!!こちら追記させてください。

      >p.s僕はシャマランベストが「ヴィレッジ」なんですよね。後「サイン」「アンブレイカブル」「レディ・イン・ザ・ウォーター」と続きます。評価が低くて残念です。シャマラーと言っても色々ですね~(笑)
      ビレッジとレディが低評価でごめんなさい!サインとアンブレは好きなので許して!

  5. まこと より:

    私は町山さんのツィートを見ておいてよかった(3作を見直してから劇場入り)という口で、ネタバレという話はあまり賛成できないです(でも、「アンブレイカブル」を見た後にIMDbの同作品の項目をチェックしたらそこに堂々と「スプリットはこの続編」などと書かれていたので大ショックを受けました。それも町山さんのせいだと言えば言えなくはないですが……)。

    それよりも私が「興ざめ!」と思ったのは、上映後に出てくる「予告」ですね。ああいう宣伝はやりすぎではないでしょうか。もうちょっと余韻を楽しみたかったなぁ。

  6. Rebi より:

    残酷な描写が皆無…?

    • hinataka hinataka より:

      皆無でもないですね!(主人公の脚がズルムケになっていたし・・・)修正します!

  7. ぐるくん より:

    >フレッチャー医師は「私が死んだらボルチモアの同業者に引き継ぐよう頼んである」とケヴィンに言ってい>ました。
    >エンドロール後に発表された次回作『GLASS(原題)』では、この同業者の医者がキーパーソンとなり、ケ>イシーやダンを救うのかもしれません。
    この「同業者」というのはレディ イン ザウォーターの主人公クリ-ヴランド・ヒープ(ポール・ジアマッティ)なのではないでしょうか? 彼は元医師でかつhealerでもありますし。
    たしかこの映画の舞台もフィラデルフィアです。
    あと、この映画中、シャマランの演じた小説家があと2本ストーリーを作るといっていましたね。

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ヒナタカ

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