『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』芽生えた感情(映画ネタバレなし感想+ジブリに似ているところ)

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』芽生えた感情(映画ネタバレなし感想+ジブリに似ているところ)

今日の映画感想はソング・オブ・ザ・シー 海のうたです。

個人的お気に入り度:9/10

一言感想:ぜひ、親子で観てください!

あらすじ

その島には、いじわるな男の子のベン、6歳になるのにしゃべることができない女の子のシアーシャ、そのお父さん、大きくてかわいい犬のクーが暮らしていた。
ある日、おばあちゃんは子どもを育てるのに島はふわしくないと言って、ベンとシアーシャを都会に連れて行ってします。
その都会で、ベンとシアーシャは思いがけない冒険をすることになる。

観ろ。(←今年5回目)

第87回アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート!
第28回ヨーロピアン・フィルム・アワード長編アニメ賞受賞!
映画レビューサイトRotten Tomatoesで驚異の満足度99%!!
もうなんつーかいろいろ言葉にしなくていいから、観たらそのが素晴らしさがわかるからさっさと劇場に行けよこのやろう!
(以下、あまりに観てほしいので、文章の中にさりげなく「観ろ」を入れるというウザいサブリミナル方式を採用しております)

さてさて、本作はアイルランドが放つアニメ。
もうね、そのかわいらしい絵から完全にノックアウトされました観ろ。

ソングオブザシー2<絵本みたいでかわいい!

ソングオブザシー4<そして幻想的!

この絵本そのままのような絵がなめらかに動き、唯一無二の世界を見せてくれるという時点で、劇場に行くしかないではないですか。

そして観ろ、本作はジブリ映画の影響を受けまくっており、『となりのトトロ』をはじめ、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』っぽいシーンがめっちゃあるのです。

とはいえ、本作にオリジナリティがないということもない、観ろそれどころか「こんな画を作れるなんて!」という驚きと興奮にも満ちていました。
終盤に訪れるとある画は、(物語と関係なく)そこを切り取るだけでも、涙が出てくるような美しさでした。

なお、監督はこの映画を作ったのは、アイルランドの「伝承」を蘇らせることも目的であったと語っています。
現代の文明が進み、おとぎ話を語る人が少なくなってきた、そうであるからでこそ観ろアニメーションでアイルランドらしい伝承をいまの子どもたちに知ってもらおうという……そんな志にも溢れているのです。

そうそう、ポスターやメインビジュアルを見ると、女の子が主人公のようにも見えますが、実際は「いじわるなお兄ちゃん」とその「しゃべることができない妹」という観ろ、幼い兄妹のふたりを主役とした冒険活劇となっています。

ソングオブザシー3<妹の誕生日でもお兄ちゃんはいじわるをします。

ソングオブザシー1<でも冒険のときにお兄ちゃんは……?

このふたりの関係性が徐々に変化していくのが微笑ましく、ピンチにハラハラドキドキし、思いがけぬ展開に驚いたりと、娯楽映画としての要素もたっぷりなのです。
お兄ちゃんが腰につけている「ワイヤー」を使ったアイデアがたっぷりなのも楽しいですよ。

まとめましょう。
本作の魅力は
(1)すぐに虜になるかわいい絵柄
(2)幻想的な世界観
(3)ジブリ映画への敬意とオマージュ
(4)圧倒的なオリジナリティとイマジネーション
(5)アイルランドの伝承を現代のアニメで描くという心意気
(6)幼い兄妹による冒険活劇!
以上のひとつでも心にひっかかるなら観ろよもう。

あとね、これは本当に子どもに観てほしいんですよ!
その理由のひとつが、ジブリ映画だけでなく、マイフェイバレットすぎるアニメ映画『銀河鉄道の夜』をも連想させたからです。

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『銀河鉄道の夜』は「不安」「幻想的」「孤独」といったさまざまな感情を与えてくれる作品で、自分にとって忘れられない作品だったんです。

また『銀河鉄道の夜』と本作『ソング・オブ・ザ・シー』は、「ふたりの旅路」ということ、「片方がいなくなってしまう恐怖」があることも共通しています観ろ。
もうこれは『ポケットモンスター』『妖怪ウォッチ』『プリキュア』などのアニメでは体験できないものだと思うんです(※そういう作品が悪いというわけではなく)。

本作の主人公のひとりであるお兄ちゃんは、妹にいじわるなことをしてばっかりいるのですが、観ろこれが後に大切なことを教えてくれる、極めて教育的になっているのもいいですね。
ぜひ、実際に妹がいる、お兄ちゃんに観てほしいです。観たあとは、きっと妹にやさしくなれるでしょうから。
公開中の『ペット』なんか、いたずらっ子が犯罪行為をしまくる教育上アレな映画でしたもんねえ(※そういう作品が悪いというわけではなく。いや、ちょっと悪いか)。

大筋の物語がわかりやすいだけでなく、「あれはどういうことだろう」「なんでこんなヘンテコな人物が出てくるんだろう」と思わせる「摩訶不思議さ」があり観ろ、子どもの想像力を刺激してくれることもいい。
だからね、もうね、親子で観てよ!観ろよ!!!マジで忘れられない思い出になるから!!!!

あとね、日本語吹き替え版で観たんですけどね、そのクオリティにも文句がございません。何より主役ふたりの声がかわいすぎだよ!
主題歌がこれまた幻想的で、日本語のひびきがマッチしているのも最高でした観ろ。

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※ここ最近でいちばんサントラがほしいと思った作品でした。

さてさて観ろ、本作の最大の問題点は現在公開劇場が2館しかない(8月27日からは5館に増える)ということですね。
ムキー!こういう作品こそ大々的に公開すべきだよ!これほど万人向けなアニメ映画はなかなかないんだぞ!
スタジオジブリ作品の『レッドタートル ある島の物語』は全国公開なのになぜこんな落差があるんだ!(ジブリブランドだからです)。

そんなわけで、もし本作がお近くで上映されていたら、お子さんをお持ちの方は女房をほっといてでも(もしくはいっしょに)親子で観ましょう。もちろんひとりでも、デートでも、このうえのない多幸感をもたらしてくれるでしょう。
超!絶!おすすめです!!観ろ!!!

以下、ほんの少しだけネタバレでジブリに似ているシーンと、作品のテーマのひとつを紹介↓
核心的な部分には触れていませんが、予備知識なく観たい方はご注意を。観ろ。

ジブリ映画と似ているところ

『となりのトトロ』:ネコバスが走るシーンにそっくりなところアリ!(田んぼが多いところを疾走する!)
『もののけ姫』:ダイダラボッチを見上げるようなカットがめっちゃ似ている!
『千と千尋の神隠し』:湯婆婆にそっくりな魔女の「マカ」がでてくる!
『崖の上のポニョ』:かわいい女の子が、海の生き物と仲良し!
『風の谷のナウシカ』:終盤の「黄金」の画が……
『天空の城ラピュタ』:お兄ちゃんが地下にいるときの画に似ているところあり!

そのほか、健忘症すぎるおじいさんキャラが登場するのは、『ファインディング・ドリー』をも思わせましたね。

大切なのは感情

本作で訴えられていることのひとつは、たとえ「悲しみ」であっても、すべての感情は大切なものである、ということしょう。

魔女のマカは、息子の悲しみを鎮めるため「石にさせる」手段を選び、瓶に泣いたり笑ったりする感情を閉じ込めていました。
(マカが感情が入った瓶を開けて、エクスタシーを感じるシーンはまるでドラッグ吸引シーンのよう……)

お父さんは、妻を失った悲しみのため、彼女が残したコートを海に捨てていました。
しかもお父さんは、子どもの意見も聞かず、おばあちゃんの言うとおりに、ふたりを都会に行かせてしまったりもします。

お兄ちゃんは、妹が生まれたせいで母がいなくなったと思い込んでおり、妹にいつも辛く当たっていました。

そうして「考えなくなる」「感情を失う」ことは、成長をしないということでもあります。

でも、冒険を通じてお兄ちゃんはたくさんの感情を経験していき、そして成長していく。お父さんと魔女のマカもまた、変わっていくんです(妹は「カナシミ」に当たる存在かも?)
まるでこれは『インサイド・ヘッド』のよう。本当に、素晴らしい教訓を与えてくれる傑作でした!

(C)Cartoon Saloon, Melusine Productions, The Big Farm, Superprod, Norlum

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  1. claude より:

    ヒナタカさん、こんにちは。
    私はヒナタカさんのブログのファンです。
    時々楽しく見ています。私はヒナタカさんの名作への愛に溢れるレビューと、思いっきり大笑いできる駄作映画のレビューが好きです。さて、話は変わりますが9月の同時期に公開されるスタジオジブリの映画「レッドタートル ある島の物語」と、京都アニメーションの映画「聲の形」の2つの予告編が、この前行ったショッピングセンター併設の映画館のインフォメーションで流れていたので、気になっているところでございますが、ヒナタカさんとしてはどちらが気になるでしょうか?

  2. ヒナタカ より:

    > ヒナタカさん、こんにちは。
    > 私はヒナタカさんのブログのファンです。
    > 時々楽しく見ています。私はヒナタカさんの名作への愛に溢れるレビューと、思いっきり大笑いできる駄作映画のレビューが好きです。
    あざああああっっっす!
    >さて、話は変わりますが9月の同時期に公開されるスタジオジブリの映画「レッドタートル ある島の物語」と、京都アニメーションの映画「聲の形」の2つの予告編が、この前行ったショッピングセンター併設の映画館のインフォメーションで流れていたので、気になっているところでございますが、ヒナタカさんとしてはどちらが気になるでしょうか?
    どっちも気になりますねー。「レッドタートル」は台詞なしになるらしいし、「聲の形」は原作が大好きなうえ「たまこラブストーリー」の吉田玲子脚本ですもの。もう比べられないレベルですが、あえて言えば「聲の形」で!

  3. ラリーB より:

    吹替版を見てきましたがいやもう…本当に笑いあり涙あり教訓ありの素晴らしい大傑作でした。
    ヒナタカさんがネタバレなしの感想なんで僕も突っ込んだ感想は控えますが
    僕もヒナタカさん同様『インサイドヘッド』にテーマが似ていると感じました。
    ただ本作が素晴らしかったのはそう言った負の感情を持ったが故に
    善行のつもりで様々な登場人物がついマイナスな言動をしてしまい
    表層的な『悪』として描いていなかったのが素晴らしかったと感じましたし
    だからこそのあの素晴らしいラストなんだな…と思いました。
    僕個人としては物語冒頭でベンくんに「嫉妬なのは分かるがやりすぎだろ…」とまんまとイライラしてしまいましたが
    最後の方には「イライラしてた俺ちっせぇ…」と反省しきりでした…w
    海外のアニメ映画は普通の洋画よりも採算の基準が厳しく上映してくれただけでもありがたいとは思うんですが
    この映画がやはり広く見られないのは僕は残念に感じましたし
    ミニシアターだから行けない…と言う人もBDでもいいんで是非…見て欲しいですね、オススメです。

  4. シオンソルト より:

    > 『銀河鉄道の夜』をも連想させた
    あ、あ、あああー、そうか、そうなんだ。
    宮澤賢治フリークな私は、構成的に宮澤賢治的な雰囲気を感じていたのです。
    その上で、ケルト系の古典に由来する物語であること、海をモティーフとした物語であることなどから、「そういえば宮澤賢治にも“イギリス海岸”というものがあったなぁ」等と考えていました。
    > ジブリだけでなくピクサー作品も想起させるとは
    モティーフだけを見れば、『モアナと伝説の海』や『南の島のラブソング』が浮かびもするんだよなぁ。
    >claudeさん
    『聲の形』は気になっています。アニメーションによる手話表現が、どの程度繊細に描けているか等、技術面も含めて。
    >ラリーBさん
    嫉妬というか、ベンにとってシアーシャは、「母のいなくなった」象徴なんですよね。しかも何故にいなくなったのかを父のコナーは何も言わなかった。
    一方でコナーとして、ブロナーは死んだ訳ではないし、彼女がセルキーであったことを教えれば、遅かれ早かれシアーシャもそのことを悟るだろうし、次はシアーシャもいなくなるかもしれないという焦燥感に似たものがあって、ベンに真実を伝えきれない。
    父が何も語らない故に、ベンにしてみれば、母をシアーシャが奪っていったように思えたに違いないでしょう。

  5. ラリーB より:

    ご意見凄く納得しました。確かに父であるコナーの責任も大きかったし
    だからこそベンくんは余計に病んでしまったんでしょうね。
    今となっては序盤のベンくんに怒ってた自分に膝蹴りしてやりたいくらいですw
    序盤の苦い展開をしっかり描いたからこそ、ラストの本当にみんな幸せそうな笑顔が映えるんですよね…

  6. […] 5位 ソング・オブ・ザ・シー 海のうた […]

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著者

ヒナタカ

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