
『スノーホワイト/氷の王国』アナ雪の模倣がいろんな意味で失敗?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『スノーホワイト/氷の王国』(原題: The Huntsman: Winter’s War)です。
個人的お気に入り度:4/10
一言感想:対比構造がおもしろいのにもったいない
あらすじ
邪悪な女王ラヴェンナ(シャーリーズ・セロン)の妹フレイヤ(エミリー・ブラント)は、ある出来事をきっかけに氷を自在に操る魔力に目覚め、北の地で新たな氷の王国を築く。
フレイヤは、さまざまな場所から子供を集めて軍隊を作り上げた。そこで育った戦士のエリック(クリス・ヘムズワース)とサラ(ジェシカ・チャステイン)は、互いに惹かれ合っていくが……。
『白雪姫』をベースにした実写映画の第2弾です。
前作のレビューはこちら(酷評、じつは当ブログでいちばん気に入っている記事です)↓
映画『スノーホワイト』中途半端おとぎ話(ネタバレ全開ツッコミ感想)
まず、本作にはすっげえ斬新なところがあるんですよ。
それは『スノーホワイト』というタイトルなのに白雪姫が出てこないということ。
原題は『The Huntsman(狩人): Winter’s War』で、申し訳程度に始めのタイトルに「Snow White Chronicle」 が出てくるくらいでした。
正確にはスノーホワイトは1シーンだけ「後ろ向き」の姿で映るんだけど、これじゃあ出ていないに等しいよなあ。
※本作は前任の監督と、スノーホワイトを演じる予定だったクリステン・スチュワートが不倫したためにいったん製作が頓挫していました。
そして、本作にはすっげえ既視感にあふれていることがあるんですよ。
何せ「王国の姉妹のうち片方が氷を操る能力に目覚める」「氷の城に閉じこもる」ですよ。思いっきり『アナ雪』じゃねーか!
もうね、これはもうハリウッドの「なんでもいいから企画を成立させてヒットさせよーぜ」という戦略なんでしょうね。
前作は『アリス・イン・ワンダーランド』の超ヒットにあやかって「これからはおとぎ話の実写リメイクが受けるぞ!」という企画がたって、突貫工事で作った結果、めっちゃ雑な映画に仕上がったような作品でした。
で、今回は「おとぎ話の実写化と、アニメ史上最大のヒットの『アナ雪』を組み合わせれば最強じゃね?」というどんぶり勘定なプロデューサーの考えがみえまくっているのです(※注:想像です)。
しかし、そもそもの設定以外は意外と『アナ雪』をパクっていなかったので驚きました。
氷の能力の暴走により閉じこもるのはアレすぎでしたが、その後の展開にはちゃんとオリジナリティを入れてきています(そして『白雪姫』とも乖離しまくっている)。
これは脚本家およびスタッフによる「プロデューサーはマネばっかしろって言っていたけど、オレらはちゃんと独自の要素をいれるよ!」と、という気概がみえまくってほっこりしました(※注:想像です)。
というか……「氷の女王」の心理描写はかなりおもしろいです。
彼女が軍団を作ろうとした理由などには、十分な奥深さがありました。
「愛を信じる」「愛を信じない」それぞれの登場人物の対比構造もうまくできています。
それでも……本作を手放しで褒めれないのが悲しいところ。
なぜなら展開に根こそぎ説得力がなく、すべてが茶番劇にしかみえないという致命的な欠点があるからです。
何よりも、製作者の都合だけでキャラの生死が左右されすぎということがもっともキツい。
「なんでそっちは殺さないねん」というツッコミどころ(後で説明されることもあったけど)はちょっと許容できません。
人を操って殺す魔法の鏡への対策も、「それでいいのかよ!」とツッコまざるを得ないよなあ。
そもそもの「氷の王国を作る」という設定にしたって、「そんなに簡単に軍隊を集められるんかい」「なんで子どもたちは律儀に女王に忠誠を誓ってんねん(恐怖による支配だという描写は一応ある)」「周りが氷で覆われているのにどうやって国家が維持できる収入を得てんねん」というツッコミどころもあるし・・・。
『アナ雪』では、氷の力を持ってしまったエルサが「ひとりで」生きていこうとすることに説得力がありましたよ。
しかも女王は、軍隊の子どもたちがいい大人になるまでを見守っているんだけど、あなたはいったい何歳なんですか。まあ魔法の力で年をとらなくなっているんでしょうね!(無理やり納得)。
あと、コメディーリリーフに当たる旅の仲間が4人もいるのもシンドいんじゃないかと。
例えるなら、『アナ雪』のオラフが4人もいるようなもんですよ。
※こいつが4人ついてくると思ってください。
いや、オラフのことは好きだけど、さすがに4人もいるのは……。
本作に限っては、そのコメディ要員のキャラが基本的に戦闘能力のない役立たずで、そのギャグもあまり笑えないというのもキツい。
おかげさまで、ただでさえゆったりめの話のテンポが、さらに重くなるという弊害もあります。
さらに、登場人物が「私はこう思っている」という説明台詞が多すぎるのもイマイチ。
これは他者に論理的に訴える台詞なので違和感はないのですが、それは断定的すぎて「想像の余地」を残してくれないのです。
そんなわけで、ビジュアルはさすがにお金がかかっているし、そこそこ以上には楽しめる映画ではあるものの、以上に挙げた欠点が大きすぎる、というのが結論です。
奇しくも、
・主人公チームよりも悪役のほうがはるかに魅力的
・だけどお話のほうがツッコミどころ満載で台無し
・有名作品をパクっている
という点においては前作のスピリットを受け継いでいますねー(棒読み)。
そういえば、前作は吹き替え版で女王を小雪(女優)が演じていて、その拙さのために炎上していましたね。
でも今回は杉田智和や朴璐美や水樹奈々など、本業声優の豪華配役となっているので、声優ファンは吹き替え版を大いに楽しめるかもしれませんね。
なんだかんだで前作よりはかなり好きですし、前作を観ていなくても楽しめる親切設計もいいんじゃないでしょうか。
前作の「魔法の鏡を意味ありげに映す」という伏線がこの続編で消化されましたし、ラヴェンナ王女の性格もしっかり引き継がれています。
初めに「これは前作の前日譚ですよ」と宣言するにもかかわらず、物語の大体が後日談だったという素っ頓狂な構成も1周回っておもしろいです。
可もなく不可もなく、フラットラインな感じでオススメしておきます。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
(C) Universal Pictures

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あの、吹き替え声優の名前、鈴木奈々ではなく、水樹奈々です。
> あの、吹き替え声優の名前、鈴木奈々ではなく、水樹奈々です。
修正します!
本作は観るつもりはなかったのですが、遠方に嫁いだ妹が、甥っ子が描いた絵と一緒に景品で貰った観賞券を送ってくれたのでちょうどやっていた吹替え版を観ることとなりました。
「スノーホワイト全然関係ねぇ!」というツッコミが終始まとわりつき、クリス・ヘムズワース、ジェシカ・チャステイン、エミリー・ブランド、シャーリーズ・セロンというもったいない大物を揃え、声優陣もハイレベルでもったいないメンバーが揃っており、それゆえに内容がヒナタカさんの評と同じく"もったいない"映画でした。
※個人的に1分も喋っていない「鏡の声(鏡の男)」に大塚明夫氏を起用したのが一番もったいないと感じました。
まさかのデッドプールが満員だったので次の回までの時間潰しに鑑賞しました 正直一作目を観た記憶もおぼろげだったので「あれ?トワイライトの女いねぇじゃん」なんて思ったら ※本作は前任の監督と、スノーホワイトを演じる予定だったクリステン・スチュワートが不倫 そんな事情があったんですねぇ
ぶっちゃけ元から興味のある作品では無かったのでいつぞやの「マイティ・ソー VS巨大クジラ編」に続き「マイティ・ソー 神々との闘い編」と勝手にスピンオフ設定を作り「あぁだからソーはシビルウォーに参戦出来なかったんだな」と脳内妄想を繰り広げる事でなんとか楽しめました 多分こんな後ろ向きな鑑賞者は世界で私一人だけです(笑) そして手乗りデップーが午前中で配布終了してたのが驚きと共に地味にショックでした
自分は結構楽しめました。
ゴブリンの血の伏線はちゃんとありましたよ。エリックが血の匂い嗅いで「タールの匂いする。」という分かりにくい伏線でした。
あと鏡の破壊については、フレイヤが氷の魔法使って鏡を凍らして壊しやすくしてエリックがそれに気づいて2人の連携プレイでぶっ壊しました。すげえ魔力持ってる鏡だから攻撃防げたんじゃね?っということは突っ込んではダメです。
期待値だだ下げで行けましたが、自分は好きでした。あと、最後のフレイヤの表情は意外にもグッと来ました。
> 自分は結構楽しめました。
> ゴブリンの血の伏線はちゃんとありましたよ。エリックが血の匂い嗅いで「タールの匂いする。」という分かりにくい伏線でした。
> あと鏡の破壊については、フレイヤが氷の魔法使って鏡を凍らして壊しやすくしてエリックがそれに気づいて2人の連携プレイでぶっ壊しました。すげえ魔力持ってる鏡だから攻撃防げたんじゃね?っということは突っ込んではダメです。
> 期待値だだ下げで行けましたが、自分は好きでした。あと、最後のフレイヤの表情は意外にもグッと来ました。
あざっす!その伏線の張り方は悪くないな・・・悪くないけどさ・・・。