映画版『植物図鑑』働く女性は料理男子を捕まえよう!(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

映画版『植物図鑑』働く女性は料理男子を捕まえよう!(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想は植物図鑑 運命の恋、ひろいましたです。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:※ただイケだけど、それだけじゃなかった

あらすじ

不動産会社で働くOLのさやか(高畑充希)は、ある日、マンションの前で行き倒れていた青年の樹(岩田剛典)と出会う。
樹は半年間という期限付きでさやかの家で暮らすことになり、野草に詳しい彼は毎日のように料理ふるまってくれるのだが……。

えーとね、もうしつこいほど言ってきましたが、自分は※ただしイケメンに限る作品が、好きではありません。

※ただイケの例↓

好きじゃない理由は「こんな男いねえよ」「女はただ振り回されるだけかよ」「こんな奴の悩みとか興味ねえよ」というトリプルコンボと思っていただければ幸いです。

※納得のご意見

で、本作『植物図鑑』は、いきなりイケメンがその辺に落ちていて、「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」「咬みません。躾のできた良い子です」とほざくという、ブサイクだったら即通報案件なんですよ。
これも「こんなん※ただイケだろうが!ふざけんじゃねえ!」と思いながら観に行ったんですね(←こういうこと書くからモテないんだと思う)。

そんな偏見を持っていてすみませんでした(また『ズートピア』を観なきゃ!)

確かに導入部分は※ただイケでしたが、その後はしっかり男が「中身」のイケメンっぷりを見せてくれました!
そして、社会で生きる女性の成長が描かれた作品だったのです。
観る前に「私は可哀想な女性→そんなときにイケメンを拾ってハッピー→以上な内容なんだろうな〜このダボハゼが」とか勝手に思い込んでいて本当にごめんなさい!
映画は観てみるまではわからない!これは良作だったよ!

※『オオカミ少女』じゃなくてよかった!投票ありがとうございました!

フード描写が秀逸

いろいろ褒めるポイントが多いのですが、何よりよかったのは、原作小説を尊重した「食事」の描写でした。

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作中では、イケメンが土手のそばに生えた野草から「材料費ただ」の食事を作ってくれて、それがとにかくおいしそうに撮られているため、「自分もつくってみたいな」と思えます。ていうか腹が減ります
※こだわりもしっかりあります↓
<「料理を美味しく見せる方法は色々考えた」、「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」三木康一郎監督インタビュー | シネマズ by 松竹>

ちゃんと女性が現実で戦う話でした

社会人女性の日常がしっかり描かれていたのもよかったですね。
不動産会社でのお客さんとのやりとり、職場の先輩の対応にも、「成長」のきざしがしっかり見えるようになっています。
主人公の女性はちょっとズレたところがあり、自分のおかれた状況にぶつくさ文句を言ってばかりで、情緒不安定なところがある……「だからでこそ」の展開があったのにも、感動しました。
(この彼女のズレたところは、見ず知らずの男性を泊めてしまうことの説明にもなっている)

こういう作品って、ただただ「こういう恋をしてみたいな☆」という「憧れ」だけで終わってしまう場合も多いのですが、『植物図鑑』はひとりでがんばっている女性にエールを送っている内容になっているのです。
この物語は、じつは「イケメンがいないとき」のほうが重要になっていると言っても過言ではありません。
「ありえない出会い」が描かれているのに、直面する「社会の現実」にシフトしていく構成は、とてもクレバーです。

男性が観ても、職場での女性の接し方にいろいろと学べることが多いのではないでしょうか。
お世辞抜きで、これは男女とともにオススメできます。

そういや、本作のイケメンは、毎日の料理を作ってくれるけど、その日暮らしのフリーターだったりします。
この映画は年収大事!超大事!という女性の価値観を揺るがし、男性が主夫を務めてもいいということを後押ししてくれるかもしれない

しかも女性のほうは、イケメンの顔などではなく、「彼本人ではなく、料理から好きになっている」という描写があるんですよね。
ともすれば、この映画は「料理は女性が惚れる要素になっているんだよ!」「だから男どんどんも料理を作ってみたらいいよ!」と提案しているとも言える。これは※ただイケじゃない!素晴らしい!

こういう作品は、メインの中高生の興味を煽るために、アイドルを起用、突飛な設定にしている(しなければいけない)ところも大きいのでしょう。
なにせ、『植物図鑑』の原作小説の「概要」に書かれたのは、「男の子に美少女が落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!」なんですよ。潔いというかカッコイイとまで思ってしまった。確かに悪くないよ!ド正論だよ!

※空から女の子が落ちてくる作品の参考→空から落ちてくる女の子一覧 – ニコニコ大百科

これだけだどうっすい作品になりそうなのですが、卓越した演出と、細かい配慮のある脚本で、大人の鑑賞に堪えうる作品に仕上げてくれた、というのが嬉しいですね。
「私ってかわいそう〜」「イケメンが落ちていた」を強調する予告編には心底ウンザリしていましたが、その描写以降はめっちゃしっかりしているのです。

高畑充希の演技が最高!

また、触れておかなければならないのは、高畑充希さんの演技がすんばらしいこと。
普段は情緒不安定っぽさがありながらも、ときおり出す怒りや寂しさなどの複雑な感情を、ほんのすこしの表情の変化で、見事に表現しています。

岩田剛典はまあイケメンなのでどうでもいいや(←暴言)

気になったのは、主人公がいつでもバッチリメイクを決めていることかな(メイク自体はナチュラルでいいけど)。
高畑充希のスッピンが見たい寝起きでもぜんぜん野暮ったさがなく「きれい」なのは、かえって違和感があります。
三木康一郎監督のことは好きなんだけど、『のぞきめ』でも板野友美がADなのにメイクバッチリ&つけ爪までしっかりつけていたのは違和感バリバリだったなあ。

あと、後半のイケメンの行動や言動に「さすがにそれはどうだろう」と思うところが多かったのも事実。
主人公がまっとうなツッコミを入れてくれるのはよかったのですが、もう少し納得できるように工夫をしてほしかったです。

そんなわけで気になるところはあるものの、イケメンとのラブストーリーを観たい女性にはぜひオススメ。
男性は「彼女に料理を作ってあげようかな」と思うことができるので、デートにももってこいでしょう。
性描写はほとんどないので、お子様にも安心です(物語はわかりやすいので、小さい子でもイケる)。

何よりも、働く女性が元気をもらえる物語なので、仕事に悩みを抱えている方にこそ観てほしいですね。
そして観た後は、(イケメンに限らず)料理ができる男性を捕まえたい!ときっと思えることでしょう。

あ、でも同時期に『デッドプール』と『ヒメアノ~ル』という素敵なラブストーリーも公開されているので、こちらもぜひ選択肢に入れてみてくださいね☆(嘘は言っていない)

以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓

野暮な不満点

樹にはちょっとくらい、「何も言わずにいなくなったこと」を謝ってほしかったな。
考えてみれば、「樹が事情を説明しなかったこと」についてはなんのフォローもないんですよね。
※事情=自分は有名な華道家の息子で、父から言い渡された猶予期間だけその日暮らしの生活をしてており、その間は(写真家になるための)写真を撮っていた。

帰ってきた樹が「どこに行っていたの?」とほざいたことに、さやかが「こっちのセリフよ!」と返したのは共感しまくりました(このときの高畑充希さんの演技が、怒りと喜びが入り混じっていてめっちゃうまい)。
樹が、壇上で話していた(さやかは聞いていなかった)感謝の続きを告げるのはよかったのですけどね。

※イケメンでも野草を狩ってばかりなのは……

さやかが華道家の内覧会に誘って、樹に断られたときのナレーションもよかったですね。
「せっかくふつうのデートができると思ったのに……」と。
確かに、毎週のように土手で野草を狩るというのは変だよなあ(笑)。

これは、樹が華道家の父と仲違いになっていたという伏線にもなっています。
余談ですが、父役が大和田伸也(友情出演)だったのに笑ってしまいました。カリスマ性ありすぎ。

引き金引いといて

予告編でも見られる「引き金引いといて、忘れろとか都合のいいこと言うなよ!」ですが、これは主人公が酔った勢いで好きだと告白して、あまつさえ「すみません、酔った勢いなんで忘れてください」とほざいたから、ということで超納得できたよ!
※その引き金により放たれたのは、樹の「自分も好き」という気持ちでした。

社会に向き合っていく主人公

この映画で大好きだったのは、主人公のさやかが職場でコミュニケーション不足に陥っていた描写の数々、そしてその弱点を克服していくことです。

取引先の人と出会えなかったことを上司に怒られて「ちゃんと確認しました」とだけしか言えなかった(これはたぶん、取り引き先のほうが間違えていた)。
粗暴な客に対しては自分の意見を押し付けるばかりで、相手の要望を尊重していなかった。
同僚の女性が食事に誘っても、「今日はちょっと……」と不自然に断ることしかしなかった。
先輩が「もーらい」と弁当を食べたときは、そそくさとその場を去った。

しかし、彼女が客にセクハラを受けてクレームが来たときはついに……上司に「なぜ私の話をしっかりと聞かないんですか?ちゃんと聞いてください!」と反論します。

その後の彼女は、同僚と飲み会にも行っているし、屋上でご飯もいっしょに食べているし、先輩との食事にもつきあっている。
しっかり社会と向き合って行っているんですよね。これは彼女の成長です。

先輩はストーカー?

さやかの先輩は、なぜか「さやかの家が駅から遠い」ことを知っており、半ばストーカーであることを匂わせていました。

彼はけっきょく食事に誘った先でさやかに振られちゃうのですが……「なんで泣くのさ、こっちのほうが泣きそうだよ」と笑いながら言うのです。
しかも、樹が持ってきた弁当が「旦那から」ということを聞いた先輩は、「みんなつまみ食いするなよ、すごく怒られちゃうんだから」と、自分の失敗を踏まえて職場のみんなに助言するんですよね。

ストーカーになりつつあったとはいえ、先輩はいい人だったんだなあ……。

自分のことばかりではなく……

いやあ、さやかが樹に連絡を取りたいがあまり、バイト先の女性をストーキングしたうえに交番に通報されてしまう展開に驚きました。
先輩がストーカー化しつつあったけど、まさか主人公までもそうなるとは……これは「ストーカーと純愛は紙一重」という警告に思えるなあ。

このときに警官は親に連絡しようとするんだけど、それを拒否しようとするさやかへ説教をします。
「自分の都合ばかり通ると思っているの?」と……。

そう、さやかは樹が来る前は、きちんと職場でコミュニケーションができておらず、しかも「自分は不幸だ」と思い続けていた。
樹のバイト先に勝手に来て、(自分が知らない)苗字が知られていたことに、子どもっぽく腹を立てていた。
しかも、母親に連絡していないのは、「母が再婚して、自分が迷惑かけちゃいけないから」と思っていた。
よくも悪くも(悪いけど)、さやかは自分のことしか考えていなかったんですね。

そして部屋に来た母親は、そこにコンビニご飯がいっぱいだったことに「こんな生活をしていたのね」と言います。
さやかは「たまたまだよ〜いつもはもっときれいだから〜」と一人暮らしの子どもあるあるな言葉を返すのだけど……母親は「お正月は、うちにおいで」と言ってくれるんですよねえ。
「(実家に)帰りたいけれど、帰れない」というのも、さやかの勝手な思い込みだったのです。

自分のことばかりではなく、「相手」のことを考えていれば、コミュニケーションはうまくいくのかもしれません。

自分でつくる

樹がいなくなった後、「都会の光景」を映す演出が秀逸でした。
これは、さやかが社会人として生活を続けなければいけなくなった、ということを示しています。

「ふつうに戻った」と言いながら、コンビニのおにぎりを食べていたさやかでしたが……
ついに樹に習った通りに、野草の料理を作り始めます。

彼女の社会人としての生活がよくなったのは、樹の料理のおかげでもあったのでしょう。
「ふつうに戻った」ながらも、ひとりでも樹との生活にあった料理(自分が好きになった理由)にチャレンジする……これも彼女の成長です。

だけど、さやかはふきのとうの天ぷらだけは「苦いから」うまく作れなかった。
やっぱりひとりではできないこともあるんですね。

だけど、これからはずっと樹といれる。
ずっとおいしい料理で、彼女の満たされていくのでしょうね。

↓本当に昭和天皇の言葉だったんだ!
戦後70年。昭和天皇の御言葉「雑草という名前の草は無い…」から調べてみた「昭和の日」とは。

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(C)2016「植物図鑑」製作委員会

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  1. 匿名 より:

    >好きじゃない理由は「こんな男いねえよ」「女はただ振り回されるだけかよ」「こんな奴の悩みとか興味ねえよ」というトリプルコンボと思っていただければ幸いです。
    童貞臭がすごい

  2. 匿名 より:

    >イケメンが土手のそばに生えた野草から「材料費ただ」の食事を作って
    ついに名ばかりと思っていたがマジで草を食う「草食系男子」が…
    いわゆるこういうスイーツ映画ってけなすレビューは数多くありますがちゃんと観た上で良い部分は褒めるヒナタカさんの姿勢は素晴らしいと思います けなすのは簡単ですけど褒めるのって難しいですからね

  3. ラリーB より:

    今見てきましたがまず一言。ヒナタカさん、やっぱ嘘つかない!!w
    ファンタジーの色が強い恋愛映画なのは間違いないですが
    釣り要素だけで客が来そうな映画で反省と成長をきっちり描くだけでも大したもんだと思いますよ(偉そうに)
    まず僕は基本食いしん坊なんで美味そうな料理が出てきたらそれだけで点数ゲロ甘になるんですが
    今作で出てくる野草料理は普通に見ていて美味そうだったんでそれだけで嬉しかったです
    (あのパスタと苳ご飯食いてえ…w)
    最終的には彼が残したレシピで自分で作るようになる…と言うのも良かったですしね
    またヒナタカさんが仰るように、彼女が誰かに甘えたままで終わったりせず
    きちんと現実と向き合い頑張ると言う展開も好きです。
    時に恋愛で暴走してしまうお馴染みのダメ展開になりかけそうな時も
    ちゃんと劇中で「それは違う」と釘を刺してくれたのも良かったですね。
    樹が黙って出ていった下りも「彼女に甘えたままじゃ俺はダメだ」と
    彼女にふさわしい男になる為に…と言う理由があるので納得できました。
    きっかけがかなーりファンタジーなんで敬遠する人もいるとは思うんですが
    僕も悪し様に貶す映画では決してないと思いました。
    てかキャラの性別代えたら萌えアニメにもBLアニメにも百合アニメにもなりますしねw
    宇多丸氏も言ってましたが、当たり屋と自虐してるけど
    こう言う「意外と悪くなかった!」な映画に出会えるのは素直に嬉しいですし
    だからこそ時に冒険もしてみたくなります。
    他の恋愛映画に行くよりは断然此方の方がオススメです。

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著者

ヒナタカ

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