『シャザム!』菅田将暉×福田雄一の吹き替えの是非を語る(ネタバレなし+ネタバレ感想)

『シャザム!』菅田将暉×福田雄一の吹き替えの是非を語る(ネタバレなし+ネタバレ感想)

遅くなりましたが、あの批判が殺到した吹き替え版について記録しておきたいため、シャザム!の感想記事を書きます。

個人的お気に入り度:8/10

一言感想:子供に観せたいヒーロー映画No.1!(なんだけど吹き替えは…)

あらすじ

おっさんの見た目の子どものスーパーヒーローが頑張ります。

まずは吹き替えのことは置いておいて、映画そのものはすっげえ大好きです!
その理由の筆頭は、子供が主人公の作品なので親しみやすく、かつ子供から大人までめっちゃ楽しめる作品になっているから!

本作は予告編などでは「コメディやってます!」な印象が強いですが、監督が『ライト/オフ』や『アナベル 死霊人形の誕生』などのデヴィッド・F・サンドバーグというホラー畑の方なので、それなりに怖いシーンもあったりもするんですよね。

実はサンドバーグ監督は「『インディ・ジョーンズ』とか『ジュラシック・パーク』なんかは家族で観られる映画だけど、ちょっと怖いところもあったりする。そのぐらいを目指していたんだ」とコメントしていて、まさにその通りの内容になっていました。
その怖さを含め、80年代のファミリー映画の雰囲気や楽しさを現代に蘇らせたかのよう……もうその点については100点満点です。

加えて、この『シャザム!』は「里親制度」を描いていて、「血の繋がりのない者同士でも家族を作ることができる」ことの尊さも訴えられています。
最近の潮流なのか『ぼくの名前はズッキーニ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』など、こういう価値観が表れた作品が多くて嬉しくなりますね。
※『シャザム!』で描かれた里親制度についてはこちらの記事がオススメです↓
『シャザム!』が描いた“里親制度”ってなに? 世間のステレオタイプに一石 | VG+ (バゴプラ)

また『シャザム!』は『マン・オブ・スティール』から続くDCエクステンデッド・ユニーバスの7作目でありながら単独で楽しめる内容になっていて、かつ「バットマンやスーパーマンが同じ世界にいる」ことも上手く作用していると思います。
なぜなら、シャザムというヒーローへの人々へのリアクションが「この世にすでにヒーローがいる」ことを前提しており、そのおかげで彼の理解がスムーズに進んでいるから。
劇中ではYouTubeに動画を投稿したり人前でヒーロー技を披露したりするんだけど、それがトリックなどと疑われることもないんですよね。「ヒーローがいてもおかしくないな」と思える土壌ができていることがいいのです。

さらには終盤にはネタバレ厳禁の最高のサプライズも……!
もうこの瞬間、泣きましたからね。ありがとう、ありがとう!

そんな訳で超オススメ!家族で観てね!で終わっていい内容です。
同時期公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』は映画史上最高クラスの一見さんお断りな内容ですからね。『シャザム!』は本当に予備知識ゼロで楽しめますよ。

不満点としては魔術師のヒーロー採用基準が雑すぎっつーか圧迫面接を乱発してたのが諸悪の根源な気がするくらいですね。うん、それはけっこう気になった。

吹き替えがダメだった理由

で……吹き替えなのですが、結論から言えば吹き替えは全くオススメしない、字幕で観てと強く訴えたいです。

1回目は字幕で観て本当に良かった…なんのしがらみもなく楽しめたよ…このアンケートに答えてくれた方、本当にありがとう。
で、迷いながらも2回目に吹き替えを観たわけですが、ええ、はっきりと後悔しましたよ……その具体的な理由を以下に記しておきましょう。

1.菅田将暉の声が主演俳優に合わなすぎる

本作の吹き替えがダメだった筆頭がこれ。
菅田将暉が吹き替えているのはザッカリー・リーヴァイというガタイのいい長身の俳優さんなのですが、この人からこの若々しい声は絶対に出ないという違和感がバリバリです。
以下の動画がダメという方は、もう全編ダメという可能性すらあります。

念の為言っておきますが、自分は俳優としての菅田将暉は大好きです。主演映画はほぼ全て観ているくらいですよ。
やや賛否両論あった『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(アニメ映画)の声の出演もぜんぜん悪くなかったと思います。

だけど、今回はダメ……本当にダメですよ…観ていて苦痛を感じるほどだったもん。
菅田将暉のファンの「目をつぶって観たい」という意見を見かけて、それは流石にちょっと……と思っていたら俺も同じ気持ちになるとは思いもしませんでした。

さらにキッツいのは、(中身は子供だけど)おっさん声であることを前提としたギャグがあるということ。
菅田将暉の声はそのギャグの面白さを殺してしまっているじゃないか……。

フォローをしておくと、菅田将暉の演技プランそのものは良かったと思います。
子供っぽさをしっかり出しており、自然体で戸惑ったり楽しんでいる声そのものはとても微笑ましく聞けます。俳優とのギャップがなければいいのになあ…

あと…中盤に警備員のおじさんを騙すためにわざと大人っぽい低い声を出すシーンがあるんですが、その声の時だけ違和感がなかったです。その声でずっと通せばいいんじゃね?

2.そもそも宣伝が作品へのリスペクトに欠けている

もう1つ炎上していたのは、『勇者ヨシヒコ』『銀魂』などの福田雄一監督が吹き替え監修を務めていたということ。
それだけでも「余計な身内ギャグを入れるんじゃないか?」とバリバリ不安だったのに、福田監督本人が発表会見で「つまらなかったらどうしようと思ってました笑本当に面白かったのでホッとしました笑」と言った上にDC公式Twitterがリツイートするのは……いや、そう思って映画を観ることもあるだろうけど、監修を務める作品で、しかも公の会見でそれを言っちゃダメだろ…。

あとそしてワーナーの担当者さんも「吹替版“アベンジャーズ”?!的に史上最大級に豪華なキャストを揃えることができました」と言ってました。そこは自社の作品の『ジャスティス・リーグ』って言えよ!

さらには、この発表会見自体も、意味不明のタイミングで司会者が「(佐藤二朗が主要の吹き替えじゃないことに対して)ドッキリでした〜」と言っていたたまれない空気になったり、好きなヒーローを挙げてもらいつつ質問をしてもらった時に記者が「スパイダーマン(違う会社のヒーロー)」と答えたり(これについて福田監督はちゃんとフォローした)など、なかなかの地獄の様相でした……DCコミックスおよびヒーロー映画のファンの自分は白目になるしかなかったよ…

これらは炎上商法、福田監督が言わされているのではないかと疑ってしまうほど。
事実、インタビュー記事での福田監督は「(日本語吹替版の監修・演出は)簡単に言えば、英語で話している内容を、物語の世界観を崩さずに日本のお客さんに馴染むような言葉に変えていく作業でした」「家族愛だと思うんです(中略)その部分は日本語吹替え版になったときでも、見失わないように心掛けていました」など、誠実なコメントをしているんですよね。

炎上商法にせよ天然にせよ、本当に作品を楽しみにしているファンを悲しい気持ちにさせる時点で、その宣伝はダメだと思います。

あ、そうそう、福田監督は菅田将暉の配役について「大人なんだけど中身が子供で落ち着きのない感じが普段の菅田くんと印象が近い」という直感で決めたんですって!直感を頼るんじゃねえよ!
自分は福田監督のことが(映画ファンからの嫌われっぷりと比較すれば)好きだったんだけどなあ…(過去形)。

3.シリアスなシーンで余計な野次馬の声を入れている

これはややネタバレなので、具体的には↓に後述します。
かなり台無しでゲンナリとしました。

4.終盤のある人物の印象が演技のせいで変わっている

これは人によっては気にならないかもしれないけど、字幕版(原語)での繊細さがなくなっているようで、肯定はできませんでした。
これもネタバレになるので、具体的には↓に後述します。

吹き替えで擁護したい要素

とは言え、吹き替えの全てが最悪という訳でもありません。

何より、余計な身内ネタや作品の世界観を壊すようなセリフがなかったということ。
砕けたセリフ回しに少しだけ福田雄一監督らしさを感じたくらいですし、それはちゃんとギャグの面白さを損なわないもので良かったです。
また、終盤の「ヒーローあるある」をいじったギャグがけっこう福田作品っぽくもあるんですよね。そのおかげもあって、ほとんど違和感はありません。福田監督のセンスがちゃんとプラスに働いている、絶妙なバランスに仕上がっていたと思います。

そして、菅田将暉以外の豪華声優陣も素晴らしかった!
パンフで福田監督が「菅田将暉と「銀魂」の愉快な仲間たち」な配役にしたと言っているのはゲンナリしましたが、実際にキャスティングされた声優陣が最高の仕事をされています。
特に素晴らしかったのは、子供の頃の主人公を演じた緒方恵美と、その相棒の少年を演じた阪口大助、そしてキュートすぎるメガネの黒人の女の子役の遠藤綾ですね。子役にぴったりとハマっていたのです。

あと良く意見を見かけたんですが、主役の声には『銀魂』の主人公でもおなじみの杉田智和が適任だったんじゃ?劇中で杉田智和が演じているのは魔術師で、これは合ってたけど。

※実際に吹き替えには肯定的な意見もありましたよ。

今回の吹き替えのまとめ

こういう問題のある吹き替えで何が嫌かって、大好きなはずの俳優さんやタレントをも嫌いにもなりそうになってしまうことなんですよ。
(例:『プロメテウス』の剛力彩芽、『タイム』の篠田麻里子、『ウォンテッド』のDAIGO、『ライフ!』の岡村隆史、『キングコング 髑髏島の巨神』のGACKT)
その作品およびその人の評価に「吹き替えがダメだった」ということがずっと残るんですよ。短絡的に宣伝で注目を浴びたとしても、長期的に観れば誰も幸せにならないんですよ。それが菅田将暉という大好きな俳優でも繰り返されたのが本当にキツいよ…。

そして『シャザム!』は子どもにもぜひ観て欲しい映画であるのに、その吹き替えをオススメできないというのも辛い。
お願いですから、ソフト化および配信の際には、主演:菅田将暉とは違うバージョンを(も)収録してください…マジで…。俺これ、甥っ子と家で一緒に観たいんですよ……。

また、超人気俳優を吹き替えに起用でもしなければ、テレビで取り上げられたり話題にもなりにくいのかな…ということにもそもそも問題があるんじゃないかと。菅田将暉がシャザムの魅力を解説したりする企画でもいいじゃないか……。
ライバルの多いゴールデンウィーク公開で、なんとしてでもライト層にアピールしたかったのはわかるけどさ……。

おまけ:『名探偵ピカチュウ』の吹き替えは良かったよ!

ゴールデンウィークの目玉作品『名探偵ピカチュウ』の吹き替えも観たんですが、こちらは超良かった!

これは「可愛い見た目とのギャップとのある役」ということもあるんですけど、西島秀俊は感情表現も含めて超上手くて最高でした。
また、人間の主人公を演じた竹内涼真もなかなか良かったですよ。両親を失い内向的になった少年の心境を上手く表現しているし、声そのものが超イケボで心地いいんですよ(役者の表情と違うトーンの演技がミスマッチに思えたのはちょっと残念だったけど)。飯豊まりえも問題ないです。

最近では『バンブルビー』の土屋太鳳と志尊淳も最高でしたね。
タレント吹き替えと本業声優のミックスでも、こうしてしっかり作品をリスペクトした、良い日本語吹き替えが増えると嬉しいですね。

さてさて、以下からはネタバレでもう少しだけ吹き替えで残念だったところを紹介。本編を鑑賞後にお読みください。



余計な野次を入れないでよ!

序盤に幼い頃のビリーが母親を必死に探しているシーンで、謎の字幕版にはなかった「わかんなくなっちゃうよ〜!」「こっちこっち!」といううざったい声が聞こえてきました。
野次馬っていうか、これ誰の声なの?どっから聞こえているの?ビリーの心を代弁しているの?どっちにしろシリアスなシーンが台無しで不愉快でした。
声質も含めて、ドラマ『スーパーナチュラル』の史上最悪の吹き替えを思い出したよ……(流石にそれよりはマシ)。これが福田監督の采配によるものかどうかはわからないけど、なぜそういうことをするんだろう…。

※以下でも同じ指摘をされている方がいました。自分が観た回でも佐藤二朗のサンタの「トナカイ!」のギャグは誰も笑ってなかったな…。

母親がイヤな人間に見えてしまうかも……?

ビリーは終盤に本当の母親と再会するわけですが……
母親は過去にビリーが警察に保護されるのを見ていたのに、自分には(17歳で家を飛び出してしまっていたこともあって)ビリーを育てる自信がない、そうしたほうがいいと思ってわざと迎えに行かなかったのです。

しかも、母親の住む部屋からパートーナーと思われる男性の声が聞こえる……母親をずっと探してきたビリーにとって、なんと切ない結末でしょうか。
(ここでビリーが「コンパス」を母親に渡すのも秀逸。同様にヴィランのシヴァナは同様に家族との決別のきっかけになった「占い玉」を兄に渡すのですが、ビリーとは真逆にその家族を殺してしまうんですよね。その2つともが「道しるべ」のアイテムでもある…この対比構造が実に見事です)

で…問題はこの後の吹き替え版での母親の態度です。
セリフそのものは「一生(警察に保護してもらったように)あんな風に優しくできない。それであなたは幸せなんでしょう。今はタイミング悪いのよ」と、ほぼ字幕版と相違ないものではあるのですが、言い方にかなり棘がある、自身の境遇を相対的に捉えて「あなたは幸せなんだからいいんでしょう」と、さも自身の行為を正当化しているように聞こえるのです。
これは、吹き替えの声優さんの演技がめっちゃ上手いため、かなり毒づくような言い方をしているからなんですよね……。

ビリーの母親の行動は確かに褒められたものじゃないけど、そういう選択をしたのも彼女に自信がなかったから、ビリーの母親になれないと悟ったから、実際にビリーを幸せにできないと思ったから…という、切なすぎる考えによる行動なんですよね。(本当に彼女がビリーを育てていてビリーが幸せだったかというと……そうではないのかもしれない)
だけど、吹き替えであると、その母親が「独善的な判断をしている」ということが際立ってしまう、オリジナルの繊細なバランスをやや欠いている……と言わざるを得ません。

その後にビリーがグループホームの子ども達と共にヒーロー、そして家族になる展開は感動的です。
本当の母親に求めていたことが、近くで見つけられたのだから。

うーん、やっぱり、個人的には「ビリーの本当の母親のことは責められないな」と観客が受け止められる字幕版のバランスのほうが好きですね……。そういう家庭の事情は現実にもあり、その境遇の子どもに寄り添う描写でもあるのですから。
以下の記事ではその吹き替え版での改変を賞賛しているけど、それでもあの母親はクズだとは断罪できないと思いますよ。

映画『シャザム!』の日本語吹替版は結局どうなの?字幕版と見比べて検証してみた!

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

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  1. can より:

    シビルウォー以来のコメント失礼します。
    私は字幕版を見ました。
    印象的だったのが、冒頭で幼いシヴァナが兄に言われた「You did this.」(事故ったのはお前のせいだ)というセリフと、終盤でシャザム(達)が悪をやっつけて「We did it!」(やったぜ!)というセリフです。
    文法的にも意味的にも似ている言葉が、実の家族である兄が「お前がいけないんだ」とシヴァナを責める場面と、血のつながっていない家族とシャザムが勝利を喜ぶ場面で使われていることに、なんとなくこの映画のテーマである、家族を端的に表しているように感じました。

    英語(字幕版)だと、ここら辺の楽しみ方があるので好きです。

    ちなみに・・・『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開初日と同日に『シャザム!』観たのですが・・・ガラガラでした。頑張れDC!!

    • hinataka hinataka より:

      ものすごく返信が遅くてすみません。追記していただいた修正箇所を反映しました。
      原語は言葉遊びが楽しめますよね!「You did this.」「We did it!」の対比はなるほど…!アンぜたかしさんの字幕も良かったです。
      『エンドゲーム』の初日はすごいことになっていましたからね……DC映画の『ジョーカー』を応援しよう…

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