『千と千尋の神隠し』ハクは本当に八つ裂きにされたのか?

『千と千尋の神隠し』ハクは本当に八つ裂きにされたのか?

※この記事は『千と千尋の神隠し』のネタバレを多分に含んでいますのでご注意ください。

金曜ロードSHOW!で放送された『千と千尋の神隠し』、改めて観てみると、やはり傑作でしたねえ……。
この機会に、考察記事も書いてみました(ネタバレ全開)↓
『千と千尋の神隠し』物語を読み解く8つのポイント、『君の名は。』との意外な共通点とは? | シネマズ by 松竹

あと、この映画は本気で「怖い」なあと……。
子どもにとって両親が勝手なことをして、「ああなる」ってマジの恐怖だと思うんだけど……。カオナシのアレも子どものころに観ていたら泣いていた自信があります。

さてさて、地上波放送されたとき、Twitter上でこんな論争が起きていました。
「ハクは、千尋と別れた後に湯婆婆に八つ裂きにされてしまったのか?」と。

↓Twitterで八つ裂きで検索するとこんなに……
八つ裂き – Twitter検索

八つ裂きにされれてしまった根拠

    Twitter上の「ハクは八つ裂きされた」の主張をまとめると、以下のようになります。

  1. ハクは湯婆婆に「その後(千尋を人間の世界に返した後)あたしに八つ裂きにされてもいいのかい!」と言われていた
  2. ハクは千尋と別れる時「決して振り向いちゃいけないよ、トンネルを出るまではね。」と言っている=ハクは八つ裂きにされる自分の姿を千尋に見て欲しくなかった
  3. ラストで千尋がつけていた髪留めが光っている。これは八つ裂きにされたハクの涙を意味している
  4. お別れの時、千尋は(また会えると思っているため)すぐ手を離すけど、ハクは(もう会えないことを知ってるから)最後まで名残惜しそうに手が画面に残っている
  5. 何より、「この世の絶対的な決まり」が言及されていることが「ハクが八つ裂きにされた」説の大きな根拠として語られているようです。

    • 銭婆は「おまえを助けてあげたいけど、あたしにはどうすることも出来ないよ、この世界の決まりだからね」と言っている。
    • 湯婆婆も「千尋と両親を人間の世界に戻してください!」と頼むハクに「そう簡単にはいかないよ、世の中には決まりというものがあるんだ!」と答えている。

    つまり、この世界のルールは絶対である=ハクが湯婆婆に八つ裂きにされる運命も変わらない、ということ。
    なるほど、これは確かに説得力があります。

    このハクの最期については『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』でも触れらていませんでしたし、公式での明確な見解もないみたいです。
    (「当時の公式サイトにハクの最期の釈明が載っていた」というのもどうやらデマのようです)

    また、『千と千尋の神隠し』は、そもそも「答えを明確に用意しない」作品です。
    観た人それぞれの見解があり、その後の物語にいろいろと想像が膨らむのも魅力の1つなのですから、「絶対にこうだ」と断定するべきではないでしょう。
    (たとえば『紅の豚』において、宮崎駿は「なぜ主人公が豚なのか?」「ラストはどういう意味か?」と質問に「すぐそうやって原因と結果を明らかにしようとする!」などと鬱陶しく思っていたそうです)

    それでも……自分は「ハクは八つ裂きにされることはなかった」という説を推したいです。

    ハクが助かったという根拠

    ハクが助かったという根拠として語られているのは、湯婆婆が坊に「千を泣かしたらばーば、嫌いになっちゃうからね」と言われていること。
    確かに、溺愛している息子の手前、千尋を泣かせてしまうであろう、ハクを八つ裂きにするという酷いことはできませんよね。

    また、個人的には、湯婆婆がハクを八つ裂にするというのは、「この世の決まり」とは関係のない、単なる約束ごとにすぎないと思います。
    上記の「この世の決まり」は、単に「簡単に千尋や両親を元の世界に返すわけにはいかない」「千尋やハクを(魔法で)手助けするわけにはいかない」ということで、「千尋を返したらその代償に死ななければならない」ということは含んでいないのですから。

    湯婆婆は「もし私との契約(弟子になる)を破れば、八つ裂きにする」という約束をハクとしたのではないでしょうか。
    千尋と同じように「名前を奪って」「契約書も書いて」……。

    そう考えると、ハクの「私は湯婆婆と話をつけて弟子をやめる。平気さ、本当の名前を取り戻したから」という言葉にも希望が持てます。

    なぜなら、ハクは「湯婆婆は相手の名を奪って支配するんだ」と言っていたから。
    逆に言えば、湯婆婆の支配(の魔法)は、本当の名前を持っている者には効かないのでしょう。

    この前に、ハクは「千尋、ありがとう。私の本当の名は、ニギハヤミコハクヌシだ!」と、自分の名前を取り戻したことを喜んでいました。
    同時に、このときの千尋も自分の本当の名前を告げられている(取り戻している)んですよね。
    だから、千尋は最後の豚の中から両親を見つける試練にも正解し、契約書もポンッと消えたのだと……。
    (名前を奪われているときは、おそらく正解できない)

    しかも、ハクの中にいた支配のまじないをかけた虫は、千尋に踏みつぶされていましたよね。
    以上のことにより、ハクはもう湯婆婆に支配をされないことが明確なのです。

    だから、ハクは弟子をやめたいと湯婆婆に告げて、千尋と同じように問答に正解し、自由になったのではないかと……そう思うのです。

    記憶は残る

    おそらくハクにとって、(たとえ自分が死ななくても)千尋と永遠の別れになることはわかっていたのでしょうね。
    その想いが、「ずっと画面に残る手」として表れたのではないでしょうか。

    また、千尋がつけていた髪留めの光は(ハクの涙を意味しているという説もありましたが)、個人的にはこの髪留めをくれた銭婆の「一度あったことは忘れないものさ、思い出せないだけでね」という言葉そのものを意味していると思います。
    千尋はハクとは二度と会えないかもしれない、だけど、忘れることはないんだよ、と。


    このトンネルを見つめる千尋の表情に、いくつもの感情が見えるのが、また素晴らしいですよね。

    (C)2001 Studio Ghibli・NDDTM


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  1. いいこま より:

    自分は初めて観た時特に深く考えておらず「きっと逢えるよね…」ぐらいにしみじみと思ってたのがそれから十数年ぐらいしてガチで八つ裂きにされた説を耳にししかも個人的に妙に説得力があったので今に至るまでずっと「希望のある終わり方をした可能性もあるけどきっと八つ裂き…」と信じてました。
    とはいえ「それでもやはり希望を信じてみたい」とは思いますが。明確に描かれておらず解釈が自由にできる仕様なのは本当に幸いなところです。

    あと、我ながら生涯一の作品と思ってるぐらいの作品なのにハクの手が最後まで名残惜しく残ってたり等の描写に関して気づいてなかった辺り随分節穴だと感じてしまいます。

    >また、個人的には、湯婆婆がハクを八つ裂にするというのは、「この世の決まり」とは関係のない、単なる約束ごとにすぎないと思います。
    >>自分の場合あの八つ裂き発言は「実際にやるとは言ってない」ぐらいの感じでとらえてたこともありましたしだからこそ当初は「八つ裂きにはされてないんじゃないかなあ」と思ったほどですが…採用時の契約事項として入れた可能性を見事に失念してたので「なるほど」と思いました。
    >また、千尋がつけていた髪留めの光は(ハクの涙を意味しているという説もありましたが)、個人的にはこの髪留めをくれた銭婆の「一度あったことは忘れないものさ、思い出せないだけでね」という言葉そのものを意味していると思います。
    千尋はハクとは二度と会えないかもしれない、だけど、忘れることはないんだよ、と。
    >>おお、そういう解釈もあったとは。個人的にその方が希望が持てて好きです。
    あと千尋がトンネルを抜けた後に振り返ったとき自分は「きっとまた逢えるよね…」という想いを抱いてたのかなと解釈してたので「油屋の記憶が抜けてても…」の可能性を全く考慮してませんでしたが、何れにせよ千尋がまたいつか思い出してくれたらハクにとって幸いなことでしょうねえ…。

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著者

ヒナタカ

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