『真田十勇士』堤幸彦演出と構造的欠陥を抱えた脚本のコンボ(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『真田十勇士』です。
個人的お気に入り度:3/10
一言感想:
あらすじ
ウソを本当にしてやるぜ!→ウソでも本当でもどっちでもよくなる話。
映画ファンからは蛇蝎のごとく嫌われている、堤幸彦監督の最新作です。
しかし、いくら嫌いな監督だからって、ハナから駄作だと決めつけてかかるのはよくないと思うんですね。
ひょっとすると楽しめるかもしれない、1周回っておもしろいかもしれない。
先入観なしに映画を観て、ちゃんと評価をしようと!と思ったら案の定裏切られたので、ボスにトリッシュを強奪されたブチャラティのような気持ちになってしまいました。やっぱりこいつ嫌いだよ!※画像出展はこちら
本作については『聲の形』に引き続き、ラリーBさんと大いに語っております。
※基本的にド酷評です(この映画が好きな人には本当すみません)
※なんだか酷評するのが楽しくなってヘラヘラしていてすみません
※7分50秒ごろから超ネタバレ注意
もう本当に素晴らしかったですね(皮肉)。
具体的な問題点は以下です。
(1)構造的欠陥を抱えた脚本
(2)安定のTSU☆TSU☆MI☆演出
(3)死者を冒涜する精神性
「チッ」と舌打ちをしながら映画を観たのは初めてです(←周りのお客さんに迷惑なので、絶対にマネをしてはいけません)。
総じてストレスを溜めたい方にオススメと言えますね(棒読み)
さてさて、それぞれの問題点を具体的に書いていきます。
ここがダメだよ『真田十勇士』
(1)構造的欠陥を抱えた脚本
えーとですね、本作は「実在する真田幸村が本当はボンクラで、なあなあでやったことがうまくいっていただけだった!」→「だけどそれを突き通してしまえばいいんだ!」という論理展開がされるんです。
これだったら、「ウソを突き通す」もしくは「ウソを認めて、本物の知将になる」ということが話のゴールになるはずですよね。
しかーし、この映画では終盤で明後日の方向にお話がお進みになりまして、すんげえ不愉快かつ納得しづらいことになるのです。
(2)安定のTSU☆TSU☆MI☆演出
堤幸彦はその過剰な演出やらハズしたギャグなどがおもに批判を受けているポイントですが、今回もそんな堤イズムが大判ぶるまいですよ☆
終盤ではもはや目を疑うような編集がございまして、展開の適当さも相まって怒りのボルテージが上がりまくりました。
(3)死者を冒涜する精神性
いや、これはヒドい。
この映画では戦地の真っ只中で誰かが死にそうになる→ほかの誰かが抱きかかえて号泣する、というダメな日本映画にありがちなシーンが出てくる(←ある意味ネタバレだけどいいや)んですけど、そういうシーンでの悲しみの感情を台無しにする展開が続くので死ぬかと思いました。
中盤までは悪くなかったかも?
そんなふうにド酷評をしながらも、お気に入り度が3点止まりなのは、中盤まではけっこうおもしろかったから。
前述の(1)構造的欠陥を抱えた脚本が終盤になるまで顔を出しておらず、話のテンポもいいためにとりあえず退屈はしなかったんです。
松坂桃李のキレ演技はなかなかだし、大島優子のくノ一はかわいいし(キャラ的には言いたいこともあるけど……)、松平定知のハマりすぎなナレーションもいいではないですか。
そしてG指定で許されている意味がわからない残虐描写がたっぷり。
これはおそらく演出も含め『バトルロワイヤル』『仁義なき戦い』的な深作欣二作品へのリスペクトなのでしょうね。
あとアクション担当の演者さんには、動ける方がたくさんいてよかったですね。
マンガ的なキャラが、現実ではありえねーアクションをしまくるのも楽しいです。
エンタメに徹しようという気概は存分に(むしろ過剰なくらいに)感じられました。
『300』が好きなのね……
ただし、アクションは『300(スリーハンドレッド)』なスローモーションの連続で台無しです。
あのね、『300』のスローは「原作のコミックの絵を「止め絵」として再現する」という目的もありましたし、そのスピード感を相対的に際立たせるという意味でとても効果的だったんです。
だけど、その演出をただ模倣しただけでは、「ふつうにしろや!」とイラつくだけなんです。
しかもアクションのカメラワークも「杜撰」としか言いようがないものだったし……。
堤監督はアクション稽古のときは「ドロンします」という札を置いていなくなりましたとか言ってるくらいなので、アクションのディテールなんてどうでもいいのでしょう。
せっかくのたくさんのエキストラ、巨大なセットももったいないです。
そうそう、この仕事してなさすぎな脚本を手がけたお方は誰かな〜と思ったら、いままでほぼ舞台のみ、映画の脚本を担当されていないお二方でした(そもそも本作は舞台版がほぼ同時に展開されています)。
なるほど、だから誰かがしゃべる→その話を聞いて「と、いうことが言われているのじゃが〜」とほざくという、舞台でしかありえない演出があったんですね。それは映画ではやめてくれませんかね。
あと2時間15分という上映時間もビミョーに長いです。
終盤の展開をタイトにまとめたら、2時間以内に収まると思うんだけどな。
自分は真田十勇士にも歴史にもまったく詳しくないので、単純に娯楽作としての出来を期待していました。
でもまあ、終盤の展開のおかげで総合的にはムカついてしょうがないというのが結論です。
でも、わりとソコソコのレベルでおすすめします。
初登場7位、2週目から9位と、大作映画としては大苦戦しているので応援したくなりました?(疑問系)
『天空の蜂』に引き続き、「なぜ映画ファンは堤幸彦が嫌いなのか」を知れる絶好のチャンスですよ!(そんなチャンスはいらんかもしれんが)
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 文句しか言ってません。『レザボアドッグス』と『スティング』という名作映画のネタバレに触れているのでご注意を。
(C)2016『真田十勇士』製作委員会
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堤幸彦監督作は「自分の審美眼を養うための苦行として」個人的には重要なため、暇があれば観るようにしていますが、
>>※この映画はアニメ映画ではありません。数分後に本編が始まります。
この瞬間にはらわたが煮えくり返りました。じゃあ何のためにこのオープニングにした?ラリーBさんとの動画を拝聴しましたが、「このアニメを作ったスタッフに失礼」の意見には全く同感です。その後合戦シーンはお金と人員をかけた分、「頑張って300ぽくしました」というのが感じ取れたものの、思いの外観れた感がありましたが、エンドロール横で流れる一枚絵には呆れました。自分の作った映画を侮辱してなにが楽しいのか理解に苦しみます。
この映画を見る前に受け付けで、年配の男性2名がこの映画について「そういえば○○が真田十勇士観たけど、くそつまらなかったって言ってたな」と話していたのが耳から離れません。大河ドラマの「真田丸」の評判に乗ろうとして作られた印象のある今作ですが、「仏作って魂を入れず」では興行収入及び身近な評判でも散々たる結果になるのは必然だということを教えてくれた、興味深い映画だと思います。
> >>※この映画はアニメ映画ではありません。数分後に本編が始まります。
> この瞬間にはらわたが煮えくり返りました。じゃあ何のためにこのオープニングにした?ラリーBさんとの動画を拝聴しましたが、「このアニメを作ったスタッフに失礼」の意見には全く同感です。その後合戦シーンはお金と人員をかけた分、「頑張って300ぽくしました」というのが感じ取れたものの、思いの外観れた感がありましたが、エンドロール横で流れる一枚絵には呆れました。自分の作った映画を侮辱してなにが楽しいのか理解に苦しみます。
聞いてくださってありがとうございます。「アニメを作った人に失礼だろ!」の文も付け加えました。
> この映画を見る前に受け付けで、年配の男性2名がこの映画について「そういえば○○が真田十勇士観たけど、くそつまらなかったって言ってたな」と話していたのが耳から離れません。大河ドラマの「真田丸」の評判に乗ろうとして作られた印象のある今作ですが、「仏作って魂を入れず」では興行収入及び身近な評判でも散々たる結果になるのは必然だということを教えてくれた、興味深い映画だと思います。
評判に乗ろうとした根性が見え見えなのが・・・まあそれでは成功しないいい例でしたね。
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