『ポッピンQ』この映画はいったい何なんだ!監督とプロデューサーの発言まとめ(ネタバレなし)

『ポッピンQ』この映画はいったい何なんだ!監督とプロデューサーの発言まとめ(ネタバレなし)

今日の映画感想はポッピンQです。
※1月7日(土)にラジオレビューを公開しました。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:誰が観るんだろう……

あらすじ

中学3年生で短距離ランナーの伊純は、「時の谷」と呼ばれる不思議な世界に迷い込んでしまう。
伊純は同い年の4人の少女と出会い、「ポッピン族」の長老から、世界の危機を知らされるのだが……。

『君の名は。』を歴史に残る特大ヒットに導いたプロデューサーの川村元気さんは、「観客にすり寄ったものはヒットしない」とキネマ旬報のインタビューで語っていました。

なるほど、「これウケるっしょ!」と短絡的にターゲットを決めて作ったものは、結局お客さんに刺さらない、というのは説得力がありますね。
プロデュースという仕事は「クリエイターが作る作品の魅力ありき」なのだと。
まずは作品があってこそであり、観客が求めているものを露骨に追求しても仕方がない、ということを河村元気さんはおっしゃっているんですね。

で、この『ポッピンQ』なのですが、予告編やらキービジュアルやらを見ると、以下のような作品が好きな観客に思い切りすり寄っているように思えます。

  • 中学生たちの青春物語?
  • 『ハリー・ポッター』的に別世界で冒険するファンタジー映画?
  • 『プリキュア』シリーズみたいな3DCGのダンス
  • かわいいマスコットキャラクターがいる?
  • 絵はコテコテの萌え絵で深夜アニメのファンを狙い撃ち?

※主人公の少女は短距離走の選手です。

※異世界ではマスコットキャラがいます。

※そこでダンスをして世界を救います。

うんうん、いろんな要素が見受けられるけど、結局何だかよくわからない

二兎を追う者は一兎をも得ず、いろいろな層をターゲットにしたところで、誰にも刺さらないのは当然のような……。
結果的に本作は全国199館で公開されたにも関わらず初登場で10位圏外、各地でガラガラの声が相次ぐという惨状になりました。

あと、ターゲットがどうこうの前に、この萌えっぽい絵柄と『ポッピンQ』という意味不明すぎるタイトルは人を選ぶ……というかちょっと恥ずかしさを覚えるよね。
この「友達や家族と一緒に観に行きにくい」というのも客足を遠ざけた理由だよなあ……。
ちなみにタイトルは「立ち寄った(POP IN)」と、「不思議な世界での“冒険(Quest)”」を意味しているんですって。

なんでこんなことになったのか……プロデューサーや監督の言葉から考えてみましょう。

『プリキュア』のダンスの技術からスタートした企画でした

本作の監督、原作、プロデューサーの略歴は以下のような感じです。

  • 監督:宮原直樹……『ドラゴンボールZ』で作画監督を務めたほか、『プリキュアオールスターズ DX 3Dシアター』(10分程度の短編)では監督に。『ポッピンQ』が劇場アニメ映画初監督作
  • 原作:東堂いづみ……『プリキュア』や『おジャ魔女どれみ』などの作品で東映アニメーションが用いる共同ペンネームであり、版権管理のために行われる名義。『ポッピンQ』は東堂いづみという原作者名はあるものの、実質的には原作のない完全オリジナル作品と言っていい。
  • 企画・プロデュース:松井俊之……『最終兵器彼女』(実写映画)や『BALLAD 名もなき恋のうた』など、若干アレな映画に携わってきた。
  • プロデューサー:金丸裕……詳細な経歴は不明の若手プロデューサー。

この映画を観た直後は、前述のように「観客にすり寄りすぎじゃね?」、「プリキュア好きの子どもや深夜帯のアニメファンをターゲットにして全て空振りしてんじゃん!」と思っていましたが……。本作のパンフレットのインタビューを読むとどうも違いました。

このインタビューにて、宮原直樹&松井俊之&金丸裕の3名は、『プリキュア』シリーズで培った3DCGのダンスの技術を用いて、まずはダンスをメインテーマとして検討、その後「学園物」「青春」「卒業」というサブのテーマも企画会議で固まってきた、という発言をしています。

つまりは、初めからターゲットを決めて作られていたわげではなく、まずは監督が持っている技術を用いて新たなアニメ作品を作ろうという、純然たる想いがあったのです。
なるほど!すみませんでした!勝手に「ターゲットを狙って空振り」だと決め付けてごめんなさい!

むしろプロデューサーの狙い通りでした

……で、それはいいんだけど、続く松井俊之さんの言葉にはいろんな意味で驚きました。

  • 自分は「東映まんがまつり」のような、「はちゃめちゃだけど何かが出てくるかわからないおもちゃ箱」みたいな映画が好き。
  • マーケティングやターゲッティングが入ったら、絶対にこういう風に振り切れない。
  • 単体なら作品タイトルの意味さえわからないけど、東映まんがまつりっていう箱に入ると、それが魅力的に思えてくる。
  • 作り手がまずは楽しまないと、お客さんに伝わらない。


※「東映まんがまつり」とは、『劇場版のドラゴンボールZ』や『ゲゲゲの鬼太郎』などの子ども向けアニメをまとめて上映する企画で、1990年に実質的に終了した企画。若い人はまず知らない。

つまり、この『ポッピンQ』の「見た目でどういう内容なのかさっぱりわからない」は、「東映まんがまつり」を愛していたプロデューサーの狙い通りなのである!
しかもそのためなら、「ターゲットが誰か」「商業的な成功」はもはや考えてもいない!
いろんな要素盛り込みまくりも自分が楽しいからオーケー!なるほど!観客には伝わっていないけど!

ターゲットはここにあった!

監督およびプロデューサーが本作の参考にしたのは『DOCUMENTARY of AKB48』だったそうです(何作目なのかは不明)。

なぜこの作品に監督およびプロデューサーが心動かされたかというと、「(音楽業界の)裏と表があった」からとのこと。
なるほど、AKB48のメンバーは表向きは華やかだけど、裏ではめちゃくちゃ過酷な練習やリハーサルに耐えているものね。
『ポッピンQ』で楽しくダンスをするだけでなく、そこに至るまでの少女の成長や葛藤を描くという点において、『DOCUMENTARY of AKB48』の影響があるというのがよくわかりました。

で、2012年にプロデューサーらは、その時に流行っていたのが『箱庭アニメ』や『会いに行けるアイドル』(AKB48など)であったと分析。
その時にはイラストレーターの黒星紅白さんとのやりとりにより、物語よりも先にキャラクターも完成していたため、そこから「この5人の少女の成長を見守る物語ならイケる」と確信されていたそうです。

……いやいやいや、結局なんかんだ言ってターゲットを決めているじゃん!
この映画のターゲットは「異世界で冒険する系のアニメのファン」と「AKB48などのアイドルファン」がターゲットと言って差し支えないじゃん!
前者はともかく、AKB48のファンはこの映画を観るんでしょうか……。

スベる宣伝

宣伝もなかなか前衛的でした。

・公開直前~公開後に『Q接近!もっと知りたい!映画「ポッピンQ」の世界』という30分の特番を深夜枠で放送

・人気ゲームライターのマフィア梶田によるネット番組も配信
※マフィア梶田……その強面からも人気で、『シン・ゴジラ』では石原さとみのSP役で一瞬だけ出演されています。

・高知のよさこい祭りとコラボ
※主人公の少女は高知弁を話しています。

女児向けの雑誌『ちゃお』でもコミカライズ版が連載され、単行本も出版済み

裾野を広げすぎである

こういう宣伝は応援したいんだけど……実際に特番を観てみると、各プロモーションが「話題沸騰!」「大きな話題を集めました」と紹介されていて悲しい気持ちになってくるよ。

いきなり大きな目標を掲げすぎでは?

名の知られていないクリエイターの初監督作品であるのに、全国199館という大規模で公開したのもやはり悪手だったのではないでしょうか。

『君の名は。』で大成功を収めた新海誠監督だって、初めは「下北沢トリウッド」という小さな映画館のみで初監督作品を上映しました。
2017年3月にオリジナル劇場アニメ『ひるね姫』が待機している神山健治監督は、『攻殻機動隊S.A.C.』や『東のエデン』というタイトルですでに名前が知られています。
コンビニのチェーン展開だって、まずは着実に集客できる場所から初めて、そこで成功してから全国に広めるという戦略を取っています。
……そういうヒットさせるための「前段階」が、『ポッピンQ』にはなさすぎです。

あと、パンフのインタビューを読むと、199館で公開されて世間が困惑していることに、監督は「ざまあみろ」と思っていたそうです(※映画公開より2ヶ月前のインタビューです)。
……すみません、それでなんで「ざまあみろ」と思うのかさっぱりわからないんですが。大ヒットしてからそういうこと言ってください。

さらに、この監督の「ざまあみろ」に、松井プロデューサーは「監督にそう言ってもらえると心強いです!」と返しています。この人たちこわい。

本編はけっこうおもしろいですよ?

さんざん企画について語ってきたのでそろそろ本編について。
結論から言えばけっこうおもしろかったです。

設定が盛りすぎなのにちゃんと青春成長ストーリーとしてまとまっていて、脚本家の工夫がそこかしこに見えました。
メッセージはこれから卒業を迎える中学3年生向けのものとなっており、教育上もとても良いものでした。中学3年生はこの映画を観ていない気がするけど。

背景の画も綺麗ですし、短い上映時間ながらキャラクターの描き分けはできているし、敵キャラのデザインは好きだし、売りの『プリキュア』な3DCGダンスもさすがのクオリティでした。
スタッフの血の滲むような努力がそこらじゅうに見えるので、本気で応援したくなってくるのだけど……。

難点も多い作品でした

本編の難点は、尺が足りなさすぎて唐突なシーンやツッコミどころがあること。
各キャラクターのエピソードのバランスが悪いことも気になります(主人公はたっぷりの時間を使って描かれるけど、ほかのキャラは数十秒程度しか描かれない)

これには理由があって、ほかのキャラは無料で読めるスピンオフのコミックでそのエピソードが紹介されているのです。

さらに恐ろしいことに、松井俊之プロデューサーはこの『ポッピンQ』は1作で終わらずにさらに派生作品を作れると公言、監督も後8本は作れるとも語っています。
いや、その心意気は素晴らしいんですが……。

そもそも、中学生の悩みが描かれたり、唐突に世界を救うことになったり、そのために珍妙な衣装を着てダンスをするという流れが素っ頓狂すぎて、「この映画はいったいなんなんだろう」という疑問がふつふつと湧いてきて、それが大きなノイズになっているんですよね。
いや、それも映画の魅力なのですが……。

そして、終盤にはご都合主義とか超展開とか、そういう言葉では足りないトンデモな「試練」が襲いかかります
まあこれも個人的にはおもしろいと思ったんだけど、普通に見たら雑な展開にしか思えないよ!

また、メッセージが直接的すぎて説教くさくなっているのも玉に瑕。
終盤のナレーションがなくても、ちゃんとメッセージは観客に伝わりますよ。

衝撃のエンドロール後!

なんかんだで、自分はこの『ポッピンQ』という作品が好きです。
盛りすぎな設定も「とにかく楽しい作品にしたい!」という気概が伝わるし、なにより壮絶なコケっぷりが愛おしくてしょうがなくなりました。

なにより、パンフレットのインタビューに溢れている狂気は映画本編よりもおもしろかったです。
↑にいろいろと紹介しましたが、これでもだいぶ省略していますからね。
ネットでもプロデューサーのインタビューが読めてそれはそれでおもしろいのですが、やはりパンフに比べればパンチが足りません。是非みなさんにもパンフを読んでほしい!

そして、エンドロール後のおまけはアニメ、いや映画史上に残る衝撃でした
その興奮とおもしろさは『シックス・センス』のどんでん返し、『セッション』のラスト、『貞子VS伽倻子』のみんなが幸せになったオチを超えるほどでした。
これだけでも、本作をリアルタイムで劇場で鑑賞した価値がありました(皮肉ではありません)。

ラジオで狂気を語りました

ブロガーの光光太郎さんと語ったラジオレビューを公開しました!16分ごろからネタバレです。

※ラジオを聞いてくださった方から、中学3年生はこの映画の公開中は受験の追い込み時期だから映画を観る余裕なんかねえよという素晴らしいツッコミをいただきました。

まとめ

いろいろ書きましたが、本作『ポッピンQ』がいかなる作品かわかりましたでしょうか?無理ですよね?
プロデューサーの発言を読んで、こうしてまとめてみても混沌としすぎです。
改めてわかる、このいろんなものをぶち込んだ闇鍋感。これこそが『ポッピンQ』の魅力なのです!(断言)

プリキュア好きの子ども、AKB48ファン、異世界に旅立つ系のアニメ、東映まんがまつり好き(←これが一番意味不明)、中学3年生などの観客にすり寄っている作品ですが、個人的には『エンジェルウォーズ』が好きな映画ファンにもおすすめしたいですね。

【ポッピンQとエンジェルウォーズの共通点】
・監督が好きなものを作品に詰め込んで煮詰めている
・制服姿の美少女が異世界でなんでもありの大活躍!
・鬱積した想いを抱えた美少女が成長していく
・世間的な評価は賛否両論
・興行的にコケた

ほかにも、

  • 「少女が異世界に急に飛び込んで成長する」というのは『千と千尋の神隠し』と同じ
  • 「田舎の暮らし」「方言を使う少女がいる」「タイアップ曲がある」「時間というテーマがある」、というのは『君の名は。』にも通じる

と、大ヒットアニメを彷彿とさせる要素もありました。うん、それでなんでコケちゃったんだろう……(わかっているんだけど)

最大の問題は、公開から2週間が経った1月6日(金)で早くも上映が終了する劇場が多いことである!
関係者は「これはイケる!」ということで、2017年1月公開の予定を前倒しして正月映画にしたらしいんだけど、それも裏目に出ているよ!(テーマ的には卒業シーズンに観るべき内容だし)

……これは由々しき事態です。こうした失敗作こそ、リアルタイムで観る価値があるのではないでしょうか!
『ファイナルファンタジー』(映画)や、『ジョン・カーター』は心の底から観てよかったと思った映画だったし!(皮肉ではありません)
なにより、エンドロール後の衝撃を体験できるのは今だけ!ぜひぜひ、劇場でご覧ください!

※主題歌はいい曲だと思う。これが『逃げ恥』の“恋ダンス”くらい流行ればなあ……。

(C)東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016

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  1. Hira2 より:

    はじめまして、いつも楽しく映画の感想を見ております。
    ポッピンQの感想は特に楽しみにしておりました。

    ポッピンQは個人的には楽しめたのですが、ツッコミどころも多く
    これはガチなのか、それとも分かっていてあえてやっているのか、
    あるいは尺の都合上かアイデアが無かったのかはともかく、仕方なくやっているのか、
    よく分からないところが多くて評価に迷っています。
    結局、楽しんだ者勝ち・・のような気がしないでもない雰囲気の話ですが(笑)

    ポッピンQのプロモーションで引っかかるターゲットといえば
    マスコットキャラのカワイイ活躍も受け入れることができる
    純粋にプリキュアを楽しめる成人(必ずしも深夜アニメ層と一致はしません)ぐらいしか思い当りません。
    深夜アニメ系のキャラデザを除けば、ほぼプリキュア発展系の話の印象をプロモーションから受けました。

    http://www.inside-games.jp/article/2017/01/03/104491.html
    上記インタビューの”ダンスは言葉よりも先に生まれた”のくだりのエピソードを設定に上手く組み込めば、
    もっと面白い話が出来たのでは?とも考えましたが、
    盛り込みすぎでハチャメチャな設定も売りとなると、あまり真面目に考察しない方が良いのかな?
    とも思っております。

    ちなみに、一緒に見に行きましたプリキュア世代真っ只中の子は

    続きが見たい!もう一回見たい!

    と大変満足しておりました。
    流石に下の3歳男児は退屈そうでしたが(笑)

    ポッピンQはいろんな意味で面白いので
    厳しいかと思われますが続きが見れるよう応援しております(笑)

    • hinataka hinataka より:

      はじめまして!楽しみにしていただいてありがとうございます。
      ネタバレ部分を書いていなくてごめんなさい(見ている人が少ないと思ったので・・・)やっぱりツッコミをまとめた音声のレビューか、ネタバレ部分のどちらかを追記します。
      ツッコミたい部分が多すぎたもの・・・・・・。

      ご家族でご覧になったのですね!プリキュア世代の子がうらやましいです。
      本当にいろんな意味でおもしろい映画ですよね笑。

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ヒナタカ

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