『pk ピーケイ』社会のシステムに向けて(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『pk ピーケイ』社会のシステムに向けて(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はpkです。

個人的お気に入り度:8/10

一言感想:ありがとう、pk!

あらすじ

留学先のベルギーで大きな失恋を経験したジャグーは、母国インドのテレビ局で働いていた。
ある日ジャグーは、黄色いヘルメットを被って大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の装飾を身に付け、「神様行方不明」と書かれたチラシを配る奇妙な男を見かける。
ジャグーは「pk(酔っ払い)」と呼ばれる男に、なぜ神様を探しているのかと聞こうとするが……。

日本でも口コミによりヒットした『きっと、うまくいく』のラージクマール・ヒラーニ監督と、インド映画界のスターであるアーミル・カーンが再びタッグを組んだ作品です。

本作でも『きっと、うまくいく』でも、ヒラーニ監督の精神性は共通していました。
それは、一定のコミュニティに根付く酷いシステムを批判するだけでなく、そこで生きる人たちに正しい道を示してくれるということ。

『きっと、うまくいく』では「格差が著しいインドでの大学の制度」を、
『pk』では「宗教の中にある矛盾」を明確に批判しています

舞台であるインドは、イスラム教やキリスト教や仏教を始め、たくさんの宗教が混在している場所です。
それを批判するというのは、とても勇気がいることでしょう。

実際に本作は、ヒンドゥー教を冒涜しているとして、一部で上映禁止運動が起こったりもしていました。
そのような危険性があるのにもかかわらず、この難しい題材を取り扱ったのは、作り手の「酷いシステムの中で苦しんでいる人たちが、少しでも救われてほしい」という想いがあったからに違いありません。

本作の主人公は、誰もが考えなかった発想で、宗教の矛盾を指摘し、論破していきます。
これが心地よく、エンターテインメント性に満ちているだけでなく……普段そうした矛盾に満ちた社会の中で生きる人に、エールを送っている……
その作品に根付く精神性がとにかく素晴らしいのです。

なお、宗教という題材は日本人には響きにくいと思う方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
『pk』で批判されるのは宗教そのものではなく、あくまで「システム上の矛盾点」なのですから。

日本でもオウム真理教などの間違った価値観を持つカルト宗教が存在していましたし、そうしたことでなくとも、学校や社会のシステムで「これおかしくねえか?」と思っている人すべてが共感できるようになっています。

映画は娯楽ではありますが、人の生き方や価値観を変える力をも持っています。
『pk』も、そのなかの1つと言えるでしょう。
本作を観たあとは、きっと世の中に根付く悪しきシステムについてを考えるきっかけになり、前向きになれる勇気ももらえるはずです。

さらにさらに、宗教の矛盾点への批判という「社会派映画」としての一面以外にも、ラブストーリーやコメディ要素、インド映画ならではの歌や踊りもとても楽しく仕上がっているのが素晴らしいんだ、これが。

インド映画になじみがない人は多いでしょうが、本作は娯楽性バツグン、老若男女の誰にとっても楽しめる作品であり、一切躊躇せずに観に行って大丈夫!と断言します。(ちょっとだけ下ネタがあるので、さすがにあまり小さい子には勧めませんが)

気になる点としては……『きっと、うまくいく』でもそうだったのですが、主人公があまりに破天荒なことをするばかり、犯罪行為にまで手を染めているので、人によってはちょっとモヤっとしてしまうことでしょうか。
その犯罪行為も、社会の悪しきシステムに比べたらかわいいものなので、気にしなくてもいいとは思うのですけどね。

ともかく、『pk』は笑って泣けて、現実でも生きる勇気がもらえると、映画の醍醐味が存分に味わえるすんばらしい作品です。
2時間32分と上映時間は長め(インド映画としては短め)ですが、退屈なシーンはいっさいなく、その長さを感じさせません。ぜひ、劇場に足を運んでください。

野暮な不満点

オープニングでpkが宇宙人だったといきなりバラしてしまったのはちょっと残念だったかな?
どうせならジャグーといっしょに、「本当にこいつ宇宙人なの?」と疑心暗鬼になってみたかったので。

また、pkがいろいろ劇中で盗みなどの犯罪を働きまくりで、それらを反省していたり、お金を返していないのはやはりモヤっとしますね(奪ったお賽銭のお金はジャグーが返していたけど)。
知り合ったばかりのジャグーに、pkは「僕は物を奪われてばかりだったけど、君はくれた、信用できる人だ」と言っていましたが、どの口がそれを言えるんだと(笑)。
物乞いの盲目の男性のお金を、pkが勘違いして持って行ったのはさすがにちょっと嫌だったなあ……まあこれも、「pkにすら気づかない社会のシステムがあった」という描写でもあるので、一概に悪いところとも言えませんけどね。

ジャグーとサルファラーズが別れていたのは誤解によるものだったのですが……
その誤解の元になった、ジャグーに猫を預けていた女性が結局救われていないよなあ……。

あと、インドではあんなにみんなカーセックスしているもんなんでしょうか(笑)。いや、コメディ的な誇張だとは思うけども。
まあヤっているカップルの物が盗まれても特に同情しないからいいよね☆

兄貴ィ!

「兄貴分」の男性がめっちゃいい人だったのが大好きでした。まあはじめにpkをひき逃げにしたのに、ごまかしていたけど(笑)。
兄貴からすればpkは「困ったやつ」なのに、たびたび騒ぎを起こすpkをかくまったり、手をつなぐために女(大人のお店)を紹介してあげたりするんだもんなあ。
このときのミュージカルシーンも大好きです。

宗教の本質

もうね、pkによる数々の「宗教における(電話の)かけ間違い」の指摘は痛快愉快。
テレビに出演したpkの言葉は「その通りだ!」と膝を打つ思いでした。

pkは、教祖の「神のいない世界は幸せか?お前は人の苦しみがわかるのか?」という問いに、こう答えます。

「あなたは正しい。神様を信じていていると、希望が湧いてくるよ。
だけど、神様は2人いる。創造主の神と、あなたが作った神だ。
創造主の神は信じるだけでいい、その神は自分で自分を守ることができる。
あなたが作った神は、あなたにとてもよく似ている。
2人の神様の違いを作ったのは、人間だ。
あなたの神は、消えろ」

この前にpkは、テロにより兄貴と呼んでいた男性(と盗みの犯人)を失っていました。

そうであるのに……pkはここで、「神様を信じていると、希望が湧いてくる」と、宗教そのものを肯定しています。
さんざん神に祈っても、pkの想いは叶えられることがなかったのに……それどころか、宗教による価値観により、愛する人を失ったのに!

pkは宗教による悲劇を経験したが、決して宗教そのものを否定しにかからず、あくまでその中にある間違ったことを糾弾する!
ここに、本作のなによりも尊い精神性を感じました。
(神様をずっと探してきたことで、pkは前向きに行動できるパワーを手に入れて、結果的にリモコンを見つけ出せたことも事実ですしね)

学んだウソ

pkは宇宙人なので、「ウソ」という概念を知りませんでした。
だけど……pkはジャグーの声だけを録音しているほどに恋をしていたのに、ジャグーには「テープには風や鳥の音を録音した」というウソをついていました。
pkはジャグーとサルファラーズの幸せを願って、自ら手を引いたのです。

思えば、中盤のミュージカルで歌われていた「恋は時間のムダ」というのも、自分の恋する気持ちに対してのウソのようなものですね。
新しい価値観で世の中を変えたpkが、自身も新しく「愛する人のためのウソ」を学んだことにグッときました。

幸せ

ジャグーとサルファラーズのラブストーリーとしても素晴らしいですよねえ。
彼らは、有名人の講演会のチケットをダフ屋から買うために結託します。
老人に騙されても、その人物には後で親交の証のキスをしていました。

彼らが別れてしまったのは、単純な誤解のせいでした。
その誤解=「かけ間違い」を正すことが、いままで宗教の間違いを指摘してきたpkの行動とシンクロしていることも見事!

pkのように物事の見かたを変えると、社会への問題を訴えることだけでなく、恋を成就させることや、ほんの小さな幸せも手に入れることができるのかもしれませんね。
それはたとえば、ジャグーの父親が、彼女が子どものころと同じように、指笛でエールを送ってくれるような……。いやはや、最高です!

(C)RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED

publicShare

theatersタグ

chat_bubbleコメント

コメントを残す

* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。
メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。

著者

ヒナタカ

カテゴリ

文字から探す

レビュー点数で探す

extensionその他サイト

あわせて読みたい

この記事を読まれた方によく読まれている記事です。よろしければこちらもご一読下さい。

vertical_align_top