映画『のぞきめ』ジャパニーズホラーの復活?(ネタバレなし感想+微ネタバレレビュー)

映画『のぞきめ』ジャパニーズホラーの復活?(ネタバレなし感想+微ネタバレレビュー)

今日の映画感想はのぞきめです。

個人的お気に入り度:5/10

一言感想:こういうJホラーが観たかった(これで終わるかも……)

あらすじ

テレビ局でアシスタントディレクターをしている三嶋彩乃(板野友美)は、成り行きで青年の怪死事件をリポートすることになった。
異様な死に方をした青年の死の真相を知るため、彩乃は恋人の津田信二(白石隼也)ともに山奥の村へと向かうのだが……

トリハダ』シリーズなどを手がけてきた三木康一郎監督によるホラー映画であり、三津田信三の同名の小説を原作とした作品です。

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自分は映画を観た後に小説を読んでみたのですが、うまく万人受けのホラー映像作品へと方向転換ができていることに感銘を受けました。

小説の後半部分は村で起こる怪異事件を懇切に描いているのですが、映画ではそこをほぼカットしています。
小説では「怪談が起きる理由を論理的に解き明かそうとする」という『残穢【ざんえ】 ‐住んではいけない部屋‐』と同じ魅力が大きかったのですが、映画ではいい意味で直接的な恐怖描写に比重を置く作品になっています。
小説では「語り手」という男性小説家の1人称で語るスタイルでしたが、映画では若い女性へと主人公が変わっています。

乱暴に違いをまとめれば、
小説は、その場所に根強く残る怪談を膨大な情報量で語る作品。
映画は、都会という日常で起こる恐怖をクローズアップした作品。
と、いったところでしょうか。

このような方向展開をしつつも、ちゃんと原作のエッセンス(怪談を深く掘り下げていく内容)を拾い上げているのが本作のうまいところと言えるでしょう。

さてさて、この映画単体を端的に語れば、ちゃんと怖くて、ちゃんとおもしろい!という印象です。

なんで「ちゃんと」と言っているかというと、最近のジャパニーズホラー映画は『クロユリ団地』『劇場版 零~ゼロ~』『劇場霊』『貞子3D(笑)』『貞子3D2(ホラー史上もっともつまらない)』など、怖がる前に笑うしかない作品ばっかりだからです。
個人的にはそういう失笑ホラー(仮)は好きというかむしろ大好物なんですが、「ちゃんと怖がらせてくれよ!」という方は多かったと思うんです。
※小規模公開だった『アイズ』は良作だったそうです。

だけど、安心してください。
本作は「怪談(または都市伝説的)を調べるうちに底知れない恐怖に遭遇する」というホラーの定石をたどりつつも、笑いなしでちゃんと怖いシーンがあるのですから。
これは基本となる脚本、演出、音楽、そして恐怖描写それぞれがすべて丁寧であるからでしょう。
「ジャパニーズホラーが復活!」ということには、喜びを禁じ得ません。

感心してしまったのが「恐怖の対象に幼い女の子がいる」こと。
ふつうだったら幼い女の子がその辺にパッと現れてもぜんぜん怖くないと思うのですが、この映画ではそれでもちゃんと怖くなるような工夫がされているのです。
ていうか……たとえ幼女でもあんなことになったら怖いに決まってんだろ!


※衝撃的すぎてテレビでは流せなかったCM。マジで夢に出そう。そして本編の微ネタバレ注意。

そしてメインとなる恐怖は“誰かに見られている”ことなのです。
部屋にいて“誰かの視線を感じる”という恐怖は誰もが体験したことがあるでしょうが、本作ではその普遍的な恐怖が「直接的な恐怖」として描写されているのです。

たとえばホラーサメ映画を観ても「サメは部屋に来ないから大丈夫だわ」と思えるのですが、この映画で描かれた“誰かに見られている”という要素は「そういえば自分の部屋でも……」と思ってしまうのです。

また、物語の根底には怪談や超常現象ではなく、人間の醜さがあることも魅力のひとつ。
それでいて、日常に根ざした恐怖を描いていることこそが、『のぞきめ』のおもしろさであり、怖さと言えるでしょう。

もちろん不満もあります。

主演の板野友美さんの演技は決して下手ではないのですが、舌足らずで台詞が聞き取りにくいところがあるうえ、そのほわほわした雰囲気が緊張感を削いでくれています。
あのアヒル口の顔のアップがあるとなんだか笑ってしまうしなあ。

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※主題歌はハマっていましたよ。

アイドルを主演にするのは集客力を高めるために致し方のないところもあるのでしょうが……板野さんはホラーには合わない方なんだと思い知りました。美人すぎて新人AD(アシスタントディレクター)には見えないしね。

なお、脇を固める若手役者である白石隼也さんや入来茉里さんはホラー作品に似合った“おびえる”演技がものすごくうまく、存在感も抜群だったのでご安心を。

宿屋の主人として30秒くらい出演するつぶやきシローの演技がめっちゃうまかったのも好感度が高いですね(笑)。
その“表情の変化”を見逃さないでください。

吉田鋼太郎さんは安楽椅子探偵的な役割なので、あまりその活躍には期待しないほうがいいかもしれません。

原作を意識したせいもあるのでしょうが、終盤の展開はちょっと肩すかし。
細かいツッコミどころも散見されるので、決して絶賛はできないところはあります。

また、恐怖演出が直接的すぎるきらいもあります(大きい音で驚かせるだけでないのはよかったのですが)。
黒沢清監督作品のような「じわじわ」な恐怖演出があってもよかったですね。

そんなわけで、ホラーとしてはそれほど新しいことをしているわけではないですし、ところどころで詰めの甘さを感じるものの、「スタンダードなジャパニーズホラーが観たい!」という方には大プッシュでオススメできる作品になっていました。

ぜひ、前述の『貞子3D』などで「ジャパニーズホラーはもうダメだ!」と思っている方こそ観て欲しいです。
6月公開の『貞子vs伽椰子』はギャグになるのはほぼ確定なので、純粋に怖いジャパニーズホラーを観られるのはこれが最後かもしれませんよ!

※まずプロモーションがギャグだしね。

また、板野友美主演なのでファンの子どもも観ると思うのですが……中学生以上じゃないと怖すぎて泣いてしまうんじゃないでしょうか。
G(全年齢)指定ですが、わりとエグめな死体の描写もあるので、PG12指定と考えても問題ないでしょう。
一人暮らしの大人にとっても怖すぎるかもしれませんが……それでもおすすめします。

以下はほんのちょっとだけネタバレ↓
本作は観ている人がそれほど多くないと思うので、ちょっとした不満と原作との違いを書く程度にとどめています。それでも人によっては十分ネタバレと言えるのでご注意を。

野暮な不満点

民俗学者の四十澤は「のぞきめは覗くことしかしないんだよ」と言っていたんだけど、劇中でのぞきめは泥で窒息死させようとしていたやんけ

“腹がねじれて死ぬ”ということにおいては、“のぞかれた結果、その人の行動によりそうなってしまう(階段で転ぶなど)”ため、「のぞきめは覗くことしかしない」という言動には納得できるんだけどなあ。

また、“腹がねじれて死ぬ”は、原作では生き埋めにされた母親が、同じく地中にいる娘を地中に押し出すために渾身の力を入れた結果、腹がねじれてしまったというふうに説明されていたのですが、映画では母親が刃物で殺されたときにねじれた、と変更されていました。
“殺されたものの恨み”を見せる重要な要素だったので、そこは変更しないでほしかったかな。

のぞきめは伝染する

うまくできているのは、のぞきめに“見られている”人物が”ひとりずつ”になっていること。

初めの犠牲者である青年が亡くなる以前、岩登和世は何かに怯えていたものの、のぞきめは見ていませんでした。
しかし、青年が亡くなった後、和世は自室にこもり、病院でしっかりとのぞきめを目撃します。

和世が亡くなった後、彩乃は信二の部屋で“あるもの”を見てしまうのですが、それはのぞきめではありませんでした
しかし、部屋に帰ってきた信二は、自身がのぞきめに見られているということをはっきりと口にします。

そして、信二が半狂乱となって入院してから、やっとのぞきめは彩乃のもとに現れるのです。
まるで、ひとりずつ、ゆっくりと“憑り殺す”ように……

いま思えば、終盤にのぞきめが「助けて……」と言ったことも“罠”だと思えるんだよなあ。
本作は、“論理的に説明できること”と、“解明できない不条理さ”がいいバランスで混在しており、それが恐怖を作り上げていますね。

また、原作ではのぞきめにより村の女性たちが狂っていったことのほか、呪いを論理的に解明しようとする描写が多くあります。
映画でモヤっとした方は、ぜひ読んでみてほしいです。

ちなみに、映画の主人公とその恋人は小説には登場しないオリジナルキャラクターですが、“三嶋彩乃”と“津田 信二”の名前を合わせて“一”を足すと、原作者の“三津田信三”という名前になります。
どうしてこのような名前になっているかは……観終わったらすぐにわかりますね。

おすすめツッコミレビュー(ネタバレ全開注意)↓
ツッコミどころの嵐 – ユーザーレビュー – のぞきめ – 作品 – Yahoo!映画

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(C)2016「のぞきめ」製作委員会

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  1. > たとえばホラーサメ映画を観ても「サメは部屋に来ないから大丈夫だわ」と思えるのですが
    でも「トマトは部屋にあるから大丈夫じゃないわ」とか考える人はいないでしょ…。
    というか、サメやトマトは物理的なホラーであり、本作は論理的(概念的)なホラーだから、そもそもの扱いが違うような…。

  2. […] そのほかでは、世間的には酷評され気味な『X-ミッション』、『のぞきめ』、『テラフォーマーズ』、『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』、『スーサイド・スクワッド』もわりと好きな映画です。インデペンデンス・デイはもう内容を覚えていないけど。 […]

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著者

ヒナタカ

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