『二ノ国』がアニメ映画史上に残る何かになった理由を10000字以上かけて全力解説する(ネタバレなし+ネタバレ感想)

『二ノ国』がアニメ映画史上に残る何かになった理由を10000字以上かけて全力解説する(ネタバレなし+ネタバレ感想)

今日の映画感想は二ノ国です。

個人的お気に入り度:0/10

一言感想:ファンタジーで逃げてんじゃねえ!

あらすじ

ファンタジー世界に行ったり現実世界に戻ったりしながら「いのちはだいじに」を学びます(反面教師的に)。

どうしよう……結論から申し上げますが、今年ぶっちぎりワースト候補の映画、いやアニメ映画という括りではこの世でいちばん大嫌いな映画に出会いました。
このブログで0点をつけたのは『ギャラクシー街道』以来です。
観ている間じゅう、もう死んだ魚の眼になっていましたから……(理由は後述しますが最後には激怒)。

そんな訳で、ここでは映画『二ノ国』を容赦無くメタメタに酷評します。映画本編および原案が好きな方には不快に感じる可能性があります。ご了承ください。(ゲーム原作という触れ込みだけどストーリーなどは別物なので原案の方が近いと思う)

アルティメット駄作の理由を箇条書き

もう本作の問題点は挙げればキリがないレベルなので箇条書きでまとめます!

1:映画史上残るご都合主義の満漢全席

本作の問題点の筆頭です。2分に1回くらい納得できないあれこれが発生するため途中から全てがどうでもよくなり感情が無になりました
もうツッコミどころが多いどころかツッコミどころのないシーンのほうが少ないレベルで全てを指摘するのは不可能です。
さらに終盤にはさらなる陳腐な展開が訪れるコンボ。映画館で気が遠くなる体験をしたい方はぜひどうぞ。

2:セリフで説明しすぎ

本作は色々な展開が2時間以内の時間で詰め込まれているので序盤はまあ退屈しないんですが、終盤は状況をただただ説明しまくり、しかも作品のテーマもベラベラとおしゃべりになられるので感情が無どころか死を迎えるんじゃないかと思いました。

3:登場人物の誰にも感情移入ができない

本作には高校生の男2人女1人という細田守監督版『時をかける少女』のような三角関係が描かれています。オープニングはいい感じだと思っていたら、序盤と中盤に「お前は一体何を言っているんだ」な狂った言動を吐き出すので、これまたどうでもよくなりました。

4:永野芽郁の声の演技およびキャラとのミスマッチぶりが酷い

これも相当にキッツい要素。もう棒読みというか絵面と合わなすぎて苦痛を感じるほど、会話が頭に入って来ないレベルです。
永野芽郁自身も1人2役に挑んだことに「本当に難しすぎてもうやれないかもと思いました」と答えているのですが、1人2役以前の問題だし、永野芽郁本人も気に病んでじゃないかと思うほどで、かわいそうになってくるよ!

誤解のないように言っておくと自分は永野芽郁がすごく大好きで、実写映画『俺物語!!』や『帝一の國』の彼女は最高!って褒め称えるくらいです。
でもその声はうわずっているというかホワホワした独特のクセがあるんですよね…根本的に声だけの仕事に彼女は向いていないと思います。キャスティングした人の責任です。
ところで、永野芽郁は過去にも『キング・オブ・エジプト』の吹き替えも大不評を買ってたのに、何で同じ轍を踏むんですか?宣伝のためならなんでもいいんですか?(だろうな)

5:作画も全くもってよくない

物語として完全に破綻している、ヒロインの声の演技とミスマッチぶりが酷いだけでもキッツいのに、さらにアニメとしてのクオリティも低いということに絶望しました。
普通に作画が崩れていたり、キャラの表情の変化に乏しくて(永野芽郁以外の悪くはないボイスキャストとも)声優の演技や口の動きとミスマッチなところもあるんです。

Twitterで教えていただいたんですが、作画の酷さは『二ノ国』制作していた頃のOLM(製作会社)が仕事抱えすぎなのが原因であり、映画3本(ポケモン、妖怪、二ノ国)、TVアニメ11本(ポケモン、妖怪、イナイレ、ここたま、ヴァンガード、シンカリオン、ゾイド、ピカちんキット、ベイブレード、MIX、ゴンじろー)の制作を抱えていたのだそうです。
そしてエンドロールを(死んだ目で)見てびっくりしたのですが、20人を超える作画監督がクレジットされているんですよ。
いやー…スケジュール過密のせいで、人海戦術に頼らざるを得なかった、おかげで作画のクオリティを維持できなかった現場の惨状が、それらの事実はもちろん実際の作品から伝わってくるなー。
OLMは実写映画版ジョジョのスタンド(超能力)のCGが素晴らしかったので応援したいのだけど…。

6:テーマに誠実に向き合ってない

予告編などでは「どちらかを救えば、もう一方は死ぬ」「愛する人を救うために“命”を選べ」という究極の選択があることが示唆されています。
なるほどこれは描くに足るテーマですし、そこにどう落とし前をつけるのかは見所の一つだと思っていましたがふざけんなよマジで脚本書いたやつが命を一番ナメてるだろ
で、そのくせ「命は大切なんだ〜」な感じのテーマをベラベラと繰り返ししゃべり倒すんですよ。テーマを声高に叫ぶのに、そのテーマに誠実に向き合っていないどころか欺瞞と矛盾に満ち満ちているという僕が最も嫌悪するタイプの作劇でした。
そしてその不誠実さとご都合主義と陳腐な展開の合わせ技。もうすげえ!逆にすげえ!

7:ファンタジーおよび障害者の向き合い方が不誠実で不愉快極まりない

これはもうどう言おうがネタバレになるので詳しくは後回しにしますが、とにかくファンタジーおよび障害者への向き合い方としても最低最悪なんですよ。
これは教育上というか道徳的にも酷く、子供には心の底から見せたくありません。

8:結末が地獄

観ている間じゅう感情が無(または死)から動かないなと思っていたら、最後に血ヘドを吐きそうなほどに激怒するとは思いもしませんでした。
これもまた障害者への向き合い方として無神経そのものだし、しかも話の筋も通らなすぎて納得できないどころか意味不明。なんなんだもう…。
(このラストは肯定的に捉えられている方もいて、その気持ちを否定する気は毛頭ないのですが……)

間違いなく日野社長のせいの理由を箇条書き

ここまでの全方位的に酷いアルティメット駄作になった理由はなぜか、それは製作総指揮と原案・脚本を担当した日野晃博の責任と言ってほぼ間違いないでしょう。
大変素晴らしいことに(皮肉表現)、そのインタビューを読むとそりゃあ酷い脚本が出来上がるわなと納得できました。これもまた箇条書きにしましょう。

1:映画とゲームでは脚本の書き方に差異はないと言い切っている

日野晃博は「ゲームと映画の脚本の考え方で意識することは?」という問いに「お話作りは基本的にどっちの場合であっても、純粋に面白いものを作りたいと思って考えるので違いはありません」と答えています。ゲームと映画は表現方法が全く異なるんだからそこは変えなきゃダメだろ!

確かに、この映画『二ノ国』は、どこかに行くとイベントが起こるというような、不自然に説明くさく、悪い意味で映画的でない話運びが散見されます。
それはゲームでは違和感がないかもしれないけど、演出の機微でこそ語る映画ではそれは悪手でしょう…。
おかげさまでキャラに血が通っているようには見えない、演出の“タメ”に乏しく、薄ぼんやりとした空虚な印象だけが残るようになっている……なるほど前述の「2:セリフで説明しすぎ」「3:登場人物の誰にも感情移入ができない」の理由がハッキリとわかりましたね。

ちなみに、別のインタビューで日野晃博は「ゲーム、映画、TVアニメのそれぞれで、物語の作り方やどうすれば面白くなるかはセオリーが違うと思っています」とまるで正反対のことも言っているのですが、それはあくまで映画ために考えたキャラクターなどの“設定”に向けたコメントでした。その意識を脚本に向けてくれよ

2:久石譲から問題提起をされ脚本をイチから書き換えていた

日野晃博が当初に書いた脚本は“王宮ミステリーから始まる壮大な王国サスペンスみたいなもの”であったそうです。過去に『レイトン教授』(劇場版アニメもある)シリーズという推理ものを手がけていたので、なるほどそのアプローチは納得できますね。

しかし、楽曲を担当した久石譲から「(今まで『二ノ国』のゲームを一緒に作ってきて)ゲームの魅力は一ノ国と二ノ国を行ったり来たりするところだったのでは?」と言われて、脚本をイチから書き直したという経緯があったのだとか
これもなるほど、すでにファンもいるゲーム版にあった大事な要素を削ぎ落としていいのか?という久石譲の指摘はもっともですね。

でも……実際に出来上がった脚本ではその久石譲の問題提起により、イチから設定したはずのその現実世界とファンタジー世界と行ったり来たりするルールがガッバガバで全然納得できないんですよ。
日野晃博は「スケジュール的にも少し余裕ある形でいろいろな試行錯誤ができた」と言っているんですが本当かよ。絶対もっとブラッシュアップできただろ!
これも聞いた情報なのですが、日野晃博は他のゲームやアニメ作品でもほぼワンマン体制で脚本を作っており、他の人の助言を事細かに聞いていないのではないか?という疑惑があるようです。今回は偉い人に言われてちゃぶ台返し的に脚本を書き換えたけど、後はホウレンソウなどせずに全部自分で考えたということなんだろうな…。

ちなみに、実際の本編でも“王宮ミステリー”的な要素は少し残っていたのですが、そこも推理ものとしても適当すぎて憤慨するかと思いました。
元々の脚本のままでもきっと大惨事なのは変わらなかったんだろうな。

3:障害への意識の無さがハッキリ見えるコメントもしている

日野晃博は、現実世界では足が不自由で車椅子に乗っている主人公に「どうしてもファンタジー世界の二ノ国に行きたい」と思わせる理由づけとして、「二ノ国の姫を好きになること」と「現実世界では不自由な体も自由に動けるようになる、そうなると「ずっと二ノ国にいたい!」と思いますよね」とおっしゃっております。

つまり、足が不自由という障害を物語上の“道具”としてしか見ていないという、日野晃博の障害への意識の無さがハッキリと見えるんですね!
100歩譲って発想の根元がそうだとしても、やりようによってはセンシティブな障害を扱う上で誠実な作劇ができたと思うのですが……実際の本編を見れば特に何も考えてねえなコイツということがとってもよくわかるようになっております。

※これらのインタビュー記事を参考および引用をいたしました↓
優れたゲームクリエイターはなぜ映画を作ってしまうのか 映画「二ノ国」完成に寄せて日野晃博社長に聞いた – ねとらぼ
【インタビュー】映画『二ノ国』日野晃博「今回だけは映画のために映画を作る」スタジオジブリの遺伝子を持つ青春×ファンタジー超大作 | エンタメOVO(オーヴォ)
映画『二ノ国』製作総指揮/原案・脚本日野晃博さんインタビュー | アニメイトタイムズ

映画ドラクエが素晴らしい作品に思える!

少し前に『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』という、この『ニノ国』とロールプレイングゲームのアニメ映画化というコンセプトが丸かぶりの作品が公開されており、尋常ではない大炎上をしていました。
※自分のレビュー記事はこちら↓
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』オチに激怒した理由と具体的改善案を語る(ネタバレなし+ネタバレ感想)

こっちの映画『ドラクエ』も本当に(ていうかオチが)酷い作品だとは思っているんですが、良いところもいっぱいありました。
「どちらの女性と結婚をするか」という究極の選択には真摯に向き合っていますし、3DCGアニメのクオリティも素晴らしかったんです。
何より、映画『ドラクエ』は「みんな観てね!劇場があんなに凍りつく&鑑賞後に超ザワつく体験ができるのはこの映画だけだよ!」とマジで皮肉なしでオススメもできたんです。

でもこの映画『二ノ国』はそのような良いところはほとんどなく、しかもクライマックスの不快さの最大瞬間風速は(個人的に)映画『ドラクエ』をはるかに上回っていました。
ていうか映画『二ノ国』を観た後では映画『ドラクエ』が傑作に思える錯覚をしたほどです(あくまで錯覚です)。

また、映画『ドラクエ』は総監督および脚本を務めた山崎貴は「ゲームは映画とは時間の流れが異なるので土台そのまま映画化することは不可能」ということもあって、ずっとオファーを断っていたという事実もあったんですね。
だからと言ってあの酷いオチを(しかも雑に)やっていいという言い訳にはなりませんが、少なくとも山崎貴はそのゲームと映画の違いを冷静に考えていた、そのこと自体はいいと思うんですよ。
で、一方で日野晃博は前述したようにゲームと映画の脚本の作り方に違いはないと言い放ち、ワーナー・ブラザースからのオファーも快諾しておりました

いやー作り手の意識がこんなにも作品に表れるって……つくづく映画って面白いなー(棒読み)

百瀬監督を信じていたのに……

さらに悲しいのは、普通に本作を応援したかったのに、この出来では微塵もそうは出来ないということです。
その応援したかった大きな理由は、スタジオジブリ出身の百瀬義行が初めて劇場用長編アニメの監督を手がけた作品だったから。
短編オムニバス作品『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』内の百瀬監督による「サムライエッグ」はとっても大好きで、今回の『二ノ国』も普通に作品として期待していたんです。

※メディアで書いた記事はこちら↓
『ちいさな英雄』は“新たな挑戦”に満ちた大意欲作!その8つの魅力を語る! | シネマズ PLUS

百瀬監督は『猫の恩返し』と併映されていた『ギブリーズ episode2』で観客を悪い意味でポカーンとさせた過去があるので、その面目躍如になることも期待していたんだけどな……
そう言えば『二ノ国』の劇中で医師団なる連中が長い尺を取って変な踊りをする誰得としか思えないシーンがあるんだけど、これが『ギブリーズ episode2』の唐突かつ無駄に長いダンスシーン(劇場の空気が凍ったことを覚えている)を彷彿とさせましたね。

また、スタジオジブリの偉大なる先人である宮崎駿と故・高畑勲は、どちらも「ファンタジーで安易に解決させない」ことにも誠実さがある作家だと思います。
そのジブリ出身の百瀬監督が、日野晃博のファンタジーで安易に解決しやがる脚本に乗って、その先人たちの精神を感じさせない作品を作り上げたことも、また悲しいのです。

良かったところを探そう

えー、さんざんディスったので、映画『二ノ国』の良かったところも箇条書きで挙げておきますね。

  1. 原案となるゲームを知らなくても楽しめるというコンセプトそのものは良い
  2. 序盤はそんなに脚本が崩壊していないので割と面白く観られる(すぐ崩壊するけど)
  3. クリーチャーや世界観のデザインは良かった
  4. ヒロインが月夜に照らされ湖で踊るシーンも良い
  5. 永野芽郁以外のボイスキャスト
  6. 物語に関係しないところで獣人の女性キャラがポールダンスする(ケモナー界隈にとってのご褒美)
  7. 須田景凪(すだけいな)による主題歌 「MOIL」が名曲
  8. 久石譲の音楽(ただシーンに合っていないのでムダ使い感半端ない)

以上となっております。意外と良いところもあるもんですね。

いや、でも掛け値無しに空飛ぶ船の造形は良く、それが飛び立つシーンはちゃんと画的には高揚感がありましたよ。

そして、永野芽郁以外のボイスキャストは本当に良かったです。
山崎賢人は感情的な時の演技がちょっと不安定だけど、コンプレックスに悩む朴訥とした雰囲気がキャラにとても合っています。
新田真剣佑は芯に熱いものを持っている少年にぴったりで素晴らしいです。
伊武雅刀とムロツヨシも上手く、津田健次郎や坂本真綾や宮野真守や梶裕貴など豪華声優陣も最高でした。
で、永野芽郁が余計に浮くんですけどね……

※映画への酷い印象もこの名曲を聞けばちょっと解消されるかもしれない。ファンタジー世界と現実世界の両方の雰囲気に合っているのも良い。

まとめ

色々と書いてきましたが、映画『二ノ国』のまとめとしてはこれにつきます。
ものすごくつまらないです

しかも不快な要素もバッチリ完備☆しているんですから完全無欠ですね。
(ちなみに世間的な評判は「イマイチ」「劣化ジブリ」「虚無」など、激怒というよりもテンション低めな不評が多めな印象です)
そんなわけで、全方位的にアニメ映画史上最悪の内容であることがお分りいただけたでしょうか。全くオススメしません!

※以下からは結末を含めて激しくネタバレです。でも観て欲しくないので未見でもむしろ読んでください↓



キャッチコピーもほぼ嘘でした

えーと、前述したように本作にはキャッチコピーや予告編などなどから、「どちらかの命を救えば、もう一方が死ぬ」「どちらの命を救うか、その究極の選択を迫られる」ということが主張されていますよね。
映画本編を観ていない方はビックリすると思いますが、これ、勘違いです。別に命を選んでいません。キャッチコピーはほぼ嘘です。

どういうことかを順を追って説明しましょう、主人公の少年2人のユウとハルが現実世界の一ノ国に舞い戻ってくると、ヒロインのコトナが通り魔に刺されたことが“なかったこと”になってて、生きている!やったー!という事態になるんですね。

しかしその後、コトナにガンが見つかり余命3ヶ月ということがわかります。

そこでユウとハルは考えます。
ユウ「これは(ファンタジー世界の二ノ国の)アーシャ姫とコトナの命が繋がっているからだ!つまりアーシャ姫にも危機が迫っているかもしれない!」
「いや、むしろ逆じゃないのか?アーシャ姫を救ったから(そっちでも魔法なのかよくわからんナイフを抜いている)コトナがまた死ぬことになったんだ。俺はアーシャを討つ!」

……うん、いろいろと言いたいことはあるんだけど、とりあえず根拠が曖昧すぎるだろ。
人殺しを決意するんだったら、せめてそのルールが確定的になる証拠はいるだろ!バカなのか?もしくはサイコパスか頭おかしいとしか思えないぞ?(ついでに言うと序盤のすでに救急車呼んでいるのにハルが刺されたコトナを抱えて車道に飛び出す流れも頭おかしい)

ハルは親友のユウのことを信じねえのかよとも思っていたら、この後にハルは悪人(CV:津田健次郎)の言葉にはあっさり騙されるし、アーシャ姫はアーシャ姫で「私を殺して!」とユウに頼むし、お前ら頼むから確証を持ってから人の生き死にを考えてくれよ!

推理要素(なにそれ)

裏切り者のラスボスの正体は「まあソイツだろうな」とバレバレなんですが(その行動も意味不明なのですがツッコむのも面倒臭い)……ユウは彼(CV:宮野真守)を追い詰めるために以下の推理を提示します。

(1)現実世界のユウの姉のことを「ヒカ姉」と呼んでいた!その呼び名はお前しか知らない!
(2)魔法の匂いがあった!お前から匂っている!

あのー……その「ヒカ姉」という名前、ユウは王様も兵士もいる前で言ってなかったっけ?(うろ覚えなので間違っていたらごめん)
て言うか魔法の匂いって何?これが推理か?推理と呼べるものなのか?

あと、この推理シーンで登場人物が突っ立っている画が間抜けで違和感バリバリでキツいっす。
聞いた話なんですが、2009年のアニメ映画『レイトン教授と永遠の歌姫』(日野晃博が企画・プロデュース・ストーリー原案を担当)でも同様に集まったキャラが突っ立っているシーンがあったらしい。10年前から何も変わっていないのかよ…。

命を大切に(本当にな)

悪人(CV:津田健次郎)は「愛する人を守るために誰かを殺すのが戦争だ」的なことを言っているのですが、特に劇中では血も流れませんし、女性兵士のヴェルサもなんか倒れてたけどクライマックスでは特に傷もなく平然とやってきたりしています。
この時点で欺瞞性を感じるんですが、まあ100歩譲って許しましょう。

先ほどの悪人にそそのかされたハルが今度は洗脳されて刃を向けてきたり、結局は誤解が解けてラスボスを倒すために共闘だ〜な流れも陳腐で、結局アーシャ姫を殺すかどうかはふんわりとした着地で終了。マジで「どちらかの命を救えば、もう一方が死ぬ」というのはなんだったんだ(結局アーシャ姫を救えばコトナも救えるほうが正しかった)と思いますが、まあそこも1000000000000000歩譲ろう!

でも、どうしても気になるのは……!
そのラスボスは王様の兄であるのに親に捨てられて恨みを持っているという可哀想なヤツなのに、最後にユウとハルの連係プレイで串刺しにされて殺されたことです。
あのー……テーマは「命の大切さ」らしいんですが、悪役を殺さずに救うという選択肢を取ろうともしないんですか。
むしろ前述した「愛する人を守るために誰かを殺す」という悪人の主張を強化する結末ですがな。

ちなみに、王宮を攻めてきた多数の軍隊はどうしたのかと言えば、ラスボスが殺されたので兵隊はみんな帰ったという説明がなされました

そして、前述したようにヒロインのコトナは余命3ヶ月のガンだったのですが、普通に手術が成功して完治しました
さっきの“通り魔がなかったこと”になったことは違って、こっちは“(ガンが)なかったことにならない”という設定の矛盾があるね!わーい!嬉しーなー!(錯乱)

自殺を誘発しないか心配になります(障害者の向き合い方として最低な理由)

障害者への向き合い方として最悪であり、子どもに絶対に見せたくない理由を記しましょう。
問題となるのは以下の2点です。

主人公の少年のユウは足が不自由で車椅子生活をしています。そして…
(1)異世界の二ノ国に行く(もしくは現実世界に戻る)ためのトリガーは「命の危険にさらされる」ということが提示される。ほぼ自殺行為である。
(2)その異世界に行くと足が不自由だったユウは歩けるようになっている。

二ノ国で捉えられてしまったユウが「命の危険が世界を行き来するトリガーだ!」と言って、ユウとハルが目の前の炎に飛び込んでマジで現実世界に帰るのはビックリしましたね。また根拠が曖昧なままで自殺行為してんじゃねえ!その葛藤も足りなすぎる!
ていうか、「命が大切なんだ」と訴えている作品で、仮にも自殺行為をさせている時点で大きな齟齬があるじゃねえか!

それはともかく、この(1)と(2)を、足が不自由であり、歩けるようになりたいと考えている、障害を持つ子どもの立場になってみればどう思うでしょうか?

「僕も命の危険にさらされれば(自殺をすれば)ひょっとすると二ノ国に行けて歩けるようになれるかもしれない」

もちろん、子どもがフィクションに影響されてそんなバカげた自殺行為を取るわけがないだろう、という指摘は正しいです。
ですが、障害は本人にとってはとても深刻に感じている問題でしょう。
こんなことを、例えフィクションのファンタジー作品だとしても提示してしまっていいのでしょうか。
たとえ0.0000001%でも、そんな考えを誘発してしまう可能性のあるこの映画『二ノ国』を自分は許すことはできません。

※こちらのブログ記事でも同じ指摘をされています↓
映画 #二ノ国 ネタバレ感想~ドラクエ並なんて笑えない酷いアニメ – 真剣佑出演作ネタバレ感想

結末が不快な理由をたっぷりと記してやる

えーと、最後にはユウがもともとファンタジー世界の二ノ国の住人であり、もう1人のハル(同一人物)だったということが明かされるんですね。
これ普通に意味不明で、ユウの「現実世界の一ノ国で飛行機事故にあって両親を失って足が不自由になったという過去」と論理的に全く筋が通らないんですよ。
まあ、それも1000000000000000000000000000000000000000000000000歩譲って許しましょう。

でも、どうしても気になるのは……!
映画の序盤、ユウとハルとコトナは長い長い階段の先にあるお店に行こうとしていたのですが、そこで車椅子に乗っているユウは「邪魔者は帰りますね」と言って帰宅してしまい、ベッドに横たわったその表情は悲しそうだったんですね(もちろんコトナとハルも悲しそう)。
なるほど、この切ないセリフが伏線として回収され、遠回りしてそのお店に行くであったり、違う素敵なお店に一緒に行ったりなど……そしてハルとコトナがユウが一緒にいる、その友情はずっと続く、そんな結末が用意されるんだろうな、と素直に期待していたんですよ。

でも結末は……ユウは二ノ国に残ることを選択します。
そして、ハルとコトナは(邪魔者の)ユウがいなくなったことで、長い長い階段の先にあるお店に2人で行くことができているんですね。
そのユウは、ファンタジー世界の二ノ国で好きになった(気のおけない友達がいないと言っていた)アーシャ姫と一緒になれて、なおかつ歩けるようにもなっていました。はいハッピーエンド!というわけなんですよ。

……ふざけんなよ……!
障害者であるユウが自身を「邪魔者」と自己卑下してしまう切ないセリフを覆すことなく、ファンタジー世界ではお姫様と添い遂げられ障害も治るという“逃げ”を使って、「邪魔者がいなくなって良かった」ということを、ハッピーエンドとして描いているというわけです。

前述した自殺行為も酷いのですが……これを子供や障害を持つ方が観たらどう思うでしょうか。「障害者はいない方がいい」ような価値観を強化してしまわないでしょうか。
日野晃博はおそらく「そんなつもりはない」と答えるでしょう。実際そうでしょうよ。ていうか「え、だって障害者がファンタジー世界で足も治ってお姫様と添い遂げられるからいいじゃん」と思っているでしょうよ。
だからこそものすごく不快なんです。そういう視点を全く考えずに、これを良い話として描いてやがるんだから!

※こちらの記事でも同様の指摘をされています↓
8月23日公開 映画『二ノ国』レビュー 「アニメと言えど配慮するべきところに手を抜き、障害者差別を感じた今年一番残念な作品」

※こちらの記事でも「絶望」であると書かれています。『バースデー・ワンダーランド』『あした世界が終わるとしても』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のネタバレがあるのでご注意を↓
【ネタバレあり】今年最低の映画『二ノ国』について語る – 遺考

言うまでもないことですが、ファンタジー世界は現実にはありません。
この映画の中ではファンタジー世界に逃げることができて、なおかつ障害が治る。
でも現実ではそんなことはない、障害は一生付き合わねければいけない。その絶対的な事実がある以上、障害を持つ子供が観たら、この邪魔者がいなくなる結末に絶望してもおかしくないですよ(しかもそのファンタジー世界に行く手段は“自殺行為”である)。

さらにコトナがユウのことを忘れてしまう(ユウのことを覚えているのはハルだけ)という設定も後味が悪いですし、ハルが「これはお前のお得意の仮説だが…」と勝手に色々と納得するのも酷い。なんなんだ!この結末の不快さは!

まあ……1つフォローをするのであれば、ハルがこの結末を決して喜んではおらず、最低限は“苦いハッピーエンド”として描いていることは良かったです。
ユウが最後に二ノ国に戻ろうとしていることは止めようとしていますし、その後の表情も悲しそう。これでハルが意気揚々とコトナと添い遂げられる!な感じの結末にしてしたら本当に怒り死にしていたかもしれません。

また、本作のテーマは何度も言うように「命の大切さ(それにまつわる選択)」の“はず”でした。
でも「ファンタジー世界に行って現実世界からはいなくなった」というのは、客観的に見たら“死ぬ”こととそうは変わらない(でもファンタジー世界では幸せなんだからいいじゃないかと言い訳している)ようにも思えてくるんですよね……そう考えるとやっぱり脚本を書いたお前がいちばん命をナメてんだろとして思えないんですよ。
それはさすがに考えすぎとももちろん思うんですが、それくらいに脚本を書いた日野晃博という人の不誠実さと無神経さがもう伝わりまくるのでシンドイんです。

結論としては、こんな脚本を書いた日野晃博が法律で罰せられることを期待しています

良い映画を観ようよ

最後に、こんな欺瞞と矛盾とまみれテーマに全く誠実に向き合ってないアルティメット駄作のことを忘れるためにも、“命”というテーマについて誠実に向き合っている素晴らしいアニメ映画を解説したレビュー記事のリンクを貼っておきますね。いずれも1人でも多くの方に観て欲しいです。
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※『ちえりとチェリー』は時々復活上映がされているんですが現在は観る手段がないようです。

映画『聲の形』も、(聴覚)障害とコミュニケーションについて真摯に向き合った素晴らしい作品でした↓
『映画 聲の形』が超絶大傑作であり、すべての人に観てほしい5つの理由(ネタバレなし感想)

さらに、現在上映中の『トイ・ストーリー4』と『天気の子』は、しっかりと「究極の選択」に向き合った作品でしたね。賛否両論もありますが、もちろんオススメです↓
『トイ・ストーリー4』完結の“その先”を描けた「5つ」の理由 | シネマズ PLUS
『天気の子』の深すぎる「10」の盲点 | シネマズ PLUS(大いにネタバレ注意)

(C)2019 映画「二ノ国」製作委員会

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  1. さはる より:

    ブログ読みました。
    ヒナタカさんの指摘された通り、穴だらけな映画だと思いましたが、個人的な感想を挙げると「味のない冷えた粥を食べてるような」映画でした。
    ニノ国は原作(ゲーム)はやったことはありませんが、今作はなんとなくどっかで観たような「テンプレート感」がしてボンヤリした印象です。あと大軍が攻めいるシーンや城内で繰り広げられる戦闘シーンにちょくちょく入れられるCGがなんか嫌でした(以前観た「打ち上げ花火~」を思い出します。)。
    決してバカにはしていませんが、半端にジブリっぽい作画ではなく、自社コンテンツの「妖怪ウォッチ」や「イナズマイレブン」ぽかったらまだ許容できたかもしれません。いや、できないですね。
    ラストの「ハル以外はユウの記憶が消えている」というのもガッカリというか酷い。ただこれについては、サキ姉(CV坂本真綾)やコトナが終盤のちょっとでもいいので「あれ?そういえばここ、もう一人と一緒に来たことがある気がする」的な事を言ってくれたら少し緩和されたかもしれません(もろに手垢の着きまくったテンプレートですが)。

    正直なところ本作よりも「異世界冒険もの」としては今年公開の「バースデー・ワンダーランド」の方が、比べるのが失礼なほど優れていたと思います。

  2. りょう より:

    コメントを書くのは初めてですが、毎月毎年ブログが更新される度に楽しみに拝見させて頂いております。

    この「障害者の扱いが軽すぎる」件ですが、私も同感です。
    私ごとですが、子供の時からアルプスの少女ハイジのあの有名なラストシーンが嫌いでした。
    なぜなら「クララが両足で立って歩けるようになること」=「健常者になること」=「幸せ」の図式が気持ち悪く感じたからです。
    別にクララはクララのまま幸せになればよかったんじゃないでしょうか。
    真に「障害がある」のはその人個人ではなく、多様性を受け入れられない社会の側にあるのではないかと思えてならなかったのです。
    翻って今作ですが、本当に無神経で不謹慎で、子供達に夢を与えるゲームクリエイターが作ったものとは思えません。
    日野氏が代表を務めるレベルファイブ社はイナズマイレブンや妖怪ウォッチなど、登場人物がみな個性的で尚且つそのそれぞれの個性が調和・共鳴しあっては数々の困難を打ち破っていく…という王道ですが「この世界には色んな人がいるし、いた方がいいんだよ。だってその方が世界は面白いじゃないか」という道徳的に非常に優れたメッセージも持ちあわせていたゲームをずっと開発してきたはずなのに。
    それなのに「邪魔者は消えるよ。」ですか。
    歩けなければ現実世界なんてクソですか。
    日野さんの目にはそういう風に世界が見えてるんですか。
    大人が理不尽と戦ってこの世界をもっと良くしよう、楽しもうとしないでどうするんですか。
    「現実なんて残酷で退屈だからファンタジーに逃げ込もうぜ。」
    そんな答えを自分よりずっと大きい、ずっと年上の、それも会社の社長なんていう地位も名誉もある大人に突きつけられた子供の気持ちを考えてみたことはないんですか。
    あんまりですよ、これは。
    普段は温厚な語り口で、滅多に0点なんて評価はしないヒナタカさんが文面から怒りの感情がにじみ出るほどの感想しか書けないのも当然です。
    先日もドラゴンクエストを酷評されていましたし、巷では「令和のデビルマン」なんて呼ばれていますが、ドラゴンクエストもデビルマンも「あそこの作りは雑すぎたよね〜」と他人と笑い話に出来るベクトルのつまらなさだからまだ許せるのです。
    でも今作は駄目です。
    技術がどう、予算がどうではなく倫理的に雑な作りというのは笑えないんです。許せません。

    初投稿のくせにいかりのあまり長文になってしまいました。
    申し訳ございませんでした。

    • hinataka hinataka より:

      返信が遅くなってごめんなさい。いつもブログを読んでくださってありがとうございます。誠実に書かれた怒りのコメント、しっかり読ませていただきました。

      >「現実なんて残酷で退屈だからファンタジーに逃げ込もうぜ。」そんな答えを自分よりずっと大きい、ずっと年上の、それも会社の社長なんていう地位も名誉もある大人に突きつけられた子供の気持ちを考えてみたことはないんですか。あんまりですよ、これは。
      これに本当に同意で、本当に残念です…

      ブログの更新ペースを上げていきますので、これからもよろしくお願いします。

  3. […] カゲヒナタ映画レビュー 『二ノ国』がアニメ映画史上に残る何かになった理由を10000字以上かけて全力解説する(ネタバレなし+ネタバレ感想) […]

  4. ティク より:

    日野社長がシリーズ構成をやったガンダムでも色々叩かれてましたが、その後は妖怪ウォッチなどで評価高い回の脚本とかやったらしく、少しは成長したのかと思っていましたが全然でしたね…
    日野社長は経営者としてはすごい人だと思いますが本当に脚本は金輪際やらないでほしいです。

  5. ホントにひどい作品でした より:

    百瀬監督の名前は義行です。

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