
『ネオン・デーモン』わからなかったことを教えます(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ネオン・デーモン』です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:超上級者向け女性バトル映画
あらすじ
16歳のジェシー(エル・ファニング)は、ロサンゼルスでファッション業界に飛び込み、トントン拍子に契約も決まっていた。
そんなにジェシーに、ライバルであるジジ(ベラ・ヒースコート)やサラ(アビー・リー)は異常なまでの嫉妬心を燃やしていく……。
『プッシャー』『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作です。
ニコラス監督作品は、観念的でわかりにくいものが多いです。
本作『ネオン・デーモン』もご多分に漏れずにその域に入るわけで、現実離れした展開や、何を意味しているかを読み取らないといけないシーンなどがてんこ盛り。この特徴に「ついていく」のがまず大変なのです。
わかりやすい内容を「装飾」しています
ただ、今回は(も)基本のプロットとテーマがストレートに表れているので、ある意味ではめっちゃわかりやすい内容とも言えます。
プロットは「16歳の少女がファッション業界に躍り出て、その若さと美しさのせいでライバルから疎まれる」というもの、テーマは「美にとりつかれた者たちの欲望」や「美を追求することの狂気」です。
本作は、そんな普通に描けば30分くらいで終わりそう(暴言)な内容を、ニコラス監督のヤバすぎる作家性および暗喩で「装飾」した内容と言っていいでしょう。
「はっきりしない(説明しない)」展開がぶっ続きますし、かなりゆったり目のテンポで描かれるため、人によっては退屈極まりないのかもしれません。
「あれってどういう意味?」「なんでこんなシーンがあるの?」とモヤモヤするのだけど、そのモヤモヤというか「謎」が残る、その謎をいろいろと考えられることこそが魅力と言っていいでしょう。
すっきりハッキリする映画が好きな人には、どうあってもオススメできません。
R15+指定納得の性描写や暴力性も含め、めっちゃ人を選ぶ作品であることは間違いありません。
ニコラス監督の個性を知らない方は、まず過去の作品を観てから挑んだほうがベターでしょう。
エル・ファニングは美しいというより……
本作の批判意見でよく見られるのは、主演のエル・ファニングは「美しい」というよりも「かわいい」という印象が強いため、「美しさのせいで他人の嫉妬心を集める」という役には合っていない、という指摘でした。
それは確かに否定できない……のですが、作中では「若さ」というものが重要視されること、もっと言えばロリコンへの自己批判的な言及があるので、一概にミスキャストだとは思いません。
撮影時に17~18歳であったエル・ファニングの「幼さ」もまた重要だったのだと……。
作中では「Hard Candy」という、「小児性愛者が好きな未成年の少女」という隠語も登場しています。
その隠語そのままの、インターネットで少女と知り合ったロリコン親父がひどい目に合う映画もありましたね。
そういえば、ニコラス監督は『オンリー・ゴッド』の冒頭でも少女を買おうとする男を登場させていました。
自身のロリ趣味の自戒を込めて作品に反映させる、そういう精神は嫌いじゃないです(失礼な発言)。
歪(いびつ)だけど、そこが魅力かも?
『ドライヴ』『オンリー・ゴッド』に続くタッグとなる、クリフ・マルティネスの音楽も最高でしたね。
オープニングシークエンスや、とあるネオンが輝くシーンでの音楽は、否応無しに映画の世界へと引き込んでくれました。
ちなみに、ネオンというモチーフが使われたのは、監督がネオンの「未来的でありながらアナログ感もあるという『二面性』に惹かれた」ことが理由なのだとか。
その「二面性」とは、ファッション業界にいる女性の「表向きには仲良くしているけど、内心は嫉妬心を燃やしている」という気持ちを示しているのかもしれませんね。
正直この内容で118分は長いと思いますし(監督の過去作『ブロンソン』『ヴァルハラ・ライジング』『オンリー・ゴッド』は90分ちょっとだった)、作劇的にはとても上等とは言い難い、良くも悪くも「歪(いびつ)」と言える内容です。
これまでのニコラス監督作品が気に入って、「まだまだついて行ってやるさ!」という方には超オススメします。
あと、キアヌ・リーブスが無駄遣いとしか言いようのない役で出演しているのも愉快でした。キアヌファンも観ましょう。
以下、結末も含めてネタバレで、いろいろと解釈を書いていきます↓
(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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chat_bubbleコメント
三角形の中にいるのはジェシーですよ。ジジじゃないですを
なんか全体的に的はずれで残念な考察です。
エンドロールのはどう見てもサラです。
確かにサラですね。
三角形の中をジジと勘違いしてるとことかもまた外れてる。
あんなの完全ジェシーですよね。
おふたりからまた指摘をいただいてすみません……サラに修正します。
解説ありがとうございます。
とても参考になりました!
う〜〜ん…
ルビーから溢れた体液の色、ちゃんと見ましたか?
その他にも、ちょっと考察にズレがありそうな気がしました…
考察には人それぞれあると思いますので、特に文句を書く必要もなく、自分なりに解釈されれば良いのかなと思います。
ちゃんと参考になりましたし、すっきりしましたよ。
今映画を見てよくわからない事があり検索してこちらに来ました。監督がこれはこうだと言っていない限り考察は自由です。
私は自分の意見にここと同じ点ばかりでしたので安心できました。
ルビーの股から溢れた液体、暗くて分かりづらいですが血じゃないですかね?
なんで液体が股から…?と不思議だったんですけど、あれは殺人の快楽表現なのかと少し納得しました
あと鏡に口紅で描いた✕と○の落書き、チャプターをみると「xoxo」のタイトルが付いてるので、親愛を表すキス&ハグの意味じゃないかと思います
今になっての返信ですみません!親愛を表すキス&ハグの意味について追記させてください。
海外在住ですが今夜この映画がTV放映されます。
難解な映画のようですよね。でもhinatakaさんの丁寧な解説からそれぞれのキャラクターの雰囲気も話の筋も良く伝わって来て、何だかもうお腹一杯、エル・ファニングは大好きですが全く好みの映画ではないのでやめときます(苦笑)
実は他の方の解説も参考にしたのですが全く意味不明でした。
ここの解説が一番納得出来ました。
それにしても難解な映画の解釈は三者三様、象徴的に表現して分かりにくくしてるんでしょうね。見た人がそれぞれに解釈して納得すればそれで良いような…。
ありがとうございました。
ラストシーンは墓穴(?)にジェシーを埋めて満足しきったルビーが、事の重大さを省みず全てを水で洗い流すという女の自己満足的な現実主義の部分、ジジには罪悪感と良心に苛まれ、あの子を出さなくちゃ、というセリフからも少なからずの母性を感じましたし、サラに関しては、たとえ友人を踏み台にしてでも(一応涙を流してましたし)、それでも憧れた(乾き切った)世界へ飛び込む女の執念や強かさを感じました。
ついでに、あのトリニティーはまるで”子宮”を表しているようで、勝利を確信した少女(青い)が女(赤い)になっていく様でも表現しているのかなと感じました。
あれだけの作品なので一概にこれとは言えないのでしょうが、私はあの作品から、どれだけ透き通った肌を持った少女もいずれは他人を見下すような女になり、そして女というのはそれを上回るほど恐ろしく混沌としている生き物なんだよ、という印象を受けたかな。
その対比として男性が欲望に忠実な間抜けに描かれてたのがむしろホラー
こんばんは。先ほどこの映画を観て自分の拙い感性では何一つ理解することが出来なかったので、考察読んで納得しました。人によっていろんな受け取り方ができて面白い映画ですね。