『ひるね姫』伝えたかった物語(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『ひるね姫』伝えたかった物語(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はひるね姫 ~知らないワタシの物語~です。

個人的お気に入り度:7/10

一言感想:実は親子で観て欲しいロードムービーアニメ

あらすじ

岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている女子高生の森川ココネは、同じような不思議な夢ばかりを見ていた。
2020年、東京オリンピックの3日前。父親がなぜか警察に逮捕され東京に連行されてしまう。ココネは幼馴染の大学生のモリオとともに、父親を救うために奔走するが……。

『東のエデン』や『攻殻機動隊S.A.C.』(どちらもテレビアニメ)の神山健二監督・脚本による、劇場オリジナル作品です。

本作『ひるね姫』は、日常に少し「完全自動運動車」が登場するような、「あり得る近未来」が魅力の1つになっています。

田舎を舞台にして、ファンタジックな描写も多いながらも、VR(バーチャルリアリティ)も少し顔を出している。
アニメでしかできない表現が多数あり、かつ少しだけ「リアル」な現実の描写もある。
『東のエデン』もそうでしたが、この作品の世界観がまず大好きになれました。

舞台は岡山県倉敷市

その世界観以外の魅力も、箇条書きでお伝えいたしましょう。

  1. 現実とリンクする「夢」のファンタジックさ
  2. ある「仕掛け」によりもう一度観たくなる構造
  3. 親子で観るとより感動できる「親子」の物語
  4. 風景を大切した映像
  5. きらびやかで躍動感のある音楽

物語のはじめは岡山県倉敷市を舞台としており、背景はかなり描きこまれています。

高畑充希演じる主人公の女の子は「~じゃろ?」という「岡山弁」を話しているのですが、これがもう完璧!ずっとその土地で暮らしていた女の子の喋り方にしか聞こえませんでした(※自分は祖母の実家が岡山県で、倉敷市でも数年働いていました)
エンディング曲(主題歌)の歌唱も高畑充希本人で、その歌声にも文句の言いようがありません。

その他のキャストも、アニメ版『僕だけがいない街』で主人公の青年を演じていた満島真之介さんもキャラにハマっていて、江口洋介さんや古田新太さんや高畑茂樹さんというベテラン俳優陣の演技もさすがと言えるものでした。
マスコットキャラの声優が、ツンデレボイスでおなじみの釘宮理恵さんというのもわかっているじゃないか。

そして映画は、倉敷市以外の場所にも移動する、『モーターサイクル・ダイアリーズ』や『十五才 学校IV』といったロードムービーのような要素も多くなっていきます。
こういう旅を通じて登場人物が成長する物語は大好き!

アニメファン、ゲームファンにはたまらない豪華スタッフたち!

本作は本当にスタッフが豪華!

  • 『東のエデン』の佐々木敦子が総作画監督
  • 『猫の恩返し』の森川聡子がキャラクター原案
  • 『電脳コイル』の磯光雄監督が原画(さらに『イノセンス』の西尾鉄也、『君の名は。』の安藤雅司も)
  • 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の竹内敦志がエフェクト作画監督
  • 『ベイマックス』のコヤマシゲトがロボットデザイン
  • バンド・デシネ(フランス語圏のマンガ)作家であるクリストフ・フェレラがクリーチャー・デザイン
  • 『キングダムハーツ』の下村陽子が音楽及び主題歌(アレンジ)

中でも、NHKアニメ『電脳コイル』の世界観が好きだった方、『キングダムハーツ』や『パラサイト・イブ』などの音楽に魅了された方に、『ひるね姫』を存分におすすめしたいですね。

物語はもちろんですが、世界観や音楽に浸るだけでもう一度観たくなるほど、というのはやはり大きな魅力です。

気になるツッコミどころも?

本作の難点は、何よりも「詰め込みすぎ」ということでしょう。
「親子の物語」という主軸はあるのですが、多めの登場人物、「夢と現実」が交錯して進む特殊な構成のおかげで、やや感情移入が憚れるところがあるのです。

「あえて描かない」というシーンも多めで、良くも悪くも「煙に巻かれてしまう」「深く描かずに先に行ってしまう」印象もあります
中盤から設定にもほころびが見られ、「誰もが気になる」レベルでのツッコミどころが出てきてしまうのはちょっと残念でした。

でも、こうした独特のフワッとした設定や、「あえて描かない」とも、本作の長所ととも言えます。
振り返ってみると、「あのシーンはこうだ」「いいやこうだ」と、一緒に観た人と語り合う魅力があるんですよね。
スッキリハッキリした内容を好む方には受け入られないかもしれませんが、個人的にはこういう「観客にお任せする」作風は大好きです。

また、監督やスタッフがベテランで、今までの作品の技術が培われているおかげもあり、「どこかで見たような画」が多くなっているのも気になる人は気になるかも。
個人的には、過去の名作の「オマージュ」として好意的に受け入れられました。

はっきり残念だったのは、中盤の飛行シーンが「カクカク」してしまっていることかな。
劇場アニメ版の『ベルセルク』でも思ったのですが、3DCGのシーンでこういう滑らかさがないことには、かなりの違和感を覚えてしまいます。

『君の名は。』に似ているようで、そうではない

神山監督は、東北大震災が起こったことから、「狭い範囲を題材にして、明るい物語、みんなが好意を持てるような主人公の物語にしたい」ということで、『ひるね姫』を作ったのだそうです。

これは超ヒット作『君の名は。』も東北大震災が製作のきっかけになったことを彷彿とさせますね。
田舎で暮している女子高生が主人公だったり、親子の関係が描かれていたり、「夢の中」での行動がみられるなど、『ひるね姫』と『君の名は。』にはいくつかの共通点がみられます。

だけど、作品自体は『君の名は。』のようにストレートに感動を届けてくれるというよりも、前述のように良い意味で「煙に巻かれてしまう」、かつ「描写されていないことを語り合う」楽しさがある内容です。
アニメの有名作品で言えば、同じく「夢」が題材の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』にも近いのではないでしょうか。

こちらは哲学的な思考と、アニメでしかできない世界観が魅力的なので、アニメファンならずとも一度は観て欲しいですね。

正直に言えば、『君の名は。』や『この世界の片隅に』のように絶賛が相次ぐ作品ではないでしょう。
極めてクセが強く、好みが分かれると言えます。

それでも自分は本作を、「親子」で観ることをぜひおすすめします。
観た後に親子で話し合うことができれば、きっと素敵な思い出になるでしょうから。

なお、エンドロール中のおまけも、おまけと言うには失礼なほどに本編に密接に絡んでいます
最後までしっかり観れば、確かな感動があるはずですよ。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

野暮な不満点

数あるツッコミどころの中でも一番気になるのは、ココネとモリオが大阪に着いたときに、モリオが自動運転のバイクを「お前は先に帰ってろ」と岡山に返してしまうことかな。それで東京まで行けばいいじゃん!

新幹線の切符売り場で、モリオは「金はない!大学生は金がないと相場が決まっている!」と踏ん反り返るし……じゃあなんでお前は切符売り場に来たんだよ(ココネの金をあてにしていたとは言っていたけど)、バイクを帰らせたんだよと。モリオがアホにしか見えません。
※追っ手の気をそらすためでは?とご意見をいただきました。

この自動運転のバイクは、モリオが自発的に帰らせるんじゃなくて、なんらかのトラブルにより勝手に帰ってしまった、じゃないと物語に筋が通らないですね。
そのほうが、最後にバイクが戻ってきてくれたこともより感動できたと思います。

あと、せっかくモモタローの親友たちが助けてくれたのに、ココネが話をちゃんと聞かずに1人で去ってしまうのも変だよね。
「話しの都合上で違和感が出てしまっている」のは気になりました。

本当の物語

ココネが見ていた夢は、子どものころに父親のモモタローが話してくれた物語でした。
そして、物語の主人公は実はココネではなく、彼女の母親のイクミが投影されていたのです。

そのことがわかると、夢の内容が「現実」に即していることがはっきりとわかるのが面白いですね。
たとえば、夢の中のエンシェン姫は「機械に命を与える」魔法を使えていたことが、現実でイクミが「車に自動運転をさせる」技術の搭載を訴えていたこととリンクしているのです。

そのほかにも、

  • 夢の中:大臣のベワンは裏で王座を奪おうとしていた←→現実:渡辺はタブレットを盗んで会社を牛耳ろうとしていた
  • 夢の中:エンシャント姫は、大臣の作った巨大ロボットでは鬼は倒せないと言っていた←→現実:イクミは東京オリンピックの開会式自動運転車を走らせたかった
  • 夢の中:エンジニアのピーチは、「鬼」に襲撃された際人々を救っていたたため、エンシャント姫に気に入られ行動をともにするようになった←→現実:町工場で働いていたモモタローのところにイクミが来て、2人は共同で開発をする

といった風に、夢と現実は「同じこと」を描いていたんですね。
また、ハートランド王国が仕事場に行くのにいつも大渋滞になっていたことも「自動運転にすればラクなのに!」という訴えなんでしょうね。
そのほかにも、「物語の意味」を知ってから、もう一度観るとさらなる「気づき」がありそうです。

何があったの?

終盤からは、本当にどこまでが夢か、どこまでが現実か、あいまいになっていきます。
『パシフィック・リム』×『新世紀エヴァンゲリオン』的な戦闘を挟んだりしながら……ココネが目覚めると、彼女はビルの中の高ーい吹き抜けから、落ちそうになっていてました。
ココネは「なんでこんなことに?」と言っていましたが、観ているこっちもそう思っています。たぶんこれ、制作者も何が起こったのかの答えを用意していないよね。

たぶん、ココネおよびモモタローおよび志島会長(ココネのおじいちゃん)と、渡辺(ベワン大臣)が口論になって、事故でココネが落ちかけたんじゃないかな。うん、すげえフワッとした答えしか出せねえ!

社訓の1文字

志島自動車は「心根ひとつで、人は空も飛べる」という社訓を掲げていました。
ココネの母のイクミは、志島会長(父)と決別する前「私だったら、この社訓を1文字だけ変えるけどな」と言っていました。

おそらく、イクミが変えたい一文字は「心根」の「根」の部分。
「心羽」と変えたかったのではないでしょうか。

序盤にココネは、自分の名前について「『心に羽』じゃったら、普通は『ココハ』じゃろうが」と言っていましたね。

ココネの名前は、漢字で「心羽」と書くんですね。
ここに、イクミの「社訓を一文字だけ変えたい」という気持ちがそのままが現れているのです。

「羽」は「羽根」とも書きます。
「心根」ではなく、「心羽」と書くことで、自動運転だけでなく、いつかは車で空も飛べるかもしれない、という未来の技術への希望を確かに感じました。
(「寝ている時に見る」夢が、こうして「未来への」夢とリンクしているのもいいですよね)

ちょっとだけ嘘も交えたおとぎ話

そうそう、ココネは「お母さんが亡くなったことを何度も聞かれるのがめんどくさいから、ドイツと日本のハーフっていうことにしたんじゃ」と言っていましたが、エンドロールではモモタローとイクミがドイツで挙式をしていたというのもよかったですね。
「本当」じゃないけど、「完全に嘘でもない」のですね。

「ちょっとだけ嘘も交えたおとぎ話」で、親の気持ちを子に伝えるというのは、名作ファンタジー『ビッグフィッシュ』も思わせました。

ココネが東京の大学に行くと行っても、モモタローが彼女の意思を尊重するもの言いをしていたのもいい!
彼は寡黙であんまり娘と意思の疎通をしていなくて、仕事を熱心にしているものの、ココネに「私が用意しなかったらご飯も食んじゃろうが」と言われてしまっており、ある意味では「子離れ」できていなかったんですよね。

そんなモモタローも、近くのおじさんのカーナビの修理を請け負って、おまけとしてスイカをもらっていて、「ココネがいなくてもさびしくなさそう」ということを匂わせていたのもよかった!
登場人物の「これからの幸せ」が想像出来る作品って、やっぱり大好きです!

(C)2017 ひるね姫製作委員会

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  1. 匿名 より:

    バイクを帰らせたシーンは追っ手から目をそらさせるためだと自分は観ながら思ったのですがどうでしょうか?

  2. 昼行灯 より:

    満島真之介さんは、アニメ「僕だけがいない街」で主人公の声を演じてましたね。映画は初だし、収録が前後しているのかも知れませんが…。

    • hinataka hinataka より:

      初とはあるんですけど、そうでしたね!修正させてください。あちらよりもさらに上手くなっていました!

  3. 毒親育ち より:

    >一言感想:実は親子で観て欲しいロードムービーアニメ
    主人公が寝てる間に話が進むとかジャンプの人気策かよ!・・・と思ったら、寝てる間の方が大冒険だったよ!?

    >エンディング曲(主題歌)の歌唱も高畑充希本人
    子役時代からバリッバリの舞台俳優じゃないですかー!声優の資質有りですよー!

    >満島真之介さんもキャラにハマっていて、江口洋介さんや古田新太さんや高畑茂樹さんというベテラン俳優陣の演技もさすがと言えるものでした。
    お祖父さん役、高橋英樹さんですよー!時代劇ヒーローですよー!!さすがセリフは後録りだった昭和の重鎮、声優も活けるじゃないですかー!時代劇アニメに出てくださーい!

    余談ですが、のんさん。アニメ「鬼平犯科帳」出演おめでとうございます!

    >「~じゃろ?」という「岡山弁」を話しているのですが、
    心羽さん。初見で「今どきアヒル口・・・」とか思ってしまいごめんなさい!すげえ良い感じのオカン系JK!?で惚れました!年上男子のモリオ君の方が弟みたいなのも好き!
    いや弟どころか・・・男子と密着して暖を取りながら安眠に入り「お尻とかさわったらいけんよ?」とか、触らないけど敷かれている!?やばい・・・既に“夫婦”通り越して“母子”やんけ!?

    >「あえて描かない」というシーンも多めで、良くも悪くも「煙に巻かれてしまう」「深く描かずに先に行ってしまう」印象もあります。
    >中盤から設定にもほころびが見られ、「誰もが気になる」レベルでのツッコミどころが出てきてしまうのはちょっと残念でした。
    正直
    ここ現実ではどうなってんだよ!?
    モリオ君と夢を共有してしまうのは本当に魔法!?
    いや、心羽さんが何かの超能力者だから!?
    それともこれもお母さんの発明品の影響!?
    ・・・とかモヤってしまいますね。イイ年のオタクは。

    >野暮な不満点
    >ココネが話をちゃんと聞かずに1人で去ってしまうのも変だよね。
    モリオ君をさらっと見捨ててスタコラサッサだぜ~!に笑ってしまいました。
    てか酷くない!?相手は不法侵入に窃盗から少女の拉致まで企てるような危ない連中(おじさん達は渡辺一派ではありませんでしたが)なのに!
    ・・・まあ、衆人環視の中で手荒な真似は出来ないだろうと思ったのでしょうけどさあ。

    >また、ハートランド王国が仕事場に行くのにいつも大渋滞になっていた
    >ことも「自動運転にすればラクなのに!」という訴えなんでしょうね。
    こ、これは・・・トヨタ王国!?
    (本作はENEOS(三菱グループ)が協賛ですが)
    でも勤務時間分しか給料が出ないけど、残業が無いだけ全然ホワイトかな。
    また「時代は自動運転!新技術万歳!なんでも新しいものがサイコー!!」でもなく、夢のお父さん=ピーチが古いバイクを頑固に愛用していたり、現実のお父さんが旧式の軽トラに最新技術である自動運転を搭載していたりという描写がとてもバランスが取れていて良かったです。

    >『パシフィック・リム』
    脳内でペントコスト司令が「どけい!私が出撃る!!」と激を飛ばしておられましたよ。
    なんてメンドくさいイェーガーだ。パイロットも愚鈍揃いだし!とイライラしてしまいました。

    >社訓の1文字
    >ちょっとだけ嘘も交えたおとぎ話
    お祖父さんが「ハード屋がソフト屋に頭を下げられるか!」とか言っていましたが、ハード屋=根=お父さんと、ソフト屋=羽=お母さんが結ばれて生まれたのが自動運転プログラムであり、心羽さんなのですね!

    • hinataka hinataka より:

      >お祖父さんが「ハード屋がソフト屋に頭を下げられるか!」とか言っていましたが、ハード屋=根=お父さんと、ソフト屋=羽=お母さんが結ばれて生まれたのが自動運転プログラムであり、心羽さんなのですね!
      おお!それは超納得できる解釈!

  4. 布団 より:

    ・心の羽根……納得です!

    ・スイスじゃなくてドイツではありませんでしたか?

    ・バイクを帰らせたのは、同じく、追っ手(この時点では仲間とわからない志島自動車社員)から目をそらすためと思いました

    そして最後ハーツが助けに来て、ハーツにとっての自宅は、志島自動車だったんだなあとわかりました

    ・個人的な意見ですが、あえて描かないところがむしろ良いと思いました!

    • hinataka hinataka より:

      >スイスじゃなくてドイツ
      多分自分の勘違いですね、修正します。
      自分も「あえて描かない」ことが大好きです!

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著者

ヒナタカ

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