実写映画版『無限の住人』三池監督とキムタク、原作との相性は?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

実写映画版『無限の住人』三池監督とキムタク、原作との相性は?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想は無限の住人です。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:三池監督流ドロドロ時代劇

あらすじ

不死身の男が、両親の敵討ちをする少女の用心棒になります。

日本一多忙な映画監督・三池崇史最新作にして、同名漫画を原作にした実写化映画です。

原作の特徴を端的に述べるなら、時代劇であり、復讐譚であり、チャンバラ活劇であり、残酷描写もありあり、という感じ。
これが、『IZO』や『十三人の刺客』や『一命』など、エグめの時代劇を撮ってきた三池監督の悪趣味さ(褒め言葉)と相性が良すぎでした。

剣術アクション(殺陣)にははっきり言って爽快感が皆無、全編に渡って陰々鬱々とした画作りがなされています。
これが「死ぬに死ねない不死身の男』の主人公の心情ともマッチしており、まさに「三池監督でしか出来ない無限の住人」と言える作品に仕上がっていました。

この三池監督流のドロッドロの雰囲気に、ハマるかハマらないかで評価は大きく割れるでしょうね(自分は大好きです)。

キムタクの起用は一長一短?

本作は木村拓哉が主演を務めていることも魅力の1つ。
あのキムタクが斬りまくりのアクション!がウリになっており、そこは文句のつけようがありませんでした。

しかし……キムタクファンの方にはごめんなさい、彼の起用は個人的に「一長一短」であると思いました。
なぜなら、演技プランがほぼすべて同じなため、主人公のツンデレ成分がぜんぜん伝わってこないからです。

原作の主人公は「粗暴だけど内面はやさしい」というキャラのですが、映画の彼はずっと不機嫌そうに淡々と話してばかり。
セリフ上は「ツンツンしていたのが時たまデレる」ことがわかるのですが、キムタクの一辺倒な表情や態度ではまったくそうは見えません。

原作ではそれなりに主人公がコミカルなリアクションをすることもあるのですが、こちらではギャグのようなシーン(例:ヒロインが主人公を「お兄ちゃん」呼ばわりする)も超シリアスな演出をしているため、笑うに笑えなくなっていました。

もっとも、映画のドロドロとしたトーンと、原作のあっけらかんとした性格の主人公はマッチしないかもしれないですし、「これはこれでキムタクにしか出来ない役になっているからいいよ」「原作のやさぐれた感情表現には合っている」とも思えます。
もう本当に好みの問題ではあるのですが………やっぱり自分は、原作の主人公のほうが好きですね。

また、ヒロイン役の杉咲花は演技そのもがめちゃくちゃ上手く、その「幼さ」も作品に重要になっていました。素晴らしい配役であると思います。
しかしながら、彼女が啖呵を切るシーンでは声量不足というか、声が割れちゃっているのがかなり気になってしまいました。贅沢な注文なのですけどね。

あの人気若手俳優が悪役に!

他のキャストも超豪華。福士蒼汰と戸田恵梨香という超人気俳優が、悪役として立ちはだかるのがたまりません。


他にも満島真之介が軽妙なもの言いをするキャラにベストマッチだわ、市川海老蔵が本気で気味悪いわ、市原隼人のゲスっぷりがいっそスガスガしいわで、「見知っている役者がマンガ的な悪人を演じている」というだけでワクワクするんですよね。

次々に襲ってくる刺客たちが、(日本刀だけではない)さまざまな武器を持ち、バリエーション豊かな戦いかたをする、というのも男心をくすぐります。

原作からは上手く改変された?

原作は全30巻にも及ぶ大長編。この映画では原作の6巻くらいまでのエピソードを取捨選択して構築されており、クライマックスはほぼ映画オリジナルの展開にしています。

賞賛すべきは、主人公とヒロインの「守る(られる)べき存在」の関係をクローズアップし、タイトにまとめ上げていること。
いろいろなセリフやシーンが「対比」としてしっかり生かされているので、彼らに感情移入しやすくなっています。

反面、気になるのは「観客に同じことを2度説明してしまう」シーンがあったこと。
具体的には、オープニングで描かれたこととを、後でヒロインにほぼ変わらない内容で伝えていたりしました。
最大の見所のはずの「1人対300人」のバトルも、オープニングですでに1人で斬りまくる無双バトルをしてしまっているので、「繰り返し」な印象がありました。

それでいて、場面の繋がりがやや唐突で不自然なところもあります。
上映時間が139分と長めであるのに、少々ダイジェスト感が否めないのももったいない。もう少し構成を工夫すれば、2時間を切れたと思うのですが……。

三池監督の実写映画化のこだわりはカッコイイぞ!

そんなわけで文句を多めに言ってしまいましたが、三池監督が本作の実写化において並々ならぬ想いがあったことはお伝えしております。
ワイドショー「シューイチ」で、三池監督はたくさんのファンを持つ『無限の住人』の実写映画化にあたり、以下のように語っていたのです。

  • 「漫画のファンが100人いると、その100人で作品の見方がそれぞれ違う」
  • 「俺こそが漫画の101人めのファンであり、誰よりも俺のほうが漫画のファンになる」
  • 「ネットのことばかり考えていると作りたいものが作れない」
  • 「観る人すべてを満たすことはできないが、ファンであればどこかに共鳴できる」
  • 「俺は俺の無限の住人を作る」

か……かっけえ!
漫画の実写化について、確かに原作のファンの希望を全て満たすことはできないかもしれない。
それでも、自分が原作のファンになり、自分でしかできない実写化映画を作る、という気概はクリエイターとして素晴らしいではありませんか!

これなら、8月4日(金)公開の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』にも期待が持てるってもんです。たぶん面白いです、たぶん(←若干の不安)。

人を選ぶ映画かも

結論として、三池監督ファン、原作ファン、キャストのファンは是が非でも観て欲しい、見応えのある作品なのは間違いありません。
多少の不満も、豪華キャストによる殺陣の数々で存分にお釣りがくるってもんです。

ただ、PG12指定ギリギリの四肢欠損描写を含め、前述したような独特な雰囲気が観る人を選ぶことも否定できません。
ただただ楽しいエンタメを求めるのであれば『帝一の國』のほうをおすすめしますが、「不本意にも不死身になってしまった男のドラマ」や「血みどろ復讐劇」を期待する方は、ぜひ劇場へ。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め

野暮な不満点

栗山千明と北代高士演じる、無骸流の仲間が最後まで戦わずに映画から姿を消したのがもったいなさすぎですよね……。
邪魔な連中に毒を盛るのを手伝っただけ、というのはいくらなんでもなあ。

そういえば、満島真之介演じるマガツも、生き延びていたのに二度と出てきませんでしたね。
続編に期待……と言いたいところだけど、ラスボスはもう倒しちゃったしなあ。うーん。

また、北村一輝演じる甲冑の男・サバトは、左肩に凜の母親の首を乗せるという悪趣味な野郎でしたが、右肩には何があったんだよ
原作では、右肩にはサバトの前妻の首があることが説明されています。

あと、戸田恵梨香演じるマキエが、万次にトドメを刺せそうになったのに、人を殺す恐ろしさをいきなり語りだすのは良くも悪くも情緒不安定に思えますよね。
このあたりは原作のほうが納得しやすいので、ぜひ読んでみることをおすすめします。

死ぬに死ねない

市川海老蔵演じるシズマは、万次と同じく不死の肉体を持っていたため、5人の妻とも生き別れになっていた、「死ぬに死ねない」哀しい男。彼の最後の言葉は「もう生きるのに疲れた」でした。

終盤に凜は、万次もまた「自分を殺してくれる誰か」を探そうとしていたのではないかと思ったため、彼と別れることを決意しました。
死ぬことは哀しいけど、死にたいと思うこと、死にたくても死ねないこと、何より「生きる理由」が見つからないことも、また哀しいものですよね。

300人全員を殺した時、アノツ(福士蒼汰)もまた「お前(万次)のおかげで生き残ってしまったぞ」と言っていました。
アノツは「自分が死んでも刀が支配する時代がいずれまたやってくる」などとは言っていましたが、裏切られて仲間も失ったので、彼もまた死にたいと思ったんだろうな……。

本作のキャッチコピーは「不死身って、死ぬほど面倒くせぇ」というものでしたが、まさにその通りに思えてします。

あ、そうそう、市原隼人演じるシラが、崖ギリギリに捕まって「早く落とせよ!何度でも蘇ってやらあ!」→万次に落とされて血しぶきブシャアなのは不謹慎ながら笑ってしまいました。あんた不死身じゃないもんな。

守り、守られ

凜はしょっちゅう後先考えずに敵に攻撃をしかけていた上、用心棒であるはずの万次をかばうなど、自身の命を大切にしていないところがありました。
守られるべき立場の彼女が、もっとも命を投げ出しているようでもある。これはある意味では矛盾しています。

これあるからこそ、最後に300人と戦う前の、万次と凜の会話が感動的になっていました。

万次「凛、俺は誰を斬りゃいいんだ?」
凜「私を斬ろうとする人!」
万次「それでいいんだよ…おめえに手ぇ上げるやつ叩っ斬るだけだ!」

ここで2人は、命を守る用心棒と、その雇い主という、まったく矛盾をしていないシンプルな関係に戻りました。
この関係こそが、万次の「大切な人を守り抜く」という生きる理由にもなっているんですよね。

その関係は、アノツと、彼を守ろうとして凶弾に倒れてしまったマキエ(戸田恵梨香)も同じ。
万次がアノツに「あいつ(マキエ)に感謝しろよ」と言ったのは、マキエに自身を重ね合わせたからでもあるのでしょうね。

お兄ちゃん

映画のラストは、凛が倒れた万次を「お兄ちゃん」と呼び、万次が「そこは“兄様”だ」と返すシーンで幕を閉じました。

凛は自分が死んだ万次の妹に似ていることを知っていたので、彼の最期の時に「愛する人」から呼びかけがあって欲しいと願ったんでしょうね。

だけど、万次は死ねない(死なない)。
彼が「凛より先に死ぬわけにはいかねえ」って言っていた通り、それこそが彼が生きる理由なのですから。

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

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  1. オープンリーチ より:

    原作未読で、木村拓哉主演の映画は本作と「武士の一分」と「スペースバトルシップYAMATO」位です。観賞前にこの映画を「今年の危険案件映画の一つ」と勝手ながら称していましたが、撤回しようと思うほどの佳作でした。
    木村拓哉の出る映画とは思えないほど泥臭い雰囲気があり、かつて元メンバーの稲垣吾郎が見事な演技を果たした「十三人の刺客」に通じるものがありました。
    不満点は「万次」が不死身だというのは映画の最初で分かっているので、いわば「チートキャラ」と知らずに戦う敵が気の毒に思えた点。
    PG-12なのでけっこうゴアを期待したわりには拍子抜けだった点(今年上映の「ハクソー・リッジ」は奇しくも同じPG-12なので不思議)。
    >>戸田恵梨香演じるマキエが、万次にトドメを刺せそうになったのに、人を殺す恐ろしさをいきなり語りだすのは良くも悪くも情緒不安定に思えますよね。
    このシーンで心の中で「それ今言わなきゃならんことか?」と思ったら、すぐさま万次が似たような台詞で突っ込んでくれたのは嬉しかったです。ある意味「応援上映」以上に映画と一体になれたのかもしれません。

  2. yama より:

    連載当初からの原作ファンとしては、主演がキムタクということよりも主題歌が人間椅子じゃない時点で「ダメだこりゃ」と思っていたのですがw
    https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51EnjdWAGyL._SX425_.jpg

    それはさておき、キムタクの相変わらずのコスプレ演技には正直呆れはしたものの、今回に限って言えば彼の個性が万次というキャラのやさぐれ感とうまいことマッチしていたと思います。昔やってたアニメ版の万次は何か達観していて穏やかな人物像にされていたのが不満だったもので…。
    三池監督お得意の血みどろの殺陣もキムタクが意外と(失礼)がんばっていたおかげで結構見応えがありました。

    ただ、「るろうに剣心」を観た時も思ったのですが、この手のバトルが串団子状に連なる漫画を映画化するとどうしても展開が単調になるのは否めない気がします。なので串団子バトル漫画の最もたるものであるジョジョの映画は、やっぱり不安です…。

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著者

ヒナタカ

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