忠実リメイクの『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』と激論を呼ぶ『トイ・ストーリー4』との比較で見えてくるものとは

忠実リメイクの『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』と激論を呼ぶ『トイ・ストーリー4』との比較で見えてくるものとは

『トイ・ストーリー4』は絶賛の声が相次ぐ一方で、激烈な否定的な声も聞こえてくるという大議論を呼んでいます。
筆者は試写で観たとき途轍もなく感動し、大絶賛した記事も書いたのですが、もう少しそこのフォローをしておけば良かったかな…と反省していました(その記事はこちら↓)
『トイ・ストーリー4』完結の“その先”を描けた「5つ」の理由 | シネマズ PLUS

それでも、自分はこの映画を肯定したい!という思いは根強くあります。
その理由をまとめるとまた長文になるので別記事で後ほど書くとして……まずはこのことを訴えておきましょう。
同日公開されている『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』と、この『トイ・ストーリー4』を合わせて観るといろいろと興味深いということを。

この両者の共通点を、実際に観る前からもわかる範囲で挙げるとこのようになります。

  • 3DCGアニメ映画である
  • 原点となる作品から20数年を経て世に送り出された
  • ターゲットとなる客層もほぼ同じ(今の子供とかつて子供だった大人)
  • 公開日(2019年7月12日)が同じ

もっとも、リメイク作シリーズの最新作かという最も大きな違いもあるのですが、ここまでの「日米対決」はなかなか珍しいんじゃないでしょうか。
その興行収入的には『トイ・ストーリー4』がディズニー映画どころか日本における洋画アニメ史上最高の初動を記録しているレベルなのですが、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』も2位に食らいつき満席の回も相次ぐとかなりの健闘をみせているようですよ。

変化が賛否両論を呼ぶ『トイ・ストーリー4』と、何も変わっていない『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』

そして……自分が実際に『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』を観た感想としては……好きな方には本当にごめんなさい、圧倒的な「無」でした。

オリジナル版が伝説化されているほどに有名な作品ですし、もちろん一定以上の面白さがあり、3DCGのクオリティも十分高いのですが……それらの前にリメイクの意義とは一体?と観ている間じゅう思ってしまって、感情が一切動かされなかったのです……。
『トイ・ストーリー4』はこれまでのシリーズとは違った価値観を訴えているのですが、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は何も変わっていないのです。
実際に観ると、作品の姿勢にここまでの違いがあるものなのか……と本気で驚けます。

おそらく、オリジナル版『ミュウツーの逆襲』の脚本家の首藤剛志さんが2010年に亡くなられて、故人の作品に変更を加えることはできなかったという事情もあったのでしょう。(実際に『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の脚本には首藤剛志さんのみがクレジットされている)
オリジナル版を忠実に再現するというのはそのリスペクトに溢れているということでもあるので、無下に悪くは言えないのですが……。

※もちろん『ミュウツーの逆襲』そのものは素晴らしい作品であると思います。詳しくはこちらの記事で書きました↓
『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』にはメタフィクション的構造が?自己存在を問う物語を今一度解説 | CHINTAI情報局

「変化」と「無変化」のどちらに価値を見出すか?

そうだとしても……『トイ・ストーリー4』の大きな魅力である「3DCGアニメで作る意義」「映像技術の進歩による画の感動」「その映像技術が物語とも不可分」「20数年の時を経たこその価値観の変容(これは賛否両論を呼んでいますが)」などを……申し訳ないですが『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』にはそのいずれも感じることができなかったというのが正直なところです。

また、オリジナル版の『ミュウツーの逆襲』は子供をターゲットとしながらも、当時で話題になっていたクローンの問題を扱い、わかりやすい勧善懲悪でもない、ダークな作劇にもなっているなど、革新的な内容でもありました。
それを持って名作と呼ぶことに異論は全くないのですが、個人的に終盤の展開はご都合主義的に感じてしまって好きではなかった、決して全方位的に良く出来ている作品とは思っていませんでした。
だからこそ、今回の『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』はそこを補完すること、現代の価値観で語り直すというアップデートをするチャンスだと思っていたのですが……その期待を裏切られてしまったのはやはり残念だったのです。

最も、これも個人の感想にすぎません。
原点に忠実な『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』のほうを支持できて(それこそ故・石塚運昇さんの声をはじめとした「再現」にこそ感動があるかもしれない)、今までのシリーズのある要素をひっくり返している『トイ・ストーリー4』のほうが許せないという人もいるでしょう。
個人の価値観、もっと言えば「変化」と「無変化」のどちらを良しとするかで、大きく異なるでしょうね。

それでも……「無変化」な『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』よりも、過去の作品からの「変化」に(否定的な気持ちも含め)感情を大きく揺さぶられた『トイ・ストーリー4』のほうに、個人的には大きな価値を見出すのですけどね……。

もちろん、今の子供に『ミュウツーの逆襲』が観る機会が与えられたということはそれだけで喜ばしいことであり、それを映画館で上映することにも大きな意義があるとは肯定したいです。
何より、オリジナル版を観ていないという人にとっては比較などではなく、純粋に作品を楽しめるでしょうしね。

存在意義を問うメタフィクション的な構造があった?

もう1つ、『トイ・ストーリー4』と『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』には「自己の存在意義を問い直す」という物語上での共通点があります。
両者のネタバレになるので詳しく比較することは避けますが、これも似通っているようで結論として導き出されるメッセージはある意味では正反対のところがありますね。

そして……上のツイートにも書きましたが、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』には構造上とてもズルいところがあります。
物語上で「コピーされたクローンの存在意義とは?」という疑問が投げかけられているのですが、それが本作の「コピーされたリメイクの存在意義とは?」という疑問にも結びつくという、ある意味でメタフィクション的な構造になっているのです。

そんなわけで、劇中でクローンにも存在意義はあるんだと訴えがあるたびに、今観ているリメイクの存在意義を疑問に感じている自分が間違っているんだろうという微妙な気持ちにならざるを得ないという、なんとも奇妙なパラドックスのある作品に……。
ある意味で、これが『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の他作品にはない魅力なのかもしれません。

また、オリジナルの小林幸子による主題歌を、中川翔子とのデュエットで歌い直した『風といっしょに』は掛け値無しに素晴らしかったですね。

※こちらのブログ記事も素晴らしいのでぜひご参考に。オリジナル版には「完全版」の存在もありますからね……↓
【ネタバレあり】映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』感想【不完全燃焼なリメイク】 : Subhuman
【ネタバレあり】『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』感想・解説:何のためにこのリメイクを作った? | ナガの映画の果てまで

ホラー映画の続編ともまさかの共通点が!

そして……『トイ・ストーリー4』の公開日と同日より公開された、もう1つ奇妙な共通点を見出せる映画があることをご存知でしょうか。

それは『ハッピー・デス・デイ 2U』
殺される誕生日をループするホラーというB級な設定ながら、とんでもない面白さにより、現在一部界隈で熱烈な支持を得ている作品の続編なのです!

『トイ・ストーリー4』と『ハッピー・デス・デイ 2U』の共通点を挙げると以下になります。

  • 観る前:「え?前作でキレイに終わったじゃん!続編って大丈夫なの?」→観た後:「すみませんでした!蛇足じゃなかったです!感動しました!」ってなる
  • 感動のドラマが紡がれている一方で意外性のある展開に驚かされる
  • 「選択」と「可能性」を巡る物語になっている
  • 上映時間が100分
  • 公開日(2019年7月12日)が同じ

本当に、『ハッピー・デス・デイ』と『ハッピー・デス・デイ 2U』は連続で観ると最高の映画体験になりますよ…。
しかも『ハッピー・デス・デイ』は、日本では初めは全国8館という超小規模公開ながらスマッシュヒットを遂げており、TOHOシネマズ日比谷では平日でも満席が相次ぎ、上映回数が1週ごとに増えるという異例の興行を推移していました。

この推移はメディアでもっと記事になってもいいんじゃないの?
冗談抜きで、『トイ・ストーリー4』と『ハッピー・デス・デイ 2U』のどちらも「選択」と「可能性」を巡る素晴らしい物語でしたよ…騙されたと思って、どちらもぜひ劇場で(前作『ハッピー・デス・デイ』から!)観て欲しいです。

※『ハッピー・デス・デイ』および『ハッピー・デス・デイ 2U』の紹介記事はこちら。ネタバレはありません↓
『ハッピー・デス・デイ』は殺される誕生日をループしまくる快作ホラー!爆笑と感動の理由とは? | シネマズ PLUS

※魅力を伝えるファンアートも投下されています↓

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