『マグニフィセント・セブン』原案からの改変は是が非か?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『マグニフィセント・セブン』原案からの改変は是が非か?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はマグニフィセント・セブンです。

個人的お気に入り度:7/10

一言感想:七人のイコライザー

あらすじ

ローズ・クリークの町の住人たちは、悪徳実業家のボーグ(ピーター・サースガード)により蹂躙され、苦しめられていた。
ボーグを倒すため、賞金稼ぎのサム・チザム(デンゼル・ワシントン)率いる7人のならず者たちが集まった!

『トレーニング・デイ』『サウスポー』のアントワーン・フークア監督最新作です。

監督のスタンスはけっこう一貫していて、それは「この腐りきった悪に染まったような世界でも、譲れない正義がある!」というもの。
本作の原案は『七人の侍』および『荒野の七人』で、どちらも「クズすぎる山賊に搾取されている農民のために、ならず者たちが集結する!」というものなので、こりゃあもうフークア監督と相性良すぎじゃね?とワクワクするわけですよ!


いやもう、その期待はもう当たりまくっておりました。
悪役のドグサレ畜生っぷり、決して「完全な善」とは言えない主人公たちのキャラクター造形……CGを極力使わずにムードを優先する画作りも含めて、フークア監督節が溢れまくっておりました。幸せか!幸せか!

キャラクターを紹介しよう!

本作は「7人が集まって悪を討つ西部劇!」以外に特に説明がなくてもいい、良い意味でド・シンプルな内容です。
そして、『エクスペンダブルズ』シリーズとはまた違うテイストの、ハリウッドきってのナイスミドルなおじさま俳優たちがめちゃくちゃカッコイイんですよ。
もう俳優のファンであれば彼らの魅力にKNOCK☆OUT☆!これを主張できれば、ほかに何も言わなくてもいいですね。

以下からは、簡単にキャラクターを紹介しましょう!

賞金稼ぎ:サム・チゾルム(デンゼル・ワシントン)
ある悪人を追っている謎多き男。冷静沈着。

ギャンブラー:ジョシュ・ファラデイ(クリス・プラット)
手先が器用。詐欺師のようなおちゃらけキャラ。

スナイパー:グッドナイト・ロビショー(イーサン・ホーク)
あるトラウマを抱えており、消極的な性格。

ハンター:ジャック・ホーン(ヴィンセント・ドノフリオ)
山小屋に住んでいる孤独な老人。斧などで攻撃する。

暗殺者:ビリー・ロックス(イ・ビョンホン)
ナイフの使い手で、クールな性格。

流れ者:バスケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)
金が大好きな鼻持ちならない性格。

戦士:レッド・ハーベスト(マーティン・センズメアー)
誇り高きインディアン。弓矢の使い手。

個人的に大好きだったのが、「スナイパー」のグッドナイトと、「暗殺者」のビリーがブロマンス的な友情を育むことですね。
まさかのイーサン・ホークとイ・ビョンホンのカップリング!もうビチョ濡れ必至ですね!(下品な表現)

※以下のご意見にも大納得

役者が特異的なキャラを演じることについてのあれこれ

実は、「賞金稼ぎ」のチザムはもともと2挺拳銃の使い手の予定だったのですが、デンゼル・ワシントンがあまりに銃を抜くのが早かったため「銃1本で十分」なキャラクターへと変更されたのだそうです。
デンゼル・ワシントンは『ザ・ハリケーン』という映画でプロボクサーを演じるために猛特訓したこともありましたし、俊敏な筋肉の動きにも特化した俳優なんだろうなあ。

イーサン・ホークは「暗殺者」のグッドナイトのキャラを脚本以上に掘り下げ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という現代の問題を役柄に持ち込むように提案したのだそうです。
南北戦争で内面に傷を負い、心が空っぽの状態で西部をさまよっているグッドナイトが、どのようにその傷を克服していくかにも注目してほしいです。

さらに、インディアンの「戦士」であるマーティン・センズメアーは、本当にインディアン(アラスカ先住民のコユーコン族)出身の俳優だったのだとか。
単にスター俳優だけを集めず、リアリティーのあるキャスティングがなされていることも賞賛すべきでしょう。

原案を知っているほど不満かも?

本作の弱点は、原案からキャラクター設定を変えていることでしょうか。
その変更点の中でもっとも大きいのは、『七人の侍』の菊千代、『荒野の七人』のチコにあたるコメディーリリーフがいなくなっていることでしょう。

リーダー格の「賞金稼ぎ」も、原案にはないとある復讐心について語っています。
インディアンの「戦士」や、戦いにトラウマを抱えている「スナイパー」のようなキャラも2つの原案にはいません。

原案を観た方にとっては、これを大胆な改変だと好意的に取るか、「やっぱりそこは変えてほしくなかった!」と否定的に思うかで、本作の評価が分かれそうです。
2つの原案および今回のリメイク版で共通しているのは、よくシャレを言う「ギャンブラー」とナイフ使いの「暗殺者」くらいですね(「ハンター」と「流れ者」っぽいキャラクターも『荒野の七人』にはいます)。

また、会話劇が多めの中盤は少し中だるみが否めません(原案からそうなので仕方がないっちゃあ仕方がないのですが)。
上映時間も2時間を超えていますし、もう少しメリハリのついた展開があってもよかったかもしれませんね。

また、最終的なメッセージも2つの原案から少し異なっているので、そこでも「変えなくてもいいのに!」と思う方もいるのかもしれません。
よりテーマが現代的になっているとも言えるので、一概には否定したくはないですけどね。

一応フォローしておくと、フークア監督は「重要なのは『七人の侍』のDNAに忠実なこと」「根幹を成すのは“男たちが集まって正しいことをする”ということだ」と語っており、決して原案にリスペクトがないというわけではありませんよ。

『イコライザー』観ようぜ!

本作が気に入った方には、ぜひ同じくフークア監督の『イコライザー』、そして『ザ・シューター 極大射程』をおすすめしたいですね。

イコライザーは、平穏な街を脅かす悪は俺が始末してやるぜ!という「闇の仕置人」的な主人公像がたまらない作品。
『96時間』『アジョシ』『ジョン・ウィック』『ザ・コンサルタント』の系譜である「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした系映画(映画ライターのギンティ小林さん命名)の中では、個人的に最高傑作です。
個人的に大感動したのは、序盤30分の「何も起こらない日常生活」でした。これだけで主人公がどれだけイイヤツかがわかるんだよなあ。

『ザ・シューター/極大射程』は、凄腕のスナイパーが国家的な陰謀に巻き込まれ、逃避行をするという物語。
「この腐りきった悪に染まったような世界でも、譲れない正義がある!」というフークワ節が極に達している作品でもあり、エンタメ性も抜群なので、ぜひぜひご覧いただきたいところです。

何より、今回の『マグニフィセント・セブン』では、その『イコライザー』および『ザ・シューター』の主人公に似たキャラがいるんですよ。
重圧な画で、頼りになるおじさんたちが悪をばんばんぶっ殺してくれるわけですよ!
これはもうフークア監督の集大成というか、『七人の侍』というか、『荒野の七人』というか、『七人のイコライザー』と言っても過言ではないのです。

しかも、『マグニフィセント・セブン』と『イコライザー』の両者で、デンゼル・ワシントンという、ちょっと憂(うれい)を帯びた役者がその魅力を発揮しまくっているのがたまらんですね。かっこいいけど、同時にちょっと支えたくなる「弱さ」を見せるその姿が大好きでした(しかもそのアクションも両者で似てる)。

極めて万人向けな作品です!

いろいろと2つの原案とか、フークア監督作品について語ってきましたが、基本的に原案を観ていなくても、予備知識がまったくなくても楽しめる作品です
本作の後に『七人の侍』や『荒野の七人』に触れてみるのもいいでしょう。

会話シーンが多いのであんまり小さい子にはおすすめしませんが、それを除けば極めて万人向けする作品です。
興行的には苦戦しているようなので、余計に応援したい!おすすめです!

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

野暮な不満点

『七人の侍』の菊千代、『荒野の七人』のチコにあたるキャラがいないがために、両方の作品で個人的に一番好きなシーンがなくなっちゃったのは残念でした。
そのシーンとは、いままで邪険にされてもずーっとついてきたのに、急に姿が見えなくなったので、「おかしなもんですな、いざついて来なくなると、少しさびしい!」とメンバーの1人が言うところ。作中でもっともキュートなシーンだったので……。

反対にクスクス笑えるシーンでよかったのは、「暗殺者」のビリーがせっかくナイフ術を教えているのに、町人が早々に諦めようとするシーンですね。
彼も口下手だけど、いい人ですよね。

ジョシュのキャラクター

それぞれのキャラの散りざまが印象に残る本作ですが、個人的には「ギャンブラー」のジョシュの最期に一番グッと来ました。
彼は屈服するに見せかけて、隠し持っていた手榴弾で「だまし討ち」をするのですから。
序盤にどうでも良さそうなチンピラに、トランプを使ってだまし討ちしていた伏線が効果的に働いています。

また、フークア監督はジョシュというキャラクターについて以下のように語っています。

「ジョシュは多くの男を殺してきたが、一度も罪悪感を持ったことはない。彼は自分が悪人だと思っていたんだ。それは町の人々を助けようと思った理由でもある。助けられれば、彼にも良い面があり、そんなに悪い奴じゃないということだから。他人の力になりたいということは、ジョシュにとって、これまで経験したことのないポジティブな感情なんだよ」

ジョシュは、自分が悪に染まっているからこそ、少しでもその人生の中で善行をしたいと思っていたんだなあ……。

「アーメン」の意味

チザムはボーグを追い詰め、「お前の手下が犯した俺の母と妹のため」と口にしていましたが、ボーグは「俺を殺してもお前は満足できない!」とその復讐という行為そのものを否定する物言いをしていました。
最終的にボーグを撃ち殺したのは、チザムではなく、未亡人のエマでした。
チザムは、絶命したボーグに対して「アーメン」と言い残しました。

アーメンはキリスト教などのアブラハムの宗教で使われる言葉で、祈りの後に使われます(その意味は「誠にその通りです」「そうありますように」)。
このアーメンとは、復讐心とは関係な、死にゆく者のために残した言葉だったのか……。

ヒントとなるのは、序盤に夫を殺されたエマが、山賊たちを討つ目的を聞いてきたチザムに「正義よ、復讐も少し」と答えてきたことでしょう。

この言葉を省みるに、チザムにもエマと同じような復讐心があったのでしょう。
町の人々の力になろうとしたのも、その復讐心を隠すための「言い訳」にすぎないのではないか……。
でも、彼も本当は純然たる正義のために行動したかったのではないでしょうか。

復讐のためであれば、その者の冥福を祈るような「アーメン」という言葉が出るはずもありません。
最後に、チザムはささやかでも、復讐のためでなく、「正義のため」に殺したという証明がほしかった……それが「アーメン」という言葉の意味だと思うのです。

正義のために

思い返すと、この戦いを「なぜ請け負ったか」は、7人それぞれにとって(金などではなく)「自分でもよくわからない」ところががありました。
しかしその理由はとても単純。それは「どんな時であれ、困っている人がいたら助けなければならないという」純然たる想いのためのはずです。

最後に墓標をバックに語られたのは「何かのために戦った、崇高な者たち(Magnificent Seven)」というナレーション。
その「何か」が示すものも、もちろん「正義」です。

※最後にかかるオリジナルの楽曲には超アガッたぜ!

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  1. 毒親育ち より:

    極上の西部劇ヒーローを堪能して来ました!ディスク購入決定!

    >一言感想:七人のイコライザー
    そのとおりです!ヒナタカさん!!

    >監督のスタンスはけっこう一貫していて、それは「この腐りきった悪に染まったような世界でも、譲れない正義がある!」というもの。
    >こりゃあもうフークア監督と相性良すぎじゃね?とワクワクするわけですよ!
    何か興業不信らしいですが、20世紀に日本から海を渡った侍達が北米大陸でガンマンに転生し、21世紀に大復活
    !!なのに悲しいです・・・。

    >会話シーンが多いのであんまり小さい子にはおすすめしませんが、それを除けば極めて万人向けする作品です。
    地元シネコンでキッズ達に「魔法使いも良いけどガンマンもいかが!?」とか声掛けまくる不審者と化しそうな程悔しい!

    >悪役のドグサレ畜生っぷり、
    デカい口叩く度に最後が楽しみでしかたなかったです!
    >決して「完全な善」とは言えない主人公たちのキャラクター造形……
    聖人君子でない・・・てか微妙にダメ人間揃いな所が愛苦しい!

    >賞金稼ぎ:サム・チゾルム(デンゼル・ワシントン)
    やっぱり勘兵衛でクリスかと思いきや「義」・・・だけの人ではなかったですね。

    >ギャンブラー:ジョシュ・ファラデイ(クリス・プラット)
    チャライのにカッコイイ!昔のアニメにはこんな二枚目がいっぱいいたような・・・。

    >スナイパー:グッドナイト・ロビショー(イーサン・ホーク)
    ビリーとのイチャイチャが最高!絶対帰って来ると信じてました!

    >ハンター:ジャック・ホーン(ヴィンセント・ドノフリオ)
    「微笑みデブ」だと知ってビックリ!「銃と女を重ねるのはよくない」って、シャーリーンが泣いてるよ!?

    >暗殺者:ビリー・ロックス(イ・ビョンホン)
    失禁もののカッコよさ!本当にビョンホン様は演技にストイックで痺れる!

    >流れ者:バスケス(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)
    “テキシカン!”面白い奴でしたね。七郎次っぽい感じがしました。

    >戦士:レッド・ハーベスト(マーティン・センズメアー)
    ヤングメン!勝四郎でチコかなあ・・・と思ったけど、あまり他の6人と絡まなくて残念。もっと文化的な交流とか欲しかったです。長老に集落を追い出されたのは何故か・・・とか。「犬の餌(白人の食事)もいけるな・・・」「犬の酒(バーボン)もやってみろ!」とかさあ!
    >マーティン・センズメアーは、本当にインディアン(アラスカ先住民のコユーコン族)出身の俳優だったのだとか。
    EEEEE!?残念過ぎるぅっ!!戦いの化粧とか本当にカッコ良かったです!

    >原案を知っているほど不満かも?
    この辺はあまり気にならなかったですね。
    >『七人の侍』の菊千代、『荒野の七人』のチコにあたるコメディーリリーフ
    かろうじてバスケスでしょうか。

    >『イコライザー』観ようぜ!
    「理不尽」を目にした時には観ます。

    >野暮な不満点
    >ビリーがせっかくナイフ術を教えているのに、町人が早々に諦めようとするシーンですね。
    イケメン俳優?ビョンホン様は“アクションスター!”なんだよ!!と叫びたくなるほどシビれました!
    なのに。なんでや!?なんでビリー先生のナイフ教室不人気やねぇ~~~ん!!
    >彼も口下手だけど、いい人ですよね。
    クールな彼が取り乱す程ガッカリしてて本当に可哀想でした・・・。

    あと7人と町の子ども達との絡みが無いのが不満でした。ナイフ教室に子ども達が集まって、戦わおうとしないお父さん達を「卑怯」と言ってしまった子を叱るビョンホン様とか見たかったです。
    そしてラストにお墓参りを・・・。

    >ジョシュのキャラクター
    煙草を出して時点で読めてましたが「ツキがまわってきたぜ・・・」はシビれました。
    余談ですが、あの「悪魔の銃」を刀剣で攻略した剣心と御庭番集は凄かったんだなあ・・・。

    >「アーメン」の意味
    >このアーメンとは、復讐心とは関係な、死にゆく者のために残した言葉だったのか……。
    死ねば怨みも消える・・・死ねば仏の仏教にも通じますね。

    >正義のために
    >「何かのために戦った、崇高な者たち(Magnificent Seven)」
    まごうことなき『七人の侍』で『荒野の7人』でした!

    • hinataka hinataka より:

      いぇーい!毒親育ちさんはいつも一言感想を褒めてくれるのうれしいです!

      >あと7人と町の子ども達との絡みが無いのが不満でした。ナイフ教室に子ども達が集まって、戦わおうとしないお父さん達を「卑怯」と言ってしまった子を叱るビョンホン様とか見たかったです。
      そしてラストにお墓参りを・・・。
      自分も「子どもがたちがいてほしかった!」と思いました。おりじなるのお参りシーン、いいですよね・・・

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著者

ヒナタカ

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