『ローガン』過去の悲劇と、訪れる幸福(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『ローガン』過去の悲劇と、訪れる幸福(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はLOGAN/ローガンです。

個人的お気に入り度:9/10

一言感想:重厚な西部劇だった

あらすじ

老いた元ヒーローが、少女と老人と共に旅に出ます。

アメコミ(アメリカンコミック)原作の映画『X-MEN』シリーズ最新作にして、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『ウルヴァリン SAMURAI』に続く、人気キャラクター・ウルヴァリン(通称:ローガン)を主役に据えた作品です。

同役でスターダムにのし上がり、以来17年に間に渡り演じ続けていたヒュー・ジャックマンが観られるのはこれで最後。
事実上、ローガンの最後の戦いを見届ける作品になっています。

多数の要素と、西部劇への敬意

『ローガン』の何よりも素晴らしいところは、以下のような多数の要素があるにも関わらず、1つの映画として完璧と言えるほどにまとまっていて、かつアメコミヒーロー映画としてエポックメイキングであることです。

  1. 『レオン』的な不器用な男と少女の交流
  2. 『チャッピー』的な子育て映画
  3. 『許されざる者』的な西部劇
  4. 『ターミネーター2』的な、恐るべき敵と戦いながら移動する逃亡劇
  5. 『ノッキン・オン・ヘブンズドア』的な、死期が迫っている者のロードムービー
  6. 『グラン・トリノ』的な、老人が次の世代の者へ何かを伝える人間ドラマ

中でも、本作は画づくりや話運びにおいて、往年の西部劇にとても大きな影響を受けています
舞台が2029年の近未来でカジノなども出てくるにも関わらず「荒涼とした」シーンが多め、主人公のローガンの立ち位置はほぼ「用心棒」と言えるものなのですから。
いや、もうこれは「西部劇のアメコミヒーロー映画への翻案(大筋を真似ながら細かい点を造り変えること)」と言ってもいいのではないでしょう。

事実、監督のジェームズ・マンゴールドは、主人公のローガンを『アウトロー』や『シェーン』などの偉大な西部劇の英雄として考えていたのだとか。



しかも、説明や登場人物を極力削ぎ落とし、主人公を含めたキャラクターの魅力を前面に押し出し、西部劇と同様の重圧なドラマが生まれているのです。
「アメコミヒーローものを西部劇に落とし込む」というコンセプト、これこそが本作の何よりの特徴であり、最も成功しているポイントと言い切っていいでしょう。
ジェームズ・マンゴールドは過去にも『3時10分、決断のとき』という西部劇のリメイク作を手がけていたので、その力量はすでに証明済みです。

また、屈強な大男と小さな少女という「関係性」、彼ら(と1人の老人)が逃避行をしていくうちに心を通わせていく物語そのものにグッときます。
前述の通り『レオン』を思い浮かべる人も多いでしょうし、絶賛されたゾンビゲーム『ラスト・オブ・アス』を連想した方もいるでしょう。

やはり個人的には、大傑作『ターミネーター2』を一番に連想しました。

いや、もう、アメコミヒーロー版のターミネーター2が観られる、というだけで観たくなりませんか?(真剣な問いかけ)

R15+指定であることの意味

さてさて、本作『ローガン』が特徴的なのは、西部劇の翻案であることともう1つ、R15+指定でグロ描写がアリアリなことです。
頭は飛ぶわ腕がもげるわ刃が顎から入って頭に抜けるわ、アメコミ映画としては抜きん出た残酷さを誇っています。

しかしながら、この残虐描写がX-MEN史上最もハードな本作には必要だったのは間違いありません。
深い傷を負う「痛み」が視覚的に伝わりますし、何より本作では「人を殺してしまう」ことへの悲哀がたっぷりと描かれているのですから。

ローガンの武器である鋼鉄製の爪を振りかざせば、肉が削ぎ落とされ、人が簡単に死ぬことなんて当たり前のことです。
今までの映画では、全年齢が観られるようにするため、ほとんど血も出ることがなかったのですが……ここにきて、その当たり前を直接的に描くのはいい意味でショッキングでした。

また、劇中には「X-MEN」のコミックが登場し、ローガンが「マンガと現実は違う、現実では人が死ぬ」と告げるという、メタ的な視点のシーンもあります(以下の予告編でも観られます)。

この残虐描写とメタ視点から思い浮かぶのは、
「こんな武器を持ったアメコミヒーローが現実にいたら、ヒーローというよりも人殺しになるんだよ」
というメッセージです。
その辛い事実を、正面から描ききること。
これが、本作には必要なのです。

繰り返しになりますが、『ローガン』はすべての映画の中も随一の「残虐であることに意味がある」作品です。
R15+指定と聞いて「残虐なのはイヤだなあ」と二の足を踏んでいる方もいるかもしれませんが……それでも、本作でそのことを感じてほしいです。

余談ですが、本作はアメコミ映画なのに、登場人物たちが「FU◯K!」と言いまくっています。
本国では2回以上FU◯Kを使うとR指定になり観る人が限られるので、全年齢指定の映画ではその言葉を避けなければなりません。
しかし、本作のようにR指定で行くぞ!な映画なら「FU◯Kを盛大に使え!」ってなるんですね。

キャラを知っているとより感慨深い作品に

本作『ローガン』が他の映画のX-MENシリーズとどういう立ち位置でいるのか、時系列はどうなっているか?と言うと、どの作品からも直接はつながってないパラレルワールドという設定らしいです。
X-MENシリーズはけっこう他の作品との矛盾点が見つかったりもするので、これはある意味で潔いですね。

※「パラレルワールド」はヒュー・ジャックマンの発言を受けたメディアの報道の文言で、監督にそのことが否定されているとのご指摘を受けました。あくまで『X-MEN: フューチャー&パスト』のエピローグから数年が経った、つながっている世界の出来事のようです。

今までの作品と関係がないのかと言うと、そうではありません。
ところどころで他作品とリンクしているアイテムや登場人物がありますし、何よりウルヴァリン(ローガン)が今までどのような戦いをしていたかを知っていると、より感慨深い作品になっています。
これまでシリーズを観続けていた人だけが得られる、「特権」としての感動があることも間違いないでしょう。
※知らない方も、以下の2分弱の動画を観ておくといいかも。

個人的に、『ローガン』の予習&復習のために観ておくのにおすすめなのは『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』と『X-MENフューチャー&パスト』ですね。
どちらにも、本作に通ずる描写がありますよ。


他、これまでのX-MEN作品のレビューはこちら↓
新シリーズの幕開けにふさわしい面白さ「X-MEN ファーストジェネレーション」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
ウルヴァリンは二度死ぬ?「ウルヴァリン:SAMURAI」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
過ぎ去りし過去 映画「X-MEN: フューチャー&パスト」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
『X-MEN:アポカリプス』神ではない存在(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

覚えて置いて欲しい用語

『ローガン』は今までのX-MENを知っていたほうが楽しめるとは書きましたが、物語としては独立しているので、基本的にX-MENシリーズを知らなくても楽しめる作品になっています。

ただし、専門用語が「もう知っている前提」で出てくるのでご注意を。以下の単語を観る前に頭に入れておくといいでしょう。
(※自分も鑑賞前に以下のツイートを読んでいたおかげで、作品の理解を深めることができました!ありがとう!

その他、以下の言葉を知っておくと良いでしょう。

  1. アダマンチウム=ウルヴァリンの骨格と結合している、超強度を誇る架空の合金。
  2. チャールズ・エグゼビア=別名プロフェッサーX。世界最強のテレパスで、他人の意図を読み取ったり、ある程度操ったりもできる。本作では余命わずかの老人役で登場。
  3. 恵まれし子らの学園=ミュータントたちが学んでいた学校。チャールズが設立した。

また、X-MENシリーズにおいて、突然変異で様々な能力を持ったミュータントが、人種差別に似た迫害を受けてきたことも知っておくといいでしょう。
超能力を持つヒーローが出てくるという点では荒唐無稽に思えるかもしれませんが、実は現実に根ざした問題を扱っているのが、X-MENというシリーズなのです。

少女のアクションも必見!

さらに、本作には
ヒュー・ジャックマンやパトリック・スチュワートなどの役者の演技がすごい!
細かい対比が効いている脚本が上手い!
など、もう褒めるところばかりです。

言葉で説明せずとも役者の演技で「背景」が伝わりますし、大したことがないように見えるシーンが後で重要な意味を持つようになっている!
西部劇というコンセプトが成功しているわ、画づくりがいいわ、役者がいいわ、脚本がいいわ、映画でしかできない感動が目白押しだわ……ええい!もうこれは映画としては最上級の内容じゃないか!

そしてアクションの見せ方も実に上手いんだこれが!
カーチェイスの時のカメラの動きが躍動感もありながら見やすく、位置関係も把握しやすい。
さらにはアクションのアイデアそのものも面白いわ、11歳の少女が飛んだり跳ねたりしながらオトナをぶっ殺すという要素まであるんですよ!

彼女のアクションを見て、『キック・アス』のヒットガールを思い出した方も多いのではないでしょうか。

ただし、『キック・アス』での残虐アクションが悪趣味なまでに痛快愉快だったのに対し、こちらはまったく爽快感がありません。
もちろんそれはいい意味で。幼い少女が殺人を犯してしまう悲しい事実も、作中で重要な意味を持っています。

今のアメコミ映画はすごすぎるぞ!

いろいろと語ってきましたが、本作はIMdbで8.6点、Rotten Tomatoesで93%という圧倒的高評価を記録している、多くの人が「X-MEN史上最高傑作!」「いや映画の歴史に残る傑作だ!」と言っているんだから、観ていない人はとっとと劇場に足を運べばいいんじゃないですかね!(雑かつ失礼な推薦)

あえて難点を挙げるとすれば、上映時間が138分と、キャラクター単体の作品としてはやや長尺で、テンポが鈍重に感じる部分もあること。
ただし、この尺もローガンというキャラの最後を描くには必要だったとも思えるし、やや重めのテンポも裏を返せば丁寧ということです。
オトナであれば、鈍重ではなく、「重厚」という言う意味での重さを感じられるでしょう。

ともかく、これは超おすすめです。
アメコミ映画は、現在公開中の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に続き、この『ローガン』、そして8月25日公開の『ワンダーウーマン』と、天井知らずなまでの超高評価を記録するすんばらしい作品が続々と誕生しています。
にわかアメコミファンの自分でもこれだけ感動しているんですから……いや、もう、なんていうかさっさと劇場へ!

※ちなみに本作の原案となっているのは、こちらのコミック『オールドマン・ローガン』。その他『X-23 Innocence Lost』などに登場するローラことX-23と呼ばれるキャラを取り入れています。詳しくは以下の記事が素晴らしいのでぜひ↓
X-23、もといローラ・キニーの話 – 恐竜と電波塔

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

どこかに行ってしまうローガン(野暮な不満点)

ローガンがどこか行っている間に敵に攻め込まれて、慌てて駆けつけるという展開を3回も繰り返すのは、個人的にかなりひっかかりました。もっと追手への対策をしてくれてもいいよなあ。

ただし、ローガンは映画の初っ端から、チンピラにも満足な対処ができなくなっていました(この描写は秀逸!)
そもそも自分だけでなく他者へも生への執着がなかった、もしくは似たような事態にも満足に対応できないほどに「老いて」いた、だから追手の対処ができていなかったとも解釈できます。
なにせ、ローガンはローラもはじめは見捨てようとしていましたもの……(女の子は見ていないと言ってごまかしていたこともあったけど)。

また、ローガンは立ち寄った親切な家族がいる家で、一時は泊まらずにすぐに立ち去ろうとしたり、その家族が殺された後はせっかく救ってくれた(しかもミュータントに好意的だった)医者のところからもすぐに出ていこうとしていました。

ローガンは自分が愛すべき人から離れることで、その人達を救おうとしていたのかも
その行動こそが、愛すべき人たちの死に繋がったというのは、皮肉としか言いようがないです。

そうだとしても、3回も同じようなピンチが繰り返されるのは作劇としてちょっと手落ち感が否めません。
そいえば終盤、子どもたちのアジトのすぐそばに飛んでいた偵察用(?)のドローンは何だったんだろう?
※以下のご意見をいただきました。
ラストの逃亡の前も同じ機体が複数飛んでましたし、やはりトライジェン社の偵察機ではないでしょうか。

あと、お店の商品を勝手に食べた上に店員を殺しかけるローラをローガンがたしなめたのはよかったけど、結局お金払ってなくね?(後で店員は警察にも相談したみたいだし)義理堅いローガンの性格なら払いそうなんだけどね。
※以下の意見をいただきました。
コンビニ、充電器もローガンが盗んでいきましたね。
似たもの親子であることを暗示していたのだと思います。
あと、ローガンは義理堅いけど、品性整った性格でもないですから。
スコップで車叩き壊すのも、感情を耐えるか、暴力の形で表すしかないという部分でローラと同じと感じました。ローラ自身はそういった、能力以外の部分で自分との繋がりをローガンに感じていったのかなあと。

過去の悲劇

2029年の世界ではミュータントが生まれなくなり、ローガンとチャールズとキャリバンは政府から追われる身になっていました。
それはなぜか。結論から言えば、チャールズが自身のアルツハイマー病で変質した能力で、恵まれし子らの学園にいたミュータント(生徒)たちを殺してしまったからなのでしょう。

キャリバンは、時折起こるチャールズの発作についてかなり危機感を示していました。
チャールズは、カジノで能力を使って一般人にも影響が出た時、「Sorry」と何度も謝っていました。
その後のラジオでは、ウェストチェスター(恵まれし子らの学園のある場所)でも同様の事件があったことが触れられていました。
チャールズは殺される前、「私がしてきたことは言葉にもできない」と言っていました。

これらから、明確に描写はされなくても、過去にチャールズは取り返しのつかない罪を背負ったことがわかるのです。
(元の脚本では、その悲劇をフラッシュバックで見せるシーンがあったのだとか)

マイノリティの排除

ミュータントが生まれなくなったのは、人間が人為的に食べ物に遺伝を操作するものを混入させていたから、という事実も辛かったです。
迫害をされるミュータントというマイノリティを文字通り誕生させない、マイノリティの「排除」のメタファーとも取れます。

それでいて、人間は兵器としてのミュータントの子どもたちを次々と誕生させ、あまつさえ従順に命令を聞く兵器が続いて「開発」されると、その子どもたちを「処分」するというおぞましい行為もしていました。
本作が描いているのは、マイノリティにとっての最悪のディストピアとも言えます。

太陽号の希望

チャールズは太陽号(Sun Seeker)という名前の船に乗って大海原に出ることを夢と言っており、それはローガンにとっての夢でもあるかのように語られていました。

チャールズとローガンは、太陽号に乗って、周りに誰もいない場所に行こうとしていたのではないでしょうか。
なぜなら、チャールズの発作は周りの人間すべてを巻き込んでしまうものだったから。
ローガンは行く場所それぞれで敵に襲撃され、愛する人が殺されるのを目の当たりにしていたから。

チャールズとローガンは、愛する者を自分のせいで失ったこと、それを心から後悔していることおいて共通しています
彼らの希望もまた同じで、海の上(もしくは行き着いたどこかの無人島)に行けば、もう誰かを失うことはない……そんな儚いものだったのかもしれません。

さらに切なくなってしまうのは、もう1人の生き残りであるキャリバンが太陽を受け付けない体であったことですね。
チャールズとローガンは船に太陽号という名前をつけることで、無意識的にキャリバンをその旅へは連れて行かないように考えていたのかもしれません。
どこかに旅立つのはキャリバンを死なせないためだとしても、やっぱり悲しいなあ。

(なお、キャリバンは自爆を選んだ後に生き残っていたようでしたが、「特許品」としてさらなる兵器にされそうなことが示唆されていました。次回作に出てくるのかな……)
※以下のご意見をいただきました。
ライス博士が「(細胞)組織を採取しろ」と言っていたので、あのキャリバンは死んでしまったかと。おそらくクローンで復活させられ原作でアポ様の四騎士にされた時のように複数の超能力を付与され強化されて出てくるでしょうか。
原作でも彼は本当に良い奴なので、これ以上酷い事しないでえッ!!

手を握る

作中屈指の感動を覚えたのは、ローラが、チャールズを埋葬したローガンの手をそっと握る……ただそれだけのシーンでした。

ローラは、お金で動く乗り物のこともよくわかってなかったり、お店で無銭飲食をしたりと、社会的な常識が欠如していることが示されています。
それもそのはず、ローラをはじめ兵器として生み出された子どもたちは、番号で呼ばれ、外にはずっと出られず、おおよそ人間らしい生活をしていなかったのでした。

そんなローラは、中盤にカジノのショーウィンドウに飾ってあった、少女とオトナが手を繋いでいるマネキンを見ていました。
ローラがローガンの手を握ったのは、そのマネキンの真似事に過ぎなかったのでしょう。
だけど……それは常識を知らないでいた、幼い彼女なりの精一杯の愛情表現なのです。

普通の人生

チャールズは、気がいい家族の元で「愛する人がいて、居場所がある。これが普通の人生だ」と、ローガンに諭していました。
ローガンは、チャールズに「確かに良い生徒とは言えなかったな」とイジられていたとき、映画の中で初めて笑顔を見せていました。

ささやかな幸せが訪れた後で……チャールズは(ローガンのクローンである)X-24に惨殺されてしまいます。
チャールズが、家族と「普通の人生」を過ごす選択(他の場所に行かずに泊まる)をしたことこそが、自身の死につながったとは、なんという皮肉でしょうか。

さらに辛かったのが、一家の父親が、X-24だけでなく、ローガンも銃で殺そうとしていたことでした(ただし弾切れになった)。
嫌がらせをしていたヤツらを追い返してくれたローガンでしたが、家族を惨殺した「元凶」として彼に恨まれてしまったのでしょう。
※以下のご意見をいただきました。
ローガンとX-24は別人であると解っていたけど、意識朦朧で見分けが付いていなかった・・・と思いたいです。

せめてもの救いは、
チャールズが死ぬ前に家族とローガンと食事をすることで束の間だけでも「普通の人生」を過ごせたこと、
自身を殺したのがローガンではないことを知ったこと、
ローガンに看取られて逝ったことでしょうか。

さらば、ローガン

最後の闘いの相手はローガンのクローンであるX-24でした。
つまりはローガンにとって自分自身との戦いであったとも取れます。

X-24は生まれながらに凶暴性だけを発現させた存在であり、殺人マシーンでした。
そのローガンの一側面を表したX-24は、ローガンが最も忌み嫌っている存在とも言えるでしょう。
(自身の凶暴性こそが、愛する人を失ってしまった理由の1つでもあったのですから)

その戦いに終止符を撃ったのは、他ならぬローラ……ローガンの娘でした。
ローガンはローラに「奴らの思い通りになるな」という遺言も残しました。
父から子へ受け継いだ、明確な意思がそこにはありました。

そして、チャールズが最期に「普通の人生」を過ごすことができたように……。
ローガンもまた、絶命前にローラに「パパ(Daddy)」と呼ばれ、「普通の人生」を最期に感じることができた……。

不死の肉体を持ち、死にたくても死ねなかった彼の「安らぎ」として、これ以上のものはなかったでしょう。

(この前の、寝ている間にローガンが子どもたちにおヒゲをカットされたシーンも大好き!これも「普通の人生」だ!)
※以下のご意見をいただきました。
子どもたちが笑いながらヒゲを切るシーン、次のカットでX-MEN1作目のウルヴァリンのヒゲの形になっていたのが泣けて仕方なかったです(流石に子どもによるものなので雑に切られてましたがw)
また、劇中で出てくるモーテルの名前が「自由の女神」なのは、X-MEN1作目のラストバトルの場所からとったようです(パンフレットより)

コミックの世界は……

ローガンが看護師の女性から受け取った(ミュータントたちの子どもたちがいる場所の)緯度の数字が、フィクションであるはずのコミックに載っていた数字とピタリと一致するのはなぜだったのでしょうか。

それは、誰かがアメコミヒーローのような希望のある世界を信じて、その場所を隠れ家にしたということ。
そして、これからアメコミヒーローの物語が現実になるという、良い未来への暗示だったのではないでしょうか。
(ローガンは「ファンタジーの世界に行くぞ!」とヤケクソ気味に言っていましたが、それも「現実」になりましたしね)。

次回作ではローラおよび成長した子どもたちの物語になるのでしょうが……
本当にアメコミヒーローものらしい、ミュータントたちが幸せになれる、希望に満ち溢れた物語になるのかもしれません。

X

ローラは、ローガンの墓標として地面に挿してあった十字架を傾け、「X」の文字を作りました。
それはローガンが胸の前で手を交差させたポーズにも、「X」-MENという同じ意志を持つミュータントがいたことを示しているかのようにも見えます。

X-MEN、ここにあり。
ありがとう、ローガン。そして安らかに。
素晴らしい余韻を残すラストでした。

劇中で引用された『シェーン』の名台詞については、こちらをご参照ください(大いにネタバレ注意)↓
シェーン – Shane –

(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

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  1. 暴天 より:

    コンビニ、充電器もローガンが盗んでいきましたね。
    似たもの親子であることを暗示していたのだと思います。
    あと、ローガンは義理堅いけど、品性整った性格でもないですから。
    スコップで車叩き壊すのも、感情を耐えるか、暴力の形で表すしかないという部分でローラと同じと感じました。ローラ自身はそういった、能力以外の部分で自分との繋がりをローガンに感じていったのかなあと。

    • hinataka hinataka より:

      そういえばローガン自ら盗んでいましたね。確かに似た者どおし、こちら追記させてください。

  2. オープンリーチ より:

    この映画を観賞する前に、あちこちのレビューを読んで、「るろうに剣心星霜編」(OVA)を連想しました。派手なアクションは皆無で、病に侵された剣心が徹底的にズタズタにされる展開が続きますが、個人的にはこの展開がローガンとリンクしているようで「殺人者だった主人公が、過去の業をすべて受けている」ように感じました。
    ローガンの感想に戻りますが、文句なしの大傑作であり、6月時点で年間ベストになりそうです。グロが苦手なのでR-15のレーティングに不安でしたが、「鉤爪着けた怪力男が闘うとどうなるか」という描写が存分にあり、今までXmenシリーズでははぐらかされ気味だった痛みや死を直に伝えており、観る側に覚悟を持たさせる意味で非常に重要だったと思います。
    不満点としてはやや長尺なところと、キャリバンが一人で気絶したドナルドを道に放置しに行き、ほどなく拘束される件が気に入らない!「お前敵に捕まってこい」って言ってるようなもんじゃん!しっかりしろローガン!あとはなぜミュータントが絶滅しかけなのか、他の仲間はどうなったなど、はっきり分かるような回想シーンとかを入れてもよかったのではと感じました。
    ともあれ今作でXmenシリーズが最後の出演になるヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュワートには最大の敬意を評します。ありがとうございました。

  3. 大作戦 より:

    子どもたちが笑いながらヒゲを切るシーン、次のカットでX-MEN1作目のウルヴァリンのヒゲの形になっていたのが泣けて仕方なかったです(流石に子どもによるものなので雑に切られてましたがw)

    あと、劇中で出てくるモーテルの名前が「自由の女神」なのは、X-MEN1作目のラストバトルの場所からとったようです(パンフレットより)

  4. 毒親育ち より:

    私の一言感想:ヒュー様!17年間魅力溢れるローガンをありがとう!!

    >一言感想:重厚な西部劇だった
    流石ヒナタカさん!やはり「西部劇」を連想しますよね!実は原作のウルヴァリンて現代社会の西部劇ヒーローだと思います!ローガンはチームに所属していても基本一匹狼の風来坊気質で、フラっと一人旅に出てしまう事(だいたいジーンを巡ってスコットとの確執)が多いのですが、その旅先でのさばっているならず者どもを退治しては、フラっと去って行くなんて個人シリーズが多いのです!
    TV連ドラでこんなのやって欲しかったなあ。

    >事実、監督のジェームズ・マンゴールドは、主人公のローガンを『アウトロー』や『シェーン』
    >などの偉大な西部劇の英雄として考えていたのだとか。
    任せて大正解でしたね!

    >やはり個人的には、大傑作『ターミネーター2』を一番に連想しました。
    個人的に「子連れ狼もの」と呼んでいる大好物の要素ですので!
    余談ですがローガンってあんなぶっきらぼうなのに、子どもと絡むこと多いんですよ。
    20世紀までサイドキックを務めたジュビリーは言わずもが、アポ様大勝利世界の『エイジ・オブ・アポカリプス』の世界でヤシダ・マリコとの間にキリカという娘が居ますし、また日本でアミコという怪獣に両親を殺された孤児を養女にしていて養育費の支払いだけ人に任せていましたのですが、その養父母に虐待されていると知り日本に駆け付けたり・・・ヒュー様の演じたジャンバルジャンみたいですね。
    あとキッズヒーローチーム「パワーパック」とも親しく誕生パーティに呼ばれたり、特に次女のエナ(なんと4才!マーベル最年少スーパーヒロインです!)はウェポンⅩ研究所から脱走し、全裸にチューブだらけという有り様でリーパーズに追われて町に逃げ込んだローガンに誰もが逃げ惑うなか、進んで手を差し伸べ保護してくれた恩人です。なお、この祭、記憶障害を起こし言葉もカタコトになるほどケモノ状態のローガンが幼女にヨシヨシされるという羨まシーンがあります。

    >R15+指定であることの意味
    磁界王やらテレパスやらお天気魔女やらの中にいると大したことないように思えてしまいますが、刃物を持った屈強な男が暴れるだけでこんなに危ないと思い知らされました!

    >何より本作では「人を殺してしまう」ことへの悲哀がたっぷりと描かれているのですから。
    ローガンはアヴェンジャーズ入りした時も「殺し屋がヒーロー面でカメラの前へ出て行けってか?」と。お披露目記者会見への出席を拒否した程ですから。

    >キャラを知っているとより感慨深い作品に
    >『X-MEN: フューチャー&パスト』のエピローグから数年が経った、つながっている世界の出来事のようです。
    え~~~!?個人的にパラレルで有って欲しかったです。あんな苦労して結局ミュータント絶滅でトラスク博士とストライカーの大勝利かよ・・・(いや、ミュータントどころか人類絶滅よりもマシかもしれませんけどさあ)

    >少女のアクションも必見!
    残虐さならヒットガール超えですわ!
    >X-23のスタントを務めたのは、なんと11歳のNayah Murphy。
    スタントも小学生かよ!しかもそのままローラ演っても良いくらい美少女様やんけ!?
    (クロエちゃんはトンボ切り以外は自分で演じたそうで)
    なお、吹替えの鈴木梨央ちゃんもローラと同い年で獣声演技が凄かったです。
    ああ・・・三人で作り上げる狼少女を堪能したくて三回目の観賞に行ってしまいそう!

    >Wolverine: Old Man Logan (Wolverine (2003-2009))
    MCUの原案担当、『シヴィル・ウォー』『ゾンビーズ』『アルティメッツ』といったマーベルヒーロー“クズ化”シリーズのマーク・ミラー先生ですので、良くも悪くも酷かったです。
    特に・・・ミラー先生はハルクってかバナー博士に何か怨みでもあるんですか!?

    >どこかに行ってしまうローガン(野暮な不満点)
    >ローガンは立ち寄った親切な家族がいる家
    またこの一家が絵にかいたような古き良きアメリカ人で・・・こんな死に方すべき人達じゃないよ!!

    >ローガンは自分が愛すべき人から離れることで、その人達を救おうとしていたのかも。
    そういえば『ウルヴァリン0』の時の老夫婦もこれでしたね。
    余談ですが映画ではストライカーの腰巾着で腐れ外道だった「エージェント0」ことマーベリックですが、ローガンとは第二次大戦からの腐れ縁で義理堅い人なんですよ。

    >そいえば終盤、子どもたちのアジトのすぐそばに飛んでいた偵察用(?)のドローンは何だったんだろう?
    ラストの逃亡の前も同じ機体が複数飛んでましたし、やはりトライジェン社の偵察機ではないでしょうか。

    >あと、お店の商品を勝手に食べた上に店員を殺しかける
    あの店員さんはこの後リーパーズに拷問されたりフンダリケッタリですね。でもリーパーズの行動も「?」です。既に警察に通報済みなら口封じとか意味無くない?・・・間抜けのクセに凶悪なアイツらなら警察署も焼いてそうですか。

    >過去の悲劇
    >チャールズが自身のアルツハイマー病で変質した能力で、恵まれし子らの学園にいたミュータント(生徒)たちを殺してしまった
    悲惨過ぎます!かつてのミュータントの救世主、アメコミ界のキング牧師とまで呼ばれた聖人が・・・。
    (まあ、原作でもⅩ-MEN1.5チームの全滅を隠蔽していた黒歴史が発掘されましたが)
    余談ですがチャールズの脳が大量破壊兵器と政府に指定されている件。原作でもセレブロを使えば全人類を洗脳出来るくらいのチートキャラだったりします。「もうそれで世界を平和にしろよ!」と言われた事もありますが、そんな倫理に外れる事は出来ないし、定期的に再暗示をかけないと解けてしまうので意味が無いと答えていましたけど。

    >マイノリティの排除
    『ファイナル・ディシジョン』に出てきた「CURE」を世界中の食糧や飲料水に混入されたのでしょうか・・・って!トライジェン社の財力と人材どんだけよ!?いや、その国の役人や企業家の差別主義者に物だけ渡せば協力してくれたのでしょうか。でも、文明圏で生活していない人達には?ストームみたいにアフリカ原住民からもミュータントは産まれていますよ。
    ・・・あの時代では文明圏で生活していない人達は不法居住者として駆逐されているのかも。
    作中のアメリカ描写もメキシコとも格差が更に拡大してたり、金持ちがボンクラ揃いで水道をDQN企業が牛耳ってたり、冒頭の葬儀のシーンで神父が「神を信じていれば!死後に天国で再会出来るのです!!」なんて「あれ?間違えて『君のまなざし』のシアターに入っちゃった?」なことをヒステリックに叫んでいたり(100年前の映画や農場の一家が厳かな祈りを奉げているのがまた・・・)端々に首を絞めてくるディストピア演出が散りばめられていてたまらなかったです。
    『荒野はつらいよ』な時代の方がまだ人間らしい世界だよ・・・。

    それにしても20世紀FOXバースにはⅩ-MENしかヒーローが居ないんでしょうか。トライジェン社の非道さは絶対S.H.I.E.L.D.が放って置かないと思うんですけど。

    >なお、キャリバンは自爆を選んだ後に生き残っていたようでしたが、
    ライス博士が「(細胞)組織を採取しろ」と言っていたので、あのキャリバンは死んでしまったかと。おそらくクローンで復活させられ原作でアポ様の四騎士にされた時のように複数の超能力を付与され強化されて出てくるでしょうか。
    原作でも彼は本当に良い奴なので、これ以上酷い事しないでえッ!!

    >普通の人生
    >さらに辛かったのが、一家の父親が、X-24だけでなく、ローガンも銃で殺そうとしていたことでした
    ローガンとX-24は別人であると解っていたけど、意識朦朧で見分けが付いていなかった・・・と思いたいです。

    >さらば、ローガン
    >ローガンのクローンであるX-24
    オッサンだけどローラにとっては弟なんですよね・・・日本の深夜アニメみたいだ。
    余談ですが、彼はローガンの不肖の息子ことダケン・アキヒロを彷彿とさせます。イツという日本人女性と短期間暮らした際に産まれた子ですがローガンは彼が死産したと思い最近まで存在を知りませんでした。幼少期を養父母始め村中から「駄犬」と呼ばれ虐待されて育ち、母の死と自分の境遇は父の所為だと怨み、ノーマン・オズボーンが組織したダーク・アベンジャーズへ父の衣装と名前で参加し、その名声を貶めようとした事もあります。
    なお。彼はアダマンチウム弾でトドメを差されましたが、かつてあの弾を頭に撃ちこまれたローガンは時間はかかったものの復活し、記憶を失っていました。おそらく彼はあの後再生し、記憶を失った状態でカナダの森を彷徨い親切な人に保護され、新たな「ウルヴァリン」となるのではないかと。兵器から人間に成長した彼と彼を父の仇と思う姉との因縁の再会が、楽しみなような怖いような。

    >コミックの世界は……
    あのコミックの作者ですが・・・ラストでエデンにたどり着いた子ども達をケーブルにデップー様、ちょっと年季の入ったベイマックスらを従えた・・・スタン・リー御大が出迎えるラストがエンドロール後に有ると思っていました!

    • hinataka hinataka より:

      みなさんコメントありがとうございます!随時ご意見を反映させてください!

      >余談ですがローガンってあんなぶっきらぼうなのに、子どもと絡むこと多いんですよ。
      うわあ微笑ましい!原作コミックを改めて読みたくなるなあ。

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ヒナタカ

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