
『LION/ライオン 25年目のただいま』純然たる願い(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『LION/ライオン ~25年目のただいま~』です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:その旅路を体験できて、よかった。
あらすじ
Google Earthを使って、25年ぶりに故郷を探します。
ノンフィクション本『25年目の「ただいま」』を原作とした人間ドラマです。
本作の物語を一行で書けば
「5歳のころの家族と生き別れになった青年が、Google Earthを利用して25年ぶりに故郷を探す」
と、簡単に表せてしまいます。
そうであるのに、これほどに豊かな内容になっているのは、演出、役者の演技、ロケーションなどにより、映画としての魅力をとことん高めたからなのでしょう。
まったくナレーションがないのにも関わらず、登場人物の気持ちが痛いほどわかり、現実の問題を考えるきっかけにもなる……これこそ、映画の力なのではないでしょうか。
2幕構成の物語
本作は「2幕(あるいは3幕)構成」の映画です。
- 1幕:故郷から1600キロ離れたに降り立つ、5歳のサルー(主人公)の物語
- 2幕:25年後のサルーがGoogle Earthを利用して故郷に戻る物語
この2幕の時間配分がほぼ同等であることにも驚きました。
この1幕目の「長い時間」がとても重要になっています。
たった5歳の少年が、見知らぬ土地、言葉も通じないまま、さまよっているという状況を「体験」できるのは、今までにないと言えるほどに、記憶に残るのではないでしょうか。
もう1つ、この2幕構成には重要な意味があるのですが……それはネタバレになるので↓に書くことにします。
役者の演技で魅せる!
本作は89回アカデミー賞にて、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされました。
残念ながらいずれも受賞は逃しましたが、肉体改造をしてオーストラリア英語のアクセントまでマスターしたデヴ・パテルはもちろん、主人公の養母を演じたニコール・キッドマンがすんばらしかった!
円熟したベテラン女優ならではの存在感と、表情だけで全てを語るかのような名演は、すべての映画ファンにとって必見と言えるでしょう。
似ている映画は『クリード』や『モアナ』?
本作と似ている映画は、『クリード』および『モアナと伝説の海』なのではないかと思いました。
なぜかといえば、この両作品と本作『ライオン』には、恵まれた自身の環境さえを疎ましく思う気持ち、別の世界へ行ってみたいという願望が描かれているから。
本作『ライオン』の主人公は(本編で語られている通り)、とても幸運です。
母と兄とは生き別れになってしまったものの、養父と養母は愛情に溢れていて、青年になってからは人間関係も良好――
下世話な言い方をすれば、青年になった主人公はリア充そのものなのです。
だけど、その何も不自由のない環境こそが、「25年間も母が自分を探しているかもしれない」という主人公の自己嫌悪につながっているとも取れるのです。
「恵まれた未来よりも旅立ちを選ぶ」という点では、『イン・トゥ・ザ・ワイルド』にも似ているかもしれませんね。
子どもたちに救いの手を
本作で尊いのは、孤児になった少年の旅路を描くことで、世界中にいる、物乞いをしている子どもや、貧困で苦しむ人たちに救われて欲しい、という願いが込められていること。
※参考↓
インド | 世界の子どもたち | 日本ユニセフ協会
前述の「1幕(幼い少年の旅路)」は、このためにも必要なものだったのでしょう。
映し出される、ストリートチルドレンや孤児院の描写は、映画ということを忘れるほどにリアルなのですから。
極めて堅実な作品
本作は「実話もの」であるので、どうしても「結末がわかりきっている」という欠点があります。
それでも、ある1点においてラストに「驚き」を用意していました。
これに「運命めいた」ものを感じ、奮い立つようなカタルシスを得る方はきっと多いでしょう。
『ハドソン川の奇跡』や『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』もそうですが、こうして実話を扱いながら、堅実に作られ、かつ娯楽映画として脚色も上手くできている……とくれば、もう賞賛するしかありません。
物語はシンプルなので、観る人を選ばない作品とも言えるでしょう。おすすめします。
『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』の感想はこちらで。お気に入り度は6/10くらい↓
大統領が暗殺されたら妻はどうする?『ジャッキー』を観てほしい7つの理由 | シネマズ by 松竹
以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓
(C)2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

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