
『哭声 コクソン』断定できない“何か”の正体とは(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『哭声/コクソン』です。
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:超モヤる!(いい意味で)
あらすじ
平和な田舎の村・コクソンに、得体の知れないよそ者の日本人(國村隼)がやってきた。
その日本人についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付き、日本人に話を聞き行こうとするが……。
『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督最新作です。
まず初めに言っておかなければならないのは、本作はリアリティを重視したサスペンスではなく、途中から『エクソシスト』的なオカルト方面に話が進んでいくことです。
「祈祷師」や「悪霊」などがこの世に実在する、本物であると語られているので、こうした話が苦手な人はちょっとノレないのかもしれません。
自分は本作を「犯人を追い詰めるガチガチの刑事サスペンス」であると勘違いしていたので、途中までは「えー?そっちー?」と少し作品の方向性にガッカリしていました。
しかし、もう終盤では「そっちー?と思ってごめんなさい!」「最悪(褒め言葉)の気持ちにしてくれてありがとう!」と心から感謝を告げたくなったのです!
もうこれなら話がオカルトでも大肯定できるよ!
ファンタジーであり、宗教の話であり、寓話
前述の通り、本作はリアリスティックな内容ではありません。一種のファンタジーであり、宗教の話でもあるとも取れます。
宗教と聞くと無宗教者の多い日本人は拒否反応を覚えるかもしれませんが、実際の主人公の行動原理のほとんどは「娘を守りたい」という普遍的なものでした。
いい感じに主人公がダメ人間というおかげもあり、多くの人が感情移入できるでしょう。
ちなみにナ・ホンジン監督はキリスト教徒であり、物語には新約聖書の影響があったのだそうです。
※以下の記事を参考に↓
日本人になった理由!鬼才ナ・ホンジン監督『哭声』“よそ者”を語る(1/2) – シネマトゥデイ
正直、主人公が刑事ということもあり、「さっさと怪しいやつを拘留すればいいのに」「いくらなんでも激情に任せて行動しすぎでは?」とツッコミたくなる部分もあります。
でも観終わってみれば、「寓話(たとえにより教訓を与える物語)」としてこれらの描写があったんだ、と大納得できました。
キツくて重い作品ですが、しっかり「学べる」ところもあるのです!
役者の演技がヤバい!
本作は韓国映画ですが、日本人俳優の國村隼が出演、トラウマものの演技を披露しています。
どうしてくれんだよ……これ絶対夢に出てくるよ……(悪夢)。
日本人を起用したのは、「言葉が通じない」という「異種」の存在であるがゆえでしょう。
彼に「疑惑」を持ってしまうこと、「理解できない」という気味の悪さに一役も二役も買っているのです。
國村隼になったのは、監督が役者の写真のカタログを見ていて「こいつだ!」と思ったからとのことですが、もうそのパッと見の判断で大正解ですね。マジでヤバかったよ(頭の悪そうな発言)。
主演のクァク・ドウォン、子役の演技もすんばらしいので、それ目当てでも大満足できるでしょう。
この映画が好きな人におすすめ!
本作をおすすめしたいのは、宗教に対する価値観をこれでもかと描いた『沈黙 サイレンス』や、誘拐犯に翻弄される様を重く描いた『プリズナーズ』が好きな方ですね。
『プリズナーズ』とは、主人公(と観客)が疑心暗鬼になりまくること、リアリティよりも寓話的な面がクローズアップされていること、宗教色が強いこと、上映時間が2時間半越えなのにめっちゃ短く感じる(夢中になって観てしまう)ことが共通しています。
あと、なぜか本作はG(全年齢)指定ですが、むごたらしい死体が映ったり、直接的でないにせよ性描写があったりするので、PG12指定が妥当ではないかと。
何よりいい意味でゴリゴリ精神を削ってくれるので、これを小学生が観たらいろいろと後遺症が残っちゃうよ!
あとはもうネタバレせずに、なるべく予備知識を入れずに、主人公と一緒に「翻弄される」気持ちで観るとさらに楽しめる作品です。
「疑え。惑わされるな。」というキャッチコピーの意味を、身を持って体験できるでしょう。
現在公開中(3/11より公開開始)の劇場はわずか13館ですが、遠出していまで観る価値があります!
観た後に解釈が分かれる、語りたくなる映画なので、1人だけでなく数人で劇場へ行くとより楽しいでしょう。おすすめです。
以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓
(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

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