『傷物語I 鉄血編』“映画ならでは”満載(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『傷物語I 鉄血編』“映画ならでは”満載(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想は傷物語I 鉄血編です。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:短っ!

あらすじ

それは春休み、3月25日の夜。
高校二年生の阿良々木暦は、噂に聞く「金髪の吸血鬼」と出会った。
瀕死の重傷を負った吸血鬼は、暦に全身の血を捧げてほしいと申し出るのだが……。

西尾維新原作の小説『傷物語』のアニメ映画化作品です。

『傷物語』は、『化物語』『猫物語』『花物語』『偽物語』などなど名前を変えて展開している『物語シリーズ』の第2弾(通巻では3巻目)に当たります。
『物語シリーズ』の人気が爆発したのは、深夜に放送されたテレビアニメシリーズでした。
知らない方にこのアニメがどんなものかと端的に説明しますと、登場人物の会話が作中の9割を占める、しかもその会話の大半が(いい意味で)どうでもいいという、どこのタランティーノだよと思う作品になっています。

でもこの変人ばかりの登場人物による、無駄っぽい「掛け合い」こそが『物語シリーズ』の魅力。
ほかのアニメにはないオリジナリティを確立し、名実ともに超人気アニメの地位を不動のものにしました。

そして原作『傷物語』はシリーズの中でももっとも人気があったので、ファンは劇場版としての制作発表に歓喜しました。
その発表はなんと2010年。さらに2012年公開予定だったのが2016年に延期される……。
なんと、6年もファンは待たされていたのです。

自分もアニメに大ハマりしたクチだったので、2016年の映画の公開決定に喜んだのですが……、同時にすげえがっかりしたことがあります。
それは本作が3部作になっちゃったこと。そしてこの第1部の上映時間が60分しかないことです。
例えるならば、さんざん待たされてから公開された『スター・ウォーズ エピソードI』を3つに分けて公開するようなもんですよ。そりゃファンは怒るよ。

劇場アニメ作品は「前後篇」や「3部作」が多いよ!

じつは、こうした上映時間の短いアニメ作品が公開されるのは珍しいことでもありません。

たとえば、『マルドゥック・スクランブル』は劇場アニメ版が3部作で、それぞれ1時間にも満たない上映時間で公開されていたりしました。

子ども向けアニメにおいても、現在『シンドバッド』シリーズが3部作で、それぞれ50分程度で劇場公開されています。
※第2弾『シンドバッド 魔法のランプと動く島』は1月16日公開。
アニメ業界の現状はとても厳しく、制作費の回収のためには致し方のないところもあるのでしょうが……第1作目が「起承転結の“起承”だけで終わってしまう」のは、やはり物足りないです。

そして……アニメに限らず、近頃の日本の大作映画作品は『前後篇』に分かれるケースが多くなっているんですよね。
例:『るろうに剣心 京都大火&伝説の最期』『進撃の巨人』『僕等がいた』『ちはやふる

ソロモンの偽証』がコケちゃったのは、こうした前後篇が多くなったことのワリを食っちゃったからなんだろうなあ。

そういえばゲームの『ファイナルファンタジーVII リメイク』も分作になっちゃうし
競争の激しいエンタメ業界は、本当にどこも厳しいんですね。

そんなふうに分割されてしまう作品が多い一方で、ファンにもっとも人気のあるエピソードを、2時間43分という破格の上映時間で公開した『涼宮ハルヒの消失』という作品もあったりします。

今回の『傷物語』も、この作品のように1本だけで、たっぷりの上映時間を使って公開してほしかったですね……

映画という媒体は、拘束された時間で物語の最後まで観られることこそが魅力のひとつ。
あっという間に終わってしまうことよりも、起承転結の最後まで見届けられないことのほうがより寂しく感じています。

特典がひどくない?

なお、今回の『傷物語I 鉄血編』では、4週連続で違った小説が特典として配られています。同じ映画を4回観ないといけないなのかよ!

3部作なので、今後も同じような特典がつくのでしょう。
しかも小説は全15話あることが明かされています合計で15回も観ないといけないのかよ!
こういう特典がアニメファンの心をくすぐるのもわかるのだけど、これはさすがにやりすぎだよなあ。

テレビアニメ版と違って、ナレーションが皆無に!

さてさて、特典や3部作の問題はおいといて本題。
自分はテレビアニメ版の『物語』シリーズにおける「台詞で埋め尽くされる」会話劇が好きだったので、今回の映画『傷物語』でも同じかな〜と期待していましたが、うん、テレビアニメ版とぜんぜん違う

まず、この映画版『傷物語』では、主人公のナレーションが皆無になっています。
テレビアニメ版では原作小説そのままの「語り」が、各話の冒頭にナレーションで登場していたのですが、それがまったくないのです。

もうひとつは、すごく閉鎖的で、孤独感のある場所が舞台になっていること
画はかなり暗く、登場人物は必要最低限。
(これはテレビアニメ版からでもそうですが)モブキャラが一切登場しないこともあり、日常とかけ離れた場所にいるような不安感があったのです。

さらに、「ずぅぅぅぅぅぅん」という重低音の音響がすさまじくよくできています。
暗い画もあいまって、本作にはまるでホラー映画のような雰囲気さえありました。

これは「劇場で観るアニメ」を考慮した結果でしょう。
過度にベラベラとしゃべらずに、「間」や「画」で魅せる。
劇場というハコで、異空間での孤独感を得られる。
テレビアニメ版とまったく違う魅力を提供していることに、感動しました。

工場マニアにもオススメ!

また、本作は工場マニアにもオススメしたいですね。
なぜなら、背景にわんさかと寂れた(←ここ重要)工場が登場するから。

ほかにも作中では田町の本屋、日劇のビルから地下鉄に行くための階段など、アニメではおなじみの聖地巡礼(ロケ地めぐり)できる楽しさがあったりもします。これは原作にない魅力ですね。

シリーズ初見でも楽しめる!

なお、この『傷物語』は、『物語シリーズ』では時系列でもっとも初めにあたる『エピソード1』であるので、本作からでも問題なく楽しめます(原作者自身も「ここから読んでもいい」とあとがきで言っていました)。
テレビアニメシリーズを一切観ていなくても、この映画版『傷物語』はおもしろく観られるでしょう。

とはいえ、万人向けでない要素が満載なのですけどね。
オープニングシークエンスはファンにとっても「!?」となるし、画の切り替えのときに意味深な文字を挟むという演出があるし、わりとグロいシーンもあるし(PG12指定でもよくない?)、しかも(3部作だから)物語が途中でぶった切られるんですから。

う〜ん、やっぱりファンじゃない人も呼び込むためにも、1作でまとめて公開したほうがよかったんじゃないかな。
そんなわけで、どうしても「短い」という不満が払拭できないものの、アニメとしてのクオリティーは存外高いので、ファンの方には大プッシュでオススメします。

エンドロール後にもおまけがあるので、最後までしっかり観ましょう!

以下、原作との違いをネタバレで紹介↓ ストーリー上のネタバレはあまりありませんが、映画を未見、または原作(今回の『鉄血編』に当たる部分のみ)を未読の方はご注意を。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

出会う場所を変えちゃったがゆえの弊害

原作で暦がキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと出会ったのは街灯の下でしたが、この映画版では地下鉄の駅に変更されています。
それはそれでおもしろいのですが、羽川翼から聞いた「街灯の下では吸血鬼の影が見えなかったという噂」という伏線の意味がなくなっちゃっている

ちなみに、『化物語』のテレビアニメシリーズの第1話では、冒頭1分で『傷物語』の内容が描かれていて、そこでキスショットは原作通り街灯の下にいました。
※第1話は無料で観られます↓
化物語 第一話 ひたぎクラブ 其ノ壹 – ニコニコ動画:GINZA

おかげさまで、この映像との矛盾もできてしまっているんですよね。
(ちなみに羽川翼のパンツにも違いがあります(余計な情報))。

でも、暦が声に導かれて地下的に向かう描写はホラーチックでよかったです。
モールス信号により「呼ばれる」のも、映画オリジナルですね。

原作との違い

まず何よりも大きいのは、(吸血化したあとの)日の光を浴びて炎上する暦の描写をオープニングシークエンスに持ってきたこと
この冒頭の「どこか知らない世界に放り込まれたような」「何が起こっているのかわからない」不安感はかなりのもの。
不吉の象徴であるカラス、日の丸(国旗)と太陽がシンクロするような画にもゾクゾクしました。

「描かなかったこと」で大きかったのは、暦のふたりの妹の描写が完全になくなったことでしょうか。
おかげで暦の孤独感がかなり増しています。英断でしょう。

原作のキスショットは暦に助けてもらうために、かなり情けないというか、悲痛な言動をしていたのですが・・・そこも大分削られていました。
これにより「ごめんなさい」「ありがとう」というキスショットの言葉がより際立っているので、個人的には好きです。

残念だったのは、忍野メメが敵たちの攻撃を「指で白刃取り」したシーンがなかったこと。
メメがすさまじい速さで飛んでくる→到着したときにはいつのまにか敵たちが消えていたーという描写になっているんですね。
これは単なる演出の違いであるし、続編でこのメメの活躍が違った形で描かれるのかもしれないので、言うのも野暮なのですがね。

ちなみに、このメメの活躍も、上の『化物語』第1話冒頭で観ることができます。

原作では「ドラマツルギー」というキャラだけが「何を言っているのかわからない」だったのですが、映画ではほかの2人の敵の言動もまったく聞き取れない状態になっていました。
これは声優を隠しておくという演出でもあるのかな。

かわいいは正義

まあ何よりも羽川翼とキスショット(忍野忍)がめっちゃかわいいことは異論がないですよね。

羽川は原作では4ページにわたっていたパンツの描写が映像でもしっかり表現されていたし(原作ではいい意味で暦の解説がキモい)、キスショットは「あと5分〜(寝かしてくれ)」と言うシーンでデフォルメされた姿になったりする。

やはりスタッフのキャラに対する愛情をたっぷり感じますね。だから早よ続編来い(夏公開予定です)。

おすすめ↓
映画でしか描けない“物語”がある|『傷物語』インタビュー|神谷浩史|cakes(ケイクス)
神谷さんが語る『傷物語』の魅力とは? | アニメイトTV
傷物語~鉄血編の感想!あらすじをネタバレ | モダンの最速エンタメ速報

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

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  1. 匿名 より:

    劇場でやってたけど
    映画じゃなくてTVアニメって感じ

  2. いいこま より:

    意図したわけでなく時間的余裕によるものですが阿良々木の中の人の誕生日である今日観てきました。
    事前に『化物語』を途中までですが観てたこともあり「あー、これがこうなるのね」っていうのがある程度把握できました。
    長さに関しては確かに普通の映画より短く感じた(勿論実際に短いからですが)ので「映画というよりTVアニメ」って意見も無理ないかな、と思いました。いろいろあるのだろうけどそれでも1本でやった方がよかったんじゃないかな、と自分も思います。
    副題も「鉄血」「熱血」「冷血」とそれらしいものとなってるものの「なぜ思いつかなかったんだろう」という新房監督の言動もあるだけに意図的に3部作にしたわけでなさそうですし。まあ何れにせよ続編が気になります。
    >羽川翼から聞いた「街灯の下では吸血鬼の影が見えなかったという噂」という伏線の意味がなくなっちゃっている。
    そこに頭回ってなかったですが言われてみれば確かに経験的に地下鉄の駅とかじゃ吸血鬼じゃなくても影できないですからねえ。
    あと『化物語』初回観てたはずなのに違いに関して殆ど失念してましたが…7年経ってるとはいえ関係者がそれやらかして矛盾が生じてるのは若干まずいような。
    >これは声優を隠しておくという演出でもあるのかな。
    そもそも原作未読なのでそういう違いがあったのは知らなかったですがどうなんでしょうねえ。予告の方である程度ばれてる気がするのでもしかしたらそんな意図はないのかもですが。
    >羽川翼とキスショット(忍野忍)がめっちゃかわいいことは異論がないですよね。
    同感です。
    あと、キスショットの「あと5分~」や羽川の会話は心の中で突っ込みながらも和みましたのと、これを言うと白眼視されそうですが羽川のパンモロとおっぱいぷるんぷるんは妙に印象に残ってしまってます。

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著者

ヒナタカ

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