
『神様メール』聖書の神はク◯親父(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『神様メール』(英題:THE BRAND NEW TESTAMENT)です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:神様なんて知るか!
あらすじ
ベルギーのブリュッセルに住む神(ブノワ・ポールヴールド)は、自分の部屋に置かれたパソコンを駆使し、世界に災害や不幸を起こしては楽しんでいた。
そんな父親に怒りを覚える10歳の娘エア(ピリ・グロワーヌ)は、パソコン室に忍び込んで、人間たちの余命を知らせるメールを一斉送信してしまう。
さらに家出をして、「新・新約聖書」を作る旅に出かけるエアだったが……。
ベルギーの映画監督ジャコ・ヴァン・ドルマルの最新作です。
世界でカルトな人気を誇っているのに、いまだ4作品しか手がけていないんですよね。もっと撮ってくれよ!
レビューはこちらで↓
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ジャコ監督の特徴といえば、作品のテーマは「運命(に翻弄される人生)」という点で一貫していること。
今回は神様を出しちゃうという、さらに高次元な領域で、「運命」にまつわるメッセージを描いていました。
初めに言っておきますと、本作はかなーり好き嫌いが分かれます。
公式サイトや予告編では、「女の子のファンタジックなアドベンチャー!」な印象ももちますが、実際はク◯みたいな神様がゲス行為をしまくり、性描写がありまくりです。
本作で登場する神様は、見た目がハゲてて臭そうなだけでなく、人間たちに災いを運びまくり、娘に暴力をふるうという中身までもク◯親父となっております。
で、その娘の10歳の女の子は家出をして、12人の「使徒」を探す旅に出るのですが、出会う人たちのほとんどが性的なことを話します。
おかげさまで本作はPG12指定。お子様にはまったくオススメできないのでした。
あと、キリスト教にケンカを売りまくっていることも素敵ですね。
一神教の人にとっては神様をク◯親父と書くだけでもアレだろ!しかも劇中ではもっとヤバいことをディスっているよ!怒られないのかこれ!(たぶんマジで怒られている)
さらに、世界一のベストセラー「聖書」に照らし合わせると、かなり皮肉に満ちていることがわかるんですよね。
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本作の原題は『新・新約聖書』で、物語も「新しい聖書を作ってしまおう!」というものなんです。
予備知識として知っておくといいのは、旧約聖書は「バベルの塔」や「ノアの箱船」や「モーセの十戒」に代表されるように、「神の怒り」が多く記されていること。
新約聖書は「布教の様子」「教義の確立過程」などが記され、「救済」がおもになっていことです。
で、この映画では、新約聖書は「正しい」ことが書かれているはずなのに、そこに居座っている神様はク◯親父だった、というふうになっているわけ。
だから、さらに新しい聖書を作ろうとする、というのがブラック・ユーモアになっているのです。
このあたり+さらなる豆知識を、人間映画Wikipediaと呼ばれる成宮秋祥さんに40分以上熱くパッションを込めて語っていただいたので、ぜひお聞きください↓
※ストーリー上のネタバレは控えめですが、作中の小ネタはネタバレしまくっているのでご注意を。
「短く話せよ」と再三言っていたのに、成宮さんは聞いちゃくれなかった(愚痴)。
なるほど、いまの人は知らないでしょうが、名女優のカトリーヌ・ドヌーヴが出演されていることも魅力のひとつですね。
ラジオでも話されていますが、本作の「人間たちが余命を知ってしまう」という物語は、星新一の短編小説『生活維持省』、それを盗作した疑いがあった漫画『イキガミ』に似ていますね。
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『神様メール』においては、こうして余命を知ってしまうということが、決して悪いことではない、と描かれているのがおもしろいですね。
そこには、人間はいずれ死ぬからでこそ、限られた時間でしたいことができる、有限な時間を大切に思える、というメッセージが込められているかのようです。
本作の大きな弱点は、登場人物の多くが奇人変人すぎてちょっと感情移入がしにくいことでしょうか。
こいつら、自分の死期を知ってしまった後、斜め上の行動をしまくるんです。
しかも基本的にコミュニケーションが「セックスが先に来る」感じなんです。
これもなかなか日本人には共感しにくいところがあります。
これはいろいろな(性への)興味があるという「多様性」を示しています(それは決して否定することではない)し、そのエキセントリックさこそがおもしろいとも言えるので、批判するのもナンセンスなのですが……やはり拒否反応を示す方も多いのではないでしょうか。
個人的には、10歳の女の子が性的なことを(ナレーションで)話しまくるということに居心地の悪さを感じてしまいました。
女の子がさまざまな人物に出会っていく、という構成はやや着地点が見えづらく、ダレてしまう方も多いのかもしれません。
それでも、これは皮肉に満ちた、ブラックでユーモラスなファンタジー映画として存分にオススメします。
「キレイごとなんて大嫌い!」な捻くれ者こそ、きっと気にいるでしょう。
あと、本作はフェミニズムにあふれているほか、性にマイノリティな人(LGBT)にエールを送っている作品です。
(だって神様を亭主関白のク◯親父として描くんだもん)
男性が観れば女性を大切にしようと思い、女性が観れば「そうそう」と納得し、性にマイノリティ人は勇気をもらえるでしょう。
あとね、本作のオチがすっげえ大好きなんですよ。
もうね、ニコニコしたまま劇場を後にできたので大満足です。
エンドロールの最後にもおまけがありますので、お見逃しなく。
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓
(C)2015 – Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

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イエス様の大ファンだけどキリスト教は大嫌い。全ての宗教団体を「悪質神様ファンクラブ」と呼ぶ不信心者です。
私の一言感想:やるじゃんベルギー!
本作はベルギー日本の友好150周年記念作なんだとか!先日読んだ「ブラック・パンサー:暁の黒豹」で悪役扱いでしたけど、ワッフル喰いたくなってきましたよ!
>あと、キリスト教にケンカを売りまくっていることも素敵ですね。
いや、でも・・・イエス様は超キュートなお兄ちゃんですし!?
・・・本作にキレて監督始め関係者へ脅迫とかする人は隣人に迎えたくないです。
>『神様メール』においては、こうして余命を知ってしまうということが、決して悪いことではない、
みんな戦争とか止めちゃうのが凄く良かったです。お願いエア様!!
>10歳の女の子が性的なことを(ナレーションで)話しまくるということに居心地の悪さを感じてしまいました。
自分も「ウヒョー!幼女様が教祖とかマジ天使ー!!しかもイケメンなイエス様の妹とかサイコー!!」だったんですが・・・うん。いや、こういうのは二次元でお願いします。と若干引き気味。
いや、演じてくれたピリ・グロワーヌさんには本当に頭が下がりますけどね!
>あと、本作はフェミニズムにあふれているほか、
正しいフェミニズムを魅せていただきました!女神様、可愛い!!神様一家、糞親父除いてみんなカワイイ!!
余談ですが、第一使徒「オーレリー」への隣人の態度。自分は物心付いた時から、性別問わず美人は賛美の対象でしかないので、ああいう心理が理解不能なんです・・・。
>性にマイノリティな人(LGBT)にエールを送っている作品です。
まさか「男の娘」や「ケモナー」まで出てくるとは!!・・・さすがは日本との友好150周年記念作。
>~ジャン・クロード・ヴァンダム大好き!~
ベルギーの国民的英雄ですから!
余談ですが、ジャン・クロード・ヴァンダムが大好きな人達が大活躍するアメドラ『センス8』の為にNetflixへ入ってしまおうかと悩んでいます(未レンタル化の『デア・デビル』もやってるしなあ・・・)
>~マーフィーの法則~
>もうちっと、こいつは庶民の生活のこと、苦労をわからせるべきですもの。
糞親父神様が、更生して家に帰れる日は来るのでしょうか・・・。
>~運命なんて……~
>「悲しみなんて溜めても何にもならない」というメッセージだったのかも。
重要なキーアイテムになるかと思ってましたが、なるほど!
奨め辛いんですけど、奨めまくってます!
・・・少なくとも『幸福の科学映画』よりは喰い付き良いです。
この映画の、意外と評価が低いですね。
私は、大笑いして見てました。
神様が水上歩行できずに、沈んでしまうシーン。
あの大女優C.ドヌーブが、ゴリラと同棲する設定。
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