
映画『ジョーカー』ネタバレ解説!認めたくないが傑作の理由とは?(前半ネタバレなし感想)
今日の映画感想は『ジョーカー』です。(※記事の前半にネタバレはありません)
個人的評価:9/10
一言感想:覚悟を持って観るべき“劇薬”
あらすじ
可哀想なコメディアンが悪に墜ちてしまいます。
誰もが知るアメリカンコミック(アメコミ)ヒーローのバットマン、その永遠のライバルであるジョーカーを主人公に迎えた映画です。
“DCコミック”のスーパーヒーローたちが同一世界で活躍するシリーズには『アクアマン』や『シャザム!』などのDCエクステンデッド・ユニバースがありますが、この『ジョーカー』はそれとは関係のない独立した作品となっています。
ヴェネツィア国際映画祭でアメコミ映画初の最高賞である金獅子賞を受賞し、アメコミや映画ファン以外からの注目度も高くなっていますが………実際の内容は気軽にオススメするのは憚られる問題作でした。
レーティングはR15+。
しかしながら、エロティックな描写は皆無であり、残酷(グロ)描写もそれほどしつこいものではありません。
しかし、道義的・倫理的に見ても最悪と言えるシーンがある、心の底から子供には観て欲しくないと思える、精神衛生上よくないものを確実に持ち帰る内容であるため、その年齢制限は間違いなく正しいものでした。
(※それとは反対に「むしろ癒されて元気が出た」という意見もあります。感じ方は人それぞれです)
絶賛の嵐ではありますが、観る人を選ぶ映画であるとも言えるでしょう。
この映画をずっと引きずってしまい、その日は1日中どんよりとしてしまう可能性もあるので、デートでのチョイスも考えものです。
そして、映画としては掛け値無しに傑作であると思います。
アメコミ原作で歴史を変えたとされる映画には同じくジョーカーが登場する『ダークナイト』がありますが、この『ジョーカー』はそれを超えるほどの衝撃作でした。
『ジョーカー』は歴史だけでなく観る人の道徳観や価値観をも変えてしまいかねない、凄まじいものを提示していいます。
もはや問題作や傑作や衝撃作などよりも、劇薬と言ったほうが正しいのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、ここからは各項目に分けて『ジョーカー』の見所を解説していきましょう。
以下、このページの目次です。予習・復習にオススメの映画も紹介しています。
“ネタバレ”と表記している項は本編の物語が盛大にネタバレしていますのでクリックにご注意を!
警察と軍隊が警戒態勢を取るレベルでヤバい
本作『ジョーカー』のヤバさは実際に警察と軍隊が警戒態勢を取るレベルになっています。
アメリカにて一般人から「映画が現実の暴力を誘発するおそれがある」との声が上がっており、警察と軍隊は「現時点で特定の脅威はない」と発表しつつも、映画館では公開週末に警備員の人数を増やしているそうです。
これについて「大げさだ」と思う方もいるでしょうが、実際の映画本編を観ればそれも納得できるんですよ。
事実、2012年に『ダークナイト ライジング』を上映した映画館では、映画に影響されたとされる凄惨な銃乱射事件が起こっており、そこでは『ジョーカー』の上映が中止されています。
これについて、米ワーナー・ブラザースは以下の声明を出しています。
「物語を語るということには、複雑な問題をめぐる多様な議論を引き起こす機能があると信じている」
「ジョーカーというキャラクターもこの映画も、現実世界のいかなる暴力を肯定するものではない。ヒーローとして称える意図もない」
この言葉は正しいです。劇中では様々な価値観が交錯しており、究極的には暴力や犯罪を肯定している内容ではありません(しっかり暴力や犯罪への批判も提示されています)。
笑いものにされてきた、社会のつまはじきになった人間の気持ちに寄り添っており(こういう人は現実にたくさんいます)、人はどういう時に絶望をするのかを知り、“悲劇を起こさない”ためのヒントがもらえますし、物語について誰かと議論することで、「本当に大切なこと」を考えるきっかけにもなるでしょう。
しかしながら、精神的に未成熟または追い込まれている人が観ると、映画の内容に影響されて現実で犯罪を犯す可能性がある、『ジョーカー』はそれほどのパワーを持っているとも、確かに思えるんです。
だからこそ、この映画は“劇薬”。相応の覚悟を持って観て欲しいです。
※こちらの記事を引用および参考にしました↓
『ジョーカー』暴力を誘発すると米国で物議 ─ 2012年『ダークナイト ライジング』銃乱射事件の映画館では上映なし、被害者遺族とワーナーが声明を発表 | THE RIVER
『ジョーカー』米国で社会現象広がる、ロス市警と米軍が警戒態勢へ ─ 各映画館が警備を強化、プレミアイベントは記者の入場禁止に | THE RIVER
映画館が「子供に『ジョーカー』を見せないように」と警告 | ギズモード・ジャパン
悪に目覚める男に感情移入“できてしまう”ことがヤバい
本作の物語は「社会的に虐げられていた男が悪に目覚める」というシンプルなもの。
そのため、アメコミや映画をあまり観ないという方でも感情移入ができる(できてしまう)でしょう。
彼の痛みと苦しみが劇中でこれでもかと伝わるからこそ、良い意味で辛いものがあるんですよね…。
また、前述した通りジョーカーはバットマンの永遠のライバルであり“悪役”であるので、観客はジョーカーというキャラクターが当然“悪に目覚める”ことをあらかじめ知って観ることになります。
本作が真にヤバいのは、その悪に目覚める気持ちが心からわかってしまうこと。
やっていることは倫理・道徳に反しているのに彼のことが理解できてしまう、なんなら自己と同一視するか、応援してしまいそうになるんですよ。
こんな酷いことをする彼のことを、「自分と同じだ」と思ってしまう、応援してしまうなどもっての他のはずなのに……その自分の気持ちにこそにゾッとしてしまいます。ここに、精神的に未成熟(子供)であったり、不安定な人が観るべきではない一番の理由があります。
観終わった時、自分は「この映画を(傑作だとは思いつつも)認めたくない」「嫌いだと“思いたい”」という複雑な感情を得ました。
この映画を単純に認めてしまうと、自分が大切な価値観や道徳心が脅かされてしまうような危険な感覚があるんです。
『ジョーカー』感想。この映画を「嫌い」と思いたい自分がいる。本当に自分の道徳観や価値観が揺らいでしまう。「こんなことをフィクションの映画で提示してしまっていいのか」と心から思う。主人公の気持ちが痛いほどわかるだけにキツい。傑作なのは間違いないけど「覚悟」してから観るべき劇薬。 pic.twitter.com/DT5lGxGGvw
— ヒナタカ(映画ブロガー/ライター) (@HinatakaJeF) 2019年10月4日
これは様々な出来事が後に呼応する、伏線を見事に回収する脚本にとても手が込んでいるからでもあります。
細部のセリフや行動を頭の中で振り返ってみると、1つとしてムダなシーンはないことがわかることでしょう。
音楽・編集・画作りも文句なしの出来栄えで、映画作品としてブラッシュアップを極限まで重ねていることはスクリーンから伝わってくるはずです。
だからこそ…悔しいかな、認めたくないけど傑作なんですよ。
そして、実力派俳優ホアキン・フェニックスの演技は素晴らしいという言葉では足りない、2019年の各映画賞の俳優部門を総ナメすることはほぼ確定的です。
『ダークナイト』での故・ヒース・レジャー演じるジョーカーとはまた別種の、社会から虐げられ“不憫さ”のあるジョーカー……その悲しみに溢れた笑い声、一挙一動、そしてあの踊り、そしてあの表情……その全てに“人間味”があるからこそ、彼の幸せを願って“しまう”んですよね……ぜひ、スクリーンでその演技じっくりと堪能して欲しいです。
いろいろとタイムリーすぎてヤバい
この『ジョーカー』の劇中にはブラウン管のテレビや公衆電話などが登場しており、時代設定は明らかに現代ではなく1980年代半ばかそれより前の年代に設定されているようです。
そうであるのに、劇中では世界で現在進行形の社会問題を思い切り連想させることが多く、それは日本においても人ごとではなくバッチリ当てはまるということも恐ろしいです。
例えば、主人公の転落のきっかけとなったことの1つに社会保障が切られたということがあり、少し前だったら派遣切り、今だったら消費税増による諸問題をどうしても想起させるんですよね…。
さらに、ブラック企業、貧困、差別、格差など、現代社会の風刺になっているところは枚挙にいとまがありません。
具体的に“あの事件”を彷彿とさせるところもあるのですが……それはネタバレになるので後述しましょう。あまりにタイムリーすぎて背筋が凍りましたから。
合わせて観て欲しい映画を一挙紹介
前述したように、『ジョーカー』(内容の過激さはともかくとして)アメコミも映画も詳しくない方にも楽しめる(と言っていいのか?)内容なのですが、往年の名作映画からの影響も強いことも知って欲しいですね。
ここでは、『ジョーカー』が影響を受けた(または自分が類似性を感じた)、合わせて観て欲しいオススメの映画を簡単に一挙紹介します。
1:『タクシードライバー』
『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督が影響を明言。アメリカン・ニューシネマ(反体制的な作品群)の代表作の1つ。ベトナム戦争帰りのタクシードライバーの男がとある出来事から暴力に目覚める。
2:『キング・オブ・コメディ』
『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督が影響を明言。自意識過剰のコメディアン志望のダメ人間が「自分は絶対に正しいし成功するし実力がある」と信じて常軌を逸した行動を取る。タイトルとは裏腹にほぼホラーと言える内容。
3:『モダン・タイムス』
チャールズ・チャップリンによる喜劇。行き過ぎた機械文明・資本主義・管理社会により個人の尊厳が失われてしまう様を描く。1936年の映画ながら風刺しているものは現代に通じまくる。著作権が切れているのでYouTubeなどで無料視聴が可能。
4:『時計じかけのオレンジ』
全体主義がまかり通る管理社会と、暴力・セックスに溺れる青年の姿を描く。暴力を誘発する映画として当時から話題・批判を集めていた。午前十時の映画祭10にてR18+指定で現在上映中。
5:『レクイエム・フォー・ドリーム』
ドラッグにより破滅の道を辿る人々の姿を、複数の視点で並行して描く。観た後に鬱になる映画としても有名。主人公とその母の境遇は『ジョーカー』にかなり通じている。
6:『天気の子』
言わずと知れた現在上映中の大ヒットアニメ映画。『ジョーカー』との共通点は“拳銃”が登場し…(以下両者のネタバレになるので自粛)<ブログの感想記事はこちら>
重要なのは、上記の『タクシードライバー』と『キング・オブ・コメディ』ではどちらも名優ロバート・デ・ニーロが主演を務めており、デ・ニーロがこの『ジョーカー』にも出演しているということですね。
『キング・オブ・コメディ』のデ・ニーロの役どころを知っておくと、『ジョーカー』で感慨深いものがあるはずですよ。
また、バットマンについて予習しておきたいのであれば『ダークナイト』の他、『バットマンvsスーパマン ジャスティスの誕生』を観ておくといいかもしれませんね。
※『バットマンvsスーパーマン』は大いに賛否両論が分かれています。<ブログの感想記事はこちら>
“中和”のためにオススメの映画も紹介
『ジョーカー』は非常に過激な映画であり、下手をすれば内容がショックすぎて、何日も精神的に引きずってしまう可能性すらあります。
そんな時のために、“中和”にオススメの3本の映画を簡単に紹介しておきます。
・『レゴバットマン ザ・ムービー』
レゴで作られたバットマンが大活躍するアニメ映画。バットマンの相棒ロビン、そしてジョーカーも登場する。子供向けと侮るのは勿体無い、バットマン映画史上最高傑作と言ってもいい出来栄え。<ブログの感想記事はこちら>
・『ハングオーバー! 消えた花婿と史上最悪の二日酔い』
結婚式の前日に悪友たちと飲みまくっていたら翌朝に大変なことが!というコメディ。なんと監督は『ジョーカー』のトッド・フィリップスでトーンが全然違う。下ネタがありR15+指定なので注意。
・『マイ・インターン』
70歳のおじいちゃんがインターンで働き出すハートフルなドラマ。『ジョーカー』が社会の悪循環を鮮烈に描いた劇薬なら、『マイ・インターン』は社会の好循環を軽快に描いた良薬と言える。『ジョーカー』にも出演しているロバート・デ・ニーロおじいちゃんがめっちゃ可愛い。<メディアでの解説記事はこちら>
そのほかでも、やさしい世界や価値観を描いた作品ならなんでもいいので、『ジョーカー』の後で観て気持ちを落ち着けたほうがいいかもですね…例えば『けものフレンズ』とか…こっちは「けものはいてものけものはいない」もんな…一方で『ジョーカー』は主人公がのけもの扱いされまくりなんだもんな……。
さてさて、ここからはネタバレ全開で解説します。鑑賞後にお読みください↓
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

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感想記事お待ちしておりました。
大筋では同意できる内容でしたが、2つ誤解している部分を見つけたため、指摘させていただきます。
一つ目は「司会者は良い人で何1つ悪くない」。
デ・ニーロ演じる司会者は、コメディクラブで失敗したアーサーの映像を無断で放送し嘲笑しています。さらに、スタジオでの共演の際、アーサーから「また僕を笑い者にしたかったから呼んだんだ」と指摘されています。
これらの点から、司会者は良い人とは言えないと思います。
二つ目は、「ランドルがアーサーを心配している」。
これは、アーサーが母を殺した後、アパートにランドルと小人症の同僚の二人で訪ねた事を言っているのでしょう。しかし、この時ランドルは挨拶もそこそこに「会社に警察の聞き込みが来てやばいから、この間渡した銃について口裏合わせをしよう」とアーサーに持ちかけ、同僚にたしなめられています。仮にも母を亡くしたばかりの人に対する話題ではありません。
この事から、ランドルは保身第一でアーサーの事など考えていないと思えます。
なんだか文句ばかりになってしまい申し訳ありませんが、この二点を誤解すると、アーサーという男の解釈がかなり変わってしまうと思ったため、指摘させていただきました。
ご指摘ありがとうございます!納得のご意見です。本文に青字で追記させてください。
コメント失礼します
ラストのシーンは精神病棟の患者が行き交っているのではなく、アーサーが逃げ職員が追い回しているのだと思いました。
ベタな喜劇風の終わり方とテロップでまるで映画全体を喜劇のように演出しているのではないかと考えました
ありがとうございます。そちらのほうがラストとして納得できますね!追記させてください。
観てきました。覚悟を決めていたこともあってか思ったよりも受けた衝撃は押さえられはしましたが、それでも「確かにこれは観る劇薬。迂闊に触れたらヤバイ」「明日は我が身かも」「今年ベストだわ…」「いわば『誰でもジョーカーになれる、特別なことをしなくても』ってことだろうなあ」って思いました。
>ヴェネツィア国際映画祭でアメコミ映画初の最高賞である金獅子賞を受賞し、アメコミや映画ファン以外からの注目度も高くなっていますが………実際の内容は気軽にオススメするのは憚られる問題作でした。
>精神的に未成熟または追い込まれている人が観ると、映画の内容に影響されて現実で犯罪を犯す可能性がある、『ジョーカー』はそれほどのパワーを持っているとも、確かに思えるんです。
>>実際観てても「だからこそR15+も妥当だなあ」と思えるぐらいですし、「本気で人生の中で打ちのめされたりとかすれば倫理観が壊されて毒されてもおかしくないわな」とつくづく考えてました(ましてやオーロラ銃乱射事件の例があるだけに)。
こうやって見るとつくづく自分が倫理観が欠如せずに済むほど恵まれた状況下にある有難さを再認識させられますが、いつどうなるかわからないですしそうした状況に陥れば自分もアーサーの二の舞を演じるだろうな…という想いもやはりぬぐい切れません。
>笑いものにされてきた、社会のつまはじきになった人間の気持ちに寄り添っており(こういう人は現実にたくさんいます)、人はどういう時に絶望をするのかを知り、“悲劇を起こさない”ためのヒントがもらえますし、物語について誰かと議論することで、「本当に大切なこと」を考えるきっかけにもなるでしょう。
>>観る人を選ぶ感じがあるとはいえ、その意味合いでは多くの人に目を通してもらいたい(でも精神ブラクラに陥る危険性も無視できないから普段から無理強いする気はないけど本作は尚更だとも…)という想いもあるだけに複雑です(ましてや堕ちてゆく人々の心理が「駄目なのは言うまでもないがこうなるのも肯ける」と思えるだけに)。
(ゲイリーのようにまともに接してくれる人がもっといたら軌道が変わっていたでしょうが、そんな余裕のある人が少なかったであろうことも推測に難くない)
>そして、実力派俳優ホアキン・フェニックスの演技は素晴らしいという言葉では足りない、2019年の各映画賞の俳優部門を総ナメすることはほぼ確定的です。
『ダークナイト』での故・ヒース・レジャー演じるジョーカーとはまた別種の、社会から虐げられ“不憫さ”のあるジョーカー……その悲しみに溢れた笑い声、一挙一動、そしてあの踊り、そしてあの表情……その全てに“人間味”があるからこそ、彼の幸せを願って“しまう”んですよね……ぜひ、スクリーンでその演技じっくりと堪能して欲しいです。
>>どちらも凄く同感です(一方でパンフレットの論評の一つにおける「あらゆる賞を総ナメしてもおかしくないが、審査員が怖じ気づいて無冠に終わっても驚きはしない」の文面もうなずけるから複雑です。ある意味、『バトル・ロワイヤル』の原作小説において「作品的に落ちるが面白いから売れるだろう」と言及していた方がいたらしいという話が思い出されます)。
ジョーカーの演技に関してはついつい比べたくなりそうになります(電車を降りた後マスクを脱ぎ捨てるところやラストの病院で『ダークナイト』が浮かんで「爆破されないよね?」ってなったほど)が、アプローチがそもそも異なるうえに全く参照していないだけに比べるのはナンセンスかもしれないなと観賞後つくづく感じました(先人の演技のすばらしさに影響するものではないはずですし)。
>この『ジョーカー』の劇中にはブラウン管のテレビや公衆電話などが登場しており、時代設定は明らかに現代ではなく1980年代半ばかそれより前の年代に設定されているようです。
そうであるのに、劇中では世界で現在進行形の社会問題を思い切り連想させることが多く、それは日本においても人ごとではなくバッチリ当てはまるということも恐ろしいです。
>>現代が舞台であることがあからさまなダークナイトトリロジーとはそこのところが異なるのにしかし同じく「これは現代に通じる」と感じられてしまうのは面白くも恐ろしいですホント…。
ちなみに時代設定に関しては自分は70年代後半あたりを想定して観てましたし町山智浩氏もパンフレットの論評を読む限りでは70年代と見てるようですが、パンフレットの撮影監督の発言では81年のようで、Wikipediaの記事でも80年代と述べられています。
>合わせて観て欲しい映画を一挙紹介
>>この中だと『タクシードライバー』『天気の子』は観ましたが…他未見なのが悔やまれます。
『時計じかけのオレンジ』はヒース・レジャー氏が参考にしていたと知って驚いてます。
あとはパンフレットで『セルピコ』『カッコーの巣の上で』も影響を受けた作品として取り上げられてましたが…やはり観てなかったです(特に後者はいつか観たいと思ってたのに…)。
>連想したタイムリーな事件
>>香港デモとそれに際する発砲は自分もものの見事に思い出してしまいました。
京アニの件は思い出せなかったですが言われてみれば…!(なおあの件に関しては容疑者に対しては同情は全くなく今でも「無関係の他者巻き込んで36人の命奪ってんじゃねえよ」と怒りがこみ上げるところがあるとはいえ誰しもああならない保証がないとは自分も感じるところがあるだけに更に感受性が大きな人が「自分のことを言われてるんじゃ」と感じる可能性を考えられないのはいかんと少なくても現状では思うところです)。
>ゴッサムシティの名士であるトーマス・ウェインはテレビにて、自身の会社に属していた3人の犠牲者を「家族だ」と宣言し、その一方で貧困層を「自分より恵まれている者を妬んでいる」「まるでピエロだ」などと批判していました。
>>これまでの作品だと「強盗に殺された哀れな被害者」の視点(まあダークナイトトリロジーでは「何故落ちるか。這い上がるためだ」の名言も残してますが)でしか観てない感じでしたが、本作ではつくづく欺瞞に満ちたレイシストに見えてしまい(的外れな犯人像推察が貧困層の不満の火に油を注ぐことになったのなんか最たる例)強盗でなくヘイトクライムで殺されたのが納得できてしまうところです(だからといって殺していい道理は勿論ないですが)。
ていうかその3人も今回の事件がなかったら歯牙にもかけてなかったんじゃと思ってしまいます(ただその3人も殺していい道理はないにせよ所業がアレなだけに同情心は湧きませんが)。
>なぜ小児病棟で拳銃を持っていたのか
>>自衛意識で所持してたんだろうなあと観てる間思ってましたが、確かに小児病棟では過剰ですねえ…。
解雇されるのは無理ないと思いつつも元はといえばランドルが嵌めた所為となれば後に殺されるのが全く不思議じゃないです(そもそも最初アーサーは断ってた記憶もあるだけに)。
過激なギャグをに関しては多分この時点ではなかったと自分は思ってますが、その線も確かに否定しきれないなあ、と(社員3人射殺後以降ならありそうですが。番組出演依頼を受けた時点では既にあったっぽいですが)。
>後でテレビに出演して“ギャグを披露するチャンスに恵まれた時”には本当に拳銃で司会者を撃ち殺しますから……それこそ、まるでジョークのように。(司会者は良い人で何1つ悪くない「映像を(許可なく)取り上げてテレビ出演させた」だけで殺されるというのもつらい!)
>>これに関しては自分はテレビでの取り上げ方を観たときに「これ、笑いものにするためじゃねえか」って感じましたし、仮面をかぶれ氏も仰ってるようにアーサーも共演時に「笑いものにするために呼んだんだろ」との旨の発言をしてたので、あの取り上げられ方をされてからはいい人どころか意地の悪い人間と思って観てました。
>悲劇か?喜劇か?
>>これがまた哀しいです…(トーマスやアルフレッドがアーサーに対して「ペニーはいかれ女」というのは流石に無神経だという想いはあるにせよ結果として「本当の事だった」のは特に…)。
>この映画『ジョーカー』が真に恐ろしいのは、どうしようもない悲劇をも“滑稽なピエロ”という姿見をもって喜劇であると見せかけ、もはや殺人や犯罪をも正当化してしてしまうことにあるでしょう。
>>完全にぶっ壊れたってのもあるでしょうが確かに…。
>拳銃を渡してきたランドルは、同僚の小人症の男に対して「ゴルフはミニゴルフになるのか?」と囃し立てていました。
ランドルにははっきり差別意識があったのでしょうが……拳銃をアーサーに渡したことには悪気はなさそうでしたし、アパートに来た時もアーサーを心配してそうでした。
>>ゲイリーが気にしていたか否かの辺りの記憶が定かでないですが、もし前者だったらマジで駄目だろとしか言いようがないです。
拳銃を渡したことに関しては解雇の際のやり取りを聞くに嵌める気はあったと思われますし(記憶違いなら申し訳ないです)、全く心配してなかったわけでないとしても銃の口裏合わせ云々の時点で100%心配してたってことはないでしょう。
だから先程も述べましたが「(やっちゃ駄目だけど)そりゃ殺されるだろう」と思って観てました。
>ジョーカーの誕生
>>流血でより自然な笑顔ができるシーンはシーンはぞっとしました。
そういえばウェイン家でのブルースとのやり取りの際にもブルースに対してやってたなあ…。
>そのバットマンの過去(両親が強盗に殺された)は有名ですが……本作においては(アーサーが犯した殺人が発端となった)デモ隊の中にいた裕福層を憎む男が強盗となりブルース少年の両親を殺したのだと再解釈がなされていました。
>>先述のブルースとのやり取りの際に「あそこで因縁が始まったのか…。もしこれで89年版バットマンみたいな両親殺害の経緯になったら…」と考えてましたが…直接ではないにせよ間接的に実現するとは…。
(まあ89年版バットマンでは「ジョーカーになる前のジャック・ネイピアが直接ブルースの両親を殺害しバットマンとなるきっかけを作り、やがてバットマンがジャックを追い詰めジョーカーを生み出すことに…」だったのに対してこちらは既にジョーカーになっててしかも間接なので詳細の経緯は異なりますが。あと前者はブルースまで殺そうとして止められてたのに対して後者はブルースを殺そうとしてなかったっぽいですし)
>おそらくその内容は「俺と正反対のヒーローが生まれているかもしれない」ということなのでしょう……そんなことはアメコミヒーローものでしかありえない、荒唐無稽とも言えるようなこと。だからアーサーは“ジョーク”と言ったのでしょう。
>>同感です(そしてその”ジョーク”が実現することを観てる我々は知ってるだけに…)。
>画面奥では、精神病院の患者が行き交っている…そこにジョーカーがいるかもしれない、脱出したのかもしれない、その後のさらに“最悪”の可能性を想起させるものでした。
>>あのシーンを観たとき自分は「『ジョーカーを別のジョーカーが追いかける』シーンで『ジョーカーはいくらでも生まれる』ことを示唆したのかそれとも『ジョーカーを職員が追いかけてる』のかどっちなんだろう」と思いつつ観てましたが、おそらく後者だろうなと思いました。
何というか、「もし、あの時点でこうなってたらジョーカーにならずに済んだのだろうか」ってのはつい考えてしまうところです(それでも遅かれ早かれなってた可能性の方が大きそうですが)。
あと、「もしかしたら過去の作品に繋がったりするのかなあ」と考えたりもしましたが、89年版バットマンやダークナイトトリロジーだと経緯が異なるからあり得ず、DCエクステンデッドユニバースだとジョーカーが若々しすぎるからこれもあり得ないかもとも(『ニンジャバットマン』ならあるかも)。
ただ、「ジョーカーを捕まえるか殺したりしても後で別のジョーカーが生まれるのかも」とも考えるともしかするとあるのかなあ、とも。
まあそこのところは自分の妄想なので聞き流してもらっても構わない感じです。
ヒナタカさんのブログいつも楽しんで見させて頂いてます。私が、この映画の描写で気になったところは自宅までの階段シーンです。ジョーカーになるまで(アーサーとして)は階段を上るシーンのみで、ジョーカーになった?後は階段を踊りながら降っていました。アーサーの時は将来への希望があり、疲れながらも階段を登ろうとしている。ジョーカーになった後は人生は下り坂でもそれを楽しんでいる様な印象を植え付ける演出は素晴らしいと思います。
こんにちは。
この映画で1つ気になったことがあるのですが、
ネタ帳に書いてる文章がイタリア語なのは何故でしょうか?
また、序盤で親子に渡したカードも英語ではなかったと思います。
何回か見たのですがよく分かりません。
アーサーに感情移入出来ない人がいたら、その人を軽蔑します。
どこがどうヤバイのでしょうか?