
映画『ヒーローマニア 生活』ヴィジランテものを否定するな!(大酷評ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ヒーローマニア 生活』です。
個人的お気に入り度:1/10
一言感想:『キック・アス』と福満しげゆきが大好きな俺に謝れ
あらすじ
30歳フリーターの中津(東出昌大)は、ある日ニートの土志田(窪田正孝)、情報収集力に長けた女子高生のカオリ(小松菜奈)、ハンマーをふるって若者を襲う会社員のオジサン(片岡鶴太郎)と出会い、自警団を結成する。
その活躍をみた浮浪者の宇野(船越英一郎)は、彼らに自警団を警備会社へと拡大する話を持ちかける。
福満しげゆきによる漫画『生活』の実写映画化作品です。
講談社
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※アマゾンレビューには「映像化してほしい」の声が多数。自分もそう思っていた(過去形)。
とりあえず原作のことは置いておいてこれだけは言わせてくれ。
この映画は超不愉快だ!と。
なぜそう思ったのか・・・とりあえず箇条書きであげさせてください。
『ヒーローマニア』が人をムカつかせる理由
(1)後半の展開がひとつも納得できない
「なぜ登場人物がそのような行動をするのか」さっぱりわからない展開が続くので頭に「?」が出まくりです。
これ見よがしな伏線がいくつも込められているものの、メインのストーリーラインがあまりにも不自然です。
これでは何がどうあろうがカタルシス(爽快感)などあるはずがありません。
(2)キャラクターが不愉快すぎる
どれだけ小松菜奈のファンであろうとも、この映画の彼女のキャラを好きになれる人は皆無でしょう。◯ッチとかそういうレベルじゃない。
船越英一郎さんは楽しそうだけど、出てくるたびにスクリーンから顔を背けたくなった。怪演とかそういうレベルじゃない。
あと南海キャンディーズのしずちゃんの役回りもすさまじく不愉快。
これはもう弱者に対するいじめにしか見えないよ!
(3)作品の精神性がひどく間違っている
これが個人的にいちばん大っっっっっっっっ嫌いな要素。
ネタバレなしで伝えるのは難しいのですが、とりあえず「正義なんかどこにもなかった」とだけ言っておきます。
期待していたのに……
あのね……自分は本作にとても期待をしていたのですよ……「和製『キック・アス』」のようなおもしろさがあるんだと思っていたんですよ……。
『キック・アス』はヒーローものを茶化しながらも、非リア充のオタクが本当のヒーロー、もしくはヴィジランテ(自警団)を目指すプロットに熱くなれ、爽快感抜群、なおかつ皮肉にも満ちた傑作でした。
本作『ヒーローマニア 生活』のイントロダクションでは、プロデューサーが製作の話に乗ったのは『キック・アス』が日本でもヒットしたことが理由と書かれています。
「日本で『キック・アス』が作られるなんて!」と映画ファンを期待させておいてご覧のありさまだよ!
また、原作の『生活』および、福満しげゆき作品のおもしろさも描けているのはいい難いところがあります。
というか(『生活』は今回初めて読んだけど)自分は福満しげゆきさんが大好きなんですよ!
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福満さんのエッセイマンガには「どうせ僕なんか」「あの人は◯◯なんだな……」と自問自答が繰り返され、リア充への妬みや嫉みが出まくっており、負け組の味方っぽさがすごくあるんです。
『生活』の原作マンガにおいても、主人公たちは若者をボコボコにしまくるという反社会的行動をとるので、「オレたちがやっていることは快楽犯のような犯罪行為なんだぞ。いわば変態なんだ」とか、「ぼくらがやっていることなんてカスみたいなもんすよ」とか、すげえ自己を卑下しまくっています。
(映画の予告編にある「中津さんはボクのヒーローです!」なんてセリフはあるはずがないのです)
そういうダメ人間が自警活動という名の犯罪行為を繰り返すことへの「後ろめたさ」が原作『生活』の大きな魅力だったと思うのですが、映画『ヒーローマニア』ではみんなノリノリで自警活動をしまくっています。
東出昌大演じる主人公なんか、テレビで自警活動を糾弾されると「おおげさだなあ」とヘラヘラ笑いながら言っていたしな。原作への冒涜レベルじゃねーか(小松菜奈と船越英一郎に負けず劣らず、こいつも不愉快です)。
「原作とテイストを変えた」と納得するべきなのかもしれませんが…・・・やはり福満マンガならではの「オフビート」「登場人物の自問自答」という魅力がスポイルされているのは残念でした。
原作は社会への反骨精神を「生活」というタイトルに根ざして、あくまで日常っぽく描くすごくシュールな作品なんです。映画はそうとは思えないよなあ・・・
よいところもあるけど……
よいところは、窪田正孝と片岡鶴太郎のふたりが演技面でもアクション面でも素晴らしい存在感をみせていたこと。彼らはキャラクターとしてもちゃんと好きになれます。
窪田さんはオタクっぽいニート役がハマっているし、片岡さんは還暦を越える年齢ながらプロボクサーの経験を生かしたキレのある動きをみせています。
アクションには、カット割りが多すぎ、カメラ動きすぎで見にくいという欠点があるけど、このふたりの活躍を期待するのであれば十分満足できるのではないでしょうか。
物語が不愉快とはいえ、テンポよく進み、「コミックらしさ」のある演出もうまく機能しているので、退屈することもあまりないでしょう。
不遜な若者たちが跋扈している世界観は幼稚ですが、これは「極端な描写」として100歩譲る程度で許せます。
あと、(これは原作からもそうなんだけど)カナヅチをフルスイングして相手を殴ったのに、血すら出ないのもどうかと。
品川監督の『ドロップ』でも「金属バットで人を殴ったら死ぬだろ!」と思ったなあ。
ああいう「暴力を振るっても傷つかない」というのは、血が出まくりの『キック・アス』よりも、ある意味で教育上悪いと思います。
あとはね、もうなんか悲しいです。
「負け組のフリーターやニートが本当のヒーロー(ヴィジランテ)になる!」という(はずだった)プロットには好きな要素しかないですし、メインキャストも大好きな方ばかりです。
企画が始まってから完成に5年を費やしました。
豊島圭介監督もあらゆるジャンル映画への造詣が深い方であったはずなのに……
そうであるのに、作られたのが不愉快な駄作というのは……もう涙が出てくるくらい悔しいです。
オススメはしませんが、『渇き。』をはるかに超えた嫌悪感を小松菜奈さんに感じたい方、船越英一郎さんを嫌いになりたい方、東出昌大さんのクズっぷりを見たい方、それ以外の俳優のファンはぜひどうぞ(役者に罪はいっさいないと思う)。
怒り狂われても責任は取りません。
以下、結末も含めてネタバレです。この映画への怒りをすべてぶちまけます↓
(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア 生活」製作委員会

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いつも楽しく拝見させていただいております。
はじめてコメントさせていただきます。
自分は原作未読で視聴しましたので、原作ファンのヒナタカさんのレビュー、興味深く読ませていただきました。
自分も和製「キックアス」や和製「スーパー!」のような作品を期待していたのでこの映画にはがっかりさせられました。
>ああいう「暴力を振るっても傷つかない」というのは、血が出まくりの『キック・アス』よりも、ある意味で教育上悪いと思います。
この部分に激しく同意で、今作のような結果の伴わない暴力描写では、自警行為が無責任なまま相対化されずファッション的な記号として触れられているだけで非常に不誠実、不健全ですよね。
それにこの映画の世界観もすごい変で、治安が悪化してゴロツキやチンピラが跋扈している描写があるのに、それによって窃盗や殺人が起きているような描写はなく、「何かやだなぁ」くらいでしかない。だから主人公がヒーローに目覚めることを全く応援できなかったです。
それにご指摘の通り、伏線の張り方も雑ですよね。
・おじさんが裏切る→船越がおじさん粛清のために誰かに電話する→おじさんがレインコートの奴に殺される→でもレインコートは船越と関係ないやつでした!
じゃああの電話は何だったの?って思いました。ミスリード用の行動が何の理由づけもされていない杜撰な処理ですね。
それに電話するところを小松奈菜は黙って見てるだけ、ってヒドいですよね。ちょっと止めようとするとか、ヤバいみたいな顔するとか何かないのかよ!
>中津がトンカチを渡す意味も一ミリも理解できない(娘には秘密にしとけよ)し、妊婦さんがお腹の子どもを顧みずにジャンプするのなんかもっと意味不明。もうどうでもいいや(諦めた)。
ここのシーンって妊婦の状態でしたっけ?確か出産後でベビーカーを横に置いてジャンプするんじゃなかったでしたっけ?まぁどっちでもいいですねw
そんなことよりせっかく「真っ当に生活を送ることの中にあるビジランテ性」を示したのに、一番守るべき存在であるおじさんの娘を暴力の道に引きずり込んでどうすんだ!と噴飯しましたね。台無しかよ、と。
アクションシーンはイキイキとしたところもありましたが、カナヅチで殴っても血も出ない、気絶したチンピラは不自然にいなくなる、無双ゲーのような不自然な演出でイライラしました。バイクに乗ったゴロツキを縄で引っ掛けるところなんか適当すぎてみてられなかった。
「キックアス」のパクりだろうと何だろうとちゃんとやってくれれば邦画豊作の流れに乗れていた作品になっていただろうに、非常に残念でした。以上、長文失礼しました。
> >中津がトンカチを渡す意味も一ミリも理解できない(娘には秘密にしとけよ)し、妊婦さんがお腹の子どもを顧みずにジャンプするのなんかもっと意味不明。もうどうでもいいや(諦めた)。
>
> ここのシーンって妊婦の状態でしたっけ?確か出産後でベビーカーを横に置いてジャンプするんじゃなかったでしたっけ?まぁどっちでもいいですねw
> そんなことよりせっかく「真っ当に生活を送ることの中にあるビジランテ性」を示したのに、一番守るべき存在であるおじさんの娘を暴力の道に引きずり込んでどうすんだ!と噴飯しましたね。台無しかよ、と。
その通りです!
修正&追記をさせてください。
長文でありがとうございます。ご指摘もその通りであるとつくづく・・・なんでこうなっちゃんたんだろ。
邦画が「和製キック・アス」に挑む!と聞いて期待していました。原作未読ですが・・・
私の一言感想:相撲は手前の褌で取れ・・・
豊島圭介監督作品は初観賞ですが、私の地雷センサーにその名は登録されました。
>(2)キャラクターが不愉快すぎる
「この原作ダメだなあ~。こんなキャラじゃ小松菜奈ちゃんの魅力活かせないよ!」とか考えてそうですね。「ファムファタ~ル」とかいう単語も頭に飛び交ってそう。
他にも。
>〜ヌートリアってなんだよ!〜
>〜船越英一郎の地獄〜
>〜つまんないバトル〜
これが映画映えする改変演出だと思ってるのでしょうか。
そこかしこに監督の意識タカさが感じられ、キザ野郎の自画自賛を延々見せられているようで不快過ぎる!
>ラスボスの「おかっぱのおばちゃん」は……
あ、原作でも「怪人」なんですね。私はこの人こそが、この世界を陰ながら護っていた超人ヒーロー(悪即斬系)だというオチを予想していました。
おじさんの娘さんを付けていたのは、ストーカーから守っていた。通り魔的に殺された者達は皆、それなりの悪党だった。で、ラストは「本物」が助けに参上!だとばかり・・・。
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