
『ゲット・アウト』どのような差別が描かれたのか?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
約3ヶ月ぶりの更新ですみません!今日の映画感想は『ゲット・アウト』です。
個人的お気に入り度:8/10
一言感想:何かがおかしく、そして怖い
あらすじ
黒人の青年が彼女の実家に来て、「何かがおかしい」ことに気づきます。
映画レビューサイトRotten Tomatoesで、脅威の99%という満足度を得たスリラーです。
本作においては、これ以上の情報を入れずに劇場を調べて観に行っていい、というレベルですね。
↓
<ゲット・アウト 劇場情報>
なぜかと言えば、本作は少しでも内容に触れようものなら、即ネタバレに繋がるような話運びがされているから。
Twitterでいろんな方の感想を読むと、みんなしっかりネタバレに配慮しているというか、何を書いてもネタバレになる苦しさがめっちゃ伝わってくるくらいですから。
それでも……以下からは何とかネタバレなしで、本作をおすすめしたい理由を解説します。
監督がコメディアンだからでこそのホラーに!
本作の監督を手掛けたのは、これが長編デビューとなるジョーダン・ピールで、本職はなんとコメディアンです。
『コウノトリ大作戦!』の声優を務めていたり、(自分は未見ですが)『キアヌ』という映画では主演のひとりであったりと、多方面で活躍をしているようです。
※『キアヌ』のあらすじは、超キュートなネコちゃんを、悪人兄弟とギャングが奪い合うというものらしい。何それ面白そう。
興味深いのが、ジョーダン監督がインタビューで「コメディとホラーには共通の要素がある」と語っていること。
-
<ジョーダン監督が挙げるコメディとホラーの共通点>
- 多数の要素が絡み合っていること
- 観客を「誘っていく」かのような構成
- タイミングを計って観客の予想の裏をかくような驚きがあること
いやはや、言われてみれば確かに両者は似ていますね……。
日本でも、ビートたけしは言うまでもなく、品川ヒロシや劇団ひとりなどが映画監督として活躍しています。
しっかりプロットを築きあげていくという意味で、コメディアンと映画監督には似たような技量が求められるのかもしれませんね。
で、本作『ゲット・アウト』の何が見事って、あらゆるセリフや行動が「思い返せば意味がある」ということがわかる構成がすごいんですよ。
「あっ、この時のセリフも……」「あっ、この時の行動も、そういえば……ああ……」とニヤニヤしっぱなし。恐ろしく良く練られた脚本が、コメディ出身の監督だからでこそ作られた、というのもまた感慨深いところがあります。
実はコメディ色が強い!
「コメディアンの手腕をホラーに持ち込んだ」ということもすごいのですが、単純に本作はコメディの要素も強い作品になっています。
主人公の親友が、作中に漂うイヤ〜な雰囲気(褒め言葉)にひと味を加えるコメディ・リリーフとして大活躍するんですよね。
こいつの言動にはクスクス、時にはゲラゲラ笑わせました。
しかしながら、本作のジャンルはやはりホラー。笑えるはずの行動や言動が「笑えなくなる」ヤバイ事態に陥っていくのです。
よく「ホラーと笑いは紙一重」と言われていますが、本作は本当にコメディとホラーの間を綱渡りしているかのような内容です。
ホラー作品が好きな人は、これだけでも必見でしょう。
あとね、この手の映画だと「そんな怖い目に遭ってるんだからさっさと逃げようよ!」「話を信じてやろうよ!」とツッコみたくなることも多いんだけど、本作はそこが自然でよかったですね。わりとリアリティもあります。
役者の演技がヤバい!
本作の秀逸な点として絶対に挙げなければいけないのは、役者の演技ですね。
メインのダニエル・カルーヤとアリソン・ウィリアムズももちろんよかったですが、注目は家政婦の女性を演じたベティ・ガブリエルですね。はっきり言ってすげー怖い!笑顔が夢に出てくるレベルで怖い!
詳しくは観ていただきたいのですが、この前後も「大したことはしていないのにめちゃくちゃ怖い」ですからね……もう彼女の演技と、この顔をドアップに映した撮り方で、これ以上のない恐怖を作り出したことは賞賛に値します。
また、一家の長男を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、同時期公開の『バリー・シール アメリカをはめた男』では、どうしようもねえバカキャラを熱演しており、こちらも最高でした。どちらも絶妙にぶん殴りたくなります(褒めています)。
ジョーダン監督は、役者の力量を最大限に引き出す手腕にも長けているのではないでしょうか。
いわゆるスター俳優が出演している作品でないにも関わらず、全米で大ヒットを飛ばしたのは、ひとえにこの役者の演技によるところも大きそうです。
なお、ジョーダン監督は『ゲット・アウト』の大ヒットと高評価を受けて、J・J・エイブラムスとタッグを組んでホラードラマシリーズを作ることが発表されています。ここまでの手腕を発揮すれば、それも当然ですね。
テーマの1つは「黒人差別」だった!
実は、本作は黒人差別がテーマと言っていい内容です。
ホラーで黒人差別を扱うというのも斬新ですし、観てみると、「なるほど……こういう形での差別もあるのか……」と納得できる、新たな視点を得ることができるというのが素晴らしいですね(これ以上のことはネタバレるので言えません)。
『ズートピア』や、絶賛公開中の『ドリーム』もそうですが、差別というのはやはり多層構造を持った単純ではない問題である、と再確認できました。
娯楽で終わらず、「社会派」な要素があるのも、本作が高い評価を得た理由の1つでしょう。
今はどっかんどっかん豊作だ!
現在は『ブレードランナー 2049』という大作映画が公開されていますが、この『ゲット・アウト』のほか、「小粒でもピリリと辛い」系の映画がめっちゃ面白い!ということを強く訴えたい!
『女神の見えざる手』『セブン・シスターズ』『DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』、どれもお気に入り度が8点くらいある秀作なんですから!
『女神の見えざる手』超・超・超面白いじゃねーか!もっと話題になるべき映画だよ!銃規制派の会社であの手この手を使う。その行動は常軌を逸していく。それを圧倒的なエンタメ性をもって、『シン・ゴジラ』のごとくスピーディな会話で魅せる。難しさはなく、日本人にも感情移入しやすい。超おすすめ! pic.twitter.com/RCKX6jvEJq
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年10月21日
『セブン・シスターズ』くっはー!文句なく面白いー!「徹底された1人っ子政策の中、7つ子が1日ごとに入れ替わって生きる」という設定で、これでもかというほど娯楽性が高い。(B級)SFサスペンス好きならば絶対に観なければいけない案件。男子中学生が大興奮できるのにR15+なのが惜しいぜ! pic.twitter.com/ZqWnOdcMd6
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年10月22日
『DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』鑑賞。あはは〜くだらね〜(超褒めている)。フラッシュアニメのゆるさに止め絵のカッコイイDCキャラたちが絶妙にマッチ。鷹の爪名物バジェット(予算)ゲージがシリーズ最高のサスペンスを生む。メタギャグやパロディにゲラゲラ笑う。幸せ。 pic.twitter.com/xujZcfBcUj
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年10月24日
『ブレードランナー 2049』は大評判の反面、その難解さと長尺(2時間43分)のおかげで少なからずや好みが分かれますからね……。
反して、これらの作品は、かなり観る人を選ばないと思います。
さらに、現在『アナベル 死霊人形の誕生』が公開中で、11月3日より『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』、11月10日より『ジグソウ ソウ・レガシー』と、ハロウィンの季節ならではの、ホラー映画ファンにとっての祭り状態になっているんですよ!
『アナベル 死霊人形の誕生』鑑賞。美少女たちがかわいい、監督が『ライト/オフ』の方だけあって暗闇の使い方がめちゃくちゃ上手い、単なるコケオドシに終わらずにちゃんと新しいアイデアも入れてくる、などクオリティがめっちゃ高い。お化け屋敷的に怖がれるので中高生におすすめ! pic.twitter.com/uv9UwtSRaB
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年10月26日
『アナベル 死霊人形の誕生』が公開中、10月27日より『ゲット・アウト』、11月3日より『IT イット』、11月10日より『ジグソウ ソウ・レガシー』と、ホラー映画ファンにはたまらないラインアップ! pic.twitter.com/ui8a0PPQoV
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年10月13日
この祭りに乗り遅れるな!という意味でも、『ゲット・アウト』は超おすすめなのです。
少しだけ性的な話や、残酷描写がありますが(G指定だけどPG12指定でもいいんじゃ?)、それ以外は極めて万人向けですよ!
以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓
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