
『ガルム・ウォーズ』押井守流拷問映画(大酷評ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ガルム・ウォーズ』(英題:Garm Wars: The Last Druid)です。
個人的お気に入り度:1/10
一言感想:愚の骨頂ではなかろうか!(←作中の台詞)
あらすじ
アンヌンのガルムのコルンバとブリガとクムタクが戦いあって、ドルイドのナシャンがキーとなる話。
この映画を観終わったとたん、「金返せ」「時間返せ」と呪詛のようにつぶやいてしまい、抑えようのない殺意が芽生えてしかたがありませんでした……。
(COOL DOWN)
さてさて、『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』で知られる押井守監督の実写映画作品です。
本作は全編がカナダで撮影された大作SF。2014年製作の映画がやっと公開されてご覧のありさまとなっております。
もうね、兎にも角にもつまらない、白目を剥くほどつまらない、ていうか苦行かな?と思うほどにつまらないので、例によって問題点を箇条書きであげます。
ここが本気でキツいよ『ガルム・ウォーズ』
(1)内容が「1時間半ずっと世界の設定をしゃべるだけ」
えーこの映画92分しかないんですけど、そのうち85分くらいがこの種族がどうたら世界がどうたらの説明に始終します。
その内容にみじんも興味を持てないので地獄です。話が進み具合が20年前のマッキントッシュ並みです。
(2)固有名詞が多すぎ
なんかこの世界にはかつて8種の部族がいたらしく、コルンバやブリガやクムタクやら聞いたことねえカタカナの名前が総勢20個くらい出てきます。途中で覚えるのがめんどくさくなって脳がシャットダウンを始めた。
8種の種族うちメインになるのは3種だけなんだからせめてそこだけでも省略すればいいのにな。
あと距離の単位まで固有名詞だったよな。まあ世界観を大切にしたいのはわかるんだけど、おかげで長さがわからん。
「グラから寵愛と庇護を受けられるのはナシャンだけだ!」という台詞があって、へえ、グラって何か神聖なる人物なのかな〜と思っていたら、それが犬だったときは衝撃を受けました。
犬に寵愛と庇護を受けられるのは限られた民族だけなのかーそーなのかー(棒読み)。
この印象が何かに似てるなーと思ったら、同じく固有名詞ばかりが飛び交いまくっていたゲーム『ファイナルファンタジーXIII』でした。
パルスのファルシのルシがパージでコクーンみたいな会話がずっと映画で続くと思ってください。底なしの地獄です。
(3)キャラに魅力がない
主人公の女性の造形がまんま『攻殻機動隊』シリーズの草薙素子っぽく、バトーのような男性パートナーも出てきます。
それはいいんだけど、だいたい世界の設定をくっちゃべっているだけだから魅力がじぇんじぇんありません。
『エイリアン2』のランス・ヘンリクセン(ビショップの人)が出演されていますが、ずっとしかめっつらで世界の設定をくっちゃべっているどうでもいいジジイ役だったので絶望しました。この映画で唯一魅力的なキャラは犬です。
(4)声にエフェクトをかけすぎて聴き取りづらい
多くの劇場で公開されているのは、鈴木敏夫がプロデュースを務めている日本語吹き替え版です。
※TOHOシネマズ六本木、TOHOシネマズ 名古屋ベイシティ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ 天神では貴重な字幕版が上映されています。
まあ中盤までは問題ないんだけど、終盤のあるキャラの声がエフェクトをかけすぎて聞き取れない。
まあ聞き取れたところで、内容はどうせ理解できないがな!
(5)そもそも話がつまらない
大部分が「世界の説明」なわけで本気でおもしろくないんです。複雑な設定をすべて説明して、それで魅力を感じられるはずがありません。
まあさすがに終盤には話が動くのだけど、1ミクロンも納得できないツッコミどころが押し寄せてきたのでさらに絶望しました。
終盤10分の展開のスジの通らなさはすごすぎる。映画が終わった瞬間の劇場の戸惑いは半端なかった。
ク◯映画フリークはこのために1時間半の苦行を我慢する価値があるとさえ感じました。
もうね、この映画は押井守の悪いところだけだけを純粋培養したようなブツなんですよ。
押井守監督作品には深い哲学的な思考や、行きすぎたネットワーク社会への警鐘などが込められており、それは作品の魅力でもあるのですが・・・その反面、説明的すぎて好き嫌いの分かれる要素になっています。
で、その「説明的すぎ」だけが培養されるとこうなるというわけですよ。
本来であれば、ほかの押井作品のように深い考察をして味わうべきなのでしょうが、上記の(1)~(5)の要素がキツすぎて、頭に入ってこないのでどうしようもありません。
押井監督はもともと万人に受け入れられる作品を手掛けようとはしない方なんだけど、今回はファンすらも絶望するのではないでしょうか。
まあすでに『アサルトガールズ』という大駄作の前科があるので、ファンは「知ってた」状態なのかもしれません。
※70分しかないけど3時間くらいに感じる映画
押井守イズムを存分に感じられるということは、ファンにとっては好きになれる要素なのかもしれないけど・・・。
『劇場版 パトレイバー』や『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』がとてつもなくおもしろい映画になっていたのは、既存の作品のため「世界観の説明」をする必要がなく、ドラマ部分に注力できたためでもあるのでしょうね。
あと、日本版の予告の出来がすこぶる悪いのも気になりました。なぜ虚淵玄によるキャッチコピーを2回も(しかも同じ演出)で流すのか。
いいところも(ごくわずかに)あるよ!
えーと、せっかくなんで『ガルム・ウォーズ』のいいところも挙げておきますね。
・CGの戦闘シーンは前時代的でチープだけどそんなに悪いとは思わない
・戦闘マシーンの造形もいい(一部の絵コンテを樋口真嗣が手がけている)
・総じてビジュアルやアクションに見応えはある
・日本語吹き替え版声優の熱演(朴璐美さんなど豪華)
・川井憲次さんによる音楽
・ワンちゃん(バセット・ハウンド)がかわいい
以上となっております。
また、さんざん「説明多すぎ」「固有名詞多すぎ」とは言ってきましたが、基本的な情報は冒頭のナレーションで示すなど、混乱しないような工夫は「一応」されていました。
メインのストーリーラインも「仲間が集って旅をする」「自己の存在意義と戦う理由を模索する」というわかりやすい流れがあるので、決して難解ではないと思います。
小説で補完すると、より世界観を理解できるかもしれませんね(自分はしたくないです)。
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予備知識なく観てもギリギリ混乱しない情報量だと思うけど(自分がそうだった)、心配な人は最低限の用語を予習しておくと良い。最低限の用語→ガルム=クローン人間の総称/ダナン=創造主/コルンバ=おかっぱ女の部族/ブリガ=戦車男の部族/ドルイド=チート能力を持つ神様お気に入りのレア部族
— さめぱ (@samepacola) 2016年5月21日
この『ガルム・ウォーズ』で、否応なしに『ファイナルファンタジー(映画)』と『ジョン・カーター』を思い出しました。
どちらも「世界観を説明しまくっているうちに上映時間を消費」「お金をかけまくったうえにコケてギネス級の大赤字」ということが共通しています。
ちなみに『ガルム・ウォーズ』は構想に15年、製作費に20億円をかけたんだって。バブリーですねー(棒読み)。
結論としては『アヴァロン』あたりの押井作品が好きな人はまあまあ楽しめるかもしれないけど、いままで押井作品を観たことがないような方にとっては1ミリたりともおすすめできない、というところ。
あとはク◯映画成分をたまに摂取したい危篤奇特な方のみにおすすめします。
そうそう、公式サイトのイントロダクションでは、なんかマイナンバーが世界が直面している絶望であると書かれていました。
どういうところでプロパガンダ(政治的宣伝)を仕込むのはやめてくれませんかね。
エンドロール後にもおまけがありますが、なんかもうどうでもいいです。
以下、結末も含めてネタバレです どうかしているラストのみ書きます↓ 押井守ファンの方および、この映画が好きな方には本当にごめんなさい。
(C)I.G Films

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TOHOシネマズ六本木やTOHOシネマズ梅田では貴重な字幕版があるので、そっちなら何か聞き取れるかもしれないと思ってます(そもそも「字幕」でわかるだろというツッコミは抜きで)
が、アレをもう一度…勇気は無いです
にとりさんあざっす。追記させてください。
TOHOシネマズの1ヶ月パスポートがあってもお断り願いたいですよね・・・。
ヒナタカさんは多分知ってたらゴメンm(__)mというか押井守の実写映画でフジテレビを巻き込んだ大作『ケルベロス 地獄の番犬』って映画があるんだ…
その映画宣伝文句は「香港ロケによる本格的なアクション」って凄い宣伝文句で香港のプロップ社に協力されてガン・マニアから期待されてたんだけど、押井はいつもの押井で台湾や香港の街並みに熱中して路線変更して映画はただのロード・ムービーで観客激怒というのがありました。
個人的に『ガルム・ウォーズ』で困ったのは虚淵玄さんの宣伝コピーですね。
正直中学生が考えたようなキャッチコピーで宣伝ポスター見たら「うわ~ダセー」と思いましたよ!
押井のフォロワーの虚淵に宣伝任せるなよってジブリの鈴木敏夫プロデューサーも止めろよ!ってポスター見た時に思いました
まぁ押井守の実写はあんまり関わりたくなかったけど食わず嫌い的な理由で観に行かない状況はどうかと思い断腸の思いで観に行ったが…
やっぱいつもの実写の押井じゃんと思いました。
そもそも『ガルム・ウォーズ』の初期の『G.R.M』は細田守が関わっていたんですが凍結して現在の『ガルム・ウォーズ』になったって経緯なんですね。
多分押井守がやりたかったのはタルコフスキーやイングマール・ベルイマンみたいな事やりたいのですがやるならせめてアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥみたいな事やらないと恥ずかしいよって思いました。
「で、パートナーの男性はなぜか巨人の頭に乗って自爆。お前ケーブル切ればいいって言われたばかりだろ。」
あれ一応ご丁寧に前のカットで頭のエネルギー源が切れるカットを挟んでるんですけどなんでスケリグは知ってたんでしょうかね?w
自滅自体は彼が生粋の戦士なので命を大事にするとかはないと思うんですけど、恐らく戦車ぶっ壊されたのとマナの予備が無いために決断したんでしょう。巻き込み自爆。カラを見たので自己犠牲ですよね。
いやー描写足りねえw
多分ワンカットワンカットCGと弄りの作り込みなので
途中のゴタゴタで予算が足りなくてかなり無理矢理繋いだんですよ。全編そんな感じです。(好意的見解)
自分は虚淵玄のキャッチコピーはそんなに悪くないと思うのですが、なぜ予告編で2回も(しかも同じ演出で)出すんだろう・・・
> 「で、パートナーの男性はなぜか巨人の頭に乗って自爆。お前ケーブル切ればいいって言われたばかりだろ。」
>
> あれ一応ご丁寧に前のカットで頭のエネルギー源が切れるカットを挟んでるんですけどなんでスケリグは知ってたんでしょうかね?w
>
> 自滅自体は彼が生粋の戦士なので命を大事にするとかはないと思うんですけど、恐らく戦車ぶっ壊されたのとマナの予備が無いために決断したんでしょう。巻き込み自爆。カラを見たので自己犠牲ですよね。
ありがとうございます。追記させてください。
> いやー描写足りねえw
> 多分ワンカットワンカットCGと弄りの作り込みなので
> 途中のゴタゴタで予算が足りなくてかなり無理矢理繋いだんですよ。全編そんな感じです。(好意的見解)
超予算不足を感じました。
いろいろ政策上の都合があった作品なので、この映画をけなすと死体蹴りみたいになってしまうなあ。
どうも、いつもブログを読ませてもらっているフォレス・ノースウッドです。
パトレイバーと攻殻は好きだが、それ程押井フリークでもない私は、完全に声優さんとビショップの俳優さん川井さんと、結構好みな主演女優さん目当てで割り切って見に行ったので、そんなダメージが受けませんでしたが、これファン度数濃い人ほど噴飯ものだってのは重々分かりました。と言うか製作費と構想年月打ち出している時点で地雷の匂いが(オイ
でも絶対ラスト以降の方が物語的には面白い部分なのに異論はなしです(しかも元の小説版は映画版のラスト以降の話らしい)
初日の劇場は片手で数えられる人しかおらず、しかも自分が最年少、エンドロールが流れると私残してみんなご退場していきました。
最後に、私のブログにそちらのリンクを載せてもよろしいでしょうか?
> どうも、いつもブログを読ませてもらっているフォレス・ノースウッドです。
> パトレイバーと攻殻は好きだが、それ程押井フリークでもない私は、完全に声優さんとビショップの俳優さん川井さんと、結構好みな主演女優さん目当てで割り切って見に行ったので、そんなダメージが受けませんでしたが、これファン度数濃い人ほど噴飯ものだってのは重々分かりました。と言うか製作費と構想年月打ち出している時点で地雷の匂いが(オイ
自分はにわかファンですが、ダメージがでかかったです。
構想◯◯年というのが長いほど駄作になるというジンクスがありますよね。
> でも絶対ラスト以降の方が物語的には面白い部分なのに異論はなしです(しかも元の小説版は映画版のラスト以降の話らしい)
> 初日の劇場は片手で数えられる人しかおらず、しかも自分が最年少、エンドロールが流れると私残してみんなご退場していきました。
それは小説のほうがおもしろそうですね。映画は10分の1くらいしか描けなかったのでは?
> 最後に、私のブログにそちらのリンクを載せてもよろしいでしょうか?
こんな失礼千万のレビューでもよろしければ、ぜひお願いいたします!
「ガルム・ウォーズ 巨人 ケーブル」でググったら、こちらのブログに到着しました。
ああ、一から十までおっしゃる事に同意です(苦笑)。
いやぁ、これに比べたら、面白くしようと努力はしていた「進撃の巨人」や「テラフォーマーズ」の方がはるかにマシかと!
[…] 3位 ガルム・ウォーズ […]
あなたのレビューが無ければ1ミクロンの救いもない映画鑑賞になるところでした。
ハマれば唯一無二の素晴らしい作品を世に出すのに、これ程パワーバンドの狭いクリエイターもレアですね。
押井エキスたっぷりのダサクでしたね。
イノセント攻殻機動隊天卵は自己パロだから許せるとして森に行ってナウシカ。巨神兵。駿コンセプトパクってエヴァ状態。最後は紀里谷さんのゴエモン状態で、さあ本当の戦いはここからだエンド。絶句。
お犬ちゃんがエンドでプリッとウンチをひりだしてズームアップでエンドクレジットだったら僕の中では傑作でしたね。そのくらい開き直って欲しかった。これマジで。
パターンとしては男女犬長老少女が揃ってんだから神殺し後にアダムイブ。脱出。月が地球で地球が月でエンドでじゅうぶんなのに。
アヴァロンはまあまあ好きなんでこの恥ずかしいシナリオには絶句。でした。