映画『ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』ヒーローはいる(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

映画『ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』ヒーローはいる(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

遅れましたが、今日の映画感想はドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)です。

個人的お気に入り度:3/10

一言感想:ちゃんと『ギャラクシー・クエスト』しようよ……

あらすじ

ヒーロー番組『地球防衛隊』にあこがれていたのび太たちは、ひみつ道具「バーガー監督」とともに映画を実際に作ろうとする。

地球に不時着していた宇宙人のアロンに本物のヒーローと間違われてしまったのび太たちは、宇宙を目指して冒険に旅立つことになるのだが……

※小ネタについて意見をいただいたので、ネタバレに追記しました(3月21日)

日本人なら誰でも知っている、『ドラえもん』の劇場版最新作です。

自分は本作に期待していました。

なぜなら、本作の「映画を撮っていたら、じつはそれは現実だった!」というプロットが、『サボテン・ブラザーズ』や『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』に似ていたからです。

もしくは、宇宙を舞台ととしている傑作コメディー『ギャラクシー・クエスト』をほうふつとさせます。

映画を題材としているだけあって、映画愛に溢れているに違いない!これらの作品にリスペクトを捧げているに違いないと!

…残念

宇宙英雄記

……その期待は、キレイに裏切られたんですけどね。

何が残念って、その『サボテン・ブラザーズ』『ギャラクシー・クエスト』な設定が微塵も生かされていないこと。

これらの作品は、ショッパい人生を送っていたやつらが、

(1)ただの役者なのに本物のヒーローと間違われる

(2)ヒーローじゃないけど、それでも助けを求めている人のために戦い、本当のヒーローになっていく

という、単純ながら燃えるプロットになっています。

しかし、この『宇宙英雄』の場合は、

(1)未来の道具を持っているのび太たちがヒーローに間違われる

(2)道具持っているから余裕で戦えるんじゃね?

になっています。

つまり、ドラえもんたちが強すぎるために設定がいきなり台無しになっているのです。

活かせない設定

それでも、ドラえもんがポケットを無くす(ドラえもん映画にはよくある展開)とか、道具が効かないような相手が登場するとか、この設定を生かす方法はいくらでもあると思うのです。

残念ながら、本作にはそうした工夫がほとんどみられませんでした。

「映画かと思いきや現実かよ!」というシチュエーションが楽しめるのはせいぜい前半まで。後半は最近のドラえもんにありがちな異世界に飛ぶ→悪役を倒すという凡庸な物語になっており、かなりがっかりしてしまいました。

あ、でもクライマックスの展開だけは『ギャラクシー・クエスト』を思い切りパクっていました

具体的にどういうシーンかは『ギャラクシー~』のネタバレになるので書きませんが、そこよりも映画の設定を活かすことを重視してほしいなあ……

問題点の多かったシナリオ

名作と比較をしなくても、シナリオにはいろいろと問題があります。

ひとつが、バトルにカタルシスがほとんどないこと。

本作には「なぜのび太たちがそれで勝てるのか」という説得力がなかったのです。

ピクサーなどの優れた映画作品では、主人公が自分のアイデンティティを取り戻したり、悪を倒すまでの過程に伏線をしっかり張り、主人公が経験を生かして活躍します。

しかし、本作ではなあなあでバトルをして、何となく勝ったり負けたりするだけにしか思えませんでした。

子ども向けとはいえ、もう少し駆け引きのあるバトルが観たかったです。

また、個人的にはのび太をいじめすぎなんじゃないかと思いました。

それはジャイアンがのび太をいじめるという直接的な意味ではなく、のび太が不遇な扱いになる展開が多すぎる、ということ。

のび太は誰しもが認める、応援したくなるダメダメな男の子なんですから、もう少し花を持たせてやってもいいと思うんだけどな……

良かった部分

宇宙英雄記-チンプイにそっくり

フォローしておくと、いい部分もあります。

まずは、子どもにとっては十分楽しい内容になっていると思えたこと。

なぜなら、ギャグをここぞとばかりに入れているからです。

そのギャグの大半は変顔やリアクションで笑わせるというようなたわいのないものなのですが、バリエーションは豊かなので子どもは退屈せずに笑えるのではないでしょうか。

大人の自分が観ても、2ヵ所だけゲラゲラ笑うシーンがありました。コメディパートが多めなのは、本作のいちばんの長所でしょう。

また、原作者である藤子・F・不二雄の作品に似ているキャラが登場することは大人のファンにとってはうれしいことでしょう。

メインのゲストキャラ・アロンは、チンプイにそっくりでした。

<チンプイ

敵キャラのハイドは、『なくな!ゆうれい』のゆうれいに瓜二つでした。

ハイド

<ハイド   

なくな!ゆうれい

<なくな!ゆうれい!

こういうところでリスペクトが見られるのは、ドラえもんファン、藤子ファンとして素直にうれしいですね。

また、ゲストキャラの「バーガー監督」の声優が能登麻美子であることにびっくりしました。

  ←同じ声です

バーガー監督はほとんどしゃべらず、かわいい擬音っぽいのを出しているだけ。声優ファンならこれでも彼女だと気づけるんでしょうか(たぶん無理)。

バーガー監督は、スティーブン・スピルバーグのもじりでしょうね(さすがにニール・バーガーじゃないと思う)。

ゲストとして悪役の声優を務めた市村正親観月ありさ田中裕二は文句なしの上手さでした。

宇宙英雄記のまとめ

結論としては、大人のドラえもんファン、映画ファンにはおすすめできないものの、子どもにせがまれている親御さんは観に行ってもいいのではないでしょうか。

シナリオに大いに不満点があるとはいえ娯楽性は十分ですので、徹頭徹尾つまらないということはないと思います。

でもやっぱり大人にとっては、盛り上がりに欠けること、映画愛があまり感じられないことが残念なんなんだよなあ……

余談ですが、4月公開の『映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』は(見た目が)今回のドラえもん映画以上に『サボテン・ブラザーズ』っぽくなっています。

でも、映画のクレヨンしんちゃんは過去に『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』という西部劇の醍醐味や映画への愛に欠けた作品を作ってしまっているのですよね……それでも期待しています。

↓以下、結末も含めてネタバレです。観賞後にご覧ください。 不満点が多めなので、この映画が好きな方にはごめんなさい。



バトルが超適当

ドラえもんファンには常識であるとおり、のび太の特技は射的とあやとり(と昼寝)です。

この作品でも、ヒーロースーツを着たのび太が「僕の武器はなんだろうな~やっぱり射的かな~」と期待をするシーンがあるのですが、けっきょく役に立たない「のび太スーパーほうき!(あやとり)」を出すばかり。これが1回ならいいけど、クライマックスのラスボスの前で天丼をするのはやりすぎです。

ラスボスには、あやりとが網のようになって捕まえる大技(発動条件不明)が出せてよかったけど、このときにラスボスはすでに瀕死状態になっているのでカタルシスがまったくありません。

けっきょくのび太は最後まで射的をすることがないのですが、ドラえもんが空気砲を使いまくっているのがなんかムカつきました。それをのび太に貸せよ。

<これこそのび太の特技でしょう……

あやとりの糸が、アロンがのび太を追うときの道しるべになっていたというシーンがあったのだから、あやとりの活躍はそれでで十分だとと思うんだけどなあ。

ちなみに、

しずちゃんはウォータービームで女性幹部の敵を吹き飛ばし、その後に「温泉ビーム」を出してあっさり勝利。

ジャイアンは一度ぼろ負けした相手をとくに理由もなく圧倒。

スネ夫は機械いじりの特技が進化しまくっており、ドラえもんが出していたガラクタから飛行ビークルを作り出すという錬金術っぷりを見せました。

……さすがに都合よすぎないか、それ。敵たちが銀河を股にかける海賊にくせに弱すぎます。

『ギャラクシー・クエスト』な設定終了

宇宙英雄記

『ギャラクシー・クエスト』では、「ウソという概念がない」という人の良い宇宙人が登場しており、主人公たちが本物のヒーローではないということを信じることができませんでした。

この設定がものすごく悲しいシーンを生み、ラストへの燃える展開への伏線になっています。

本作でも、ポックル星の人々は疑うことを知らないお人よしばかりです。

しかし、その設定が「アロンのことを信じない」ということにしか活かされていません。

それどころか「何も危機のことをわかっていない星の住人」ということで、あまり応援する気になれなくなってしまっている、せっかくの設定がマイナスにしか働いていないのです。

また、のび太たちが本物のヒーローでないことがわかった理由が、スネ夫がすべてベラベラとしゃべって暴露というのも残念。

敵キャラがこのことをバラしたり、ドラえもんたちがピンチになったときに明かしたりしたするだけでも、盛り上がりは違ったと思うんだけどね。

小ネタ

※以下の意見をいただきました。

のび太の見ていたミラクル銀河防衛隊に出てくるデメキンと丸っこい住人達は、原作23巻『異説クラブメンバーズバッジ』に登場した動物粘土で作った地底人と怪獣にそっくりでしたので、それが元ネタかなと思いました。

また、オープニングに短編『征地球論』の宇宙人っぽいのがいましたね。

爆笑したシーン

のび太の妄想の中でドラえもんが女装したお姫様として登場したり、ドラえもんがもぐらたたきのように穴から出たり入ったりして敵を翻弄するのは楽しかったですね。

個人的に爆笑したのは、ジャイアンが「母ちゃん直伝、無限ビンタ」という技をくり出し、ジャイアンが「さすがに日頃喰らってきた技は威力は違うぜ!母ちゃんありがとう!」と言ったときに、母ちゃんの笑顔が「たけし~」という声とともに空に映し出されること。母ちゃんが死んだ人みたいになっているよ。

また、のび太はクライマックスで敵のベルトでテレポートしてしまっていたのですが、久しぶりに戻ってきたのび太を見たしずちゃんは「そういえば、のび太さんのことすっかり……」とほざきました

しずちゃんにすっかり忘れ去られていたのび太。本作ののび太へのいじめがひどいと書いた自分が言うことではないのはわかっていますが、これは笑うよ。

早戻し大活躍

バーガー監督の「早戻し」機能が、クライマックスで星が崩壊するまでの時間を戻すという伏線として機能しているのはよかったです。

「早戻し」が初めて登場したのは、のび太が飛び立つまでにズボンがひっかかってしまう→早戻しをしたけど今度はなぜかパンツとズボンだけがというギャグになっているので、伏線だとは思われにくいのですね。

どうでもいいですが、いまは「巻き戻し」ではなく「早戻し」と呼ぶんだな……。

VHSが過去の存在となり、「巻く」必要はなくなったとはいえ、個人的には巻きたいです。

本当のヒーロー

アロンはのび太の正体を知っても、助けてくれようとしてくれたこと、その気持ちこそが本当のヒーローだと肯定してくれます。

アロンはヒーローを夢見て保安官になっていたけど、その仕事は正義の味方として悪いやつをやっつけるようなヒーローではありませんでした。

だけど、アロンは人々と触れ合ううちに「笑顔を守ること」が本当に大切なことであると気づいていきました。

それは、のび太が(攻撃の役に立たなかった)あやとりを、子どもの笑顔のために披露していることとシンクロしています。

キャッチコピーの「ヒーローは、キミの中にいる。」とは、誰かの笑顔のために行動している人へエールを贈っているものなのでしょう。

次回作

次回作は『のび太の日本誕生』のリメイクのようです。

映画の最後に、「ペガ」、「グリ」、「ドラコ」のシルエットを見ることができました。

ドラえもんのリメイクには良作が多いので、大いに期待しています。

↓日本誕生についてレビューを書きました

映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』がいかに素晴らしいリメイクだったのかを全力で語ってやる(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

おすすめ↓

「映画ドラえもん」35周年特集 – とよ田みのるインタビュー (1/5) – コミックナタリー Power Push

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  1. 匿名 より:

    失礼します。
    自分も面白そうな題材だったのでだいぶ期待値は高かったのですが盛り上がりに欠けていて少しがっかりでした。
    バーガー監督の能力がチート能力すぎて最初からそれでよかったじゃん感は拭えませんでした。
    せめてビームを五人の能力で止めるとかだともっと熱かったのでは。
    それと爆笑問題の田中さん、観月ありささん、市村正親さんらゲスト声優の演技もよかったですね。中でも観月ありささんのお姉さん的演技は良かったです。
    来年は日本誕生のリメイクのようですね。期待しています。

  2. 匿名 より:

    本作のレビュー見ました!
    やっぱりなんだか微妙な感じがするんですよね…
    前作が面白かっただけに残念でした
    ただジャイアンの扱いは前と同じくらいに好きでしたね
    なんだか聖闘士星矢を見ている気分になりました
    車田落ちしましたし

  3. ヒナタカ より:

    > それと爆笑問題の田中さん、観月ありささん、市村正親さんらゲスト声優の演技もよかったですね。中でも観月ありささんのお姉さん的演技は良かったです。
    > 来年は日本誕生のリメイクのようですね。期待しています。
    そのことを書くのを忘れていたので追記しました。ありがとうございます。
    田中さんは『モンスターズ・インク』の実績もありますし、さすがですよね。

  4. とこ より:

    のび太の見ていたミラクル銀河防衛隊に出てくるデメキンと丸っこい住人達は、原作23巻「異説クラブメンバーズバッジ」に登場した動物粘土で作った地底人と怪獣にそっくりでしたので、それが元ネタかなと思いました。
    私もイカーロスを弱ったままの状態で倒してしまったのは残念だと思いました。グラファイトを手に入れ完全復活したイカーロスと最後に対決すると予想していたので…。
    次作は日本誕生のリメイクですね。新鉄人兵団のように大幅なアレンジを入れるのか、それとも新大魔境のように忠実にリメイクするのかまだ分かりませんが今から楽しみです。

  5. ヒナタカ より:

    > のび太の見ていたミラクル銀河防衛隊に出てくるデメキンと丸っこい住人達は、原作23巻「異説クラブメンバーズバッジ」に登場した動物粘土で作った地底人と怪獣にそっくりでしたので、それが元ネタかなと思いました。
    ありがとうございます。
    ほかにも「宇宙征論」にいたキャラがいたことを思い出しました。追記します。

  6. 匿名 より:

    あまり関係ありませんがカスカベボーイズへの批評あまり共感できませんね
    雲黒斎のような映画もあったクレしん映画に本格的な西部劇は必要ではないと思いますし野原一家が現実に帰ることは町の問題を解決することにもなりますしね

  7. 匿名 より:

    おおむね了解ですが、1点だけそれは絶対に違うぞ、と思うところがあります。それは、
    >声優ファンならこれでも彼女だと気づけるんでしょうか(たぶん無理)。
    です。ファンならすぐに気付くのが普通です。

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ヒナタカ

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