『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』この世界に存在するふしぎなこと(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』この世界に存在するふしぎなこと(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想は映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険(4週間遅れですみません)です。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:知的好奇心を刺激しまくり!

あらすじ

夏の暑さにやられているのび太とドラえもんは、南太平洋に浮かぶ巨大な氷山へと涼みに行く。
ひみつ道具で遊園地を作っていたのび太たちは、氷漬けになっている不思議なリングを見つける。そのリングが氷に埋まったの時間は、人が住んでいるはずもない10万年前だった……。

みんな大好きドラえもん、その劇場アニメ作品の第37作です(声優が交代した世代からは12作目)。
本作は旧シリーズのリメイクではなく、コミックの原作もない、完全な新作。なんと「南極」という舞台が出てきたのも劇場シリーズ初だったんですね。

新作にも関わらず、本作はドラえもんや過去の劇場作品、はたまたアドベンチャー映画全般への愛をしっかり感じることができるようになっていました。

ジブリっぽさがたっぷり!

本作で多くの人が思うであろうことは、舞台や敵キャラクター、はたまた「自然」をテーマとしていることなどに、『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』や『もののけ姫』などのジブリっぽさがありまくりということです。
これは監督の高橋敦史さんが『千と千尋の神隠し』の監督助手を務めていたおかげでもあるのでしょう。

実際は、監督は『グーニーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『E・T』や『スターウォーズ』などの、ジュブナイル系のアドベンチャー映画を目指していたそうです。
物語は初めから終わりまで、とにかく「冒険」に主眼を置いているので、こうしたスピルバーグ的な娯楽映画を期待する人も多いに気にいるはずです。

過去のドラえもん映画っぽさもたっぷり!

そもそもの物語の発端が「暑さから逃れるため」なのは『海底鬼岩城』だったり、地底を体験する過程は原作の一編「地底の国探検」だったりと、過去のドラえもんの作品を踏襲(オマージュ)しているところもみられます。

ややマニアックなひみつ道具もたっぷり出てくるので、もう大人になってしまったドラえもんファンも存分に楽しめるでしょう。

教育にいいよ!

本作で何より素晴らしいのは、子どもの知的好奇心を刺激するシーンが多いこと!
10万年前の古代遺跡のことはもちろん、「氷山のできかた」や「スノーボールアース」などを子どもにもわかりやすく解説して、科学的な根拠に基づく「面白さ」があるのに感動しました。
※参考↓
氷山はどうやってできるのか | クリップ | NHK for School
異端の「スノーボール・アース」仮説はどう常識と闘ったのか | 三谷流構造的やわらか発想法 | ダイヤモンド・オンライン

これは親御さんはぜひ子どもを連れていくといいでしょう。
映画自体も冒険物として楽しいですし、これ以上なくお子さんの教育に良い……春休みの家族向けムービーとして理想的なのではないでしょうか。

タイムパラドックス部分が「つじつま合わせ」な印象も……

そんなふうに、愛を多分に感じる作品ではあるのですが、ごめんなさい、個人的にイマイチに感じたところも多かったです。

その理由の1つが、ドラえもん作品のオマージュが「模倣どまり」であり、物語上うまく機能していないこと。
キモとなるタイムパラドックスの描写も「つじつまあわせ」「説明」に始終していて、予想を超えてこない、カタルシスに乏しいと感じました。

また、危機的な状況にぜんぜんハラハラしないのもどうかと。
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』的な針が迫っているシーンでもちんたらしているのはさすがに……。
序盤の吹雪のシーンは怖かったですけどね。

声優も豪華だよ!

本作のゲストキャラの声優はツンデレボイスでおなじみの釘宮理恵さんなので、アニメ畑の皆さんも観てみたらいいんじゃないでしょうか。
ほかにも、浪川大輔さん、 遠藤綾さん、東山奈央さんなどが出演。
浅田舞さん、織田信成さん、平原綾香さん、サバンナの八木真澄さん、サバンナの高橋茂雄さんは言われなきゃ分かりません。

そういえば、『ひみつ道具博物館』でも堀江由衣さんが出演していたり、『宇宙英雄記』では能登麻美子さんがなぜかハンバーガーのロボ役をやっていたりもしたなあ……。声優ファン向けらしい配役がなされているのもいいことだと思います。

ポスターとがすんばらしい!

本作の7枚のポスターのクオリティがめちゃくちゃ高いことが、大人のドラえもんファンに話題となりました。

これは2人のイラストレーター・丹地陽子さんとヒョーゴノスケさんが手がけたそうです。

キャッチコピーがこれまた素晴らしくいんだよなあ。

ネタバレが控えめなものをあげると
「7億年前にあったことは、明日あっても不思議じゃないんだ。」
「氷は、透明なタイムマシンなんだ。」
「小さなきっかけが、壮大な冒険のはじまりだった。」
などなど。いやいや、これだけで映画が観たくなるではないですか!
(※ネタバレっぽいキャッチコピーがあるといっても、これも物語への想像が膨らむ素晴らしいものです)

そんなわけで苦言も呈しましたが、基本的にドラえもんへの愛に溢れ、かつ家族向けのアニメとして存分な工夫が込められた優れた作品です。
現在歴代トップの興行記録を樹立しそうな勢いということで、一ドラえもんファンとしてとてもうれしいです。

正直、今は他にも家族で観てほしい映画が、『モアナと伝説の海』や『シング』や『ひるね姫』や『キングコング:髑髏島の巨神』(※PG12指定)など目白押しなので……あの……できれば……そっちも……観てやってね!という気持ちも捨て切れませんが、やはりドラえもんという強力なコンテンツも見逃せないですよね。ぜひぜひ、お子さんと劇場へ。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

野暮な不満点

偽のドラえもんがのび太たちを天井にあるトゲで串刺しにするため、スイッチを押して足場をゆっくりせり上げるんだけど、横に逃げれば簡単に避けられるやんけ
しかもこのエレベーターが上がるのが遅い、そもそもそんなまどっろこしい手段を取る必要もない。
のび太が「(本物の)ドラえもんを信じるよ!」という展開はアツいのですが、そこに至るまでの説得力がないのはちょっと……

また、ドラえもんが10万年後の未来のためにタイムベルトの電池を用意しておくこと、それ自体はよかったのですが……その時のタイムベルトの使い方が「その場の危機的な状況を回避するため」にすぎないなので、いまひとつカタルシスに欠けています。

氷漬けになったドラえもんの石像も「つじつま合わせ」の道具でしかないんですよね(耳の形が違っていた動物の「パオパオ」でさえも……きっと10万年経って色が変わったのよ!」って、ちょっと納得できないです)。
おそらくこれは『魔界大冒険』のオマージュなのですが、そちらが子どもに(いい意味で)トラウマ級の恐怖を与えてくれた一方、こちらは石像を見つけた時、すでに「古代の何かが変身した偽物」ということがバレてしまっている。これでは怖くありません。

※以下のポスターですごくワクワクしていたのですが、ちょっと結末のつけ方は残念だったかな。

自然という驚異

先ほどは「危機的状況にぜんぜんハラハラしない」と書きましたが、序盤に氷のテーマパークが崩壊し、のび太の生死がわからなくなるのはよかったですね。
のび太を見つけて号泣しているドラえもんが可愛くってもう!

そして、南極の冒険ではついにドラえもんの道具が通用しなくなるという恐怖もある。
あまりの吹雪のせいで前に進めず、ビバーグを余儀なくされるんですよね。
ドラえもんの道具はよくも悪くも「万能」なので、それで危機的状況が作りにくくなっているんですよね(だから過去のドラ映画では四次元ポケットが盗まれたりしていた)。
悪役にではなく、自然という驚異に対して道具が通用しないという状況を作り上げたのは感服いたします。

また、南極に通じるどこでもドアから冷気が流れているのが視認できていたり、ジャイアンが食べようとしたカップラーメンが一瞬で凍るといった細かい描写があるのも好きでした。
こうした科学的なディテールをないがしろにしない作劇が、本作の一番の賞賛すべきポイントなのではないでしょうか。

10万年前の世界

カーラと博士は、故郷のヒョーガヒョーガ星を救うためのリングを探していました。
だけど彼女は、リングをのび太たちの住む地球のために使うことを決めた。また探せばよい、と。

感動したのは、本作のエピローグ。
ドラえもんは、10万光年離れた場所にあるヒョーガヒョーガ星を、望遠鏡で見てごらん、とのび太に伝えます。
のび太が望遠鏡を覗くと……そこには「10万年前」の、氷だけでなく、緑が広く覆っているヒョーガヒョーガ星を見ることができました。

※以下のポスターは地球の姿だけど、ヒョーガヒョーガ星の人にも地球がこう見えていたかも……

10万光年離れているということは、光が届くのに10万年かかるということ。
すなわち、10万年前の姿が見られるということ。

のび太から見た「10万年前に友だちが成し遂げたこと」を、
「10万年前を見る」という「タイムテレビ」のようなことを、
ドラえもんのひみつ道具ではなく、この世界に存在する当たり前の「ふしぎ(だが科学的根拠に基づいている)」で示してくれるとは!

本作を観た後だと、望遠鏡で夜空の星々を見たくなります。
あれは「◯年前の姿なんだ」、と。
これは、ドラえもんの冒険が、我々の世界と結びついたようでありますね。

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ動画・ADK 2017

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著者

ヒナタカ

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