『ドント・ブリーズ』すぐ近くにいた泥棒をスルーした理由とは?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『ドント・ブリーズ』すぐ近くにいた泥棒をスルーした理由とは?(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はドント・ブリーズです。

個人的お気に入り度:9/10

一言感想:“わかる”から、怖い

あらすじ

デトロイトで盗みをくり返していたロッキー(ジェーン・レビ)は、恋人のマネー(ダニエル・ゾバット)と友人のアレックス(ディラン・ミネット)とともに、盲目の老人(スティーブン・ラング)の家に強盗に入る。
その老人は目が見えないかわりに、驚異的な聴覚と身体能力を持つ、異常者だった……。

リメイク版『死霊のはらわた』のフェデ・アルバレス監督の最新作です。

そちらはグッチョングッチンのデッロンデロン(←頭の悪そうな表現)な描写のおかげでR18+指定がされていましたが、本作は残虐描写がほとんどなくPG12指定止まりなので、グロが苦手という方でもイケるでしょう(本当だよ!)

物語は、「3人の泥棒が盲目の老人の家に入ってバトる」というだけ。
鬼ごっこをずっと楽しむという(悪)夢のような時間を過ごせて幸せ(?)でした。

※老人を演じているスティーブン・ラングの年齢は60歳をちょっと超えているくらいなので、おじいさんやジジイという呼称は的確じゃないのですが、あえてこう呼ばせてください。

本作の魅力については以下にも書きました↓
『ドント・ブリーズ』が『ローグ・ワン』と並ぶ必見作である5つの理由 | シネマズ by 松竹

要するに、

  1. 盲目の元軍人のおじいさんがめっちゃ強い!
  2. 3人の泥棒VS盲目の最強傭兵ジジイ、極限の知略バトルが勃発!
  3. 「そうきたか!」と思えるアイデアも盛りだくさん!

以上がわかっていればすぐにでも劇場に行っていーんです!

そして上映時間がたったの88分ということも素晴らしいですね。
この時間にもアイデアがギッキリ詰まっており、一時も退屈はさせませんよ。

「人間」だからこそ怖い

さてさて、いくらおじいさんが強いからといって、コイツは幽霊でも超人でもない、ただの人間です。
作中ではこのジジイが躊躇なく殺人を犯すようになった「理由」が語られており、そのために恐怖が薄れてしまったという意見も少なからず見かけました。
確かに、『呪怨』(ビデオオリジナル版)の伽倻子、『悪の教典』のサイコパス殺人鬼のハスミン、『イット・フォローズ』の“それ”のように、「なぜそうするのか理解できない」からでこその恐怖というのはあります。

しかし……自分はそのまったく逆、このおじいさんが「とある事情によりおぞましい行為をしていること」こそに恐怖を覚えました。
この人は自分を「被害者」と思い込んでおり、自分の行動が正しいと信じているのですから。
マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』の作者の荒木飛呂彦先生は「真に怖いのは弱さを攻撃に変えた者」と言っていましたが、この言葉はこのおじいさんに当てはまりまくります。
ちなみに、この映画は特殊なシチューションをルールに則ったバトルとして展開する、という点でかなりジョジョっぽいですよ!

公開されることに感謝しよう!

本作は『ソーセージ・パーティー』と同様、もともと日本で公開の予定がなかった作品だったりします。
そちらは全国で1桁しか公開劇場がありませんでしたが、本作は33館で上映しているんですよ!(それでも少ないけど)
ありがとう、ソニー・ピクチャーズ!

しかも、その少ない劇場では各回で満席が続出しており、日本でも評判は上々。
公開10日目で早くも興行収入1億円を突破するというヒットを遂げていたりもするのです。

この恐怖は「逃げられない」劇場で味わってこそ至高の体験となるはず!
ホラーファンは、近くで上映していたらさっさと観に行くように!超おすすめです!

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓

野暮な不満点

おじいさんが電気を消して真っ暗にして(画は暗視ゴーグルで見たようなものになっている)、アレックスが掴まれるも、なんとか棚を倒して逃れる、というシーンがありました。
この後にアレックスとロッキーが思い切りしゃべりながら部屋を脱出しているのに、なかなかおじいさんが追いかけてこないのはちょっと違和感がありました。
本作の批判意見には「おじいさんが超人的な聴覚を持っているようには見えない」というのが多かったのですが、確かにそれは否定できないかな、と。

洗濯機前のおじいさんVSアレックスのバトルの後、ロッキーが精液入りのピペットを突っ込まれそうになる前に、アレックスが生きていた事実を先に知らせてしまったのもちょっと残念だったかな?
ロッキーが絶体絶命ギリギリ→アレックスが後ろからスコップでぶん殴るシーンで、初めて彼が生きていたことを知らせたほうがカタルシスがあったかなと。
この映画では「回想」が排除されている(アレックスが生きていた理由を示さないといけない)ため、こう描くしかなかった、というのもあるとは思うのですけどね。

また、やっぱりラストシーンで、泥棒をして、結果として仲間を死なせてしまったロッキーが、因果応報的に裁かれないことに不満を覚える人も多いでしょうね。
個人的には「罪をずっと背負って生きなければならない」ということで納得はしました。

スルーした理由

アレックスとおじいさんが廊下ですれ違うシーンは、1度目を観たときは「さすがに気づくんじゃ?」と思っていました。

でも2回目を観ていて気づきました。
おじいさんは直前に至近距離で銃をぶっ放していたから一時的に耳が聞こえなくなっていたという説明がついていましたね!

ちなみにこのマネーを撃ち殺すシーン、おじいさんが首を動かして「耳を澄ませて」いるように見えるのがめっちゃ怖い。おそらく、「誰かの悲鳴を聞き逃さない」ようにしていたのでしょう。

3人の泥棒のキャラ付けが上手い!

3人の泥棒のキャラが最低限の描写でしっかりと現れていることに感服しました。

ロッキーは再婚相手を連れた母から「あんたの唇を使って稼いでいるんでしょ?」とからかわれていました。
でも実際のロッキーがお金を稼いでいた方法は娼婦ではなく、泥棒でした。ここで、「母からも理解されない」鬱屈した感情が観て取れるのですね。

マネーは泥棒をするときにおしっこを撒き散らすというウェーイwww系の嫌なヤツです。
それでいて「示談金」を言い間違えたりと頭も悪い、後先考えないところもあるおバカさんでした。
そんな彼が、おじいさんに掴まれて殺されかけても、「1人で来た」と言って恋人のロッキーを守ろうとしたのはグッと来たぜ!

アレックスは、「泥棒をするときは100万円以下で!」「銃を持って入るという意味がわかっているのか?」と仲間に告げるなど、チームのブレーン的存在であり、常識的で慎重な男でした。
ロッキーに「一緒に(カルフォルニアに)行く?」と問われたときは、アレックスは「親父がいる」と言って断りました。
そんなアレックスであっても、ロッキーに「妹を脱出させたいの、お願い」と言れると、断ることはできませんでした。
彼はロッキーのことが好きで、本音では一緒にカルフォルニアに行きたいんだろうな……。
親父がセキュリティ会社であることを利用して、盗みに参加している彼の心境は複雑なものだったでしょうね。

Don’t Run

もうサスペンスをあの手この手のアイデアで作り上げるのに感服しまくりでした!

・動けば殺される、床に転がっていたスマホに着信があると即撃たれる
・地下倉庫から脱出できると思いきや、先回りされていた
・明かりを消されて、ロッキーとアレックスの「目が見える」というアドバンテージが無くなる
・アレックスが天窓に落ちて、割れるかどうかハラハラ!
・アレックスは洗濯機を作動させ、おじいさんの研ぎ澄まされた聴覚というアドバンテージを奪う

あと、おじいさんがアレックスが脱いだ靴の臭いを嗅ぐというシーンもありました。
「嗅覚も使うのかよ!ヤベえ!」と思っていたら、後半では眠らせていたおじいさんの飼い犬が大活躍!
今まで「Don’t Breathe」な展開だと思っていたら、このワンちゃんを見たアレックスが「Don’t Run」と言ってくれるのもたまりません。

ロッキーからやっと屋敷から脱出して、「もう無力よね!」と挑発した後、ワンちゃんが全速力で走ってきたシーンは感動して(?)涙が出てきました。
さらには車での窓を閉められるかどうかのギリギリのバトル!
トランクを利用した防御と脱出!
それでもおじいさんに捕まってしまうロッキー!

そして、冒頭の「おじいさんが女性の頭を掴んで引きずる」シーンにつながるわけで……
ファーストショットの画は遠く、この女性がロッキーであることはわからないので、ネタバレにはなっていませんね(てっきり過去におじいさんがやった殺人かと思っていた)。
朝焼けの日に向かって歩くおじいさんの後ろ姿は怖くて仕方がなかったよ!

てんとう虫の希望

ラストバトルでは警報機を鳴り響かせ、ロッキーが後ろから何度もおじいさんを殴りつける!
最後まで論理的な「勝つ理由」があるのがたまらん!

ロッキーが希望を捨てなかったのは、幼いころにトランクに入れられたときに出会った「てんとう虫」を再び見たおかげでもありました。
(それをタトゥーにしていた彼女は、どんなときにも希望を捨てないという意思が初めからあったのかもしれませんね)。

ベイビー

おじいさんは、自分の娘を轢き殺した女性が莫大な示談金で釈放されたことを許せず、その女性を監禁するばかりか、精液を膣に流し込んで子どもを孕ませるというおぞましい行為をしていました。
しかも、おじいさんはその女性を、誤って自らの手で射殺してしまいます。

このときおじいさんは女性を抱いて、泣きながら「ベイビー」と言っていたのですが、これは果たして女性に言ったものだったのか、それともお腹の中の子どもに言ったものだったのか……。

また、おじいさんは女性を「子どもを産んだら釈放する」と約束していたと言っていましたが、それは本当なのでしょうか?
何せ、女性の遺体を沈めるために存在したような、「底なしの沼」のようなものが地下倉庫にはあったのですから……。

神はいない

おじいさんは眠る時に実の娘の思い出のビデオをずっと見ていました。
その娘が事故で亡くなり、その犯人が金で釈放された事実については、「神などいない。神がいるなら、こんな不正を許しておくはずはない」「父と娘の絆がわかるわけはない」とおじいさんは主張していました。

おじいさんにとっては娘の存在が全て、それが失われたときは神という存在をも否定しました。
その結果、おじいさんは自分を被害者であると感じており、とことんその行動を正当化していました。

そして、娘を「つくる」ために、ここまでおぞましいこともする……
少しの同情の余地こそあれど、その考えに至る、人間の狂気が怖いのです。

ラスト

ラストでおじいさんが生きていたことが明かされましたが……彼は「泥棒の被害はなかった」と証言していました。
大金を持ち去られたのに、おじいさんは生き残ったロッキーのことを隠したのです。(殺される直前のアレックスは「金で沈黙を買う気だ」と言っていましたが)

ロッキーは無事に盗んだ大金を持って、妹とともにカルフォルニア行きの飛行機に搭乗する……。
これはハッピーエンドと言えるのでしょうか。

おじいさんは神を否定し、そしてロッキーが盗んだ大金のことも諦めました。もはや彼は何も信じない、ぬけがらのような存在になったのかもしれません。
また、おじいさんに監禁されたあげくに子どもを孕ませてしまった女性の遺体は、沈められてけっきょく見つかっていないことになります。

それは総じて考えると、このラストは「真実が公にならない」バッドエンドであると思います。

おじいさんは公正に娘を轢き殺した犯人が裁かれることを望んでいたが、そうはなりませんでした。
そして女性を監禁した事実も隠され、アレックスとマネーを殺したことも正当な行為として報道されていました。

ロッキーも、自分を慕ってくれたアレックス、最期に自分を守ってくれたマネーを死なせてしまった負い目を一生背負い、しかもそのことを最愛の妹に隠し続けて生きなければならなりません。

ちゃんと罪を認めること。裁かれること。
そのほうが、救われることもあるのかもしれません。

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  1. 毒親育ち より:

    事前にそうだと聞いていたのですが、期待していたものとちょっと違い残念。
    強いおじいちゃんが大好きで、相手を嘗め切ったクズが酷い目に合うのが大好きなので、強盗側はもっと大勢で彼らにも止むに止まれぬ事情が~~とか無い方が良かったって、個人的な趣味嗜好の話ですみません。

    >鬼ごっこをずっと楽しむという(悪)夢のような時間を過ごせて幸せ(?)でした。
    途中から大嫌いなはずのDQN達(本当にそうなのは一人だけですが)を応援してしまいました。

    >「人間」だからこそ怖い
    >『呪怨』(ビデオオリジナル版)の伽倻子
    余談ですがノベライズ版では理由を持っているどころか、同情すべき事情はあれど人間だった頃からストーキング等の犯罪の常習者。正気(というか思考力)を保っていてその上で狂っているという最凶のクズ。さらに自分を無邪気無償の愛で慕う幼い我が子に殺人を手伝わせている・・・。殺人の理由は冗談でなく「リア充滅殺!」で作中は最終的に人類滅亡させてます。・・・と。自分の中で『ミュジーアム』のアイツと並んで吐き気もよおす邪悪に入ります。

    >この人は自分を「被害者」と思い込んでおり、自分の行動が正しいと信じているのですから。
    >マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』の作者の荒木飛呂彦先生は「真に怖いのは弱さを攻撃に変えた者」と言っていましたが、この言葉はこのおじいさんに当てはまりまくります。
    鬱な話ですが、現実にもコレを思い起こす事件や発言をしている人が目に着くようになりましたね・・・。

    >野暮な不満点
    「息をするな!」という題名なのにけっこう細かく音立ててるんですよね。てか隠れてる時でも「スーハー!スーハー!」はないでしょ!?

    >マネーは泥棒をするときにおしっこを撒き散らすという
    彼に『プラチナデータ』を見せたくなりました。プロの泥棒は生体情報を遺さないように徹底するそうですが・・・。
    あとアレックスの「一万ドルまで」は被害者の被害意識と憎悪感情を煽らない為でもあると思います。

    >また、やっぱりラストシーンで、泥棒をして、結果として仲間を死なせてしまったロッキーが、因果応
    >報的に裁かれないことに不満を覚える人も多いでしょうね。
    >3人の泥棒のキャラ付けが上手い!
    個人的な経験から「不幸な境遇」を「免罪符」だという価値観を持った奴は更生不可能なので死刑か無期懲役労働刑で。とすら思っているのですが、これに当てはまるのはマニーくらいでしょうか。しかしそんな彼も友達への仁義は持っている。
    ロッキーは自身の行為が悪事だと自覚していて、お爺さんにも申し訳ないと思いつつ、彼の境遇にも同情的でした。なにより私利私欲の為でなく幼く(心身に障害を持っているようにみえました)妹の将来の為ですし。
    アレクッスも富裕層の生まれのようですが「友達を放って置けない」からこそでしたしね。

    >スルーした理由
    銃声って凄いらしいですから、銃社会のアメリカ人なら違和感無いのかな・・・と。「爆竹」遊びで耳キーン!が日常茶飯事だったワルガキは思ったり。

    >Don’t Run
    >飼い犬が大活躍!
    凶暴さが強調されていましたが、彼はご主人様をお家を守る為に奮闘しているだけの忠犬なんですよね!カワイイ!!

    >朝焼けの日に向かって歩くおじいさんの後ろ姿は怖くて仕方がなかったよ!
    すみません。空に「勝利!」の字を見てしまいました・・・。
    でも普通は朝が来たら恐怖の時間は終りですよね・・・。

    >ベイビー
    >おじいさんは、自分の娘を轢き殺した女性が莫大な示談金で釈放されたことを許せず、
    これも個人的な経験からですが、被害者からしたら土下座も涙も謝罪よりも賠償してくれ・・・の方がありがたいです。

    >何せ、女性の遺体を沈めるために存在したような、「底なしの沼」のようなものが地下倉庫にはあったのですから……。
    余談ですが人工底無し沼で遺体処理と聞くと江戸川乱歩の『影男』を思い出します。あと『クリムゾンピーク』の粘土精製所とか、コレけっこう有効なのかも・・・て真似する人出ませんように~?

    >神はいない
    『プリズナーズ』のキチガイ夫妻(コイツらに比べれば正当な復讐ってか、対象は直接の加害者ですけど)を思い出しました。信仰は人を救いもし、狂わせもし、失ってもまた狂うとか・・・。

    >ラスト
    ヒナタカさん曰く
    >「罪をずっと背負って生きなければならない」
    と同時に「これから先も復讐の影に怯えて生きなければならない・・・」という意味で罪を背負ったように見えました。

  2. せぷ より:

    こちらには久しぶりにコメントをさせてもらいます。
    ヒナタカさんは別記事にて『ドント・ブリーズ』に似た作品を挙げられていましたが、自分はマーカス・ダンカン監督の『ワナオトコ』に似ていると思いました。
    理由は、
    1.主人公が泥棒であること
    2.密閉された一軒家が舞台であること
    3.主人公に大金を欲する理由があり、それで容易には逃げ出せないこと
    などでしょうか。
    あと、偶然だと思いますが、どちらも90分を切る尺の短い作品です。
    もし未見でしたら一度ご覧になってみてください。

    • hinataka hinataka より:

      いままで返信していなくてごめんなさい!
      ワナオトコ、観ていますよ!続編も含めてグロさはもとよりなかなかの快作で、ドンブリとにていましたね!

  3. […] 20位 ドント・ブリーズ […]

  4. やま より:

    冒頭の引きずりシーンは、監禁娘の時じゃないですかね?
    こちらの記憶もあやふやなんで違ってたらすみませんが。
    いつも楽しく拝見&参考にさせてもらってます。

    • hinataka hinataka より:

      自分もそう思ったのですが、やはり2回目観てロッキーのような気がします・・・・・・自分が間違っていたらごめんなさい。
      いつも参考にしてくださってありがとうございます!

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著者

ヒナタカ

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