
『ドクター・ストレンジ』残された時計の意味(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ドクター・ストレンジ』です。
個人的お気に入り度:6/10
一言感想:マッツが待ちすぎ
あらすじ
天才外科医のドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は交通事故に遭ってしまい、両手が不自由になるばかりか、ほぼすべての財産を失ってしまう。
彼は確証の持てないまま、ネパールの修行場に赴くが……。
『地球が静止する日』『フッテージ』のスコット・デリクソン監督最新作にして、同一世界でのヒーローの活躍を描く、マーベル・シネマティック・ユニバースの第14弾です。
この通称「MCU」で感心するのは、たまに今までのシリーズを観ていなくても楽しめる作品を入れていること。
『アベンジャーズ』や『キャプテンアメリカ ウィンター・ソルジャー』は今までのシリーズを観ていないとわかりにくいところがありましたが、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『アントマン』はシリーズ初見でも問題なく楽しめる内容でした。
今回の『ドクター・ストレンジ』も圧倒的に後者。
こうしてシリーズの「途中参加」ができるのはとてもうれしいですね。
アメコミヒーロー映画のファン層を拡大する戦略としても、とても有効だと思います。
ベネディクト・カンバーバッジとビジュアルがたまらん!
結論から申しあげると、本作の魅力は以下の3つに集約されます。
- ベネディクト・カンバーバッジ演じるドクター・ストレンジというキャラの魅力!
- ビルが横になったり坂間になったりの重力無視のビジュアル!
- マントがかわいい!
1.のベネ様がもう本当にハマっています。
もともと演技派ではありましたが、今回は言葉の端々から傲慢さをプンプン出してイラッとさせますからね(褒めています)。
そんな彼でも1本の芯が通った信念がある……ベネ様はそういう複雑なキャラの心情を一挙一動で表現してしまうのです。
自然なセリフで、主人公の性格を短い時間で描く脚本も、上手くできています。
2.の「もうみんなビルが壊れるのとか飽きたでしょ?」と言いたげな、ビルや地面が横になったり縦になったりの、重力があっちこっち行っちゃうビジュアルは本作随一の魅力なのではないでしょうか。
ほかの魔術や「精神世界」のワクワクするビジュアルもすんばらしいですし、アカデミー賞の視覚効果賞ノミネートも納得です(受賞もしそう)。
3.については、ええと、もう観てください。
このマントのキュートさは、『アラジン』の空飛ぶ絨毯、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のハンマーに匹敵するか、それ以上ですね。
試写で観た時さすがディズニーだなって思った pic.twitter.com/IQ0CIX1fFv
— りくた (@rikuta_TP) 2017年1月29日
正直話運びはちょっと……
正直に申し上げれば、今回は話運びがあまりよろしくない、はっきり言えば雑なところがあります。
具体的には、悪役に「なんでお前何もせずに待ってんねん」とツッコミたくなるところが多いんですよね。
たとえばこの悪役、冒頭でとあることを成し遂げたのに、主人公がずーっと修行している間に何もせずに待っています。
お前さっさと3箇所ある「サンクタム」を破壊して目的を果たせばいいやんけ(一応何かしら戦っていたと好意的に解釈はできなくないですが、そういう描写がない)。
演じているマッツ・ミケルセンから醸し出される「いい人オーラ」のおかげもあり、いくらパンダメイクをしようと、空気を読んで待ってくれているいい人に思えてくるくらいです(笑)。
空気を読むのはいいことなので、悪役は空気を読まないほうがいいよなあ。
そのほかにも、傲慢な主人公の成長譚としては弱いところがありますし、決着のつけ方もちょっとモヤっとしたものが残ってしまいます。
冒頭の事故の「相手」がいっさい語られていないのも違和感がありました(まあ描写する必要がないということなのでしょうが)。
舞台や設定の説明が多くなっている一方で、肝心のバトルのルールが曖昧になっているところも見受けられました。
画面の派手さも手伝って、味方と敵のどちらが有利なのか不利なのかがわかりづらくなり、ハラハラしにくくなっているのです。
また、「高慢きちな金持ちが致命的な傷を負いながらも復帰する」というのは『アイアンマン』と似ていますし、重力があっちこっち行くビジュアルもすでに『インセプション』で観ているっちゃあ観ているんですよね。
ビジュアルで目を引いても、まだまだ類型的になっているのは事実。これからはもっと革新的な話運びがシリーズに必要になってくるのかもしれません(贅沢な注文ですが)。
フォローをしておくと、セリフの端々にはいくつものの伏線が張られていますし、決して脚本のすべてが雑というわけではありませんよ。
個人的に大好きだったのが「腕時計」にまつわる数々の描写。こうしたことで、主人公の「大切なもの」を示しておくのがたまりません。
観る人は選びません!
前述の通りベネ様の魅力は全開なので、ファンは是が非でも観るべきでしょう。
予備知識はいっさい要らないですし、ビジュアルの楽しさが満載なので、幅広い方が楽しめるのは間違いありません。
あと、ほかのMCU作品に負けず劣らず、笑えるシーンもけっこうあるんですよね。
今回は「無理やりコメディシーンを入れている」「ギャグがスベっている」と否定的に見られているところもあるのですが、個人的にはこうしてホッと一息つけるところがあるほうが好きです。
ほかのキャストでは、主人公の師匠を演じたティルダ・スウィントンもよかったですね。
原作コミックでこのキャラは500歳を過ぎている設定のジジイだったのですが、聡明な女性に変えたのもよかったのではないかと。
作中でもツッコまれていましたが、この美貌で56歳というのが信じられませんね。
IMAX3Dで観るのもかなりオススメです。
音はもとより、「視界いっぱいに広がるスクリーン」がこのダイナミックなビジュアルと相性が良すぎでした(もっとも、2Dでも十分楽しめると思います)。
日本語吹き替えの評判もめちゃくちゃ良いようなので、お好みで選びましょう。
マッツ・ミケルセンが「吹き替えは過小評価されているが素晴らしい芸術です」と言ってくれているのも素晴らしいですね。
※以下のアンケートに答えてくださった皆さん、ありがとうございました。
『ドクター・ストレンジ』を観るなら、吹き替え版、字幕版どっち?
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年1月29日
『ドクター・ストレンジ』を観るならどのバージョン?
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) 2017年1月29日
あ、あと「傲慢な外科医が事故って全てを失って、スピリチュアルな体験をして悟りを開こうとする」というプロットそのものが面白いので、幸福の科学の映画もこういう作り方をしたらいいのに思いました(やらなくていいけど)。
恒例のエンドロール後のおまけは2つあるのでお見逃しなく。やっぱりおすすめです!
以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓
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レイチェル・マクアダムスとティルダ・スウィントンの吹き替えが女優さんなのでタレント吹替っちゃタレント吹替ですよ。
どっかのブラックウィドーと違ってとても上手いので、知らなければ全く気にならないですが。
あ、そうか!ご指摘感謝です。修正しておきます。
映像については、インセプションもそうですが、時間が巻き戻って破壊されたビルなどが元に戻るシーンに何か既視感を感じたのですが、年末に観たファンタビでした・・・状況は全然違うんですけどね・・・
今年初めてのマーベル作品ということもあり、観た勢いのままに個人的上半期ベスト候補に挙げてしまいました。
色々なサイト等で「ギャグが滑ってる」という意見が聞かれますが、私が劇場で観た際、細かいギャグシーンでは自分のみならずしっかりと劇場内で笑い声が聞かれており、個人的には「滑ってる」印象は受けませんでした。
ヒナタカさんがTwitterで指摘されてたように、ラストバトルは「ジョジョ」感たっぷりで、第二部のジョナサンが「バイツァ・ダスト」や「マンダム」みたいな闘い方をしているように感じ、ラスボスの心をへし折るような勝ち方はかなりツボでした。
前述の某サイト等にある、ドクターの魔術師としての成長がかなり性急で努力描写がないから重みがない、といった意見には同意ですが、「だってあの人天才外科医だし、そっちの分野でも天才だったんだよきっと。エンシェント・ワンだって”モルドには柔軟性、ドクターには強さが足りない”って言ってたから、ドクターめっちゃ柔軟性あるんだと思う。」と無理矢理まとめました。
おっしゃる通りジョジョっぽいところがあるので、超共感したツイートをのせました。
>だってあの人天才外科医だし、そっちの分野でも天才だったんだよきっと。
モルドに「魔術師の申し子」とか言われていましたしね。
>”モルドには柔軟性、ドクターには強さが足りない”
ああ、これラストで思い切り反映されていますね。
>一言感想:マッツが待ちすぎ
闇に魂を売ったのに紳士ですよね・・・。
>この通称「MCU」で感心するのは、たまに今までのシリーズを観ていなくても楽しめる作品を入れていること。
DCEUも見習ってよ・・・。
>ベネディクト・カンバーバッジとビジュアルがたまらん!
英語読めないので邦訳本蒐集が趣味のハンパアメコミ読者なので、「困った時の不思議先生」「マーベルユニバースの賢者」なストレンジ先生しか知らなかったので、突き抜けたクズっぷりにビックリしました!
・・・でも最近。手に負えなくなったバナー博士を宇宙に放逐してたり、こっそり悪魔を飼ってたり、といった黒歴史が明らかになり、とうとうアガモットの目に三行半付け付けられて至高の魔術師を解任されたりもしましたけども!
>3.マントがかわいい!
なるほど、ディズニージャパンが推す訳だ・・・てこれ、女性よりも子どもにアピールしてよ!?
>正直話運びはちょっと……
冒頭のストレンジ先生の闘病シーンの方が緊張しましたね。
あと事故のシーンは『ワイルドスピード』とかよりもハラハラしました。夜にあのスピードで脇見運転とかヤメテー!
前の席の女の子達が「ひぇ!」「ああ!やっちゃった!」とか小さく悲鳴を上げてました・・・。
>観る人は選びません!
>ほかのキャストでは、主人公の師匠を演じたティルダ・スウィントンもよかったですね。
性別やら人種やら変わってひじょ~に不満でしたが、「仙人様」なオーラが最高でした!おみそれしましたー!!
>原作コミックでこのキャラは500歳を過ぎている設定のジジイだったのですが、
威厳ありまくりな弟子をエンシェントワンだと勘違いしたシーンで劇場が沸きました。
>幸福の科学の映画もこういう作り方をしたらいいのに思いました(やらなくていいけど)。
そんなのもう幸福の科学映画じゃないよ!!(オマエは何を期待してるんだ・・・)
>待つマッツ(野暮な不満点)
>しかもストレンジは銃で撃たれて手術するんだけど、その間もカエシリウスはサンクタムをなかなか壊さないでいましたね。
あの魔法の拘束具を外すのに悪戦苦闘してたのではないでしょうか。
弟子「師匠!失礼します!」
カエシリウス「痛い!そこを引っ張るな!」
な感じで・・・。
>ヤクルト飲みたい
余談ですが、9.11の時日本からヤクルトの輸入が滞った時に「密輸」までされたほど、中国の人はヤクルト大好きらしいですね。
>余談ですが、原作では修行場のカマー・タージはチベットにあったのですが、映画はネパールに変えられていたりします。
ここに激怒してます!チベットはストレンジ先生の他に、あのバットマンやDr.ドゥームを始め数多くのヒーローが修行した。ある意味ヒーローの聖地なんですよ!?
だいたい、いくら報道規制がされてる中国だろうとハリウッド映画やアメコミを愛好する人達なら自国政府がチベットでやってる事なんてとっくに知ってるよ!
>中国のマーケットを失わないための変更なんですね。仕方がないっちゃ仕方がないかな。
あ・・・そうしないと中国のハリウッド・アメコミファンに本作が届かないんですよね。
・・・あ~~!ムカツク!!御上が庶民の娯楽にブサイクな足突っ込んでくんじゃねえ!!
>笑えるシーン
>図書館の番のウォンが、
原作では後にストレンジ先生に弟子入りしていて、もっとスマートな体型の人なんでズッコケました!
>スタン・リーおじいちゃんは、
御壮健で何よりです。とても90超えに見えねえ・・・。この人こそ仙人様だよ!?
>時計が示すもの
>少しだけ(不自由なままの)指を動かしました。
原作ではこの後「精神科医」転向したんですよね。
>It’s not about you.
>死があるから人生は輝く。この一瞬を少しでも長く味わいたい
モルドは酷くガッカリしてましたけど、見苦しく生に執着していたのではなく次代の至高の魔術師を探して任命するまで死ねなかったのだと思います。
>エンドロール途中にあの人が登場
「アガモットの目」がインフィニティストーンの5番目になっていましたね。インフィニティガントレットがどれだけチートアイテムになるか今から戦々恐々です。
原作では結局力づくでは奪えず。本作みたいに絡めてで攻略しましたし。
>エンドロール後に新たな悪役が……
私がこの人を始めて見たのは『アニメ版スパイダーマン』でしたが、劇中の彼はなんとドルマムゥの弟子となっていました!映画の彼は嫌悪していた相手を信望するようになってしまうのか気になります。
ちなみに原作の彼は白人男性です。
ところで・・・名伏し難きあの方の出番は無しデシュか!?
>>しかもストレンジは銃で撃たれて手術するんだけど、その間もカエシリウスはサンクタムをなかなか壊さないでいましたね。
>あの魔法の拘束具を外すのに悪戦苦闘してたのではないでしょうか。
>弟子「師匠!失礼します!」
>カエシリウス「痛い!そこを引っ張るな!」
>な感じで・・・。
あ!その通りですね。その会話萌えるw追記させてください。
>>余談ですが、原作では修行場のカマー・タージはチベットにあったのですが、映画はネパールに変えられていたりします。
>ここに激怒してます!チベットはストレンジ先生の他に、あのバットマンやDr.ドゥームを始め数多くのヒーローが修行した。ある意味ヒーローの聖地なんですよ!?
やっぱりそこは・・・『沈黙』みたいに撮影場所だけ変えることはできなかったのかなあと。
>私がこの人を始めて見たのは『アニメ版スパイダーマン』でしたが、劇中の彼はなんとドルマムゥの弟子となっていました!
なんと……
>いろいろとザコ敵と戦った後、カエシリウス(マッツ・ミケルセン)が
>なぜかまだロビーにいるのには笑いました。
あれはずっとロビーにいたわけじゃなくて、マッツが例の拘束具(?)を解除した後、一旦引き揚げて仲間を連れてまた戻って来たんじゃないでしょうか?新しい敵が増えてるし。
>しかもストレンジは銃で撃たれて手術するんだけど
銃じゃなくて、敵が手から「氷の槍」みたいなものを出してましたよね?それが胸に刺さったんですよ(そもそも魔法が使えるんだから、銃なんて使う必要がない)。
>実際に殺していたのは敵の頭を何度も打ち付けていたマントでした。
マントが頭を打ち付けている時点では、敵はまだ生きてましたよ。その後、敵の魂が体を抜けて手術中に襲って来て、ストレンジもアストラル体になって応戦し、最終的に相手の魂を消滅させたことによって死んだのです。だから、「実際に殺したのはストレンジ」ということになりますね。
ご指摘ありがとうございます!
全くその通りでした・・・アストラル体の敵をストレンジが倒していましたものね。すべて追記、修正させてください。
ツッコミどころには概ね同意です。
まぁ悪役が待ってくれるのはヒーローモノのお約束かな。
そういえばストレンジがアベンジャーズ入りするならアベンジャーズはシャーロック・ホームズが2人いることになるんですね。
観てきました。
冒頭で見下していた同僚の医師に後半で師匠の手術を任せた場面で、ストレンジの人間的な成長が描けていたと思います。
魔法の修行は読書だけで基礎が出来たりと、わりとザックリしてましたが。
アベンジャーズエンドゲームに向けて見直していてこの記事を見ました。
手術中腕時計がうるさいと言ったのは自分のリズムが狂うというか繊細な部分からではないでしょうか…?
前の手術では音楽を流しのっていたし家にはピアノがあったり耳やリズムには敏感な物があるのかと思ってました。
少し気になってコメントさせていただきましたが楽しく拝見させていただきました
今になってですみません!追記させてください!