
『ディストラクション・ベイビーズ』ナチュラル・ボーンなクズたち(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『ディストラクション・ベイビーズ』です。
個人的お気に入り度:7/10
一言感想:何なのこの人たち・・・
あらすじ
いつもケンカばかりしている泰良(柳楽優弥)は、突然港町から姿を消し、松山の中心街に向かう。
強そうな相手を見つけてはケンカを売る泰良を見た高校生の裕也(菅田将暉)は、ともにに無差別に通行人に暴行を加え、さらに車を強奪する。
ふたりは車に乗りあわせていた少女・那奈(小松奈々)も巻き込み、松山市外へと向かうのだが…・・・。
本作を説明する前に、これだけは言っておかねばなりますまい。間違いなく好き嫌いのわかれる映画だと。
なぜ好き嫌いがわかれるって?それは
(1)主人公(柳楽優弥)が狂気に満ちたクズ
(2)サブ主人公(菅田将暉)が三下っぽさ丸出しのクズ
(3)ヒロイン(小松奈々)がやんわりとクズ
(4)暴力シーンが満載(R15+)
(5)ていうかストーリーのだいたいが人を殴ったりしまくるだけ
っていう凄まじい特徴のある映画だからだよ!
※ちなみに主演の柳楽優弥自身も「好き嫌いがあると思う」とインタビューで答えています。
旬の若手俳優がキャスティングされているのだから、若い女性も観にいったと思うのですよ。
で、菅田将暉ファンが映画を観てみれば「スダきゅんがどうしようもない暴力的なヤなやつになっちゃっていたよ〜こんなスダきゅん観たくなかったよ〜(><)」と思ったんじゃないでしょうかね(偏見)(ちなみに菅田将暉が犬っぽいがさつなキャラなのは『そこのみにて光輝く』ですでに通った道です)
で、柳楽優弥は狂気に満ちたクズなわけですが、その背景はほぼ説明されません。
なんでそもそも街に出てボコるねんといった疑問は最後まで晴れません。
はっきり言えば、彼は主人公のクセに1ミクロンも共感できないんですよ!
主人公は理由なしに強そうな人をボコリまくり、反対にボコボコにされても異常な回復力を見せて復活する。
息を吸うように犯罪(万引き)をする。
さらには、同行する高校生にも、恐ろしい「ある一言」を告げる・・・
もはや主人公は人間じゃねえレベルなんですよね。
例えるなら、この主人公は『ノーカントリー』の殺し屋シガーのような、「もはや人知を超えたひたすらに危害を加える者」なんですよ。
菅田将暉と柳楽優弥は、普段はイケメンで役者としての情熱も溢れる方ですが、この映画を観た後は本気でお近づきになりたくなくなる。
彼らのクズ演技がガチすぎて、もはや演技に見えないというか、「素」にすら思えてしまいます。
これは、役者のファンこそむしろ必見と言えるのではないでしょうか。
もうなんていうか、こいつらは『ナチュラル・ボーン・キラーズ』ならぬ『ナチュラル・ボーン・クズたち』と呼ばせていただきます。
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※「生まれながらの殺し屋」が人を殺しまくるロードムービー。模倣犯は各地で多発し、損害賠償を求める動きもあった。
なお、小松奈々さんもかなりいい感じの役をもらっていますね。
『ヒーローマニア 生活』の彼女の役は心底不愉快でしたが、今回は妙なベクトルでスガスガしい役を演じていて素敵です。
まあ「豪華キャストによるクズキャラの演技」というだけなら、まだそれほど好き嫌いはわかれないと思うのですが・・・
序盤の30分くらいが似たような「主人公がとりあえずその辺の人をボコりまくるだけ」というのはさすがに面食らいました。
ここで拒否反応を覚える人が多数いるでしょうし、こうした暴力的な描写が好きな自分ですら早くも飽きそうになってしまいました。
でも、この暴力描写、ボコりまくることにも(ラストを思えば)しっかりした意味があります。
本作のタイトルは「Distraction babies(気晴らしの赤子たち)」。
ただ「楽しいから」で暴力を振るう者たちの狂気、その幼児性こそが、本作の魅力なのです。
※タイトルのディストラクションには、Distractionに似た発音のDestruction(破壊)の意味も込められているそうです。
また、ボコるシーンが定点カメラで撮られた、いい意味で躍動感のない画になっているというのもいいですね。
しかも殴ったときの音が「ビシッ」「バシッ」といった作りものの効果音ではなく、「ボチ」「ベチ」という皮膚の感覚が伝わってくるいや~な音なんですよ。
このおかげで、「痛み」が伝わる、リアルな暴力を「垣間見た」感覚がありました。
余談ですが、自分は本作の舞台である愛媛県松山市出身で、高校までの18年間をここで暮らしていました。
本作で出てくる商店街「大街道」は毎週のように行っていた場所だったので、なんとも懐かしくてしかたがなかったですね。
なんで監督は松山市を舞台に映画を撮ったの?といったことや、そのほかの豆知識は以下にも書きました。
<柳楽優弥と菅田将暉が世界を挑発「ディストラクション・ベイビーズ」、地元出身者が豆知識を紹介! | シネマズ by 松竹>
劇中では伊予弁がたっぷりと使われていましたが、ほぼ違和感なく役者たちが使っていたのも素晴らしかったですね(ちょっと極端に方言を使いすぎている感はあったけど)。
あと、本当に余談中の余談ですが、愛媛県にはみかんだけじゃなく、「じゃこ天」という名産もあります。
これはマジでおいしいから、もっと全国に広まっていいと思うんだけどなー(願望)。
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本作『ディストラクション・ベイビーズ』が気に入った人にオススメしたいのは、前述の『ナチュラル~』、リンク先の記事にも書いた『顔(2000年製作)』、そしてマンガの『ザ・ワールド・イズ・マイン』です。
主人公とその相棒がところかまわず暴力を振るっていくという「狂気」が両者で似ています(しかも『ザ・ワールド~』はもっととんでもないことに・・・)
なお、過去の真利子哲也監督作品において、『イエローキッド』では「殴る」シーンがとにかく多かったり、『NINIFUNI』では寂れた地方都市を舞台にするなど、その作品の性格にはかなり一貫性がみられます。
※有名になる前のももいろクローバー(Z)が出演しています。
こちらも観て、監督のクセや精神性をさらに知ってもよいでしょう。
何度も言うようですが、本当に好き嫌いがわかれる映画です。
coco 映画レビューでは93%という高評価ですが、これはやはり「映画好き」の集まるサイトでの結果なのであって、ただ「役者のファンだから」というだけで観に行くのはけっこう危険です(自分は大好きだけど!)
ストーリー性は少なめ、主人公に感情移入はいっさいできない、(意図的な)不愉快な暴力シーンの連続・・・
そうした作品であると知って、「覚悟」をして観ることをおすすめします。
※合わなかった方の例↓
映画「ディストラクションベイビーズ」感想 解説 次世代俳優の怪演が素晴らしい!けど胸クソ悪い! – モンキー的映画のススメ
以下、結末も含めてネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め。
※2016年12月にこちらの記事も書きました↓
菅田将暉 4つの魅力!『ディストラクション・ベイビーズ』の“極端”なキャラクターも見逃すな! | シネマズ by 松竹
(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

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記事を拝見しました。良かったです。
自分の拙い感想としては、登場人物の衝動だけでも映画は作れるんだなと思いました。良くも悪くも今年度忘れられない作品ではあると思います。
パンフレットにはシナリオの完成稿が掲載されているのですが、そこで秦良は警官に撃たれて生死不明という感じですが、映画では秦良が警官を殺し?て、どこかへと歩き出すという感じに変更されたみたいです。
こちらの方が泰良の得体の知れなさが増してよかったです
見てから数日経つんですが本当に僕好みの理不尽傑作でした(ゲス顔)
この映画もある意味で言えば怪獣映画でしょうね…一人の理不尽な存在の出現で
他の様々なキャラ達が芋蔓式に巻き込まれ…と言う展開。「ノーカントリー」や「ナイトクローラー」もそうですが
見ていて胸糞悪くなりながらも理不尽さが度を越えすぎていて、むしろ気持ちよくなってきちゃいますw
もう初っぱなの商店街のシーンで一気に引き込まれましたねぇ…
宇多丸氏も仰有ってましたが、ずーっとワンカットで背中を見せてクルッと振り向いた時の泰良のあの顔ね…最高!
もうね、人間の形をしたこの世ならざる何かにしか見えませんでしたw
出会ったら最期、遭遇したお前が悪いと言う理不尽の塊のような存在でしたね…
理由もなくただひたすらに暴力に没頭し、やがては他人の所業を見て行ってはいけない領域にまで暴走する…
柳楽優弥氏の実力は今更言うに及びませんが改めて彼の凄さを見せつけてくれた気がしました。
菅田将輝氏も6年前の面影など微塵もないこれ以上無いスネ夫っぷりを見せつけた挙げ句
「弱い犬ほどよく吠える」を体現するかのような破滅ぶり、これも素晴らしい
「ヒーローマニア生活」で随分な貧乏くじを引かされた小松菜奈氏も
彼女の本領と言っていい悪女ぶりが最高でした。
後はSE無しの骨の音だけの暴力描写は余計に痛みが伝わって
劇中で行われてる凄惨なシーンがより痛々しく見えました。
語りたいことが色々ありすぎて頭がグルングルンなんですが
とにかく見てない方は見てください、本当に胸糞悪くなる理不尽の極み大傑作(矛盾してるw)ですんで。
那奈はやんわりとクズっていうか一番根が深いクズだと思いました。