
『紅の豚』は宮崎駿の中年の理想が現れていたという話
金曜ロードショーで放送された『紅の豚』、何度観てもすんばらしい映画ですよねえ。
この機会に以下の記事を書きました(ネタバレ全開注意)↓
『紅の豚』ポルコはなぜ豚になったのか?その疑問を解き明かす5つの事実 | シネマズ by 松竹
(今観ていて気付いたんだけど、「アメリカに行かなきゃならねえのは俺たちの方だよ」はポルコじゃなくお店のおじさんのセリフでしたね、ごめん!)
ここでは、記事に収まらなかったことをちょっと追記します。
『紅の豚』には原作があった!
『紅の豚』には、模型雑誌連載された短編の原作があります。
全3話、15ページが『宮崎駿の雑想ノート』にまとめられていました。
その内容は映画の大筋ほぼそのままなのですが、映画で重要なキャラのジーナが登場しません。
ジーナは、映画製作時に鈴木プロデューサーに「なんでそもそも豚なの?」と問われてから誕生したキャラだそうです。
漫画版ではそもそもポルコが豚であることに誰も疑問を持っていないので、ジーナの説明がなくてもよかったんですね。
また、しょっちゅう漫画のコマの中には「語るにはページが足りない」「戦闘シーンの迫力は想像で補ってほしい」とメタフィクションすぎることが描かれており、宮崎駿の「ちゃんとアニメで描きたいよ!」という想いが伝わる内容となっていました。
この漫画の中のカーチスなんて「もっとコマをでかくしろ!」とか怒ってますからね。
漫画版では、映画にはないポルコのモノローグ、映画版よりもちょっとお調子者のポルコの一面が見られるので、映画が好きな人も一読の価値がありますよ。
また、漫画版のマンマユート団は美少女ばかりを狙うので、ポルコに「あのロリコンどもめ!」と言われていました。
映画版でマンマユート団がスイミングスクールに通う女の子たちをさらう設定にしたのは大正解ですね。団長の「(人質として)みんな連れて行かねーとかわいそーだろーがー!」というセリフ大好きだったもん。
『カリオストロの城』でも「このロリコン伯爵!」というセリフがありましたが、これは宮崎駿の自己批判の精神が現れているんですかね(失礼な発言)
男はみんなバカ、ジーナはお母さんだよね
『紅の豚』はフェミニズムにあふれていることも素晴らしいですよね。
飛行艇を修理するのは女たちだし、マンマユート団の隊長がフィオのことをはやし立てる団員たちに「女がどうした、世界の半分は女だ!」と言うのも大好きです。
何より、ジーナは母性に溢れまくっていて、男たちをたしなめているんですよね。
お店に来た男たちには「戦争ごっこはダメよ」と言ったり、
ハリウッドに誘うおうとするカーチスに「ハリウッドへはぼく一人だけで行きなさいね」と言ったり、
最後にはちゃっかり自分の店に男たちをちゃっかり呼び寄せています(笑)。
こうして「大人の女性に怒られる」ということも、中年だった宮崎駿の願望なのかな、とちょっぴり思いました。ロリコンじゃなかったんだ
中年になってしまったら、怒られるなんてことはなかなかないでしょうから……
劇中の男たちが総じてバカで間抜けで憎めないのも、少年のまま中年になってしまっている自分をたしなめている、ということなのかもしれません。
映画の時代
『ジブリの教科書7 紅の豚』の佐藤和歌子さんのコラムで気付いたのですが、劇中の年代設定は1929年で、それはハリウッドがサイレントからトーキー(声と音あり)へ移行する時期で、チャップリンの『街の灯』の撮影が行われていた時期と重なるんですね。
また、ポルコは白黒のアニメを映画館で観ていましたが、1928年にはミッキーマウス、1930年にはベティ・ブーブが誕生しているので、時期がやはりけっこうぴったりみたいです。
このアニメについてポルコは「ひでえ映画だぜ」と言っていましたが、これは
(1)(ポルコおよび宮崎駿の)名作への「照れ」
(2)飛行艇での戦争を描いていることへの純粋な嫌悪
の2通りの意図が考えられそうですね。
宮崎駿が『紅の豚』の戦闘シーンばかりがピックアップされた予告編を観て激怒したのは、有名な話ですから(宮崎駿は戦闘シーン以外のところを観て欲しいと思っていた)。
謎なのは、カーチスが主演している映画『Triple Love』のポスターですね。
そのビジュアルは、ラブストーリーなのか、西部劇なのか、恐竜ものなのか、よくわかりません(笑)。まあ後々のハリウッド大作を示唆していると納得しよう。
『となりのトトロ』のサツキの性格について
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