『誓いの休暇』心優しい少年兵の旅路(ネタバレなし感想+お気に入りシーン)

『誓いの休暇』心優しい少年兵の旅路(ネタバレなし感想+お気に入りシーン)

皆様は「風立ちぬ」は劇場でご覧になりましたでしょうか。
興行成績は100億円を突破、8週連続で1位を記録した上に、公開から12週目の現在も5位に居座るという大記録を打ち立てています。
劇場関係者によると少なくとも10月中は上映を続けており、11月23日公開の「かぐや姫の物語」の上映と「被る」こともありうるのだとか。

宮崎駿の引退会見の効果があるとはいえ、ここまで多くの日本人が観ているとはすごいものです。日本人ならもっと「パシフィック・リム」を観ろよ
ともかく、ここまで人の心を惹きつける宮崎駿の作品は、並大抵の努力とイマジネーションでつくることができるものではありません。

本日はそんな宮崎駿監督が大好きな映画にして、多大な影響を受けたとされる傑作映画「誓いの休暇(1959)」をご紹介します。

個人的お気に入り度:9/10

一言感想:極上のロードムービーにして、反戦映画

あらすじ


19歳の少年兵アリョーシャ(ウラジミール・イワショフ)は戦場で手柄をたてたことにより、上官から6日間の休暇を与えられる。
列車を乗り継ぎ、様々な人と出会いながらも母のいる故郷を目指すアリョーシャだったが、休暇の日数は残りわずかとなっていき・・・


1959年に制作されたロシア(旧ソ連)映画です。

作品の内容はシンプルです。
手柄をたてた19歳の少年兵が最愛の母の待つ故郷を目指し、その道中で様々な人で出会い、様々なことを経験する・・・たった、それだけです。
それだけなのに、ここまで人の心を動かし、支持を得ている映画も少ないでしょう。
その素晴らしさはみんなのシネマレビューのランキングで歴代第3位という記録が証明しています。

本作はスタンダードなロードムービーですが、痛烈な反戦映画でもあります
主人公のアリョーシャは、ただ母のいる地に赴きたい。
そして母は、戦争のために二度と会えなくなってしまうかもしれない息子のアリョーシャに会いたい。

そんな息子と母の想いを打ち砕くのが、残酷な戦争という出来事なのです。
母がいる人、息子を持つ親にとっては、とても心が痛くなる現実です。
心優しい少年兵アリョーシャが人々と触れ合うハートフルなストーリーが紡がれる中で、少しずつ「戦争の残酷性」が顔を出すのです。

宮崎駿監督も、この反戦の描写に想うところがあったのだと思います。
「風立ちぬ」で美しいゼロ戦をつくった男のことを描くも、醜い戦争を直接的に描かなかったのは、宮崎駿の反戦の精神が反映されたことにほかならないのですから。

道中で出会う美少女との切ない交流、人間の良いところも醜いところも描く多様性、反戦のメッセージ、母と子の愛情―
それらが互いに邪魔をすることなく、人間ドラマとして格調高く仕上がっています。
まさに隠れた名作と言えるのではないでしょうか。

最大の欠点は、本作を観ることが自体が難しいことです。
TSUTAYAをはじめほとんどのレンタルビデオ店には置いていません。
セル版は現在中古でしか手に入りません。
過去にBSで放送されたこともありますが、最近は全く音沙汰がない状態です。
おそらくレンタル店よりも、近くの図書館で探したほうが遭遇率が高いでしょう。

ここまでの名作が、簡単に観ることができないのは悲しいことです。
早めのDVDの再販を希望します。

また前評判で期待過ぎると、ちょっと肩透かしに感じるかもしれません。
「震えるほどの感動」といった印象ではなく、観終わったあとに「ああ、いい映画を観たなあ」と多幸感を感じられる、ゆったりしたテンポの、とても「静か」な映画でした。
ともかく、「宮崎駿が好きな映画」というきっかけでもなんでもよいので、近くの図書館で在庫を探してでも観てみることをおすすめします。

余談ですが、日本のバンドグループ「スピッツ」が曲の間奏に本作の音声を使ったことがあるそうです。
<甘い手(amaite) ー スピッツ(Spitz) – YouTube>
「誓いの休暇」は時を超え、日本の著名な音楽家にまで影響を与えているのですね。

↓以下は少しだけ内容がネタバレしています 予備知識なく観たい方は要注意

息子を見送る母の物語

この映画は、戦地に旅立った息子・アリョーシャを待つ母親の姿をみせるところからはじまります。
母親が見ているのは「村を出ていく者」「村から帰る者」であれば誰もが通る道です。

しかし、ナレーションでは「もう二度と息子が帰ってこないこと」が告げられます。
戻ってくることのない息子を待ち続ける母親という「悲劇」をはじめに描いている本作はこの上なく残酷です。

妻の幸せを願う男の物語

優しいアリョーシャは、片足を失い、軍隊を除隊した男の荷物を持ってあげます。
その男は故郷で待つ妻の幸せを願うばかりに、列車にわざと乗り遅れて二度と妻と会わないことを望んでいました。

結局男は電車に乗りましたが、まだ考え込んだままでした。居合わせた老人からは「私の娘は嫁いだとたんに死んだよ」と告げられます。
その言葉を聞いた彼は駅に降りたつのですが……その顛末は是非本編を観てみてください。

少女・シューラの物語

アリョーシャは見張りの歩兵に肉の缶詰というわいろを掴ませ、列車の荷台(わらの中)に身を隠します。
これは「魔女の宅急便」の1シーン、「主人公のキキが列車のわらの中で眠る」シーンにもそっくりでした。

そのわらのそばに、美少女のシューラが突然現れます。
彼女ははじめはアリョーシャをつっぱねますが、次第に心を交わしていくようになります。

故郷に婚約者がいるというシューラは、「若い男女の友情ってあると思う?」とアリョーシャに訊きます。
アリョーシャとシューラの関係は「故郷」に帰れば終わってしまう一時的なもの、まさに一時だけの友情のようなものです。
シューラとアリョーシャは友情以上のものをお互いに感じているのですが、その恋が叶うことはないのです。

素晴らしい寄り道

さらにアリョーシャは多くの出来事、そして人々に出会います。
いいことばかりの旅路ではありませんでした。
しかし、心優しいアリョーシャのかけがえのない「寄り道」でもありました。

映画の初めに「もうアリョーシャは戻ってこない」ことを告げられているため、この旅路が終わらない、目的地までたどり着かない……と観る人は思っているでしょう。
しかし、その予想とは違う結末を、この映画は用意しています。

母親の想いを感じられるその旅路の果てを、是非観てほしいです。

参考↓
「誓いの休暇」ソビエト映画 | 真理を求めて – 楽天ブログ

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著者

ヒナタカ

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