『バーニング・オーシャン』実話ものの意義(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

『バーニング・オーシャン』実話ものの意義(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はバーニング・オーシャン(原題:Deepwater Horizon)です。

個人的お気に入り度:8/10

一言感想:究極の「パニックもの」であり「お仕事映画」

あらすじ

石油採掘所がヤバいことになったので逃げます。

本作は簡単に言えば「パニックもの」、石油採掘所で事故が起こったから逃げろ!というド・シンプルな作品です。
しかも『オデッセイ』のような「火星に取り残されちゃったから芋を作る」という変化球ではなく、部下を信頼する熱き心を持った主人公が「妻と娘のために俺は絶対に生きる!」という感じの、良い意味でベタい内容なのです。

そのシンプルかつ王道な作品ながら、『ハドソン川の奇跡』を彷彿とさせるプロフェッショナルたちにより「お仕事映画」でもありました。
石油採掘所の仕事はとことんリアルに描かれることはもちろん、「寡黙だが頼りになる同僚」がいるというのもいいですね(しかも演じているのはカート・ラッセル)。


繰り返しますが、本作は「パニックもの(災害映画)」であり、「お仕事映画」。この2点だけを踏まえて劇場に行けばそれだけでOKなのです。

超リアル志向です

その他で特筆すべき特徴は、以下となっております。

  1. 災害シーンのクオリティがめちゃくちゃ高い!
  2. マジで主人公たちが「命を第一優先」に考えている!
  3. 利益優先の部外者にあれこれ言われてしまう「サラリーマンあるある」満載!

なんていうか、同じ日に公開された特大ヒット作『美女と野獣』と1ミリもカブらないことが素晴らしいですよね。
方や楽しいミュージカルや夢がいっぱいのファンタジー、方やおじさんたちが大事故のせいで死にそうな目に合う「実話もの」なのですから。

あ、そうそう、本作の監督は熱狂的なファンを生み出している『バトルシップ』のピーター・バーグですが、残念ながら(?)バカ映画っぽさやツッコミどころはほぼ皆無です。なんだよ!ちゃんとしてんじゃん!(※『ローン・サバイバー』などでもちゃんとしています)。
『バトルシップ』っぽい映画をご所望であれば、『グレートウォール』を観ましょう。

マジで巨大セット作りました

本作の何がすごいって、映画史上最大級とも言える超巨大セットを本気で作り、器具も本物で、燃え盛る炎も本物と、映画『マッハ!』並の「CGを使いません!」な気概に溢れていることです(実際は少し使っているだろうけど)。

「1テイクごとに19〜23リ立方メートルの泥水を使った」とか……もうその妥協のなさは恐れ入ります。

そうそう、本作は第89回アカデミー賞にて、視覚効果賞、音響編集賞にノミネートされた作品です。
受賞は逃しましたが、マジで音響はヤバいことになっている(※語彙力の低い表現)ので、なるべく設備の良い映画館で観ることをおすすめします。

いのちをだいじに

自分は「緊急時のはずなのにベラベラ喋って死ぬ人を看取る」という展開が好きではありません(作品の名誉のためにどれだとは言いませんが、『海なんとか』とか、『真田何とか』とか……)。

ところが、本作の登場人物はそんなことをせず、マジで脱出重視!
当たり前のことなんだけど、決して興ざめをさせない、リアリティを重視した作品の姿勢に感動しました。

サラリーマンあるある

本作の批判意見には「事故が起こるまでの序盤が退屈」というものが多かったのですが、個人的にはそうは思いませんでした。

その理由の1つが、観客が「事故が必ず起こる」という事実を知っているため、「いつそれが来るのか」という緊張感を持つことができること。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でも思ったのですが、「登場人物が知らない未来を観客だけが知っている」というのは、それだけで作品の面白さ、テーマを奥深くすることにに一役買っているのですね。

序盤が退屈だと思わなかったもう1つの理由が、利益を優先して仕事の納期を早めようとする嫌〜な「部外者」が出て来ること。
しかもこいつ、ただ間違っているというわけではなく、理路整然とした主張をするので反論しにくいんだわ!「ムカつくけど納得せざるを得ない」という状況になるんだよ!
この部外者を演じたジョン・マルコヴィッチがまあムカつくムカつく(※褒めています)。理不尽な経験に直面したサラリーマンであるほど、主人公たちに感情移入できることでしょう。

また、マーク・ウォールバーグが『ハプニング』のときのような「頼りになる男」にハマっているのがうれしいですね。
6月9日にはまたマーク主演の『パトリオット・デイ』が公開されますし、こうした役をこれからもどんどん演じて欲しいところです。

用語は理解できなくても大丈夫?

本作の批判意見には「専門用語が多い」というのもありましたが、個人的にはだいたいで「なるほど、よくわからんけどプロフェッショナルなことをやっているんだな」という雰囲気で見られたので、これもそれほど欠点だとは思いません。
序盤に、主人公の娘が「コーラの缶とストロー」を使って、お父さんの仕事をわかりやすく教えてくれますしね。

観る前に、以下の用語を把握しておくといいのかもしれませんね(※文は公式ページより)

  • 掘削(くっさく)リグ……石油や天然ガスを探したり、採取するために地球に穴を開ける装置
  • 坑井(こうせい)……石油や天然ガスを探したり、採取するために地球に開けられた穴

位置関係がわかりにくい欠点も

本作の明確な欠点であると感じるのは、「主人公たち登場人物がどこにいるのかわがかりにくい」という、位置関係の描写不足があること。
俯瞰した画などで、実際に採掘をしている石油リグと、救助要請をしていた場所が離れていることくらいは、それとなく示してほしかったですね。

実話ものとしての意義

本作は実在の2010年メキシコ湾原油流出事故を描いています。
各シーンは生存者への克明なインタビューに基づいて製作されており、「石油掘削作業員がどういう気持で日々の業務をこなしているか」、「また災害が起こったときにはどのように行動するか」という描写がリアルであることが、本作の一番の美点でしょう。

何より、作品からは「2度とこのような最悪の人災を起こしてはならない」という気概が伝わってきます。
これは災害が多い日本人こそが、観るべき内容とも言えるでしょう。

ちなみに、この事故はニコラス・ケイジ主演の『コンテンダー』という映画でも、「関わった政治家がスキャンダルによって失脚して追い詰められる」物語として描かれています。
自分はこちらは未見でしたが、IMDbで4.6点という低評価で、なんか色々と察しました。

ともかく、本作は「災害映画をとことん実直にただただ最高の素材と最高の技術で作り上げた!」というド直球な作品です。
こうして革新的なだけでなく、ジャンル映画の究極かつ理想形とも言える映画が誕生するのは嬉しいですね。
本気で「痛そう」なシーンもありますが、それも作品に必要なものです。
残念がら興行成績は芳しくないようなので、お早めに映画館に。オススメします。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓ 今回は短め

下っ端ではない

序盤に娘が、部下に当たる作業員を「下っ端」と呼び、主人公が「下っ端じゃないよ」と反論するシーンがありました。
主人公は実際にその作業員たちに上下関係がないような呼びかけをしていて、事故が発生した後で若い作業員が「学校では優秀だったんです!」と主張し、窮地を救ってくれるのがうれしかったですね。
ラストのテロップもそうですが、石油採掘所で働いていた尊い人たちを、同等に扱う作品の姿勢が大好きでした。

炎の中でアメリカ国旗が……

炎の中でアメリカ国旗が見える、というシーンは賛否がありそうですね。
個人的には、「(海の上だからわかりにくいが)これはアメリカという国で起こった人災だ」ということを示す程度のことだと思うので、それほど嫌な印象はありません。

車の色は?

主人公が、女性のジーナに「車の色はなんだ?」などどうでも良い(だが生還したら重要なこと)会話をして、油断させてから彼女を海に突き落とすシーンには感動した!
燃え盛る海に飛び込むという「一か八かの決断」をするにはこれしかない、というもので。「その責任を負う」という主人公の覚悟も伝わりました。

事故で亡くなった者たち

事故から生還した後……、必死に息子や娘の生存を確認しようとする「家族」の姿が、そこにはありました。
エンドロールの前、実際に亡くなった作業員たちは、名前と写真つきで紹介されました。

2億1000ガロンの油の流出、11人が死亡と、テロップでは「史上最悪の石油事故」であることが強調されていました。
しかも、それは1人の独善的な指示により起こった「人災」でもあるんですよね。仕事における「安全管理」を、今一度見直したくなる作品でした。

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ヒナタカ

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