映画『ボーダーライン』この地獄でダークヒーローになれるのか(ネタバレなし感想)

映画『ボーダーライン』この地獄でダークヒーローになれるのか(ネタバレなし感想)

今日の映画感想はボーダーライン(原題:SICARIO)です。

個人的お気に入り度:8/10

一言感想:麻薬と汚職にまみれた地獄にようこそ

あらすじ

優秀なFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコ麻薬カルテルの壊滅を目的とした極秘任務に赴く。
ケイトは特別捜査官のマット(ジョシュ・ブローリン)と謎めいたコロンビア人のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)とともに国境付近の捜査を開始するが、そこでおぞましい光景を目の当たりにする。

プリズナーズ』『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督最新作です。

本作についてはこちらにだいたい書いたのでぜひお読みください↓
<『ボーダーライン』を“麻薬カルテルもの”初心者にこそオススメしたい10の理由 | シネマズ by 松竹>

麻薬カルテルものの初心者にオススと書いていますが、それはあくまでも「無知なFBI捜査官が麻薬カルテル捜査に参加する」という物語が感情移入しやすく、小難しさがなく、予備知識を必要としないといったことのためです。

実際の映画の内容は、R15+指定納得の残虐さです。
何も知らないで観ると相当に心がえぐられる内容となっていますので、気合を入れて観ましょう。

あと「音楽と撮影がすごい!」ということも訴えたいので、以下を視聴しておくといいかもしれません。


※若干ネタバレ注意?

このズゥゥゥゥゥゥゥゥンという音が、作中で「イヤァァァァァァァ!」と叫びたくなるとシンクロしているんですからもうたまらんです。

家族、そしてダークヒーローの物語

作中に“家族”という要素があることもミソになっています。
劇中では、メキシコに住む平凡な家族の描写が挟まれるのですが、これも大きな意味を持つようになっているのです(じつは家族の描写はこのほかにも……)。

さらに、本作はダークヒーローものであるとも解釈できます。
ダークヒーローとは、正義に対して独特の思想を持っていたり、憎まれ役になることを厭わなかったり、世間的には悪行と認識されることを遂行してこそ正義を成す者のことです。

それは、麻薬カルテルに属して、むごたらしい殺人を犯している者も同じです。
“正義”か“悪”かを決めるのは、当事者の主観にすぎない、ということも思い知らされます。

なお、物語はわかりやすいとは書きましたが、実際は“意味不明の言動や行動で煙に巻く”という要素もあります。
主人公がガラス越しに捜査官メンバーを見るシーンから頭に「?」が出てくるでしょうが、後になると意味があると気付けるので、よく覚えておくといいでしょう。

開始5分が地獄ですが、中盤も、終盤も違ったかたちの地獄に招待されます
とくにラスト付近の、あの“闇にたたずむ姿”のショット。もうトラウマものです。

ゾッとするセリフはいろいろありますが、個人的には「◯◯◯◯を見たら敵と思え」がキツかったですね…。
この言葉だけで、メキシコの街がいかに麻薬と汚職にまみれているかがわかります。

公式には『ゼロ・ダーク・サーティ』『アメリカン・スナイパー』と比較をされていますが、(いい意味での)精神的なキツさはそれらを上回っていました。
とはいえ、上映時間は2時間1分と長くはないので、それほど疲労感なく観ることはできるでしょう。

ガツンと来る重圧な作品を求める方に、ぜひおすすめします。


※“開始5分の地獄”の一部がみられます(若干ネタバレ注意)。

おすすめ↓
[330]ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作『ボーダーライン』におけるヨハン・ヨハンソン作曲の音楽 – IndieTokyo
映画『ボーダーライン』特集 – coco映画
ボーダーライン : 映画評論・批評 – 映画.com

publicShare

theatersタグ

chat_bubbleコメント

  1. 毒親育ち より:

    私の一言感想:『ゴッドファーザー』でのお父さんの懸念が預言になってちまってるじゃねーか!
    >さらに、本作はダークヒーローものであるとも解釈できます。
    純粋正義漢のケイトが清濁を併せ呑む事を学ぶお話かと思ったら、アレハンドロが主人公で悪を持って悪を制す!でした。
    最終的に都合良く黙る事を選んだケイトも責められないし、アレハンドロも悪党かもしれませんが、凶悪に命懸けで立ち向かっている人達が実在する事も事実。モヤモヤで頭破裂しそうですッ!!
    >何も知らないで観ると相当に心がえぐられる内容となっていますので、気合を入れて観ましょう。
    知ってる方だと自惚れていたと思い知らされました。
    (『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』に現実逃避したい・・・てか、マダクエルヨバカの市長さんは故郷を都市部のあんな惨状にしたくないからこそ頑張ってる人なんでしょうね)
    >開始5分が地獄ですが、中盤も、終盤も違ったかたちの地獄に招待されます。
    “あの家”で普通に暮らせる神経が信じられません。てか、なんであんな隠し方してんだよ・・・!?捜査官への嫌がらせか!?
    近代的な都市の中で西部劇も真っ青の吊るし首とかも・・・。
    恐ろしくも悲しいのはこれが「作りお話」ではあるけど、決して「何時か何処かの国」のファンタジーではなく“現実のメキシコという地球の何所か”を描いているのですよね・・・。
    ラストのアレハンドロの行動も「ボス・・・その理屈は通らないよ」と思いながら「子ども達は見逃してあげて!」とも祈ってました(あの子達はパパの本業を知らなかったのでしょうか)とりあえず。家族を標的にしたり、見せしめによる恐怖支配とか止めようよ・・・。
    個人的に麻薬を作る奴も売る奴も嗜む奴も腐れ外道だ!!麻薬なんかの何がキモチイイの?(未経験ですけど、一生未経験でいたいのでお勧め・・・まして「初回無料体験」とかの押し売りはノーサンキューです。犯罪組織の皆様)ですし、あんな寿命を四分の一に縮める毒に数千円も払うくらいなら映画観に行って漫画買って帰りにらーめん食います。なクールジャパンのオタクですが。
    娯楽どころかそれを楽しむ余裕も無し、その余裕を生む学無し、職無し、金無し、とにかくトコトン希望無し!な環境で生まれ育てば一時の快楽にg千円払って寿命を縮める刹那的な生活に陥ってしまうのも仕方無しなのかあ・・・とも思ったり。
    (余談ですが、本来こういう問題に対処するのが仕事なのに。空想という私の救いを取り上げる事で仕事してるフリしてる人達は仕事に戻れ・・・)
    >“正義”か“悪”かを決めるのは、当事者の主観にすぎない、ということも思い知らされます。
    もともとメキシコがこうなってしまったのはケイトみたいに「麻薬絶対許しません!」な正義を政治行政司法が推し進め、マフィア達が必死に生き残ろうとした結果「麻薬戦争」となり、メキシコではマフィアが勝利してしまい。彼らの収まらぬ欲がアメリカにまで及ぼうとしている・・・らしいですしね。
    ※ただし医療大麻の解禁は一日も早く!派です。

  2. いいこま より:

    『ズートピア』の後に観てきましたが、同じ女性警官が主役なのにあちらは希望があってこちらは後味が悪くて「何故立て続けに観てしまったのか」って思ってしまいました。
    >劇中では、メキシコに住む平凡な家族の描写が挟まれるのですが、これも大きな意味を持つようになっているのです
    >>あの父親が後々絡んでくるんだろうなあ、とは思ってましたしある程度想定はしてましたがそれでも割と胸糞だったなあ、と思います。
    願わくはあの息子が父親の死の真相を知ってお礼参りをしないことを祈りますがそれでなくてもラストの描写で嫌な予感が拭えなかったです(もしかしたら父親と同じような運命をたどってしまうのではないかと…)。
    >それは、麻薬カルテルに属して、むごたらしい殺人を犯している者も同じです。
    “正義”か“悪”かを決めるのは、当事者の主観にすぎない、ということも思い知らされます。
    >>アレハンドロに関しては本来的にはアウトどころじゃすまないですが妻が斬首され娘が酸の海に落とされたという過去の持ち主となると「漠然とだけどそうなるのも無理もない気がする」ってなりました。そりゃ毒親育ちさんも仰ってる様に「人の妻子殺しといてそれは虫の好い話だけどそれでも生かしておいてほしかったなあ」と思いますが。
    マフィアに関してもどのような背景にせよ勿論アウトですがパンフレットによれば米墨格差に加え麻薬の最大消費国が米国というのも背景にありますし…結局どちらか一方だけを責めるのもアンフェアだなと。
    >ゾッとするセリフはいろいろありますが、個人的には「◯◯◯◯を見たら敵と思え」がキツかったですね…。
    >>ある意味最近の『暗殺教室』のエピソードを思い出しますがこれが現実でも起こってたんだろうな、と思うと怖いです。
    そこまで腐ってたらもう手立てなんてねえなと。
    >“あの家”で普通に暮らせる神経が信じられません。てか、なんであんな隠し方してんだよ・・・!?捜査官への嫌がらせか!?
    近代的な都市の中で西部劇も真っ青の吊るし首とかも・・・。
    恐ろしくも悲しいのはこれが「作りお話」ではあるけど、決して「何時か何処かの国」のファンタジーではなく“現実のメキシコという地球の何所か”を描いているのですよね・・・。
    >>パンフによれば実際のフアレスにおいては死体が次々出てくるのが日常化して新聞掲載されなくなるほどだったそうなのでそれだけ精神状態が狂ってるからああいう隠し方をしたのかなあ、と推測してみたりします。
    つるし首のシーンも現地住民感情を考慮してダミーの死体ではなくCG処理してるとのことですし要するに現実に日常茶飯事化してたんだろうなあ…。
    あと自分も毒親育ちさんと同様に麻薬は一切ごめんだな、と思いますがある意味日本在住だからそう思うのであってフアレスにいたら作るor嗜むに手を染めるのが自明の理になってたのかも、とも思います。

コメントを残す

* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。
メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。

著者

ヒナタカ

カテゴリ

文字から探す

レビュー点数で探す

extensionその他サイト

あわせて読みたい

この記事を読まれた方によく読まれている記事です。よろしければこちらもご一読下さい。

vertical_align_top