
『暗殺教室〜卒業編〜』取捨選択の失敗?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
今日の映画感想は『暗殺教室〜卒業編〜』です。
個人的お気に入り度:3/10
一言感想:羽住監督の悪いところが出まくっちゃった……
あらすじ
椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ学級・3年E組の担任となった殺せんせーの暗殺期限が迫っていた。
文化祭などで楽しい学校生活を送る中、生徒のひとりが不穏な行動を見せて……。
昨年(2015年)に公開された映画『暗殺教室』の続編であり完結編です。
集英社 (2016-03-04)
売り上げランキング: 119
※4月4日発売の19巻でもまだ完結しないっぽい。
売り上げランキング: 268
前作のレビュー↓
大切なターゲット 映画『暗殺教室』ネタバレなし感想+ネタバレレビュー
本作はけっこうマーケティングがうまいんじゃないかと思います。
なぜなら、前作が「前編であること」を隠していたから。
昨今では『ソロモンの偽証』や『ちはやふる』が、2部作連続公開された影響もあるのか、(高評価にもかかわらず)記録的な大コケをしています。
2部作に分かれているということは、通常の2倍の時間とお金を使わないということであり、それで観るのを躊躇する方も増えてきたのではないでしょうか(自分がそうです)。
5月、6月に連続公開される『64‐ロクヨン‐前編/後編』も大丈夫なのかと、いち映画ファンとしてとても心配になります。
一方で、映画『暗殺教室』にはタイトルにはどこにも「前編」なんて表記はなく、1本だけで完結すると観客を思い込ませました。
しかも、後編の『〜卒業編〜』は、原作マンガが「少年ジャンプ」で完結を迎えた直後という、絶好のタイミングで公開したのです。
まあ、実際の『暗殺教室』の前編では、後編への伏線残しまくり、はっきりと「To Be Continued(続く)」と表示させるなど、どうしても後編が観たくなるすげえ卑怯な方法を取っているのですが。
前後篇の映画が溢れかえっている昨今ですので、この「2部作だと思わせないけど、後編が観たくなる」商法は今後のスタンダードになるのかもしれません(なってほしくないけど)。
前作の良さが……
さてさて、前作で好きだったのは、(1)マンガでしかできないような設定をよく実写映画にした!(2)原作からの取捨選択がうまい!というところでした。
しかし今回は後編なので(1)の要素はすでに消化されています。そして(2)の要素はまったくの期待はずれでした。
何が悪いって、原作のセンチメンタルな部分が過剰にピックアップされていて、それ以外がダイジェストのようにおざなりに描いていることです。
2時間という時間の制約上、ある程度は仕方がないとは思うのですが、それにしたってこれは映画としてのバランスが悪すぎます。
そして『海猿』などの羽住英一郎監督の「感動的なシーンを長ーく描いて、さめざめと悲しい音楽を流す」という悪いところも思いっきり出てしまっています。
前作ではそうした「感動させてやる」シーンは少なめ(コメディシーンが多め)なのであまり気にならなかったのですが、今回はその比重があまりにも大きすぎるのです。
もう羽住監督の「感動させてやる!さあ泣け!」という押し付けがましが出まくっていて、ものすごく退屈であり、まったく受け入れることができなかったのです。
この後編をバランス良く仕上げるには、過去編を思い切って短くするなど、大胆な変更が必要だったのではないでしょうか。
悪役は超よかったよ!
よかったところもあります。
成宮寛貴のチキっている悪役はめっちゃハマっていました。
前作の暴力教師の鷹岡を演じた高嶋政伸も最高だったので、羽住監督はイカれた悪役の演技をさせることにおいては、技量のある方なんじゃないかと思いました。
自分は観ていないですが、『劇場版MOZU』では真木よう子と香川照之の娘以外は奇人変人狂人超人のどれかに該当するらしいですし(笑)。
これらの悪人も「とにかく狂っている」という演技なので、ともすれば下手とも言えるのですけどね。
自分は突き抜けたイカれっぷりが大いに気に入りました。
そんなわけで、羽住監督の「さあ泣け」演出の多さのおかげで、どうあろうが好きになれませんでした。
一方で、物語としてはちゃんと完結している、まとまってはいるので、前作が好きだった方には十分満足ができるのかもしれません。
あとねえ……エンドロールのことに触れるのもどうかと思いますが、もういいや。役者たちの楽しそうな撮影風景をエンドロールに流すのはいい加減やめませんかね。
正直うっとおしく、映画の余韻も台無しです。
また、改めて「このムチャクチャ(褒めている)で破天荒な設定のマンガをよく映画化できたなあ」とは思いました。
殺せんせーのCGは一見チャチですが、よく見ると陰影の表現などがかなり工夫されていますし、端々で実写化の努力が見えます。
現在、実写映画版『テラフォーマーズ』が予告の時点で大炎上、『鋼の錬金術師』実写化の報道に不満の声が相次いでいますが、実際の映画を観なければどうなるかはわかりませんよ!
以下、思い切りネタバレです 鑑賞後にご覧ください↓ 少しだけ原作との違いに触れています。まだ単行本化されていないところの違いはぼやかして書いていますが、未読の方はお気をつけください。
(C)2016 フジテレビジョン 集英社 ジェイ・ストーム 東宝 ROBOT (C)松井優征/集英社

publicShare
theatersタグ
movieこちらの記事もおすすめです
今までに書いた映画レビューの中から、この記事を読んでいただいたあなたにおすすめの記事をピックアップしています。
ネタバレ前の感想をまずは読んで下さい。映画を見終わった後、ネタバレを含む解説を読んでいただけると1記事で2度楽しんでいただけるのではないかと思います。
カゲヒナタ映画レビューが少しでもあなたのお役に立てれば幸いです!あなたが良い映画と出会えますように:)
done コメディ
この映画のレビューと同じカテゴリの記事です
done 10点満点の映画
10/10を獲得した映画です。
見たい映画が見つからないときはこちらがおすすめです。
done 9点の映画
9/10を獲得した映画です。
名作ぞろいです!まだ見ていない作品があれば是非!
chat_bubbleコメント
> 超大味クライマックス
どうも監督には『ぼくらの七日間戦争』を作りたかったフシが感じられるんですよね。
「思い切り中学生を轢こうとする」とかいう辺りにそれを感じます。
(他作品のネタバレ注意………『七日間戦争』にはテンション飛んだ校長が、立て籠もっている生徒達に対して「殺せー!」と叫ぶ場面があります。これは原作小説にはありませんが、映画上の展開としては良かったと思っています)
で。
大味ならば大味でも良いとは思うのです。
でも、映画の割にはえらく規模が小さく感じてしまう。
理由は明らかで、物語が仰々しいのに、基本的に舞台が3年E組校舎周辺だけで完結してしまっているから。修学旅行を学園祭に変更した為に、この印象はより強くなったと言えます。
個人的には原作を無視してもいいから、修学旅行先のドタバタ劇にして映画らしくハデな展開にしても良かったように思っています。
京都(でなくてもいいですが…)を舞台に、殺せんせーをめぐっての3年E組と防衛省他機関との攻防。想像するだけでワクワクしません?
あの大味なBvSのシナリオを受け入れた、自分のフォロワーのとある友人ですら
今回の暗殺教室後編に関しては
「えぇ…全体的に無いわーw」というレベルで原作のポイントがおさえられていなかったと
おっしゃっていたのですが、成る程これは確かに酷いですね…w
評判が良ければ観に行こうかなと思っていたのですが
DVDが出るまで先送りにしても問題なさそうですね。。
[…] vs スーパーマン』 感動をゴリ押しする『暗殺教室〜卒業編〜』 どんでん返しに納得がいかなすぎる『ONE PIECE FILM GOLD』 […]
漸くDVD借りて観ました。
まあ、案外嫌いではないです。ないのですが…「嗚呼…時間の制約があるから致しかねないのかもしれないが…そこ端折るなよなあ…(´・ω・`)」感が否めないところがちょいちょい出てしまったのが…。おかげで原作・アニメ版でちゃんと描かれていたメッセージが描かれてなくて駄目じゃんと思ってしまいました。
>昨今では『ソロモンの偽証』や『ちはやふる』が、2部作連続公開された影響もあるのか、(高評価にもかかわらず)記録的な大コケをしています。
2部作に分かれているということは、通常の2倍の時間とお金を使わないということであり、それで観るのを躊躇する方も増えてきたのではないでしょうか(自分がそうです)。
5月、6月に連続公開される『64‐ロクヨン‐前編/後編』も大丈夫なのかと、いち映画ファンとしてとても心配になります。
>>「2部構成でも観るけど負担面的には1部でやってほしいなあ」と思う口としては同感です(ただ、『暗殺教室』の場合3部作にしてもメッセージを伝えきれない可能性がありそうな感もありますが)。
観てない『ちはやふる』は何とも言いかねますが『ソロモンの偽証』は個人的に割と好きなだけに勿体ないところです(まあ、劇場観賞ではないのですが。因みに『64ロクヨン』は2部とも観たものの「前編は許容するにしても後編はテーマが悪くないにしてもあの結末じゃ救われない面子が出るぞ…」と思ったことに加えて後に観たドラマ版と比べると「うーん、構成悪くなってないか」って思っていました)。
>前作の暴力教師の鷹岡を演じた高嶋政伸も最高だったので、羽住監督はイカれた悪役の演技をさせることにおいては、技量のある方なんじゃないかと思いました。
自分は観ていないですが、『劇場版MOZU』では真木よう子と香川照之の娘以外は奇人変人狂人超人のどれかに該当するらしいですし(笑)。
>>『MOZU』に関してはその分ストーリーが雑になってるという意見もあるものの、個人的にはその饗宴を楽しむ塩梅でいた方がいいだろうなあと思ってるぐらいには良くも悪くもぶっ飛んでましたからねえ。
ただ『MOZU』はそれでよくとも『暗殺教室』ではそうも言いきれないものですが、それでも自分も「成宮さんよくやるなあ…」と感心してました(マジで芸能界引退がもったいねえ…)
>今回の映画では、原作から以下のような多数の要素が削除されてしましました。
・2代目死神
・殺せんせーを殺すか助けるかを巡っての、クラス全員のサバイバルゲーム(あるのは渚とカルマの対決のみ、おかげで多くの生徒はモブキャラ化)
・渚にキスされたことを思い出して身悶えるカエデ
・暗殺と並行した受験勉強
>>仕方ないと思いつつも「でもそこをしっかり描いてくれないとメッセージが…」とはやはり思うものです。
2代目死神に関して言えば「やはり柳沢の方に統合されたっぽいなあ。どうなるんだろう」と思いつつ観てましたが、予想通り「師匠に見向きもされなかった弟子の悲劇」の部分がスポイルされてしまったのが物足りなさを感じました。あと、殺せんせーが捕まって実験材料にされるくだりに関しても、2代目死神だったら殺せんせーを嵌めて捕まえさせられるのは納得できるけど、柳沢に変更されてるから「いやあ、柳沢が殺せんせーに敵う気がしないのだが…」感が強く感じられました。
クラス全員のサバイバルゲームもそりゃ最後は渚VSカルマになるけど、アレは生徒全員が刃を交えたからこそ後の結束を強くするのに繋がったのだからそこは端折らない方がよかったかなと思います。
>それは、自律思考固定砲台を演じる橋本環奈が、制服のボタンを外していき、胸に表示されたデーターベースを見せるシーンです。
>>まさかやってくれるとは自分も思ってなかったですw
>胸をはだけさせる橋本環奈といい、これは監督の趣味なんだろうな。
>>案外そんな気がするから困りますが、そうだとしても原作に類似するくだりがあるだけ個人的には違和感はなかったです。
ただ、雪村先生のくだりに関して言えば原作・アニメ版の「(貧乳の妹と対照的に)巨乳」の設定がないので却ってそっちは端折ってよかったかもと思うところはあります(それでもセクシーっちゃセクシーな描写になるので駄目ではありません)。
>クライマックスのテキトーさはちょっとひどいぞ。
>>これに関しては自分も「今撃ったら生徒も喰らうでしょう…」「色仕掛けだけど…ロケット発射のあれならともかく、あの状況で引っかかる馬鹿がいるか!」って思ってました。
宝条に関してもいくらなんでも小者過ぎるなあと思います。役割が原作と異なってたアニメ版でも手古摺る程の強さだったのに。
>成宮寛貴、あっけなく終了
>>2代目死神の方に統合したこともあるので原作の柳沢がどうだったかは自分はこの際無視していましたが、2代目死神の方と照らし合わせてもあっさり過ぎて肩透かしは自分も喰らってました。
生存エンドか死亡エンドかくらいの差ですし、原作通りコミカル含みに描いてもよかった気はするんですけどねえ。
>過去編で死神(殺せんせー)が触手で作った手で雪村先生に触れるシーンがあって本当によかった
>殺せんせーが、柳沢が「弱点」と言った生徒たちのがんばりを肯定するシーンはやはり泣ける
>>あのくだりが端折られなかったのはホントに良かった!
>そういえば、前作では葵わかな演じるオリジナルキャラクターがいたのですが、今回は一瞬たりとも出てきていなかったですね。
>>何処かで出てくるんだろうなあと思ってましたが、いつの間にかすっかり忘れてました。