「スパイダーマン3」と「アメイジング・スパイダーマン2」には“詰め込み”により描かれるテーマがある

「スパイダーマン3」と「アメイジング・スパイダーマン2」には“詰め込み”により描かれるテーマがある

現在公開中の「アメイジング・スパイダーマン2(以下、アメスパ2)」はもうご覧になりましたでしょうか。

個人的には好きな映画なのですが、世間の評価はわりと賛否両論。その理由の多くは「詰め込みすぎて散漫になっている」ということでした。

物語の主軸が多すぎて、とっちらかった印象を感じる方が多いようです。

しかし、自分はこの詰め込みまくりなことにも、意味があるように感じられるのです。

本日は、アメスパ2と同じく詰め込みっぷりが賛否両論を呼んだサム・ライミ版「スパイダーマン3」(制作:2011年)の内容を振り返ってみます。

*2014年5月17日現在、Huluでも視聴可能です。

個人的お気に入り度:6/10

一言感想:感情のコントロールって、難しい

あらすじ

マルコ(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が刑務所から脱獄した。彼はスパイダーマンことピーター(トビー・マグワイア)のおじさんを殺した犯人であった。

マルコは脱獄中、不幸にも事故に巻き込まれ、「サンドマン」というモンスターに変身してしまう。

同じころ、父親をピーターに殺されたと信じたハリー(ジェームズ・フランコ)は、彼に奇襲をしかける。

詰め込んだ7つの要素

本作には以下の物語が詰め込まれています。

  1. ピーターによる、べンおじさんを殺した犯人への復讐
  2. 父親の復讐に燃えるハリーの葛藤
  3. ヒロイン・MJの自立と決意
  4. 新ヒロイン・グウェンの冒険
  5. カメラマン・エディの葛藤
  6. 脱獄囚・マルコの悲哀
  7. 謎の生物・ヴェノムの暗躍

うそみたいだろ……これ1本の映画の中でやっているんだぜ……

こんだけ入れまくっていたら、そりゃ散漫な印象もあるというものです。

でも、これだけの描写を詰め込んでいる理由は、作品のテーマを描きたかったためだからなのではないでしょうか。

そのテーマが何であったのか、以下に記します。

↓以下はスパイダーマン3の内容がかなりネタバレ。アメスパ2のネタバレにふれるところは反転して表示しています。未見の方は読まないほうがいいかもしれません



許すこと

本作のテーマは、「許す」ということ。

それぞれの登場人物は、いろいろなことを許すことができず、不幸になっていきました。

人物ごとに書いてみます。

①グウェン

メインヒロイン・MJは、恋人のピーターが公衆の面前で、スパイダーマンとして一般人にキスをするのをまざまざと見てしまいます

群衆の前でキス

<1作目でMJにもした“逆さキス”

このキスの相手はグウェン。アメイジングスパイダーマンではメインヒロインに抜擢されたグウェンですが、今作ではスパイダーマンことピーターの浮気相手という不遇な役柄でした。

なんとグウェンは、(ハリーの策略で)ピーターをフったMJの“当てつけ”に使われてしまいます。

どやっ?

<わざわざMJが働くお店に行って見事なダンスを披露

嫌がらせ?

<嫌がらせをしたの?

グウェンは、あまりに勝手なピーターを許すことができませんでした(当たり前だ)。

②エディ

エディは若いカメラマン。スパイダーマンに向かって「ピーター?あいつは素人だよ」と言っちゃう、わりとチャラ目な男でした。

エディはスパイダーマンをパパラッチしながらも、スパイダーマンを好きではない様子。なぜなら、恋人にしたい相手であるグウェンが、スパイダーマンに助けられて惚れ込んでいるからです。

エディはグウェンに「またあの熱い夜を過ごそうぜ!」と強気なのですが、こう返されます。

コーヒー飲んだだけだし……

「あなたとはコーヒーを飲んだだけよ」とー

エディは、堂々とグウェンの父に「娘さんとおつきあいさせていただいています」と言っていたのに……

エディは、ヴェノムに取り込まれて黒いスーツを身につけたスパイダーマンに偶然出会いますが、カメラを壊されてしまいます。

彼がやったのは写真のねつ造。当然ピーターにはその写真がニセモノであることがわかります。

ピーターはねつ造を暴露し、エディを失職に追い込むのでした。

失いそうに

<もはや悪役にしか見えない主人公

信用も職も失ったエディは、神にすがり「ピーター・パーカーに死を」とまでつぶやきます。

殺したい

エディはヴェノムに取り込まれ、スパイダーマンを殺すという共通の目的のためにサンドマンと手を組みます。

殺したいエディー

エディは、自分からすべてを奪ったピーターを許すことができませんでした(これは自業自得)。

③ハリー

ハリーは、ピーターことスパイダーマンが父のリチャードを殺したと思い込んでいました。

一時は記憶喪失になっていましたが、そのことを思い出したハリーはピーターを貶めるため、MJを脅してピーターをフらせます。

好きな人が

<結婚指輪まで用意したのにこう言われるなんて……

しかもハリーは、自分が新しい恋人相手だとカミングアウト、ピーターを怒らせようとします。

慰めてやったのさ

<この顔はムカつく……

けっきょくハリーは返り討ちにあい、顔の半分に一生消えることのないやけどを負ってしまいます。

ハリーは、父の敵であるピーターを許すことができませんでした。

④マルコの妻

マルコの妻は、自分と娘が貧乏暮らしになっていることで、脱獄してきた夫を責めていました。

マルコはこう口にします。

運が悪かった

「俺は悪い人間じゃない、運が悪かっただけだ」とー

人は悪い者が悪事をするからでこそ、誰かが恨みを持つものだと思いがちです。

しかし、中には悪意を持たずに、やむを得ず人を不幸にさせてしまう人間もいます。

マルコの妻は、自分を不幸にした夫を許すことができませんでした。

⑤ピーター(スパイダーマン)

ここまで主人公とは思えないほどに恨みを買いまくっているピーターですが、彼にも恨みを持つ相手がいました。

それは、ベンおじさんを殺した相手であるマルコです。

ピーターはサンドマンとなったマルコを打ち倒したとき、こう言います。

せいせいスパイダー

<心も黒い

「せいせいした」と。

ヒーローであるスパイダーマンが、相手を許せなかったがために、半ば人殺しのような行為さえもしてしまうのです。

MJと破局した(うまくいっていない)ことを知らされたメイおばさんは、ピーターにこう諭します。

いちばん難しいこと

「いちばん難しいことからはじめなさい。自分をまず許すのよ」とー

ピーターは自身の復讐心に囚われ、まわりの人々を不幸にしてきました。

“自分”という最大の敵に打ち勝つためには、まず自分の過ちを認め、許すことからはじめるべきなのでしょう。

許すというテーマ

そしてー

ピーターは、最期にマルコを許すことができました。

ハリーも、誤解が解けたためにピーターに協力することができした。

しかし、最後までピーターを許せなかったエディは身を滅ぼしてしまいます。

本作は、そんな「許す」という行為を多角的に描きたいがために詰め込んだ内容になったのだと思います。

上にあげた登場人物は、「許す」という行為ができなかったために、不幸になった人ばかり。相手を許すことができないがために、不幸は別の者に飛び火してしまい、さらに恨みを買う人が出てくるという負の連鎖に陥っていたのです。

どこかで「許す」という行為があれば、その連鎖を断ち切れるかもしれないー

こうして見ると、そのテーマは一貫しているのです。

ただひとつの事例を描くだけでなく、様々なかたちでテーマを提示するというのは、本作の優れている点なのではないでしょうか。

アメスパ2でも、多くのエピソードを詰め込みながらも、テーマが一貫していることは同じ。

こちらでは「必要とされる」というテーマを角的に描いています。

アメスパ2作中屈指の名シーンである<ネタバレ反転>「ハリーがエレクトロに『きみが必要なんだ!」と訴える」は、この多重構造のドラマがなければあり得なかったものでしょう。

ツッコミどころ

残念ながら、スパイダーマン3はそれ以外の難点もあります。

まず、今回のピーターの行為はいくらなんでもゲスすぎ。ヒロインに婚約を決意しながらも公衆の面前で違う女性キスをしているとか、アメスパ2の優柔不断な主人公のムカツキを超えていたよ。

でも、スパイダーマンファンの子どもがキスを見て「オエッ」って言うのはよかったですけどね……

子どもおえ

<観客の気持ちを代弁

あと、マルコがサンドマンがつくられてしまった装置に入ったとき、研究員たちが「何か入りました」「どうせ鳥だろう」とかのん気しているのはおかしいだろ。

また、かなーり終盤になってからハリーの執事が「お父上は自分で自分を刺していたんです」とカミングアウトするのはちょっと……。

どれだけの人が「早く言えよ!」とツッコミを入れたことでしょうか。

自分で刺しました

<ちゃんと言ってれば誤解が解けたのに

一応「名誉のため」とは言い訳していますけど、これはちょっと納得いかないなあ……

あと、シリーズ屈指の人気を誇るキャラクター・ヴェノムの扱いがいくらなんでもヒド過ぎるので、アメスパの次回作では大活躍してください。あれじゃあ“寄生する宇宙生物”というザコ止まりです。

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否定的な意見↓

ポンコツ映画愛護協会『スパイダーマン3』

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  1. 毒親育ち より:

    三作目のジンクスにハマってしまったような残念度でしたね・・・
    ハリーとピーターの共闘やスカイボードを使ったアクションと、寄生体の影響でちょい悪化したピーターを演じるトビー・マグワイアのノリノリ演技は最高でしたけど!
    あと大家の娘さん・・・
    >①グウェン
    当時MJよりもグウェン派だったので、この詰め込みキャラ扱いには憤慨しました!
    ・・・この頃はノーマン・オズボーンと不倫して隠し子まで出産してたとか知らなかったです。
    エディと恋人も映画オリジナルです。原作のパラレル設定「アルティメット」版では大学生のエディが高校生のグウェンに言い寄ってロリコン扱いをされていました・・・。
    >②エディー
    サムライム監督は登場させる気は無く、原作の人気キャラだから詰め込め!と要求された結果らしいですけど、今観てもヴェノムというかエディの描き方に不満だらけです。
    原作でも自業自得の逆恨みでピーターを付け狙ってますけど、性根は正義漢で怪人というよりアンチヒーローなんですよ・・・、和解と対立を繰り返していて市民を守る為ならスパイダーマンと共闘もします。
    原作では連続殺人鬼のからの投稿を記事に → 犯罪者にも言論の自由は有る!と報道人として一通り掲載した後に彼を告発 → しかしその手紙の差出人は自分が殺人鬼だという妄想に取り付かれた別人で、ピーターが真犯人を捕まえてしまう → 新聞社を解雇され、なぜか「スパイダーマンのせいだ!」と逆恨み。
    アニメ版では、リザードの正体がコナーズ博士だと告発 → ピーターがコナーズ博士と家族を守る為にアリバイ作りに協力 → 真実を報道したのに捏造記者として破滅へ・・・と正当な怨みになっていました。
    (字幕しかありませんが日本でも「スパイダーマン:ザ・ヴェノム・サガ」のタイトルでDVDが出ています)
    >③ハリー
    ハリーはデイン・デハーン版よりもジェームズ・フランコ版が好きです。
    髪も天パだし・・・デイン・デハーン版もストパー掛けてるだけで天パという設定らしいですけど。
    >④マルコの妻
    マルコはエレクトロ同様に原作では超能力者になってラッキー!で犯罪に使って大金を得ようとするクズなんですけど、可哀想な怪人設定は映画オリジナルらしいです。
    >⑤ピーター(スパイダーマン)
    >せいせいした
    個人的にここはピーターの境遇に居たら同意です。でもその後、マルコの境遇や彼が罪の意識に苦しんでいた上にベンおじさんを尊敬していたりした事を知った時には、短絡的にして良い事ではないなあ・・・とも考えさせられました。
    あと相変わらずメイおばさんの聖母っぷりにも諭されます・・・。
    >〜許すというテーマ〜
    なるほど今なら本作を許せそうです。
    エディは犠牲になったのだ・・・。
    >どれだけの人が「早く言えよ!」とツッコミを入れたことでしょうか。
    コイツがアメイジングのメンケンみたいなオズ・コープ乗っ取りを企んだ黒幕だったんじゃないかと思いたいです・・・

  2. デルピッポ より:

    1と2はまぁまぁだったのに3は酷かったなぁw
    一作でグウェン、そしてヴェノムというスパイダーマンの象徴的なキャラ2人を台無しにしましたから
    ピーターが調子こいてダンスとかしてるところはシュールで笑いましたけどね

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ヒナタカ

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