『マリアンヌ』“車の中”の意味とは(映画ネタバレなしレビュー+ネタバレレビュー)

『マリアンヌ』“車の中”の意味とは(映画ネタバレなしレビュー+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はマリアンヌです。

個人的お気に入り度:7/10

一言感想:極めて堅実、そして重圧

あらすじ

(※予告編はちょっとネタバレ注意!)
時は第2次世界大戦下の1942年。
ケベック出身のカナダ人工作員のマックス(ブラッド・ピット)はモロッコの地に降り立ち、「妻」であるマリアンヌ(マリオン・コティヤール)と落ち合おうとするが……。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ザ・ウォーク』のロバート・ゼメキス監督最新作です。

本作はPG12指定がされており、ゼメキス監督の『フライト』にも通ずるちょっぴりエロティックな雰囲気が作中に充満しております。
「大人な」魅力が大炸裂、「映画」としての醍醐味を存分に味わえる作品になっていました。

1940年代の美術がすばらしい!

本作で何より目を引くのは、1940年代の街並みや美術。
衣装は1940年代当時に作られた映画『カサブランカ』および『情熱の航路』を参考にしているとのことで、並々ならぬ「再現」への執念を感じました。

※『カサブランカ』は著作権が切れているので、無料で視聴が可能。2月24日公開『ラ・ラ・ランド』の前に見ておくといいことがあるよ!

ブラピの魅力、満載!

まあ兎にも角にも、主演2人の魅力に触れないわけにはいられませんよね。
今回のブラッド・ピット様は『ファイト・クラブ』や『イングロリアス・バスターズ』のようなクセの強いキャラクターではなく、『ジョー・ブラックをよろしく』や『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のほうの「ふつくしい……」ほうですからね。ブラピファンは義務教育として観ましょう。

で、マリオン・コティヤールの演技も美貌ももちろん素晴らしいのですが、ブラピのわずかなフランス語のセリフのために、マリオン様自身が彼のための「家庭教師」を演じていたというトリビアが素晴らしいな。
あんな美女に家庭教師をしてもらえる……言い値で払おう。

※劇中のマリオン様のけしからんシーン(微ネタバレ注意)

「Vセクション」って何?

本作でちょっと苦手だったのは、聞いたことのない固有名詞が何度も出てくること。
事前に、以下の言葉を知っておくとよいでしょう。

  • D-デイ……作戦開始日時を示す軍事用語。Dの意味は定かではないが、漠然とした日付を表す「Day」の頭文字という説がある。
  • フロライン……ドイツ語(Fraulein)で「令嬢」の意味。未婚女性に対する敬称。
  • Vセクション……スパイに指令を下す権限を持った組織で、おそらくSIS(イギリスの情報機関)の1つ「Section V」がモデル。Section Vは海外のスパイ活動を広めるための中心的な組織で、海外の基地のスパイレポートを照合する役割もあるらしい(英語のSISのWikipediaより)。

個人的には、「Vセクション」という名前はなくてもよかったかなあ……と。
たとえば、『この世界の片隅に』にもたくさんの固有名詞が出てきますが、知らなくても物語の筋を見失わずにすみますし、それらの用語はすべて実在しているため、「もっとこの時代のことを知りたい」という興味を引きます。
でも本作では「Vセクション」は厳密にはフィクションの組織名ですし、その説明がないまま組織の命令に従うという描写が多くなってしまうので、「この組織は一体何なんだろう」とどうしても疑問に思ってしまい、そのことがノイズになっているんですよね。

そんなわけで、「Vセクション」については「上から命令を下す組織」くらいに思っているのがちょうどいいと思われます。

そのほかの難点は、演出や構成が丁寧すぎるために、「勢いがなくて予定調和だ」という失礼千万な感想を持ってしまうことくらいですね。

原題の「Allied」の意味って?

原題は「allied」なのですが、この1つの単語に込められた意味がすごいことになっています。
具体的には以下の3つになるでしょうか。

  1. 連合国側の……主人公の2人はどちらもフランスまたはイギリスという「連合国側の」人間だった
  2. 同類……主人公2人の性格が似た者どうしであることを指している
  3. 単語を分解すると「All Lied」……「すべて嘘だった」になる

いやはや……カッコイイ。「Allied」はこれ以上なく優れたタイトルであると賞賛するしかありません。

また、邦題の「Marianne」も実にいいタイトルだよなあ……。
言うまでもなくもう1人の主人公(ヒロイン)の名前なのですが、マリアンヌはフランスを象徴する女性像の名前でもあり、それは「自由の女神」として知られているそうですよ。

予備知識なく観るのがおすすめ!

本作はなるべく予備知識なく観るのがよいでしょう。
上に載せたマリオン様のセクシーシーンの動画くらいならいいのですが、予告編や公式ページには中盤のとある「事実」がネタばらしされているんですよね。

「ネタバレにナーバスになりすぎじゃね?」という意見もあるのでしょうが、やはり「主人公の気持ちに同調したいのであれば、この部分を知らないほうがいいと思うんですよね。
もちろん、この部分を知っちゃった場合でも、映画は大いに楽しめますよ。

興行的に苦戦しているようですが、極めて誠実に作られた、ハイレベルな作品な作品であることは間違いありません。
主人公たちの心理描写に多く時間を割いているので、感情移入もしやすいでしょう。
「戦争物というと重っ苦しくて苦手だ」という方にも親しみやすいはず。おすすめいたします。

以下は結末を含めてネタバレです。鑑賞後にご覧ください↓ 今回は記事タイトルにも書いた“車の中”の描写だけ書きます。

“車の中”、そして“外”へ

物語の序盤……死亡する確率が60%という暗殺任務を遂行する前、2人は砂漠の中に停めてあった“車の中”でセックスをします。

無事に暗殺をやり遂げたマックスは、“車の中”でマリアンヌにイギリスに来てくれと、プロポーズをします。

そして……マックスはマリアンヌにピアノを弾かせることで、ナチスの二重スパイであることを証明“してしまいます”。
2人は“車の中”に乗り込みました。
マックスは乳母のふりをしていたスパイを銃殺します。
マックスが宝石商の男を殺す時は……マリアンヌは娘のアンとともに“車の中”にいて、外から銃声だけを聞いていました(店の中のシーンはない)。

ラストの飛行場では、宝石商を銃殺した時と同じく、マリアンヌの“車の中”からの視点になっています。
マックスと上官が言い争う状況を見て、そっとアンに目線を移したりもしながら、何かを決意したかのように“車の外”に出るマリアンヌ……。
マリアンヌは、マックスに背を向けて、拳銃自殺をしました。

これらのシーンで、“車の中”ではマックスとマリアンヌに純然たる愛があったことが示せれていると、自分は感じました。

“車の中”のセックスもプロポーズも、スパイとしての仕事ではなく、相手に愛があったからゆえの行為。
マックスが“車の外”に出てナチスのスパイを殺すも、マリアンヌが“車の中”にまだいるというのは、“車の中”が誰にも脅かされない不可領域であることを示しているかのようでした。

だけど、最後にマリアンヌは最後に“車の外”に出る……それは、マックスとの愛の証のような場所であった“車の中”を血で汚したくなかった……そんな想いによるものだったのではないでしょうか。

また、序盤中の序盤、マックスは暑い部屋の中で誘惑をするマリアンヌに「セックスのためにスパイは死ぬ」と言っていましたが、マリアンヌは「セックスではなく、感情で死ぬのよ」と返していましたね。
マリアンヌは、その自分の言葉を示すかのように、大切な人(マックスと娘のアン)を救いたいがために、感情(愛)のために死んだのです。

マリアンヌは自殺という手段を選ぶしかなかった。
その結末そのものは悲劇的です。

しかし、“車の中”には愛する娘のアンがいます。
(その後のアンの成長を願うマリアンヌの手紙、そして成長したアン、それに寄り添う父のマックスの姿もスクリーンに映し出されました)
やはり、“車の中”だけは……「Allied」だった2人の愛だけが残された空間なのでしょうね。

(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

publicShare

theatersタグ

chat_bubbleコメント

コメントを残す

* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。
メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。

著者

ヒナタカ

カテゴリ

文字から探す

レビュー点数で探す

extensionその他サイト

あわせて読みたい

この記事を読まれた方によく読まれている記事です。よろしければこちらもご一読下さい。

vertical_align_top