『フィフス・ウェイブ』じつはティーンもののSFだった(映画ネタバレなし感想)

『フィフス・ウェイブ』じつはティーンもののSFだった(映画ネタバレなし感想)

今日の映画感想はフィフス・ウェイブです。

個人的お気に入り度:5/10

一言感想:公開してくれてよかった

あらすじ

突如地球上に現れた生命体「アザーズ」が地球を4度にわたって攻撃し、世界人口の99パーセントが死滅した。
女子高生キャシー(クロエ・グレース・モレッツ)は、離れ離れになった弟の行方を追っていたのだが、思いかけない襲撃を受けて……。

アリス・クリードの失踪』のJ・ブレイクソン監督最新作です。
同名の小説を原作としています。

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本作は一見するとバリバリのディサスター(災害)ムービーのようですが、どちらかといえば若者の心理を描いた「ティーンもの」になっています。

派手な破壊のシーンや、ハラハラするようなアクションは少なめ。
クローズアップされているのは、『トワイライト』シリーズのような淡い恋愛や、『ハンガー・ゲーム』のような少年少女が政治的に匿われて戦いに身を投じられる、という展開なのです。

2012』のアホアホ地球ドッカンや、『カリフォルニア・ダウン』のようなロック様の筋肉ハァハァこの人について行きてえな要素はほぼ皆無なので、期待しないように注意しましょう。

ロック様の代わりにいるのは、『キック・アス』であらゆるロリコンどもを虜にしたクロエ・グレース・モレッツたん。今回は弟のことを誰よりも大切に思ういいお姉ちゃんになっているのだからたまりません。
彼女のファンであったら、十二分に満足できるでしょう。

興味深い宇宙人の設定

設定でおもしろいのは、「宇宙人が侵略に来ている」という状況であるのに、宇宙人が直接姿を現して襲撃に来ないということですね。
宇宙人がやっているのは、電波障害を起こしたり、ウイルスを蔓延させるといった、間接的で、効果的で、かつ恐ろしい方法なのです。

それでいて、「もうこれだったらただの災害でいいじゃん」とならないところもミソ。「宇宙人の侵略」が重要な意味を持つようになりますので、そこを楽しみにして観るのもいいでしょう。

今の世の中だからこそ

かつて、東北大震災のことを考慮して、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』や『唐山大地震』が公開延期されたことがありました。

その意図は理解できるものの、反面「こういう作品こそが『いま』必要なのではないか」と思うところもありました。
こうした災害を描いた映画からは、災害で辛い思いをした人たちの気持ちが、映画を通じて当事者でなくとも理解できるからです。

本作『フィフス・ウェイブ』は「津波のシーンがあります」とアナウンスされたものの、今回の熊本大震災では延期されることはありませんでした。

作中で描かれている、災害から逃げまどう人たちの描写や行き場のない悔しさは作品に重要です。
きっと、熊本の人たちの姿にも重ねる方も多いでしょう。

明るく元気になれる映画ももちろんいいのですが、こうした「辛い」という負の感情も与えてくれるというのが映画という娯楽のすぐれたところ。自分は、こうした災害を描いた作品が、いま公開されることをありがたく思うのです。

本作の主人公はどこにでもいるふつうの女子高生であり、作風も前述の通りティーンよりですので、同じ年代の少年少女はより感情移入がしやすいでしょう。

本田圭佑選手が「自粛」ムードに異を唱えていましたが、自分も同意します。
安易に「不謹慎だから」と自粛するのではなく、むしろいつもの日常を大切に過ごしたり、積極的に行動することも大切なのではないでしょうか。

九州地区での公開が延期となっているそうです・・・。

映画そのものの出来はちょっと……

さてさて、真面目に語ってきましたが、正直に言って映画の出来としては今ひとつです。

その理由のほとんどは、
(1)終盤の展開があまりに不自然
(2)後半に従い会話シーンの割合が増えすぎる
ということにつきます。
とくに(1)は「無理やりサスペンスが作らされている」という印象で、どうあっても肯定できません。

「宇宙船がずっと空中にある」という設定なので、「なんで空爆しないねん」「なんで攻撃が届かん歩兵を訓練するねん」とツッコミたくもなりました(でもこのツッコミどころを解消する事実もあるかも?)
悪い意味で『スターシップ・トゥルーパーズ(大傑作)』を思い出させますね。

ハラハラするようなサスペンスではなく、少年少女のドラマに焦点を当てた作品であるとはいえ、さすがにこれはちょっと雑です。
原作に続編が存在する関係もあってか、どこか中途半端なまま映画が終わってしまう印象も否めません。

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IMDbで5.2点Rotten Tomatoesで17%という低評価は、残念ながら納得できてしまいました。

それでも自分がこの映画が好きなのは、主人公の少女の心理が丁寧に描かれていたことと、オープニングシークエンスが秀逸であったからです。
時系列をずらして、ここを最初に持ってきたことには確かな意義を感じられました。

描かれているのは、圧倒的な絶望と、それに相対するような希望。
中盤の「疑心暗鬼」を思えば、武器社会であるアメリカという国を、この映画はこっそりと批判しているのかもしれません。

そんなわけで積極的なオススメはしませんが、クロエたんのファン、『ハンガー・ゲーム』や『ダイバージェント』のようなティーンもののSFが好きな方はぜひ劇場へ。
観客の97パーセントが『フィフス・ウェイブ』の正体を予想できなかったとのことですが、カンがいい人なら気付くんじゃないかな? それをあれこれと推理してみるのも楽しいですよ。

おすすめ↓
【インタビュー】 クロエ・グレース・モレッツが惚れ込んだ『フィフス・ウェイブ』ができるまで | cinemacafe.net

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  1. mjk2 より:

    ちなみに九州の映画館では公開延期になり、いつ公開になるのか未定だそうです(泣)
    あんなことがあった後なのでわからない話でもないですが熊本にも映画好きはいるはずだと思うのでその人たちのために予定通り公開してもよかったんじゃないかな・・・

  2. 毒親育ち より:

    >一言感想:公開してくれてよかった
    本当に。こういう映像を見るからこそ、共感出来るのだと思います。
    ここから野暮なツッコミですが。
    気付いてしまった事が。
    日本のラノベ:男の子が女の子に囲まれて「やれやれだぜ・・・」
    アメリカのラノベ:女の子が男の子に挟まれて「いや~ん!」
    なんですね。どっちにも乗れなくなって来た私も。心の老化が始まってるのかな・・・と。物語に関係無い所で涙!
    >一言感想:公開してくれてよかった
    >彼女のファンであったら、十二分に満足できるでしょう。
    リアル華奢な女の子が無双しても違和感ない美少女!期待値低めのコレをGW映画選んだ理由はコレです。
    去年。ニコ兄ぃ(ニコラス・ケイジ様)出演してるならとりあえず!で酷い目に遭ったアレよりは全然楽しめましたけどね!
    >設定でおもしろいのは、「宇宙人が侵略に来ている」という状況であるのに、宇宙人が直接姿を現して襲撃に来ないということですね。
    野暮なツッコミなんですが。
    >電波障害を起こしたり、ウイルスを蔓延させるといった
    ココまではキレイに人類だけを排除した地球が欲しいんだなあ・・・と思ったのですけど。アザーズの正体は精神寄生によって他の知的生命体の身体を乗っ取れるデータ生命体のようなのですが、これならマシューみたいに一人づつ地球人に乗り移って行けば良かったんじゃないかな・・・と思ったり。
    >観客の97パーセントが『フィフス・ウェイブ』の正体を予想できなかった
    大人と子どもを分けた時点でお察し・・・で。識別レンズが出て来た時点で確信しました。

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ヒナタカ

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